CDさん太郎 VOL.19 2019/12/2、4、5 購入盤

こんばんは。復活後第3弾の「CDさん太郎」です。
今回は2019年12月2、4、5日にそれぞれ東京・高円寺、吉祥寺、高田馬場で購入したCDを計11枚紹介します。
本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

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 アーティスト:V.A.
タイトル:エキゾチカ慕情
発売年:1991年
レーベル:ソニー
入手場所:ブックオフ新高円寺
購入価格:290円
寸評:以前から探していた盤。これはお得な買い物でした。レゲエ界隈からの派生や細野晴臣チルドレンの活躍、渋谷系の勃興、ヤン富田の活動、マーティン・デニー来日、沖縄音楽ブームなどが混交され、90年代初頭に小さくないエキゾチック音楽ブームが興っていたことを知る大変貴重な資料です。後の『モンド・ミュージック』などに接続する潮流としても興味深く(実際『モンド・ミュージック』の主幹である鈴木惣一朗氏在籍のEverything Playも参加)、今も一線で活躍するミュージシャンの方々に若かりし頃の記録としても面白い。参加アーティストは、エマーソン北村、タッケナー・アンサンブル、ONE DPOPS、ピアニカ前田+キオト(from QUJIRA) feat.渡辺満里奈ネーネーズ、チエコ・ビューティー、Everything Playという面々です。チープなダンスホールエキゾチューンをキメるエマーソン北村氏は今と全く変わらぬヒップさで、深い尊敬の念が沸き起こります。この盤が時折アイドルオタク方面からも語られる要因である渡辺満里奈の参加曲は、なんと岡崎京子作詞。岡崎京子は帯にもコメントを寄せています「猿もおお喜び(笑)」とのこと。注目すべき作詞参加はチエコ・ビューティー曲においても。なんと高橋健太郎氏による歌詞なのでした。そして、今最もこの盤が注目されるべきなのは、なんといっても昨今国内外からの再評価著しいEverything Playのオリジナル・アルバム未収録曲が収められているということでしょう。時期としては『Posh』の頃にあたり、同路線のキッチュなエキゾ路線が聴かれます。ちなみに、本作リリースに際し、同年11月には渋谷ON AIRで収録アーティスト総出のリリース記念ライブもあったようです。

 

 

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アーティスト:Linda Sharrock
タイトル:On Holiday
発売年:1990年
レーベル:Polygram
入手場所:ブックオフ新高円寺
購入価格:290円
寸評:先だって私監修で再発したオーストリアフュージョンバンドZENITのアルバム『Straight Ahead』へフィーチャリングヴォーカリストとして大々的に参加していたリンダ・シャーロック。以来彼女の仕事へ興味が湧いて色々と調べている中、タイミングよく90年のソロアルバムを発見。やー、これはかなりいいですねー。全体をジョニー・クルーム、リチャード・タッカーというアレンジャーが参加する中、全ての曲へ「アディショナル・アレンジャー」としてオーネット・コールマンのプライムタイムへの参加でも名高いジャマラディーン・タクマが関わっており、同時期の氏の作品にも通じるようなデジタルファンク全開となっています。完全に逆転的な表現なのですが、同時期の日本のデジタル化したシティポップ作品(しかもかなり良質な)にも近い雰囲気。リンダ・シャーロックのボーカルも相変わらず流麗。ジャケも地味だし、いろいろな文脈からスルーされている感のある作品ですが、非常に良いです。

 

 

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アーティスト:保坂由佳
タイトル:Will ―心の華
発売年:2001年
レーベル:J・DNAレコーズ
入手場所:ブックオフ新高円寺
購入価格:290円
寸評:箏奏者・保坂由佳がパーカッション奏者の大久保宙、尺八の善養寺恵介らと2001年に制作/リリースしたアルバム。和モノニュー・エイジの中でも純邦楽に接近したもの、しかも2000年以降のものは避けてきた部分なのですが、どうやらシンセサイザーもバリバリ使われているらしいということで購入。なんというか…時代の新しいニューエイジものは現実/実際の生活と距離がまだまだ近い気がして価値の回転はまだ先かな…という感じで、正直申し上げて聴き通すのが辛かったです…。その上箏というのは、数ある和楽器の中でもとくにその俗流っぷりという点でもっとも煽りを食っている楽器に思われ…どうも耳が拒絶反応を…ごめんなさい。吉田兄弟女子十二楽坊などのファン向け。ちなみに本CD、保坂さんのサイン入りでした。

 

 

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アーティスト:パチンコ・オリジナル・ゲーム・サウンド/SANKYO YAKUMONO企画
タイトル:ザ・パチンコ・ミュージック・フロム・三共Ⅱ
発売年:1991年
レーベル:キング
入手場所:ブックオフ吉祥寺店
購入価格:290円
寸評:パチンコ台メーカー三共の各筐体に収録されていた様々なオリジナル音楽を網羅したシリーズの第二弾CD。基本的には同時期、あるいはそれ以前の時代におけるゲーム音楽と同じような音源内蔵チップを駆使した2和音構成。今のオーディオファイルをフルで駆使した筐体と比べると実に牧歌的なのですが、そこが味わいどころといえばそうなのでしょう。当時どのようなリスナーターゲットを想定していたのか謎ですが、このような作品も商品として成り立っていたことに感慨を覚えます(ゲーム音楽マニアというのはもちろん分厚い層がありますが、パチンコに足繁く通いながらチップチューンオタク、という人物像をあまり想像できない)。注目すべきは後半のアレンジバージョン(実際の筐体発生音ではないもの)で、PCM音源を駆使したシンフォニックなものも多く、このあたりはゲーム音楽マニアが喜びそうに思います。

 

 

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アーティスト:不明
タイトル:ゴルフ 〜マインド・コントロールサウンド
発売年:1995年
レーベル:DELLA
入手場所:ブックオフ吉祥寺店
購入価格:290円
寸評:「俗流アンビエントブルーノート」ことDELLAより数多くリリースされた『マインド・コントロールサウンド』シリーズ中の一作。様々な効能を謳ってきた同シリーズですが、ゴルフのスコアアップというのはかなり珍しいテーマですね。寡聞にして、ほかメーカーでもこのようなテーマを掲げた例を知りません。音楽内容としては、アンビエントというよりはむしろスムースなフュージョンが主体となっており、スポーティーなアレンジの施されたものが多いです。もちろん全編シンセサイザーによる多重電子サウンドで、生演奏ではありません。その点こそが聴き心地の面で実に得難い味わいを醸し出しており、本作を珍重すべきものにしています。角松敏生『She is a Lady』的なギター(を模したプリセット音による)フュージョン③、アコギ(を模したプリセット音による)ブリージーサンバ④、カシオペア的な⑤、70年代後半のハービー・ハンコックから完全にやる気を奪ったかのようなプラスチックファンク⑥⑦⑧、あたりが良い。つまりほぼ全編良いです。これはかなりの名盤と言っていいでしょう。ちなみに全編、日英中韓各語で高周波数帯にスコア向上のサブリミナルメッセージが入っているとのこと。

 

 

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アーティスト:Michael Garrick Septet
タイトル:Black Marigolds
発売年:2005年(オリジナル:1966年)
レーベル:vocalion(オリジナル:Argo)
入手場所:ブックオフ吉祥寺店
購入価格:510円
寸評:唐突にUKジャズ名盤登場です。ここまでの数枚、なかば一般的な観点からするとほとんど顧みられることのない音楽ばかり紹介してきたので、この、どこからどう切り取っても良質としかいいようのないUKジャズの世界にうっとりとしてしまいますね。その後74年に『Troppo』というスピリチュアルな名作を残しているマイケル・ガーリックですが、この頃は同時代の米新主流派からの影響を感じさせる非常に抑制的な作風で、実に好感が持てます。時折入るチェレスタの響きも実に英国的。ノーブルなキングスイングリッシュによるポエトリー・リーディングを交えたM2、6なども、実にヒップ極まりない。パイプとツイード生地のモーダルジャズ。演奏参加陣も、イアン・カー(Tp)、やドン・ランデルなど(Ts,As)、豪華です。ジャケットもカッコいい。M5「URSULA」はジャイルス・ピーターソン監修コンピにも収録された由。

 

 

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アーティスト:V.A.
タイトル:FLAVOR IN THE AIR
発売年:2003年
レーベル:bounce records
入手場所:ブックオフ吉祥寺店
購入価格:510円
寸評:タワーレコード発行のフリーマガジン『bounce』誌による00年代初頭のライトメロウ系インディー作家作品をコンパイルした作品。その筋(ライトメロウ者コミュニティ)ではわりに有名で、かつ異常なほどのプレ値がついていいることでも知られています。今ヤフオクをチェックしてみたら6万前後…。実のところ、その値付けはハイプ(しかもかなり局地的な)以外なにものでもないのではとは思うのですが…このような値付けになったきかけとして、『Light Mellow和モノSpecial』に廃盤になって久しい本作が掲載されている、ということが挙げられると思います。が、たしかにかなり好内容であることはいえると思います。全体に、00年代的な生音回帰志向の、いかにもJ-WEAVEでかかっていそうな「フリー・ソウル」以降のグルーヴ音楽集といった感じです(なぜか普通のロックも混入されているけれど)。参加陣も有名な人は少なく、どちらかというと裏方志向の方々が集っているようです。詳しいトラックリストなどは各種商品ページに掲載されていますので、気になる方はそちらをどうぞ。

 

 

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アーティスト:V.A.
タイトル:KAIGAN GROWN
発売年:1996年
レーベル:KAIGAN RECORDS
入手場所:ブックオフ吉祥寺店
購入価格:510円
寸評:KAIGAN RECORDSは96年に少年に設立されたレーベルで、様々な原盤制作やライセンス発売とともに、何故かアーロ・ガスリーのリプリーズ諸作を日本リイシューしていた隠れ名門(と思います。現在は閉鎖)。これはそのレーベル第一弾作で、レーベル名通り、サーフ・ミュージックやウェスト・コースト系、リゾート・ミュージック風の曲が揃っています。参加者のほとんどはかなりマニアック、というか無名の方なのですが、その中にドン的な存在感をはなっているのがブレッド&バターの岩沢二弓。苦み走ったデジタルAORを収録(娘の岩沢シーマもM11を定提供)。また、この盤の購入の後押しになったのがジャパニーズソウルシンガー、タイロン橋本の参加。全打ち込みによるオケの「Close To You」カヴァーを聴かせてくれます。相変わらず豪放な歌声です。また、桑田バンドのベーシストとして知られた琢磨仁&啓子の夫婦のユニット「Half Moon」のM1もアコースティックなメロウナンバーで、わりに良い。ちなみに、タイトルの「KAIGAN GROWN」というのは、ハワイアンAORの名コンピ『HOME GROWN』へのオマージュなのでしょうか(だとしたら非常にカッコいい)。

 

 

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アーティスト:ANNA BANANA
タイトル:大きな絵
発売年:1991年
レーベル:sixty records
入手場所:ブックオフ吉祥寺店
購入価格:290円
寸評:これもまた以前より探していた盤。佐藤あんこさんの『後追いGiRLPOPディスクガイド 別館』に掲載されており、気になっていたのでした。アンナ・バナナといえば、ライトメロウ的感覚から言うと、田島貴男がプロデュースを務めた5thアルバムが著名かもわかりませんが、この3rdアルバムもかなり素晴らしいと感じました。ライトメロウというよりは、「和レアリック」の文脈で語るべき盤じゃないかなと思います。プロデュースを担当したのは井上ヨシマサと久保幹一郎によるユニット「ATOM」で、テクノ・ポップの伝統も受け継いだ彼らの先鋭的センスが全面に押し出された打ち込み中心の内容になっています。全曲高クオリティなのですが、「サー・デューク」と「男の子 女の子」のカヴァーがかなりアヴァンギャルドな仕上がり。特に後者は原曲のサンプリングからはじまり、実にエキゾなデジタルバレアリック世界が現出。チョップやスクリューも用いられるなど、かなりヴェイパーウェイヴっぽい。最後のM11「Garden Of Love」も蒸気の充満した世界。

 

 

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アーティスト:FACE TWO FACE
タイトル:FAKES
発売年:1992年
レーベル:ポニーキャニオン
入手場所:ブックオフ吉祥寺店
購入価格:290円
寸評:中森明菜アン・ルイスに楽曲提供したこともあるソングライターの日比野健と、二人の女性シンガーによる「FACE TWO FACE」による(おそらく)唯一作。「逆ドリカム」な編成はこの時代のJ-POPシーンの中にあっては結構特異なものに感じます。二人の女性シンガーの歌もうまく、編曲陣も佐藤凖、ジョー・リノイエ、今剛、清水信之西脇辰弥などのシティ・ポップ界にレジェンドたち、しかも作詞には松本隆も参加するなど、ポニーキャニオンの気合が感じられるプロダクションなのですが、残念ながらヒットには至らなかったよう。肝心の曲がなんとも中庸と言うか、地味というか…バラードが多いのも後年のリスナーとしては気勢をくじかれる点。クレジットだけみると最高のシティポップ集を想像するわけですが、残念ながらあまりそういう感じではないですね。そんな中、M2は好ましいJ-AORかな、という感じ。ライナーノーツには何故かオリジナルデザインのグリーティングカードが数枚封入されています。今度突然使ってみようかな。

 

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アーティスト:DAISAKU
タイトル:EASTERN SHORE
発売年:1993年
レーベル:MESA(オリジナル:Moo Records)
入手場所:ブックオフ高田馬場
購入価格:290円
寸評:元プリズム〜スクエアの久米大作によるリーダー作で、同年に徳間ジャパンコ内のフュージョン系レーベルMoo Recordsよりリリースされたものを米国のニュー・エイジ系レーベルMESAがライセンス発売したもの(と思われます)。ジャケットのイメージ通り、「東洋性」を東洋人たる感覚から再帰的に表現したエスノ・ニューエイジ作で、今こそ聴きたい実に素晴らしい内容。盟友・仙波清彦がパーカッションで全面参加することによってダンスミュージック的な快楽性も担保されている格好です。いかにも「西洋からみたオリエンタリズム」的作風は、たしかに政治的次元での脆弱性をはらんでいることも確かなように思われますが、まずは何より音楽的完成度を貫徹せんとする志によって、却ってそうしたエスニシティ要素が自覚性を帯びるような形になっているように感じます。いわゆる「和レアリック」という文脈に置いたとしても、かなりの名盤ではないかなと思います。

 

次回へ続く……。

CDさん太郎 VOL.18 2019/11/14、25 購入盤

 こんばんは。前回までの半年ブランクをものともしない元気でお送りする、復活後第二弾の「CDさん太郎」です。

 まず告知です。
 今年5月、普段からよくしていただいているpanparth(パンス)さんから誘っていただいてDJをさせてもらった世田谷宮坂バレアリック飲食店(店名です)での「Laid Back Ground Music」。そのパンスさんをはじめ、磯部涼さん、cherryboyさんというめちゃ素敵なメンツに混ぜてもらい主にアンビエントをプレイしたのですが、すごく楽しかったんですね。
 で、年の瀬12/14に再び同じ陣容で同所にてDJをさせていただくことになりました。嬉しい…!通常営業でのBGM係を担当する形になりますので、お椅子もありますし、本当に素敵な空間とご飯(う・ま・い)ですので、是非お越しください。もちろん予約も不要。今回もアンビエントを中心に持ち寄る予定です(本CDさん太郎登場作も持参することでしょう)。

日程:2019/12/14(土)

場所:世田谷宮坂バレアリック飲食店 https://balearic-inshokuten.business.site/

DJタイム:19:00-23:00予定


 さて、今回は2019年11/24と25に東京・吉祥寺、中野、で購入したCDを計枚紹介します。
本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。

shibasakiyuji.hatenablog.com

 
1.

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アーティスト:宝達奈巳
タイトル:たからたち
発売年:1993年
レーベル:グリーン・エナジー
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
購入価格:380円
寸評:宝達奈巳は、93年にこのCDでデビューしたシンセサイザー奏者/シンガー・ソングライター。早くからクラシックの英才教育を受けるもその世界にうまく馴染めずいるところに出会ったYMOに大きな衝撃を受け、シンセサイザーを手にしたといいます。その後国立音楽大学に進学し楽理学科を卒業するという輝かしい経歴をお持ち方なのですが、この作品も、明らかに音楽的な下地と素養を感じさせる非常に上質のニュー・エイジ・ポップとなっています。作曲の巧みさやシンセサイザー・プログラミングやサンプラー使いの巧みさは、同時代の国内テクノ・シーンなどと比べても相当なレベルと言っていいと思います。非常にメディテーショナルでノンビートの楽曲も良いのですが、ミニマル・ミュージックや前衛音楽の影響を感じさせるトラックや、同時代のテクノやハウスからの影響を直接的に感じさせる曲も優れています。そして、その歌声も極めて麗しい…。細野晴臣氏が彼女の声を絶賛したこともあるとの由。あまり一般的な知名度がないのが不思議ですね。ちなみに次作も所有しているのですが、そちらも同傾向の秀作。現在は同じく音楽家たる夫君と活動をともにし、日本古代音楽の研究や歌唱活動も行われているようです。以下URLから本人インタビューを読むことができます。
https://www.kunitachi.ac.jp/introduction/kunion_cafe/interview/50on/ha/hotatsunami.html


2.

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アーティスト:栗林誠一郎
タイトル:La Jolla
発売年:1989年
レーベル:BMGビクター
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
購入価格:650円
寸評:大名盤が登場してしました。栗林誠一郎ビーイング系の諸作で名高いソングライター/ベーシスト。これは彼の1st作です。ビーイング系にまったく明るくない私、彼の名はlightmellowbuのタイさんが紹介していた他作品を通して知ったのでした。で、ちょこちょこネットで試聴をしてみて、そのドエラいクオリティのシティ・ポップに心底驚きまして。このファーストはそれ以来のウォント盤でありました。もう全編これ本当に最高のシティ・ポップのラッシュでして、オーセンティックなシティ・ポップ史からこのひとの名がスポイルされがちなことに不可解さを感じますね〜。まず、曲が良い。ポップではあるのだけど、どこか切なさを孕んだ湿ったメロウネスが横溢しています(ロッキッシュな曲も全然いい)。そして、声。か細い声でメロウな旋律を歌うという、いわゆるソングライター・ボイスなんですが、ちょっとベン・シドランを感じたりも。そして、本人によるアイデアフルなアレンジ、巧みな演奏も素晴らしい。マルチプレイヤー的にギターやキーボードもこなしています。バックも豪華。青山純(ds)、青木智仁(b)、葉山たけし(g)、斉藤ノブ(per)、数原 晋(tp)、土岐 英史(sax)等々…。ずばり、完璧なアルバム。次回レコードの日とかでLPリイシューすればよろしいんじゃないでしょうか。

 

3.

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アーティスト:井出泰彰
タイトル:COOL BLUE
発売年:1995年
レーベル:キューン・ソニー
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
購入価格:380円
寸評:男性和AORが続きます。井出泰彰は1970年生まれのシンガー・ソングライターで、94年にシングル「情熱」でデビューした方。今作はセカンド・アルバムです。参加メンツがとにかく豪華で、NY、ロンドン、東京で行われたセッションではスティーヴ・ガッドマイケル・ブレッカー、ロベン・フォード、ウィル・リー、ポール・キャラック、ラルフ・マクドナルド等、とてつもない。CDって売れてたんだなあ、という感慨…。ということで、完全海外プロダクション仕様の本作、そのサウンドも実に骨太で、純日本産ライトメロウにくらべるとかなりずっしりした質感となっています。井出の歌声がしゃがれた野性的なもの(ブライアン・アダムス風?)なので、非常にしっくりとバックに調和しているような格好です。彼の書く曲もソウルやR&Bからの影響を強く感じさせるしっかりしたものなので、早すぎたJ-R&Bの傑作としても聴くことが出来るように思います。何故か中川五郎がライナーに寄稿。そして、以前台車さんがTwitterで指摘されていましたが、このジャケは確かにインスタストーリーっぽい。

 

4.

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アーティスト:豆田将
タイトル:臘雪 ROUSETU
発売年:1990年
レーベル:パフSOUND
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
購入価格:280円
寸評:豆田将(まめだすすむ)は、アニメ/ゲーム音楽系の作詞家/作曲家/編曲家/キーボーディスト。これは彼のファースト・アルバムで、(おそらく)自主制作盤Suaraや元田恵美といった大阪のフィックスレコード系アーティストの作品を手掛けているほか、國府田マリ子中山愛梨沙などにも曲提供するなど、かの業界ではそれなりの存在感のある人らしいです。2色刷りのいかにもインディーなアートワークや「臘雪」というものものしいタイトルからその中身を想像するのが難しく、完全な当てずっぽうで購入したのですが、結果、なかなかの拾い物でした。冒頭の①で感傷的なピアノがそろそろとバラ―ディーに流れ出るのを聴いて嫌な予感が走るのですが、②以降はなかなかに聴きごたえのあるMORポップスが展開されます。とくに②⑦⑨あたりはギリギリでシティ・ポップに分類することもできなくない楽曲で、同時期のメジャーなJ-AORシンガーのアルバムに入っていてもおかしくなさそう。メロディのセンスには安部恭弘などに近いものも感知できます。おそらく周囲のセミアマ・ミュージシャンを集めたと思われるバッキング陣も手堅いプレイを披露しており、好印象です。謄写版っぽい手作り感満点の歌詞カードのスペシャル・サンクス欄へ、「大阪写真専門学校音響芸術家の卒業生・在校」とあることから、当時豆田氏は同校の関係者だったのだと思われます。なので、本作ももしかするとある種の「身内音楽」なのかもしれません。

 

5.

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アーティスト:ESCALATORS
タイトル:Sprite
発売年:1995年
レーベル:日本コロムビア
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
購入価格:280円
寸評:アシッド・ジャズフリー・ソウル的な要素を早い時期から自覚的に取り入れつつメジャー・フィールドで活動したバンド、ESCALATORS。これは3rdアルバムです。90年代後半にボーカルZOOCOの脱退により活動休止となりましたが、もう少し長く活動していたら、本格的に興りつつあったR&Bブームともリンクする形でもっと人気のあるバンドになっていたように思います。3作目ということもあり初期にもまして非常に堂に入った演奏となっており、一層安心して聴くことができます。プロデュ―スは笹路正徳が担当。楽曲、演奏、そして歌唱ともに一級品と言っていいですね。こうしたアシッド・ジャズ派生のアクトたちは、(当時風)の「クラビー」な洒脱感ゆえなのか昨今のシティ・ポップリバイバルから微妙にこぼれ落ちてしまっている気もしますが、捨て置くにはもったいないように思います。ブラン・ニュー・ヘヴィーズインコグニートとかの再評価が今後あったりするならば(Suchmosのブレイクをもってしてもそこまでへは至らなかったという…)、このESCALATORSも再発掘されることでしょう。

 

6.

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アーティスト:pas de chat
タイトル:Player
発売年:1996年
レーベル:テイチク
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
購入価格:280円
寸評:平井堅「楽園」などの作曲で著名な中野雅仁と、同じく平井堅福原美穂今井美樹鈴木雅之などのコーラスを務めた藤原美穂によるデュオ、pas de chat(パディシャ)のサードにしてラスト・アルバムです。アルファからリリースされた前2作ではR&B風味のポップス、という印象ですが、こにサードではグッとR&B色を増しています。見事なソバージュヘアでーワインレッドのコンシャスな衣装に身を包み女豹がごとく平伏(?)するインパクト強大なジャケットもそれ風(ボーカルは時にCHARAを思わせます。ので、そこまで「ソウルフル!!」という感じでもない)。基本的にプログラミング・サウンドが主導する格好なのですが、沼澤尚ASA-CHANG(!)らが参加しグルーヴに深い彫り込みを与えています。どれもR&Bポップスとして好ましく聴けますが、やはり⑤や⑥、⑩、⑪などのミディアム〜アップが良いですね。

 

7.

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アーティスト:John Martyn
タイトル:Sweet Certain Surprise
発売年:不明
レーベル:Boyds Music
入手場所:ディスクユニオン中野店
購入価格:110円
寸評:私はかねてより、UKのフォーク系シンガー・ソングライター、ジョン・マーティンの大ファンです。ニック・ドレイクなどにも通じる繊細で深遠な楽曲、キャリアを進むごとにジャズやフュージョンへも接近し、ほぼ「ジョン・マーティン節」としか言いようのない数々の名作を世に送りだしています(日本での知名度はいまいち高くありませんが、本国では国民的な大歌手とされています)。その全てがとても素晴らしい出来栄えで、どれもこれも、ジョン・マーティンの作品とみると否応なしに手に取りたくなってしまうのでした。これはぶっちゃけブートレッグCDです(どういうわけなのかこの人は大量の発掘ライブCDがあり、その全貌を把握することが困難なくらいなのですが)。これだけ一流の人になると、こうした粗雑なCDにすら感動させられる演奏がぎゅうぎゅうに詰まっているのでした。本CDには、録音日時など詳細なクレジットがないのですが、①〜⑦に関しては「70年代、アメリカのどっか」と(おそらく出元を掴まれないために)曖昧に記載されています。選曲からみるに、おそらく70年代半ばと思われ、ほぼ途切れることなく、まるまる公演の模様が収められいます。ギター弾き語りでこれだけ多彩なニュアンスを表現できた人は地球上にまたといないのではないでしょうか。本当に素晴らしい(当然音質は良くないですが)。⑧、⑨は81年ロンドンでのライブ録音とあります。名盤『グレイシャス・フール』リリース前後の公演かと思われます。こちらはエレキの弾き語り。相変わらず素晴らしい(もしこの記事でジョン・マーティンに興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、くれぐれもこういうブートじゃなくて、オリジナル・アルバム群から先にお聴きください)。

 

次回へ続く…。

【復活】CDさん太郎 VOL.17 2019/11/17 購入盤

大変ご無沙汰しております。約半年ぶりの「CDさん太郎」更新です。
当初、「戦争とかは起こらない限り続けていきたい」などと大きなことをいってしまったわけですが、大変不甲斐ないことに、全く更新が滞ってしまっておりました。
 6月には「CDさん太郎」関連のイベントなどにもお呼ばれしていたのに、その後急に止めてしまって、関係者の方々へも非常に申し訳ないなあ…時間をみつけていつか再開しなきゃなあ、などと考えてはや6ヶ月もたっているという。相変わらずの不精さ…。
 実のところを言うと、引っ越しや結婚など、公私ともども色々目まぐるし変化がありまして、単純に記事を書く時間が取れなかったという、何の意外性もない理由なのでした(その間、以前から集めていたCDの中から、サブスクで聴けるものは殆ど売ってしまったりということもありました)。

 そんな個人的事情をつらつらと書いていてもしょうがないので話題を変えます。
さて、この6ヶ月の間、CDディグを取り巻く状況はどのように推移してきたのでしょうか。私個人としても、若干の状況変化を感じていました。このブログを楽しみにしてくれているという奇特な方と新たに幾人か知り合う機会もあって、そういう方々は軒並み私と同じようなディグ生活を送っているのでした。
 CDのヘゲモニーが極端に低下して以来、今まで点々と各地に散らばっていたそういったみなさん(のCD偏愛)が、SNSを通して急に可視化されてきたような感もあったり。予てからの知り合いであるlightmellowbuの面々(我々が90年代編の選盤を努めた『レコード・コレクターズ』誌のシティ・ポップ・ムックの刊行という大きなトピックもありました)や「トレンディー歌謡」のanouta若山さんはもちろん、以前から8cmCDを掘ってらっしゃるDJ 610さんや関根圭さん。ラテンCDを各地で掘りまくり、DJも行っているshowgunnさん。「廃サロン」という新概念の元、図書館所蔵CDなども漁場とする若きディガーのながいさん。そして、「100円名盤」を求めて日々ニッチなCDを買いまくるデラさん。ほか沢山の方々……。
 そういったことが顕在化してきた一方で、例えば大きな話題となったele-king books刊の『和レアリック ディスクガイド』においてもCDオンリーeraの作品が数多く取り上げたり、webマガジンのbelong magazineにて、280円コーナーに眠る名盤(洋ロック中心でしたが)を再発掘するというそのものズバリの企画が始動したりと、メディア側からの発信にも面白いものがありました。
 管見ゆえ、見落としているムーヴや個人発信も多々あるはずですが、いずれにしても、このブログシリーズを立ちあげた当時に比べ、超低温が低温になった、くらいの活性化はあったのではないでしょうか…。もちろん、なにか大仰な使命感をもっているわけではなく、本当に単なる&ささやかな楽しみ(釣りの後、一杯やりながら家族に釣果を報告しているような感じ)なので、ダイナミックな話にするつもりはない(ならない)のですが、同好の方々が寄り会えるネット空間が醸成されるというのは、悪くないことと思います。

 前置きが長くなってしまいました…。
 本記事は、「CDさん太郎」の第17回目になります。今回は2019年11/17、東京・上野で購入したCDを計8枚紹介します。
(※前回の更新からこの間に購入した大量のCDについては、不幸なミッシングパーツとして掲載を見送らせていただきます…もちろん素晴らしい発見は少なくありませんでしたので、随時言及できればと思っていると同時に、いつかどこかで大規模発表できればと思っています)

 本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

1.

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アーティスト:V.A.
タイトル:松本一起ラブ・エッセイ・シリーズ Vol.2 夏のセントバレンタイン
発売年:1992年
レーベル:VAP
入手場所:ブックオフ上野広小路
購入価格:150円
寸評:著名作詞家・松本一起が監修&歌詞&ポエムを手掛けたサウンド・エッセイ・シリーズ全8作中の二作目。皆口裕子堀川亮、小山裕香、草尾毅という有名声優たちが歌とリーディングを務める、まさにCD全盛期に向けて「なんでも売れる」ようになっていた時代の産物。作/編曲を担当するのはex花伸で80年代からビーイング系のアレンジャーとして著名な葉山たけし。氏の作風に倣った健全なロックを想像していたところ、ミディアムメロウなシティ・ポップM1がのっけから流れてきて椅子から転げ落ちそうになるのだった。これは素晴らしいです!皆口裕子の不安定な歌唱とあいまって、めちゃくちゃ切ないティーン・シティ・ポップとなっています。挿入されるポエトリー・リーディングも、アルバムタイトル通り、夏の青春を謳歌する野球部のマネージャーの物語。当時どういう人が聴いていたんだろうか?M2、3はいかにもビーイング的なポップス。M4は、ドゥービー・ブラザーズなどを思わせるAORポップスで、悪くない。が、草尾毅によってリーディングされるポエムはかなり自己陶酔的でツライ。当時どういう人が聴いていたんだろうか?

 

2.

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アーティスト:梨木良成
タイトル:IMAGE WORK 調和への共振 5 川を聴く
発売年:1992年
レーベル:NASH MUSIC PUBLISHING
入手場所:ブックオフ上野広小路
購入価格:510円
寸評:相変わらずコツコツと買っている俗流アンビエントです。ロックバンドBuxのボーカルとして76年にデビュー、その後80年代から環境音楽家として活動していたようですが、どうやらその時期は自身名義のリリース物はなさそうです(あれば是非聴いてみたい)。これは、初となる(らしい)アルバム作品集「IMAGE WORK」シリーズの中の一作。哲学者の三浦俊彦が同シリーズ諸作を「環境音楽の最高傑作」と認定したということなのですが、そう言ったのはおそらく本当なのでしょう(客観的にみて最高傑作かどうかは別の話だが)。が、その実、この作品はかなり良質だと思います。アルバムタイトル通り川のせせらぎの音に導かれてパッド音が浮遊するM1。アブストラクトなメロディが寄せては返す12分超えのM2。一層スピリチュアルでニューエイジ色濃いアンビエントM3やM4など、かなり硬質で理知的な作風で好感が持てます。(ゆえに「俗流」感は少し薄いとも言える)。アンビエントDJをする際のセトリ入り確定で。ちなみに、同シリーズは他にも「森を聴く」「星を聴く」等、全10作品がラインナップさてれているようなのですが、どれもあまり見かけません。発売元が自身のインディー・レーベルだということもその希少性に寄与しているのでしょう。

 

3.

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アーティスト:Millie Face
タイトル:Millie Face
発売年:1996年
レーベル:Nature Records
入手場所:ブックオフ上野広小路
購入価格:150円
寸評:一般的には『機動戦士ガンダム00 スペシャルエディション』のテーマソングを担当したことで辛うじて知られているであろうユニット、Millie Faceによる(おそらく)デビューアルバムです。上記のテーマソングに抜擢される以前から地道にインディーズ活動を続けてきた人たちのようで、ここ最近でもライブを行うなど、活動を継続しているようです。メンバーはボーカルのMIKA HIGASHIとキーボード/プログラミング/プロデュースを担当するTETSUYA KUMAMOTOの二人。その編成や背景から同時期から活動するTWO-MIXなどを思い起こしますが、まさしくそういった志向性をもつユニットだといえます。どちらかというとわたしの漁場とは無関係な盤に感じられますが、そのミニマル極まりないジャケが得難いオーラを放っていたので購入してみました。正直言うと、アップテンポなロック風楽曲やバラードも多く今では結構ツライものがあるのですが(すみません)、全体に敷き詰められているシンセのサウンドに「おっ!」と思わせるものが少なくなく、これはなかなかの好盤といっていいのではないでしょうか。M3はかなり上質なアンビエント・テクノ風トラック。M5はガムランの影響を感じさせるエスニック・テクノ。M8、11、12あたりはちょっと川村万梨阿などにも通じるようなニューエイジ・ポップ。そう、曲名も含め全体にニューエイジ感濃厚なのが好ましいのでした。


4.

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アーティスト:川崎真弘
タイトル:「RAMPO」オリジナル・サウンドトラック
発売年:1994年
レーベル:日本コロムビア
入手場所:ブックオフ上野広小路
購入価格:150円
寸評:「映画生誕100年・江戸川乱歩生誕100周年・松竹創業100周年記念作品」として公開された映画『RAMPO』のサントラ。この作品は未見なのだが、黛りんたろう監督版と、それに納得が行かなかったプロデューサー奥山和由が作り変えた版2つが存在し、当時同時公開でロードショーされたといいます。そんなことってあるんだ、と思いつつ、うっすらとした記憶として、TV等で本作の予告を目にしたことをが思い出されてきました。子供心にはただ「不気味」という印象でした…。サントラを手掛けたのは80年代から映画音楽を制作してきた川崎真弘。元はイエローやカルメン・マキ&OZ、金子マリ&バックスバニー、竜童組などで活躍したキーボード奏者ですが、映画音楽作家としてはロック的な出自はほとんど感じさせず、この作品でも主に荘厳なストリングスを用いた重厚な音楽を作り上げています。…ということは、あまり私の趣味には合致しないのわけですが、ミステリー/ファンタジー映画ということもあり、ところどころおどろおどろしいドローン音楽が聞けて嬉しい。江戸川乱歩モノということで、お馴染みの和洋折衷趣味的世界も顔を出すのですが、このあたりはまだ再評価困難だなあ、と思ってしまいます。冒頭、ミルドレット・ベイリー歌による「オール・オブ・ミー」から始まるので、CD中身違いを疑いますが、これがテーマ曲的な扱いだった由。

 

5.

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アーティスト:SHIHO
タイトル:Love Sequence
発売年:1991年
レーベル:日本コロムビア
入手場所:ブックオフ上野広小路
購入価格:290円
寸評:当時全国の学園祭を騒がせた(?)というセクシーアイドル坂本志穂が、歌手としてSHIHO名義でリリースしたおそらく2枚目のアルバム。全編この時代の典型的なバブリー・ハイエナジー歌謡で、一曲くらいなら付き合えるのですが、全編その調子で突き通されるとなかなかツライものがあります。いくらエレクトリックかつダンサブルなアレンジを施したとしても肝心の楽曲の歌謡性が濃厚で、そのあたりもツライ…。アレンジを手掛けるShimizu Yasuoとは、ジョー山中などへ曲提供を行っている人物と同じでしょうか…?ほか、すかんち小川文明、HR系ギタリストの高橋マコト(BOOWYのドラマーとは同名異人)、ムーンライダーズ界隈からデビューしたプラチナKITの金津ヒロシなどが参加しています。M1に参加しているラッパーMC・Yにいたってはその検索困難性もあり、まったく何者かわかりません(ラップも超チャラい)。

 

6.

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アーティスト:岡野弘幹 with 天空オーケストラ
タイトル:天空 〜Heaven in the KOO
発売年:1997年
レーベル:プレム・プロモーション
入手場所:ブックオフ上野広小路
購入価格:290円
寸評:和ニューエイジの巨匠・岡野弘幹による天空オーケストラとの97年作。この人の作品は店頭で見かけることが結構多いのですが、その内容の高水準ぶりの割にあまり話題にしている人が少ないような印象もあります。おそらく、現在に続く和ニューエイジアンビエントの再評価があくまで電子音主体で展開されてきたことと無関係でないでしょう。岡野氏本人もブズーキやフルートを演奏し、「天空オーケストラ」も、シタール、タブラ、ディジュリドゥ、ジンベ等、といった生楽器編成。しかし、即興によって奏でられるその音楽は極めて上質で、安易に電子音を取り入れたニューエイジ作品よりもむしろ真摯であると言えると思います。全曲極めてメディテーショナルで、いわゆる「トライバル」な味わいもあるのですが、エスニシティの欺瞞に陥ることを回避するようなストリクトさで貫かれているのでした。例えば、DJミックスで使用する場合は、これらにプリミティブなモジュラーシンセ音を混ぜ込めばとたんに現代の聴取感覚に訴えうるものになるのではないでしょうか。帯には細野晴臣氏からの賛辞も掲載。

 

7.

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アーティスト:古村敏比古
タイトル:Gypsy Planet
発売年:1991年
レーベル:フォーライフ
入手場所:ブックオフ上野広小路
購入価格:290円
寸評:明治学院大学在籍中からサックス奏者として一線で活動する古村敏比古の名は、浜田省吾のライブバンドメンバーとして長く活躍していることで一般的にも知られているでしょう。元々は金子マリ&バックスバニーのメンバーとしても活躍していたという彼ですが、織田哲郎とのユニット「織田哲郎 & 9th IMAGE」などをへて現在の地位を確立したとの由。ハマショーの相棒ということは、ブルース・スプリングスティーン&Eストリートバンドにおけるボスとクラレンス・クレモンズの関係性を彷彿とさせますが、このファーストソロ作はクレモンズのロッキッシュなそれとは異なります。ジプシー音楽やケルト音楽などを消化した音楽性は、ジャケットの印象に反し、むしろプログレに近い気がします。たとえるなら…コンポステラとかを思い切りポップ寄りにしやような…。が、今聴きたいのは残念ながらそういうのではないのでした。そんな中で、M5、6は思い切りデヴィッド・サンボーン〜ケニーGライクなストライク・フュージョン。ボーカル曲M9は浜田省吾フュージョンバンドに参加したような雰囲気。出色はM10のプログラミング・スポーツ・フュージョン。いななくサックスとバキバキの打ち込みの対比が面白いです。中山信彦、中西俊博美久月千晴、古田たかし、梁邦彦などの手練がバッキングしています。

 

8.

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アーティスト:V.A.
タイトル:螺旋のかけら ―オリジナルアルバム―
発売年:1993年
レーベル:パイオニアLDC
入手場所:ハードオフ上野御徒町
購入価格:110円
寸評:橘皆無による転生ものファンタジー漫画『螺旋のかけら』のイメージアルバム。オリジナル楽曲とドラマが交互に収録されています。音楽を手掛けたのは、近年、大友克洋原作『童夢』のサントラが国内外で高騰するアニメ系音楽作家の伊豆一彦。氏らしいニューエイジ的作風を期待して買ったのですが、(全曲ではないが)まさしくアタリ。特にM5のサスペンスフルな和レアリックインストが相当に素晴らしいです。逆に声優陣による歌モノは当たり障りのない出来栄え。一部歌唱の壊滅的なマズさとあいまって、聴き通すのがツライ曲も。その中では、M9はギリギリでシティ・ポップに含めることができるメロウな曲調(が、これが一番歌唱のクオリティが低い)。また、M11は何故か英語詞のAORバラードで、悪くない出来栄え。また、ドラマにも一応(?)劇伴的な音楽が付いており、時折それが絶妙にバレアリックなので油断がなりません。トラックのみのデータがほしいですね。

次回へ続く…。

CDさん太郎 VOL.16 2019/5/2、7購入盤

 こんにちは。本記事はCD特化のディグ日記シリーズ「CDさん太郎」の第16回目になります。今回は2019年5/2、東京・池袋と吉祥寺で、7日に神奈川・向ヶ丘遊園で購入したCDを計11枚紹介します。

 今回は前置きなくソリッドに行きます。
 本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。 

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

1.

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アーティスト:ナジャ
タイトル:チイホチョホイ
発売年:1989年
レーベル:ポリスター
入手場所:ディスクユニオン池袋店
購入価格:380円
寸評:88年に『Nadja First』でデビューした女性シンガー、ナジャによるセカンド・アルバムです。トータルプロデュースを牧村憲一と美濃部忠裕が担当し、「月」、「日」、「星」とコンセント分けしたそれぞれの楽曲を、清水靖晃、スライ・アンド・ロビー、井上鑑らが入り乱れてアレンジする本盤、その存在は以前から知っていたのですが、この度非常な安価で発見し、購入。本作が今再び注目を集めているのは、なんといっても清水靖晃の参加によるところが大きいでしょう。同じ頃の清水氏といえばエスノ色強いワールドミュージックに接近していた時期なので、このアルバムにおける担当曲でもそういった音楽傾向を強く反映したものになっています。このあたり、anoutaさんが提唱されている新概念「トレンディ・エスノ」にも強くリンクする(実際にブログでも取り上げれています)、当時の日本におけるワールドミュージックキッチュな受容感覚が鮮やかに表出したものと理解することが出来るでしょう(要は、中村とうようが怒り出しそうなワールドミュージックです。)。ジャケットはエキゾ・ラウンジ風ですが、実際はもっとコンテンポラリーな質感を湛えています。井上鑑のアレンジ曲も相当に素晴らしく、氏のファンク・サイドがクールに顕現。スラロビによる非レゲエ曲も謎にキャッチーで、彼らにこれをあえて割り振ったのだろうなという不思議なミス・マッチ感が素敵。後藤浩明アレンジ曲では牧村コネクションで小沢健二も作詞に参加するなど、実に味わいどころの多い名盤だと思います。ブックレットも敢えて綴じ込みにせず豪奢なビジュアルの見開きペラを曲ごとにバラで封入するなど相当に凝っており、まさにあの時代ならではの「都会の大人」の粋。これ、LP化したら相当売れると思いますね。ちなみにナジャさん、現在は「日向さやか」の名でワールドミュージック系DJとして活動されています。


2.

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アーティスト:近藤名奈
タイトル:7/360
発売年:1993年
レーベル:ファンハウス
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
購入価格:100円
寸評:一般にいうガールポップについては今のところなんとなくハマれなさを感じており、シティポップ風味が強めなものを買う程度なのでした(実際には、シティ・ポップを期待して買ったらガールポップだった…ということが多いのですが。このところあまりその轍を踏むことは少なくなりましたが)。この近藤名奈のファースト・アルバムもこれまでCDショップで度々見かけていたのですが、そのたびにスルーしておりました。が、まあ100円ならいいかということで購入。ショートカットの似合う元気いっぱいなボーイッシュガールという、ジャケット等から発散するイメージ通りの楽曲たちがたくさん詰め込まれています。演奏陣が青山純鳥山雄司土方隆行、長岡道夫など「おっ」っという感じなのですが、まあ、そつのないフツーの演奏…。シティポップに分類可能なものを探すのはかなり困難なのですが、リズムパターンに「ナイト・イン・ニューヨーク」をかすかに感じさせるM1、隙間を活かしたミニマルなアレンジが(ガールポップ系では)珍しいM2の冒頭2曲はかすかにそれっぽい雰囲気を匂わしています。まあ、そもそもそういう聴き方をする作品では無いかなとも思いますが…。


3.

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アーティスト:和田加奈子
タイトル:VOCU
発売年:1988年
レーベル:EASTWORLD(東芝EMI)
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
購入価格:580円
寸評:和田加奈子もまた一般的にはガールポップとくくられることもあるかと思いますが、上述したような、シティポップ寄りの方という認識があります。アニメ『きまぐれオレンジロード』での「夏のミラージュ」等で知られる歌い手さんですが、ライトメロウオタクのあいだでも『KANA』や『DESSERTに星くずのゼリーを』などでとみに評価が高い方でもあります。その魅力はなんといっても、少しキー低めのアダルティーな歌声にあるかと思いますが、キャリアを通して全般的に楽曲とアレンジが優れていることも大きいでしょう。この作品はその中からするとあまり言及されることの少ないかなという印象もあります。大半のアレンジを手掛けているのが白井良明氏なのですが、氏のロック志向が素直に反映されているため、ライトメロウ的感覚とは少しずれるのかな、と思います。ですが、各曲単位だとドゥービー・ブラザーズ「ホワット・ア・フール・ビリーヴス」歌謡のM2、カイリー・ミノーグ「「I SHOULD BE SO LUCKY」の日本語カバー(PWLっぽい)などは面白いですし、謎にエキゾチックなM7(そう聴くとムーンライダーズ感もあるような)も好ましいです。

 

4.

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アーティスト:Selfish
タイトル:Dig it!
発売年:1994年
レーベル:SELFISH
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
購入価格:100円
寸評:以前の「CDさん太郎」でもファーストアルバムを紹介したSELFISHによる、1994年リリースの2nd作。前作もなかなか本格的なブラックミュージックフィールを感じさせるものでしたが、US録音となったこちらでは更にパワーアップ。ソウル〜ブラックコンテンポラリーというよりは同時代的なR&Bサウンドを吸収したものといった印象です。するとやはりニュージャックスウィングっぽさが出てきたりするのですが、好き嫌いの分かれ道はそのあたりか。今なら全然ありという気がします。とあるところでハタさんが彼らのことを「黒いシング・ライク・トーキング」と呼称していましたが、実に言い得て妙ですね。演奏は自分たちに加え、ジノ・ヴァネリとの仕事で著名なカルロス・リオス、ビル・マイヤーズ(二人は編曲にも参加)といった現地ミュージシャン、鳥山雄司、百石元などを招いています。

 

5.

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アーティスト:横山輝一
タイトル:VOICE
発売年:1988年
レーベル:ファンハウス
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
購入価格:280円
寸評:前年の87年にソロデビューした横山輝一が翌88年に発表した、名盤との誉れ高いセカンドアルバム。ヒットを経ての後のポリスター時代のCDは店頭でよく見かけるのですが、あまりこの時代のものは見かけないような気がしています(LPでも同様)。久保田利伸を始めとした和製ブラコンが盛り上がりを魅せた80年代終盤の空気を反映するように、全編にわたりそういった傾向のアレンジを聴けるアルバムとなっています。やや個性に薄いボーカルスタイルもあいまって、あまり「ソウルフル」という感触は受けず、どちらかといえばライトメロウ的なスムースネスが前景化する形となっています。その意味で、同時期も角松敏生にも通じる魅力を嗅ぎ取ることも可能かなと思います。曲単位だと、もろブラコンテイストなM2、M4、M8、メロウなスウェイビート曲M6あたりが良いです。


6.

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アーティスト:SHOGUN
タイトル:探偵物語 ミュージックファイル
発売年:1992年(オリジナル録音 1979円)
レーベル:VAP
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
購入価格:380円
寸評:今現在まで含め、我が邦のTV番組サウンドトラックのリイシュー企画において、VAPが90年代初頭から送り出したシリーズ『ミュージックファイル』に匹敵する規模/質のものは未だ現れていないと断言します。リサーチャー/アーカイヴィストとして本シリーズのディレクションを行った高島幹雄氏の仕事は、日本音楽文化にとって燦然と輝くものだと言えます。さて、この『探偵物語』のサウンドトラック盤は、松田優作への継続的な人気はもちろん、あの有名なテーマ曲「バッド・シティ」の高い認知度もあり、同シリーズの中でもとくに好評だったようです。当時、ドラマの成功を受けてSHOGUNが「バッド・シティ」を再録音した名盤『ローテーション』をリリースしたこともあり、世代を超えたスタンダードとなりました。そう、実はドラマで使用されているバージョンは手に入りやすい『ローテーション収録版とは違うものなのです。ということで、まずこの盤の価値はそれが聴けるということにあります。また、これが音盤としては初出となる他スコアがまとめて聴けるというのも大きな魅力でしょう。現在の感覚からいうと、正直「バッド・シティ」よりそれらの方が面白いですね。ドラマの劇調も含めてあきらかに強く意識されていたであろうブラックスプロイテーション映画、特に探偵モノたる『シャフト』(音楽:アイザック・ヘイズ)からの影響は濃厚で、非常にカッコいいですね。まさに劇伴のスタンダード。

 

7.

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アーティスト:ピンク・クラウド
タイトル:KUTKLOUD
発売年:1988年(オリジナル:1982年)
レーベル:VAP
入手場所:BOOK OFF向ヶ丘遊園駅前店
購入価格:108円
寸評:ジョニー・ルイス&チャーからピンククラウドへ改名してからのアルバム。チャーはもちろん、ジョニー吉長のソロ作にもシティポップ的に素晴らしいものがあるのは知られていますが、じゃあ彼らバンドの作品はどうなのかなというと、セッションプロジェクトというイメージが強いこともあり、一般的には「まあロックすよね?」と見做されているかなと思います。正直これまで私もそういった認識でいたのですが、あの『Light Mellow 和モノスペシャル』に本盤が載っているではありませんか。爾来、「安く見つけたら買おってみよう」と思っていたところに、激安値で遭遇という物語。ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスやジェフ・ベック・グループを下敷きにしているだろうロック的な曲はここでは置くとして(それはそれでとても良いんですが)、シティポップ的に「アリ」な曲を拾うとしましょう。まず、M5。ファルセット使いの極上のミニマルメロウソウル。素晴らしい…。シュギー・オーティス味のあるチルアウトメロウM6、素晴らしい…。まさかのダバダバ系ブラジリアングルーヴM7、ほぼ完璧と言っていいシャキシャキ感満天のミニマルシティポップ小品M8。素晴らしい…。生音志向&小編成な分、メロウな曲を演奏するとソロ独立後の坂本慎太郎氏にも近いミニマリズムが偶然生まれてしまっているというか…。聴かず嫌いは損ですね。

 

8.

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アーティスト:風コーラス団
タイトル:愛色の季節
発売年:2003年(オリジナル:1975年)
レーベル:キング
入手場所:BOOKOFF向ヶ丘遊園駅前店
購入価格:500円
寸評:ティン・パン・アレイ関連の中でもあまり知られていないと思われる、風コーラス団による1975年作。以前からLPで欲しかった盤なのですが、結構な金額を出さないとゲットできないなということもあり、躊躇し続け…そんな中、めちゃくちゃお買い得な価格でCDを発見。後の2013年にライブ録音をもう一曲加えた体裁で再々発盤が出ているのですが、この値段ならこれで十分満足ですね…。風コーラス団はヤマハポプコン関係のボーカル&インストゥルメンタルグループで、その名の通り美しいコーラスワークを聴かせてくれる方々です。そもそもはポプコンへの応募楽曲を演奏するハウスグループだったようです。それがどういった経緯でティン・パン・アレイとともにアルバムを作ることになったのかは謎めいております…。もちろんティン・パンは演奏だけでなく(細野晴臣が)全編に渡りプロデュースとアレンジを務めています。ソフトロックやソウル、各種米ロックを完全消化したアレンジは、本当に流石の一言。同時代の世界的基準でいっても抜群のクオリティかと思います。(おそらくですが)ゾッピーズ・キャメルのマニアックbut鬼名曲「ファゾン」を下敷きにしたのでは無いかと思われる(細野さんに会ったら問うてみたい、忘れていそうだけど…)M1、ショキショキしたギターカッティングが最高に気持ちいいいM5(フリーソウルクラシック感あり)、思い切りリトル・フィートなM7…全編まったくもって素晴らしいです。作曲は細野氏に加え、萩田光雄、吉野金次(作曲!)等。作詞では松本隆も一部参加しています。


9.

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アーティスト:YAS-KAZ
タイトル:SIYABONGA
発売年:1991年
レーベル:PONY CANYON
入手場所:BOOKOFF向ヶ丘遊園駅前店
購入価格:500円
寸評:横倉裕に次いでこの『CDさん太郎』での登場頻度が高いかもしれない、ニューエイジ系打楽器奏者のYAS-KAZポニーキャニオン時代の作品はどれを買ってもハズレというものがなく、見かけるたびに買ってしまうのでした。が、これ、買ってから気づいたのですが、当時TBSで放映された『ワトソン博士のアフリカ大博物館』というテレビ番組にテーマ曲として提供したタイトル曲を冒頭に据えたベスト盤でした(帯も付いていたのですが、そんなこと一言も書いてない…おい!)。海外編集の別のベストも持っているし、これまで所持している他のオリジナルアルバムでも聞ける曲が多く…なんだか損した気分…が、一応このベスト盤は上述のテーマ曲に合わせて「アフリカ」というテーマで選曲されており、そのあたりの一貫性は面白いと言えます。全編素晴らしいトライバルニューエイジの応酬なのですが、なんとも釈然としないのでした。

 

10.

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アーティスト:高垣直美
タイトル:ザ・ドラッグ 〜マインド・コントロールサウンド
発売年:1996年
レーベル:Della
入手場所:BOOKOFF向ヶ丘遊園駅前店
購入価格:500円
寸評:「俗流アンビエントブルーノート」ことDellaによる、ミュージックドラッグシリーズの一作です。他に「アシッド」「マリファナ」というタイトルがありますが、これはそのものズバリ「ザ・ドラッグ」。潔いですね。他二作は正直あまり音楽的ではないと言うか、インダストリアル感強めの音色がウニョウニョと鳴っているなかでコラージュ的具体音が闖入するという珍品だったのですが、これは最も通常の鑑賞に耐えうる作品かと思います。というか、アンビエントテクノとしてかなり良いと言えます。パッケージ周りにまったくアーティスト情報が(例によって)ないのですが、アマゾンに残る商品ページの痕跡などをたどると、どうやら高垣直美さんというアンビエント作家の方が制作されたもののようです。この高垣さん、今世界的に再評価が巻きおこり中の小久保隆氏の弟子筋に当たる方らしく、この高クオリティにも納得という感じです。全3トラックが収録されているのですが、M1はバックグラウンドにたゆたうシンセに水泡音のような音が回転的にパンニングしながらウニョウニョと乗るという世界。M2は更にアンビエント色強めですが、途中から闖入する揺らぐ低音フレーズにどこかしらシリアスさが漂い、こうしたミュージックドラッグ系がよく参照するタンジェリン・ドリームルビコン』的な世界に近いものを感じさせます。そして、白眉はM3。これはもっとも1996年的同時代性を感じさせます。わかりやすくいえばThe Orb的なアンビエントテクノなのですが、SUN ELECTRIC的な天上感も随所に漂い、相当に面白いです。あえてビートの持続をスネアとクラッシュを混ぜたようなサンプリング音に任せていたり、音色の選択にも非常なセンスを感じます。名盤と言っていいかと思います。


11.

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アーティスト:MICKEY HART, HENRY WOLFF & NANCY HENNINGS
タイトル:YAMANTAKA
発売年:1991年(オリジナル 1983年)
レーベル:Celestial Harmonies
入手場所:BOOKOFF向ヶ丘遊園駅前店
購入価格:500円
寸評:1972年にリリースした『Tibetan Bells』がルーツ・オブ・ニューエイジの名盤として高く評価されているヘンリー・ウルフ&ナンシー・ヘニングス。そのタイトル通り、チベタンベルやシンギングボールなどチベット仏教音楽を演奏するエクスペリメンタルデュオたる彼らに、グレイトフル・デッドのドラマーでこの時期ニューエイジ民族音楽に接近していたミッキー・ハートが加わった作品です。M1はひたすらに深ーい倍音と長ーい残響音が鳴り響く誠にドープな作品で、そんじょそこらのアンビエントを蹴散らす圧倒的瞑想効果があります(最初は不安を掻き立てられるのですが、聴いていると次第に時間の感覚が変質していくような…)。カラカラとしたベルの音が崇高と清涼を同時に運び込むM2も素晴らしいです。オリジナルのLPは各面1曲づつで、M3以降はCDリイシューに際してのボーナストラックとなっています。これもまた本編と同傾向のものが収録されていますが、(おそらくデジタル卓での録音となったためか)異様なハイファイさがあり、またそれにハッとさせられるのでした。「ちょっとリラックスしたいなあ」というノリで聴くとかえってヤバそう…彼岸に持っていかれそうになるというか…。実に素晴らしいです。

 

次回へ続く…。

CDさん太郎 VOL.15 2019/4/24、29購入盤

 こんにちは。本記事はCD特化のディグ日記シリーズ「CDさん太郎」の第15回目になります。今回は2019年4月24日に東京・吉祥寺で、28日に池袋で購入したCDを計11枚紹介します。

 

 ひたすら目の前のタスクをこなす日々にあって、「CDさん太郎」の更新がどうしても後手後手になってしまっており、この辺で自らに喝を入れなければと考えています。たとえば、目下の「CDさん太郎」を更新するまでその先へ更に積んであるCDを聴いてはいけない、あるいは購入してはいけない…など。いや、それをすると単にCDを買わなくなってしまいそうなので本末転倒か。一番良い方法は、買って聴いたら一枚一枚その場ですぐ書いて溜めておく、ということでしょうか。今回の更新の先にも、現在30数枚のCDが積まれている状況です。すみません、誰も気にないだろうことをダラダラと書いてしまいました。

 

 唐突に告知です。

 来週末6/9(日)、なんと本「CDさん太郎」の出張イベントがディスクユニオンのキャンペーン「DIVE INTO MUSIC」の一環として開催されることになりました。大丈夫なのでしょうか。場所はディスクユニオン新宿本館の1F、「du cafe新宿」にて、時間は16:00〜17;30を予定しております。本「CDさん太郎」にこれまで登場した盤を中心に持参しプレイするとともに、DU池部さんをお相手にあれこれトークする予定です。入場無料(要1ドリンクオーダー)です。是非お越しください。

 詳細はこちら:http://blog-shinjuku-rockcd.diskunion.net/Entry/375/

 

 本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。 

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

1.

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アーティスト:STEVE ROACH, KEVIN BRAHENY, MICHAEL STEARNS

タイトル:DESERT SOLITAIRE

発売年:1989年

レーベル:FORTUNA RAECORDS

入手場所:BOOKOFF吉祥寺店

購入価格:224円

寸評:米国南西部アリゾナ州ツーソンに本拠地を置いていたニュー・エイジ系レーベルFortuna Recordsからリリースされた米アンビエント系作家3名のコラボレーション盤です。中心となっているのはFortuna Recordsの筆頭アクトでもあるスティーブ・ローチ。各種民族打楽器なども取り入れたストイックな作風は、大味な感傷に流されがちな作風の人の多い米ニュー・エイジ界でも異端で、相当に良質な音楽センスの持ち主であると思います(2019年基準)。他の二人の作品も非常に奥ゆかしい静謐を携えたもので、ありがちな自己陶酔系ニュー・エイジになることを避けています。アルバム全体、シリアスな(従来の価値観における非ニュー・エイジ系の)アンビエント・ファンにもぜひ聴いてもらいたい充実の内容なのですが、特にM1は素晴らしい。米南西部の砂漠風景を実際に目にしたことがないので想像する他ありませんが、荒涼とした音像とアレンジが実にそれっぽく、カッコいい。要はエッジーで自覚的なムード・ミュージック。米本国ではかなりの名盤/定番とされているようで、アマゾンなどでも称賛する英文レビューが目立ちます。

 

2.

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アーティスト:MARK GOLDENBERG

タイトル:ある旅行者の手記

発売年:1987年

レーベル:KITTY

入手場所:BOOKOFF吉祥寺店

購入価格:224円

寸評:元々1980年デビューのクレトーンズという米西海岸のパワー・ポップ・バンド(いいバンドです。2枚のLPは激安で叩き売られているのをよく見る)でギタリストとして活動していたマーク・ゴールドバーグは、傍らでリンダ・ロンシュタットジャクソン・ブラウンといったビッグネームのサイドマンを務めるようになり、いつしか当初のパワーポップ魂はどこへやら、ソロ作品では完全にイージー・リスニング的な作品をリリースするようになるのでした。世界広しと言えども、パワー・ポップからニュー・エイジに転向した例は彼の他に無いような気がしますね…。この人はかつて日本で非常な人気があり、代表作『鞄を持った男』のジャケを見れば、安レコ/CDディガーなら「ああ、あの人ね〜」となるんじゃないでしょうか。当時爆発的に売れたからこそ今でもそれくらい目撃頻度が高いわけですが、なぜかといえば、一時期サントリーのTV-CMのサウンド・プロデューサーを努めていたゆえであり、『鞄を持った男』もそのタイアップに絡んで日本国内制作されたものなのでした。続く今作も日本制作で、基本的に前作を踏襲するような軟弱なニュー・エイジ〜イージー・リスニングなのですが、この人の持ち味であるヨーロッパ趣味(あくまで「それ風」というだけなのがミソ)が開陳されます。この80年代感バリバリのエセ観光音楽風味、実に寒々しく(良い意味で言ってます)、ほとんどそのまま初期Vaporwaveに通じる味わいが…あるような…ないような…。中村とうようがマイナス100点を付けそうな音楽です。寒々とした雨の日、今にも潰れそうなレジャー施設(そういうのも今や本当に片っ端から潰れて無くなってしまいましたが…)の誰もいないエントランス・ホールでかかっている音楽、というか。全体的に、鬱を誘発しかねない音楽が満載です。

 

3.

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アーティスト:村田和人

タイトル:GO POP

発売年:1988年

レーベル:EASTWORLD(東芝EMI)

入手場所:BOOKOFF吉祥寺店

購入価格:400円

寸評:「シティ・ポップの良心」(と私が呼んでいるだけですが。シティ・ポッピストの方にはこの感覚は伝わると思います)こと村田和人がMOONから東芝EMIへ移籍後リリースしたアルバムで、アニメ音楽などで突然変異的なメロウ仕事をしてきた名匠・幾見雅博氏がプロデュースした作品です。この作品の特長といえばその幾見氏の編曲と、大胆なエレクトロニクス・サウンドの導入でしょう。特にリズム・トラックはほとんどがドラムマシン(AKAI MPC-60)で制作されています。そこのところが旧来のシティ・ポップ・ファンからはあまりウケが良くないようですが、今となっては完全に気分なのでした。オーセンティックかつべらぼうにうまい村田氏のボーカルとエレクトロニクス・サウンドは確かにある意味でのミス・マッチ感もあるのですが、それこそあの時代のなせる業、旨味として味わいたいところです。アップだとエレクトロ・ファンク調、スロー〜ミディアムだとマーヴィン・ゲイ「セクシャル・ヒーリング」やアイズレー・ブラザーズ「ビトウィーン・ザ・シーツ」のような有機的エロさも漂い、実に良い。今クレジットを眺めていたら数曲でカーネーションの直枝政太郎(現:直枝政広氏)が作詞を手掛けており、そこ繋がりあったんですね…!とびっくり。

 

4.

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アーティスト:東正任

タイトル:E LA NAVE VA そして船はゆく

発売年:1987年

レーベル:クラウン

入手場所:BOOKOFF池袋サンシャイン60通り

購入価格:280円

寸評:現在はイベント企画や広告を手がける会社の代表を務め、実業界では大変に有名らしい(実業界にまったく興味がないので知らなかったのですが)東正任氏による歌手時代唯一のアルバムです。ジャケットや発売年からしてJ-AOR的雰囲気満点ですが、その実、まさしくそんな作品といえます。が、どこか芯を食ってない感じ≒空虚感が漂っており…。フェビアン・レザ・パネ勝又隆一といった編曲陣が参加していますが、なんというか、非常にそつなくて、だからこそあまり印象に残らないなあ…というのが正直なところ。ボーカルもどちらからといえば「ソングライター・ボイス」という感じで、レンジも狭め。それを逆手に取ってアレンジの妙で聴かせるわけでもないので、楽曲自体と東氏の歌唱法に巣食っているなんとも凡々とした歌謡感が目立つ結果に。スロウ〜ミディアムばかりなのも、「大人の色香」というより、ただ躍動感が無いだけに聞こえてしまうという不幸。ジャズ的解釈の曲も、お仕着せな「ジャジー」が支配し、ややキツイ。このあたりのイキリがのちにビジネスマンとして成功される片鱗なような気もします。

 

5.

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アーティスト:DARLIN'

タイトル:LOVE EDUCATION

発売年:1991年

レーベル:東芝EMI

入手場所:BOOKOFF池袋サンシャイン60通り

購入価格:280円

寸評:石田正人(ボーカル)と高田次郎(ギター)によるデュオ「ダーリン」のセカンド・アルバムです。まったく何の予備知識もなくほとんど賭けで買ってみたのですが、これは相当シンドいものがありますね…。オケだけ切り出してみると、「オッ」と感じる部分も稀にあるのですが、中途半端にロックに寄せたアレンジ(多分エアプレイ期前後のデヴィッド・フォスターを参考にしているような気がするのですが)が実にクサイのと、泣きのギター、そしてボーカルの過剰さがいかにもキツく…。CDジャーナルで「矢沢永吉がB'zに強制加入したような世界。あるいはクサくカッコつけまくったNOBODY!?」とイジられているんですが、まさにそうですねという感じ。名レビューじゃないでしょうか。メジャー発のポップスとしてもターゲッティングが謎すぎるし、結果、ポップスとしても何がしたいのかよくわからないものになってしまっている気がします(これで解散したようです)。スミマセンが、最後まで聴き通せませんでした…。

 

6.

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アーティスト:野村宏伸

タイトル:GUILTY

発売年:1990年

レーベル:ビクター

入手場所:BOOKOFF池袋サンシャイン60通り

購入価格:280円

寸評:「びんびんシリーズ」で御馴染みの俳優・野村宏伸によるアダルト路線のアルバム。lightmellowbuブログでタイさんが紹介しているのを読んで以来、是非手に入れたいと思っていたのをこの度入手。かなり詳細に渡ってタイさんが書いているので、私がここで繰り返すべきこともほとんどないですが、なんと言っても素晴らしいのは鷺巣詩郎・奥慶一の両氏によるアレンジですね。ふんにゃりした歌唱にリズミックな表情と色彩を加えることで、「俳優のアルバム」としての格をそれまでの作品から一つ上げている印象があります。個人的出色曲はやっぱりタイトル・ソングの「GUILTY」。素晴らしい。

 

7.

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アーティスト:柿原明美

タイトル:Refile

発売年:1993年

レーベル:ポリスター

入手場所:BOOKOFF池袋サンシャイン60通り

購入価格:280円

寸評:AKこと柿原明美による初期楽曲コンピレーション盤。今井美樹への曲提供でも名を上げた彼女ですが、現在のような体育会系になる前の作品を聴いてみると、改めてソングライターとしての才能にハッとさせられます…。これはおそらくシティ・ポップというより、オーセンティックなシンガー・ソングライター音楽の系譜として味わうのが正しいように思われます。演奏陣は青山純鳥山雄司松下誠美久月千晴など手練多数なのですが、遠山淳のアレンジの元、あえて滋味深い(はっきりいうなら地味な)演奏をすることにより、70年代シンガー・ソングライター的な品格が漂っています。この感じ、同時期の渋谷系の味わいとも遠からからずという感じで、ポリスター発とうのも影響しているのでしょうか。全体の印象としては、2000年代以降のアコースティック系女性シンガーソングライターの音楽を先取りしている感もあります。それにしても全曲素晴らしい…。今井美樹への提供曲もこちらの本人版のほうが大分良いなあと思ってしまします(元来ジャニス・イアンリッキー・リー・ジョーンズ、ジェニファー・ウォーンズなどが大好きなSSWおじさんなので)。

 

8.

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アーティスト:GWINKO

タイトル:EVERY GIRL

発売年:1989年

レーベル:CBSソニー

入手場所:BOOKOFF池袋サンシャイン60通り

購入価格:280円

寸評:沖縄アクターズ・スクール第一期生として若年でデビュー、シティ・ポップとは違った系譜でのダンス・ポップを推し進めた存在として今こそ再評価すべき(だと思う)GWINKOによる、脂が乗ってきた3rdアルバム。今になって聴くと、音楽的にも後の安室奈美恵らの素形になっている感じがしますね。もちろんTKサウンドほどにはバキバキのダンス・オリエンテッド路線ではないのですが、そのあたりの新世代への架け橋とでもいうべき折衷的な魅力があります。今作は全て海外ミュージシャンがプロダクションに関わったことで、より気ィの入った仕上がりに。竹を割ったようなエレクトロ・ビートに、抜群のリズム感とピッチ感で溌剌とした歌唱を載せてくる様に、快楽指数急上昇。作曲陣も、楠瀬誠志郎大沢誉志幸、羽田一郎など、一流ミュージシャンが大挙参加。めちゃくちゃ今DJユースだと思うし、リミックスなどを施される以前にこのままで既にフューチャーファンクっぽくないですか??という。付属のポスターに写るスタイリッシュな様も最高です。

 

9.

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アーティスト:梅林茂

タイトル:教師夏休み物語 オリジナル・サウンドトラック

発売年:1992年

レーベル:ファンハウス

入手場所:BOOKOFF池袋サンシャイン60通り

購入価格:280円

寸評:石橋凌主演、古尾谷雅人鷲尾いさ子近藤敦(バービーボーイズ)、萬田久子津川雅彦、川谷拓三(!)出演の日本テレビ系ドラマ『教師夏休み物語』のサントラ盤です。残念ながら私はドラマをリアルタイムで観た記憶が無いのですが、22:00から放送だったらしく、92年当時その時間にはもうネンネしてましたので見てないのも当然なのでした。ということでドラマ自体には触れることができないのですが、純粋にサントラだけを聴くとわりに面白い。音楽担当の梅林茂氏は、1981年に加藤和彦プロデュースの「EX」でバンドデビュー、その後映画音楽畑で活躍をした音楽家。角川〜東映と映画会社を股にかけながらも、かなり硬質の、というかアウトローチックな作品をよく手掛けている印象です。特に崔洋一監督の『友よ静かに眠れ』(85年)のスコアは素晴らしいです!ここでも梅林氏はその才能を発揮、なかなかに折衷的かつバラエティに富んだスコアを提供しています。主軸としてワールド・ミュージック感を据え、トロピカル感、ロック感、ニュー・エイジを混ぜ合わせていくような感覚といいますか。タイアップ・ソングだった陣内大蔵によるテーマ曲も冒頭に収録されていますが、これは蛇足。

 

10.

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アーティスト:佐藤準

タイトル:ポール・ポジション! 愛しき人へ…

発売年:1992年

レーベル:PONY CANYON

入手場所:BOOKOFF池袋サンシャイン60通り

購入価格:280円

寸評:『ポールポジション!愛しき人へ…』は1992年から1クールだけ放映されていた日本テレビ系の連続ドラマ。こちらも放送枠が22:00からだったということもあり(?)、私の記憶には全く残っていません…。F3レーサーを主人公とした作品だったようですが、第一話目のラストでいきなり加勢大周演じる主演が事故死し、二話目以降は同じく加勢大周演じるその弟が主役となるという、あだち充『タッチ』を圧縮したようなトリッキーな脚本だったようです。その加勢大周がジャケットにドーンと登場するこちらのサントラですが、音楽を手掛けたのは名匠・佐藤準今井美樹のアレンジ・ワークやソロ作のリリースなどを経て充実した活動を行っていた時期でもあり、実に手堅いライト・フュージョン風劇伴を寄せています。これに先行するソロ作『彩』(88年)、『Chaos』(90年)の斬新なアレンジ・アイデア溢れるニュー・エイジ風ライト・メロウぶりからすると物足りない感じがありますが、それでもさすがのクオリティと言えるでしょう。ピアノ独奏バラードの類は無視するとして、F3の疾走音をSEとして織り交ぜたスポーツ・フュージョンM2、気の抜けたヴァン・ヘイレンみたいなインストM7、アブストラクトさと繊細さのバランスが好ましいアンビエントM11あたりが聴きものです。

 

 

11.

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アーティスト:SKY LOVE

タイトル:超便利 効果音楽集 〜イメージ・アップ演出の決め手〜

発売年:1997年

レーベル:キング

入手場所:BOOKOFF池袋サンシャイン60通り

購入価格:280円

寸評:今回の目玉盤です。「効果音楽集」というのは、いわゆるよく見かける「効果音」CDとは違い、「あなたがオリジナルの映像作品を作ろうとするとき、適宜この音楽を貼り付けると巧い演出効果が期待できますよ」というもので、ホームビデオ文化浸透期に多く見られた商品ジャンルです。わけてもキングレコードはこの分野のトップ・ランナーで、様々なシチュエーションに応じた効果音楽集をリリースしています。これまで購入し所持しているだけでも、季節やムードごとにテーマ分けしたものなど色々とありますが、今回購入したのはおそらくそれらの決定版的な位置づけでリリースされたであろう2枚組CD。「オープニング」「アーバン」「パストラル」「アクティブ」「イメージ」「エンディング」というテーマ分けがなされ、さらにその中で「〜〜風の力強い曲」だったり、「朝もや、日の出をイメージして」など、具体的な曲説明が付属しており、確かに当時のホームビデオ作家のみなさんに易しいものとなっています。放送業界向けにプロ・ユースとして供給されるいわゆる「ライブラリー」音楽というのがありますが、本商品はその一般家庭向けのものと言えるでしょう。肝心の内容ですが、良い意味でありがちなハード/ライト・フュージョンのラッシュで、その全てがシンセサイザー/打ち込みで作成されています。演奏者のSKY LOVEというグループ名はおそらく実態の無いもので、実際のところはキングレコード学芸部門が懇意にする職業作家が委嘱を受け制作したものだと考えるのが妥当でしょう。2019年基準に照らしわせるならやはりロッキッシュなものよりライト・メロウかつニュー・エイジ風味のものが好ましく、「アーバン・タイプ」「アクティブ・タイプ」「イメージ・タイプ」に良い曲が多いように思います。特に、ビルの谷間の朝焼けのシーンに使用することをレコメンドされている「HORIZON DREAM」、ゆったり流れる大河をイメージさせる効果があるという「黄河の流れ」あたりは秀逸です。後者については私自身も最近のDjでよくプレイしています。

 

次回へ続く…。

CDさん太郎 VOL.14 2019/4/20 購入盤

こんにちは。本記事はCD特化のディグ日記シリーズ「CDさん太郎」の第14回目になります。今回は2019年4月20日東京・八王子周辺で購入したCDを計12枚紹介します。

スパイク・リーの『ブラック・クランズマン』を観に行くべく各映画館の上映時間を調べていたところ、近場ではうまい時間にやっていないことがわかり、それならとブックオフ巡りとくっつけていっそ遠方の劇場に行ってやろうとたどり着いたのたのが、TOHOシネマズ南大沢。35年地面に這いつくばってきましたが、この日初めて行きました。郊外シネコン特有のファジーなムードが漂っており、好ましかったです。

八王子周辺のブックオフについては、なかなか堅調だったといっていいかなと思います。かなりのペースで各店回ったので、まだまだ見落としが多々ある気がします。例によって電車でのアクセスが困難で行けなかった店舗もあり、近くレンタカーdigを開催したく思います。

 

唐突に告知です。

6/1、愛知県・蒲郡で毎年開催されている音楽フェスタ『森、道、市場』で、Dj係をさせていただくことになりました。大丈夫なのでしょうか。まだお客さんが寝ていたり会場に向かっている途中だろう時間帯なので、遠慮なく選曲させていただこうと思っております。

詳細はこちら  http://mori-michi-ichiba.info/

 

本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。 

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

1.

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アーティスト:松崎裕子

タイトル:Paradise

発売年:1996年

レーベル:ワールド・エンタテインメント

入手場所:BOOKOFF SUPER BAZAAR 八王子みなみ野

購入価格:500円

寸評:90年代に頻出した環境系写真家と音楽家のコラボレーションCDですが、これはその中でも相当な秀作と思われます。大体においてこうしたCDは、写真家の名前におんぶして音楽内容が陳腐、あるいは音楽が収録されているように見せかけてそもそもただの環境音(森とか海とかの)が収録されているだけというのが多く、俗流アンビエントDIGの鬼門なのですが、どうしてどうして良い作品に出会うこともあるのだなあ、という感じ。写真を担当している水口博也氏、その界隈では有名な方のようで、クジラやイルカなどの動物写真を得意にしているとの由。が、そういう情報はどうでもよくて、肝心の音楽内容、これがとっても良く。松崎裕子氏という方は、ネットで調べる限りほとんど情報がなく、この他に世界遺産をテーマにしたニューエイジ作があるだけのようです(プロスイマーの方で同姓同名の方がいらっしゃるようですが、海を扱った本CDのテーマ的にも遠からず…もしかして同一人物でしょうか?)。基本、ノンビートのアンビエントというよりはガムランなどを取り入れたミニマルミュージック調です(おそらくすべて打ち込み&シンセサイザー)。明らかに西アフリカ民族音楽に影響を受けた曲などもあり面白い。ムクワジュ・アンサンブルを俗的にした感じとでもいいますか、各楽器の旋律や音色から若干の歌謡臭が発散されていますが、それがまた珍妙なスパイスになっています。かなり目撃頻度の低いCDだと思いますので、見つけたら是非ゲットすることをオススメします。

 

2.

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アーティスト:鷲尾いさ子

タイトル:彼女の風

発売年:1987年

レーベル:ビクター

入手場所:BOOKOFF SUPER BAZAAR 八王子みなみ野

購入価格:280円

寸評:女優/モデルの鷲尾いさ子が87年にリリースしたミニ・アルバム。わたしの世代では、鷲尾さんといえば何をおいても「鉄骨飲料」ですね。そのお姿をテレビで拝見するたび「キレイな人だけどなんか他と違う感じ」を感得していたような気がします。このEPは全編フレンチテイストで彩られており、鷲尾さんのアンニュイなキャラクターに寄せてのディレクションだったのかなと想像する次第。自身もシャンソンシンガーや映画評論家として活動する遠藤突無也氏がプロデュースを務め、同時期の高岡早紀作品なども思わせる作風に。実際、ゲンズブール曲なども日本語カバーで取り上げ、その気の入れようは相当です。少しプレ渋谷系的な雰囲気も漂わせており、当時の日本人の「オシャレ」が具体的にどのようなものだったのかという民俗学的資料にもなっているかと思います。鷲尾さんのヘタウマな歌謡も実にフレンチポップ的で好ましいのですが、なんといってもオケの完成度の高さ。出色は2曲の山口美央子提供曲「下級生」と「風の絵葉書」ですね。ちなみにこの作品、3年後の90年、「鉄骨飲料」CMでのブレイクを受けて未発表曲を大量に加えたデラックス版(?)として再リリースされています。

 

3.

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アーティスト:井上美樹

タイトル:DOOR

発売年:1991年

レーベル:アポロン

入手場所:BOOKOFF SUPER BAZAAR 八王子みなみ野

購入価格:280円

寸評:医療器メーカー「ニプロ」のCMソング「君の元気は 僕の元気さ ファイト!」で有名(?実際にはこの曲は何バージョンか存在しており、世代によって刷り込まれている歌声が違うという現象があるようです)な、ガールポップシンガー井上美樹による3作目。元気一杯系のガールポップシンガーとは一線を画し、どちらかといえばアダルティーでアンニュイな歌唱を聴かせてくれます。そういうことであれば普通シティ・ポップ路線になりそうなものなのですが、井上さんの場合はフォークロック路線を選択しているのが実に面白い(が、その分2019年的評価軸からは完全にこぼれ落ちるでしょう…)。作曲も基本全て本人が手がけてらっしゃいます。なんというか、この中庸さがクセになる…といえないこともない。

 

4.

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アーティスト:B.J. Cole

タイトル:Transparent Music

発売年:1990年

レーベル:MIDI(オリジナル:HANNIBAL)

入手場所:BOOKOFF橋本津久井街道店

購入価格:500円

寸評:英ロックシーンを代表するペダルスチールギター奏者、B.J.コールによるインスト作品です。クーチーズ在籍時から英ロックにおけるペダルスチール需要を一身にこなしているのでは?と思わせるハードワークぶりで、その名をロック名盤のクレジットに見つけること度々です。もちろん元々はカントリー系のプレイを得意とする人だったわけですが、英ロックの名プロデューサー、ジョー・ボイドが興したHANNIBALレコードからリリースされたこのソロ作では、完全にアンビエントニューエイジ的音楽世界となっています。その内容の至福ぶりを以前から噂にきいていたのですが、そこまでレアでないはずなのに店頭で何故か遭遇することなくこれまできていたのでした。それをこの度ようやくゲットという物語。内容はといえば、噂に違わぬ幽玄ぶりで、この楽器の霊妙な響きを十二分に活かした作品となっています。まさに隠れ名盤といっていいでしょう。印象としては、日本を代表するペダルスチール奏者駒沢裕城氏の名作『Feliz』とかなり近いものを感じますね。しかし、このCDに入っている日本盤ライナーを担当しているミュージックコラムニスト(って何?)の伊藤史朗という方、B.J.コールがだれなのかか知らない、と普通に書いていて職業倫理を疑います。こういうのが普通にまかりとおったというところに、かえって当時の音楽業界の好景気ぶりを思います。

 

5.

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アーティスト:鈴木結女

タイトル:自分の色

発売年:1992年

レーベル:メディア レモラス

入手場所:BOOKOFF橋本津久井街道店

購入価格:280円

寸評:実はこのCD、以前リサイクル店において結構な値段で売られているのをみかけて(結果ただの法外値付けだったようですが…)、その後気になってネットで検索していたところ現在サブスク配信でもリリースされていることを知り、密かに愛聴していたものです。この度晴れて280円で発見という物語。鈴木結女さんは、一般的知名度はそこまで高くないかもしれないのですが、アニメ『NINKU -忍空-』のテーマソングを歌ってらっしゃった方なので、わたしの世代ですと、そちらの方で覚えている方もいるかもしれません(私は覚えていませんでしたが)。これは1stアルバムにあたる作品ですが、全編これ最高のエレクトロ・ファンク〜ブラコン路線の隠れ名盤です。ほぼ全て打ち込みによって作られており、大竹徹夫氏、杉山卓夫らによるバキバキ&ハードメロウなプログラミングが最高ですね。注目すべきは、あのハウスレジェンド寺田創一氏が数曲でプログラミング参加しているということでしょうか。明らかに他曲にくらべ現場感のある音を作っていて流石です。コーラスではアマゾンズや楠瀬誠志郎も参加し、鉄壁。鈴木結女さんの歌唱も、実にみずみずしくそして上手い(英語もラップもめちゃくちゃ上手!)。ちなみに、CDジャーナルでは「紀宮の御学友ってのがスゲェ~」とまったく音楽内容と関係ない部分を一文目からイジられています。

 

6.

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アーティスト:SMAP

タイトル:007〜Gold Singer〜

発売年:1995年

レーベル:ビクター

入手場所:BOOKOFF橋本津久井街道店

購入価格:280円

寸評:「それ持ってなかったの?」案件ですね。Smappiesがバックを務めていたレア・グルーヴ〜アシッド・ジャズ路線期のSMAPについては、これまでも沢山の人が言及しまくっているので、あまり僕がここで付け足すこともありません。これまでもことあるごとに聴かされてきた作品ですが(大学時代などイキった友人から「逆にSMAPやべえよ?」などとよくきかされた)、改めて購入してじっくり聴いてみると、素晴らしいですね。「やっぱり名盤ですね」ということでよいかと思います。

 

7.

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アーティスト:YUTAKA

タイトル:ANOTHER SUN

発売年:1993年

レーベル:MCAビクター (オリジナル:GRP Records)

入手場所:BOOKOFF橋本南口店

購入価格:500円

寸評:またしても横倉裕の登場です。プロデュースやアレンジなどで言及したものも含めると、本「CDさん太郎」における現時点での最多登場者ではないかと思われます。これは以前取り上げた『Brazilasia』(第二回目を参照)から約3年、セルジオ・メンデスのグループで活動するシンガー、ケヴィン・レトーとの仕事やポーリン・ウィルソンのプロデュースなどを経てリリースした通算4作目のアルバム。ファンの間では、これぞYUTAKAの真髄と言われる名作にして、残念ながらソロ名義では今のところ最後の作品となっています(現在では、ボス:セルジオ・メンデスと行動をともにしたり、かつて日本で組んでいたバンドNOVOの再発足プロジェクトなどで活動)。特筆すべきが、セルジオ・メンデスと3曲で共同プロデュースを行っていることでしょう。果たしてこれらの楽曲が本当に至福で…特にM4「スマイル・フォー・ミー」はあのイヴァン・リンスがボーカルで参加するなど、実に豪華…。他曲でもいつもどおり極上のブラジリアン・メロウネスを聴かせてくれますし、琴の闊達なプレイも本当に「マスター」と呼ぶに相応しいオーラを発散しています。最高です。

 

8.

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アーティスト:セルフィッシュ

タイトル:Colors of Love

発売年:1993年

レーベル:PONY CANYON

入手場所:ハードオフ 八王子堀之内店

購入価格:108円

寸評:金澤寿和氏の『Light Mellow和モノSpecial』にも数少ない90年代産アイテムとして登場、更にはハタさんの「シティ・ポップ記録簿」にも登場するなど、ここ数年で急に注目を集めつつある(のか?)男性三人組グループ、セルフィッシュによる第一作。ふにゃふにゃした見た目からはあまり想像できないような、ソリッドなブラコン感を武器とする人達です。楽曲的完成度に照らして一般的評価はセカンドの『ディグ・イット』の方が高いようですが、こちらもなかなかの佳作じゃないでしょうか。一応「バンド」という体を意識しているのか、一般的なJ-AOR諸作よりビートが強力な気がします。特にドラムはメンバーの松本幸弘が担当していることもあり、そのあたりの挟持があるのかもしれません。他演奏陣も、羽田一郎、増崎孝司美久月千晴渡辺直樹、山田秀俊、富樫春生、柿崎陽一郎という手練多数。

 

9.

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アーティスト:刀根麻理子

タイトル:Vois de L'ame

発売年:1990年

レーベル:ワーナー・パイオニア

入手場所:BOOKOFF 八王子堀之内店

購入価格:280円

寸評:この日の一連のディグの翌日、京都メトロで開催された「Yu-Koh α版」へ伺ったのですが(めちゃくちゃ楽しかった…)、lighmellowbuの一員としてDJしていたバルベースさんが本作M1「ソワレの夜 突然に」をかけていて、ブチ上がりました。そんなシンクロニシティ、なかなか無い。本盤は、その山口美央子ペンになる名曲を筆頭に、全編これ高クオリティ。上田知華作のM2における「SPARKLAE」風ラテンフレイバー、山口美央子作のマイナーミディアムM5、テクノポップ感湛えたレイトサマーミディアムM8などが好ましい。その他のマイナーバラードも、そんじょそこらのシンガーのものだと聞くのがツライな―となるところなのですが、なによりこの人は歌がべらぼうに上手いので、飽きずに聴けてしまうというのがありますね。かなり多作な方で、他作品もブックオフに大量の在庫があるはずなので、コツコツ集めていこうと思っています。90年代シティ・ポップにおけるいい意味での中庸を代表するような方かなと…。

 

10.

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アーティスト:長谷川武 & ALBATROSS

タイトル:α波 1/fゆらぎ 四季・夏<Vigor>

発売年:1992年

レーベル:アポロン

入手場所:BOOKOFF 八王子堀之内店

購入価格:280円

寸評:アポロン謹製のα波 1/fゆらぎシリーズ、様々なシュチュエーションごとに沢山の作品がリリースされているのですが、その制作総てをほぼ一手に担っているのが長谷川武氏。北海道出身の氏は、はじめ脚本家をめざし日大芸術学部に入学するものの、かたわらでマンドリンをよくするなど、音楽の道へ徐々に惹かれていき、後にはクラッシックを学びながら環境音楽の世界へ足をふみいれることになったということです。作風としてはそうした遍歴が素直に表出したかなりクラッシック色濃い俗流アンビエントが主になっているのですが、ときたま息を呑むほど美しいアンビエント作をつくったりするので、油断がなりません。ということで、氏の作品は見つける度できるだけ買うことにしているのですが、琴線に触れてくるにはまあ5回に一回といったところで…これは4回の側のやつでした。クラシック名曲のニューエイジアレンジ作品というのはキツものがおおくてなるべく買わないようにしているのですが、まさにそのことを再認識せざるを得ない内容…。しかもヴィヴァルディの『四季』という地雷曲で、二重の苦難です。一応それ以外にもオリジナル曲も入っているのですが、これも実にキツく…。一曲だけ「SUMMER ISLAND」という鈍重な謎フュージョンが入っており、一瞬笑えますが。

 

11.

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アーティスト:久石譲

タイトル:MELODY Blvd.

発売年:1995年

レーベル:パイオニアLDC

入手場所:BOOKOFF 八王子堀之内店

購入価格:500円

寸評:そこへいくと久石譲という人はいつでも素晴らしいクオリティの作品を作っているなあと感心せざるを得ませんね。当たり前ですね。これは氏が映画音楽作家としてブレイクした後にリリースしたリアレンジ・セルフカバー作です。『水の旅人』、『魔女の宅急便』、『この愛の物語』、『ふたり』、『はるか、ノスタルジィ』、『時をかける少女』、『紅の豚』、『ぴあの』、『青春デンデケデケデケ』などから、聴き馴染みあるテーマ曲/挿入曲をチョイスし英語詞を付けた上、トミー・ファンダーバークやウォーレン・ウェイブといった外国人歌手に歌わせる、といった企画です。バッキングにもLAのセッションミュージシャンを一同に集めています。存在は知っていたのですが、氏のディスコグラフィーの中でも手に入りづらい部類(売れなかったのか?)ということもあり、この日ようやくゲット。内容は、まったく盤石極まりない高クオリティなAORで、全編安心印の久石ワーク。出色はミディアム〜アップの「あたなになら」「木洩れ陽の路地」、「追憶のX.T.C.」あたりでしょうか。バラードになると例の過剰な叙情性が鼻についてくるところもあります。

 

12.

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アーティスト:ELLIS

タイトル:Fragile

発売年:1992年

レーベル:ポリスター

入手場所:BOOKOFF 八王子堀之内店

購入価格:280円

寸評:元四人囃子〜プリズムの森園勝敏プロデュースという、つい身を乗り出さざるを得ないプロダクションによって89年にデビューした男女ユニット「エリ」。森園勝敏といえば、上記バンドでのワークスはもちろん、ソロ独立後の諸作に至高のフュージョン名作が多く、中でも78年の『バッドアニマ』はオールタイムフェイバリットであり…と森園氏の話ばかりになってしまいました、すみません。elliの歌、近藤洋史のプログラミングを軸とする彼らのサウンド、若干捉え方に迷う折衷的なものなのですが、それこそ森園氏のセンスがこのあたりに反映されている気もしますね。ボーカルはやや頼りない感じ(だからこそ良いという見方も出来る)なのですが、サウンドクオリティは一級品という対比にも妙味があります。曲調はさすが洒脱なものが多く、シティ・ポップに分類して良いのではないかと思います。彼らは6枚のオリジナアルバムを発表後、活動休止。二人は近年も積極的活動を行っており、特にボーカルのelliは、Elli & Petz Gelatoとして、また、鈴木雄大とのユニットZEBRA ONEとしても活躍されています。

 

次回へ続く…。

CDさん太郎 VOL.13 2019/4/18購入盤

こんにちは。本記事はCD特化のディグ日記シリーズ「CDさん太郎」の第13回目になります。今回は2019年4月18日東京・吉祥寺で購入したCDを計10枚紹介します。

この日、HMVコピス吉祥寺店にてジャンクCD放出セールがあり、5枚まとめ買いで100円という暴力的価格で売り出されていたのでした。そのため、ここで紹介する10枚の購入には200円しかかかっていません。そのようなものに結構な時間をかけてレビュー執筆をするという行為、とても上質な暮らしと言えるでしょう。

このゴールデンウィーク中も沢山CDを買っているのですが、そろそろ本ブログ紹介ペースが周回遅れな感じになってきているので、ヤバイ。食事や睡眠時間も削って頑張っていきます。よろしくお願い致します。

 

唐突に告知です。

5/11、東京・宮の坂の素敵なお店、「バレアリック飲食店」にてDjをさせていただくことになりました。

素敵な皆様とともに、最近の釣果を交えプレイさせていただきます。

是非お越しください。

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本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。 

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

1.

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アーティスト:Leslie Smith

タイトル:“Les” is More

発売年:1992年

レーベル:ポリドール(オリジナル:MORRISON ENTERTAINMENT)

入手場所:HMVコピス吉祥寺店

購入価格:20円

寸評:米イーストコーストのファンク〜ライトメロウ名アクト、クラッキンの元ボーカリストであるレスリー・スミスが92年にリリースしたブラックAOR好作です。レスリー・スミスといえば82年のデビュー作『ハートエイク』がAOR名盤として著名です。そのジェントル〜メロウな内容は、ソウル系のファンよりむしろAORファンに支持されているというのが面白く、同時代に活躍したスティーブ・ウッズなどにも通じる魅力かと思います。このセカンド作は全てAOR名曲のカバー曲となっており、ブレンダ・ラッセル「イッツ・サムシング」、ルパート・ホルムズ「レス・イズ・モア」、クリス・レア「フール」、ジノ・ヴァネリ「アイ・ジャスト・ウォナ・ストップ」、ネッド・ドヒニー「ア・ラヴ・オブ・ユア・オウン」、果てはボズ・スキャッグス「ウィー・アー・オール・アローン」までを歌っています。その全てのアレンジがおしなべて素晴らしく、レスリーのスムーズな歌唱を暖かに包み込んでいます。時代を反映したエレクトロ・ビートもじつに奥ゆかしく配置され、あくまでAOR的溌剌とスムースネスを妨げることをしません。今作、森口哲也氏という米在住の日本人ミュージシャンがプロデュースを務めており、氏のセンスがこのバランス感を生んでいるようです。白眉はネッド・ドヒニー「ア・ラヴ・オブ・ユア・オウン」と、マーヴィン・ゲイ「ホワッツ・ゴーイン・オン」の実直なカバーでしょうか。後期AORの名盤と言っていいでしょう。

 

2.

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アーティスト:CHAKA KHAN

タイトル:NAUGHTY

発売年:1991年(オリジナル:1980年)

レーベル:ワーナー

入手場所:HMVコピス吉祥寺店

購入価格:20円

寸評:こういう有名アーティスト作品というのは、最近ではあまりCDで買うことが少ないのですが(アナログで買うかサブスクで聞くことが多いので)、この値段なのでそういうこと関係なくつい買ってしまいました。ご存知の通りチャカ・カーンは今も現役バリバリ。スウィッチと組んで12年ぶりにリリースした今年のアルバムがめちゃめちゃカッコよく、ルーファス時代の作品から聴き直していた所、この未所持盤を超安価で発見。前作のインパクトと次作のヒットに挟まれて若干印象の薄いところのあるアルバムなのですが(ジャケも地味)、その内容は当たり前のように超一級品。アシュフォード&シンプソン作のM1「Cloud」からしてディスコ〜ガラージの一番幸せな時代を思わせる充実の音作り。おそらく当時世界一のテクニックを誇っていたボーカルは、ますます溌剌。余裕すら感じさせます。アリフ・マーディンのプロデュースも過不足なく、実に職人的。名盤です。

 

3.

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アーティスト:NDUGU & THE CHOCOLATE JAM COMPANY

タイトル:DO I MAKE YOU FEEL BETTER?

発売年:2001年(オリジナル:1980年)

レーベル:エピックソニー (オリジナル:EPIC)

入手場所:HMVコピス吉祥寺店

購入価格:20円

寸評:これはいくらなんでも安すぎます!ンドゥグことレオン・チャンスラーは60年代からジャズ・シーンで活動を開始したドラマーで、一時期はハービー・ハンコックのMWANDISHやエレクトリック・マイルスのバンドにも参加した才人。70年代以降はクロスオーバー色を強め、サンタナジョージ・デュークなどと活動を共にし、更にソウル色を強めボーカルを迎え結成したのがこのチョコレート・ジャム・カンパニーです。ファーストにあたる前作ではアース・ウィンド&ファイアーのアル・マッケイが全面的に参加したこともあり、かなりアース風の内容だったのですが、今作はよりディスコ色を全面に打ち出したものになっています。内容は一級品です。冒頭の「SHADOW DANSING」などのアップも秀逸ですが、マッドリブネタのミディアム「TAKE SOME TIME」などシブいメロウネスを聴かせる曲がカッコいい。このキラキラしたストリングス・アレンジ、ヴォーカル・アンサンブルの艶、リズム隊の粘り、至福ですね。このCDは日本のソニーが2000年代初頭にやっていた「洋楽秘宝館」という再発ラインの一連として出たものなのですが、マスタリングが非常に素晴らしいのです。リマスター技術の黎明期にあたるこの時代、志の高い仕事が沢山ある印象です。

 

4.

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アーティスト:GREG MATHIESON PROJECT

タイトル:BAKED POTETO SUPER LIVE!

発売年:1986年(オリジナル:1982年)

レーベル:CBSソニー

入手場所:HMVコピス吉祥寺店

購入価格:20円

寸評:ラリー・カールトンとの活動で知られるキーボード奏者グレッグ・マティソンが、スティーブ・ルカサー(ギター)とジェフ・ポーカロ(ドラム)というTOTOの二人、そして盟友のロバート・ポップウェル(ベース)と組んだセッション・グループによる唯一作にしてライブ盤。TOTOからの二人にしてもそうなのですが、個人的に、こうした腕達者なミュージシャンの人達の魅力はむしろウェルメイドなアレンジの中でこそ味わい深い、という考え方があり…いわゆるバリバリ弾きまくりセッション的なものはどうしても苦手なのでした…。特にロッキッシュになった時のルカサーのプレイは昔からずっと苦手ですね…。じゃあなんで買ったんだ?というと正直言ってまとめ買いの数合わせです。すみませんでした。今色々なところでフュージョンの揺り戻しが興っていますが、これは「そういうのじゃない」側のフュージョンの代表的な音を聴かせてくれます。ライナーノーツで、松原正樹土方隆行野呂一生という日本のトップギタリスト達が本作を聴いた印象を寄せているんですが、ルカサーのプレイに対してもどこか冷めており、かつアレンジ、ミックスなどについても結構手厳しいことを言っていて面白いです。やっぱりこの人達は信頼できる、と思いました。

 

5.

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アーティスト:Flank Gambale

タイトル:a present for the future

発売年:1987年

レーベル:ジムコ(オリジナル:LEGATO)

入手場所:HMVコピス吉祥寺店

購入価格:20円

寸評:すみません、数合わせです。チック・コリア・エレクトリック・バンドの一員でもあったギタリスト、フランク・ギャンバレが87年にリリースしたセカンド作。一回のストロークで複数弦に渡って単音フレーズを弾く(ストロークの間に左手のパッセージを行っているということ?)という、フュージョン界に衝撃を与えた「スピード・プレイ」なる奏法で有名な氏ですが、ここではそのテクを余すところなく発揮しております。ということは、上段のグレッグ・マティスン・バンドと同じく、私の好みではありません…。ただ、曲がロッキッシュではなくマイルドなものが多く、その分まあ聴けるかなあ…という印象。が、アレンジが凡庸で如何ともし難いですね(ジャケからニューエイジ的テイストを期待したのですが、そういった音楽要素は残念ながらありません)。本来のフュージョンアイデンティティを考えると本末転倒な言い方なのですが、プレイ志向に走っているフュージョンは今の感覚だとやはりキッツイですね。アレンジや編集、音像面でのアイデアに閃きのあるものでないとリスニング的にツライです。

 

6.

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アーティスト:Dave Grusin

タイトル:MOUNTAIN DANCE

発売年:1998年(オリジナル:1980年)

レーベル:          JVC(オリジナル:GRP)

入手場所:HMVコピス吉祥寺店

購入価格:20円

寸評:この辺りで「良いフュージョン」を取り上げましょう。デイブ・グルーシンフュージョン界を代表するキーボード奏者、作曲家、プロデューサー。これは多作な彼の代表作と目される一枚で、1980年にリリースされたアルバムです。タイトル曲は日本でもヒットした洒脱な恋愛映画『恋におちて』(ウール・グロスバード監督、ロバート・デ・ニーロメリル・ストリープ主演)のテーマ・ソングとなっており、50代以上の方ならうっすらメロディーをご存知でないかなと思います。上述してきたテクニック志向フュージョンの真逆に位置する作曲とアレンジメント重視の超一級品で、やっぱり私はこちらの方が好きですね…。もちろん、デイブ自身の鍵盤含め参加メンバー全員テクニック的にもものすごく巧いのですが(ハーヴィー・メイソンマーカス・ミラーなどが参加)。今の感覚的にはデイブとエドワード・ウォルシュのキーボード〜シンセサイザーのトーンに惹かれます。絶妙に暖かなシンセサイザーサウンドのセンスは、同時期のフュージョンの中でも突出したものに思えます。完璧な構築美という点からも、スティーリー・ダンなどが好きな人にも聴かず嫌いせずにチャレンジしてほしいなと思ったりします。

 

7.

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アーティスト:V.A.

タイトル:HAPPY ANNIVERSARY, Charlie Brown!

発売年:1989年

レーベル:ビクター(オリジナル:GRP)

入手場所:HMVコピス吉祥寺店

購入価格:20円

寸評:漫画『Peanuts』の音楽といえば、今も昔もTVシリーズにおけるヴィンス・ガラルディの名が挙がることでしょう。そのオリジナル音楽の素晴らしさは今更ここで強調する必要のないほどですが、それを大物アーティストにカバーさせ、作品誕生40周年を記念する盤として制作されたのが本CDです。上段のデイブ・グルーシン主宰のGRP所属アーティストが中心となり、同レーベルから出されたこれは、さながらフュージョンチャーリー・ブラウン・トリビュート。内容はじつに手堅く、ヴィンス楽曲の魅力へリスペクトを捧げ真っ向からカバーしている印象です。デヴィッド・ベネイの「ライナス&ルーシー」、リー・リトナーの「レッド・バロン」、パティ・オースティンの「クリスマス・タイム・イズ・ヒア」あたりが特に好ましく聴けます。が、そういうある意味中庸な音楽内容にましてこのCDが魅力的なのは、漫画とイラストがふんだんに用いられたブックレットと言えます。アニバーサリーということもあってかルーシーも妙にしとやかで、いつもの皮肉も控えめです。

 

8.

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アーティスト:MARLENE

タイトル:LOOKING FOR LOVE

発売年:1984

レーベル:CBSソニー

入手場所:HMVコピス吉祥寺店

購入価格:20円

寸評:80年代初頭から日本で活動するフィリピン人ジャズ歌手マリーンによる84年リリースの6thアルバムです。この人は異様に多作で、中古店頭でみかけるたび「コレって持っていたっけ?持っていなかったかったけ?」となるのですが、このジャケは以前から妙に印象に残っていたのでした。ラリー・カールトンやジェイ・クルスカ、ネイザン・イーストなどを迎えたLA録音で、相当にクオリティの高いプロダクションです。マリーンのボーカルも完璧にこなれた英語なので、もはや和的な要素はほぼありません(たまにマイナー調曲に顔を覗かせる程度)。ということで、改めてAOR作品として聴いてみると、その素晴らしさに感じ入る次第です。LAらしいロック・テイストも随所で聴かれますが、今の感覚的にナイスなのはジョイフル・ポップなM6「ニードル・イン・ア・ヘイスタック」、ロバート・クラフトのカバーM7「アイ・ワンダー・ホワット・ユー・アー・ライク」、うっすらバレアリックなブギーM8「ア・リトル・T.L.C.」あたりかなと思います。

 

9.

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アーティスト:杉真理

タイトル:STARGAZER

発売年:1983年

レーベル:CBSソニー

入手場所:HMVコピス吉祥寺店

購入価格:20円

寸評:珍しい「LPでも持っているけどCDも買ってしまった」盤です。杉真理の初期キャリアを代表する、そして80年代シティ・ポップ・シーンも代表する名盤なので、改めてここで僕が内容について詳細することも無いのですが、当然のごとく非常に素晴らしいです。以前杉さんにインタビューした際、僕は田舎者なのでシティ・ポップといわれると不思議な感覚があって、と笑いながら謙遜されていましたが、その発言を僕なりに解釈するなら、杉さんの志向はあくまでオールディーズ〜マージービートで、いわゆる今でいう都会的「ライトメロウ」感覚というのをことさら意識していたわけでないということになのかもしれません。実際ここで聴かれる音楽は、アレンジこそシティ・ポップ感覚にあふれていますが、現在に続く曲作りの妙の骨格はやはり60年代ロック〜ポップスとしてのそれです。もしかしたら若い世代にはその辺りの勘所が掴みづらいかもしれないのですが、一度魅力に開眼すると、膨大なディスコグラフィー全てが愛おしく思えてくるのでした(私も未聴作品を順次クエストしようと思っているところです)。ちなみにこのCD、83年発売ということでCD黎明期のものなのですが、マスタリングレベルの極端な小ささに時代を感じます(そもそもマスタリングという概念自体もこの頃産まれたものなので…)。かといって「悪い音」というわけではなく、コンプ感希薄な透明性のある音で、これはこれで好ましいのでした。上段のマーリンも84年のCDなので、同じようなマスタリング傾向です。

 

10.

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アーティスト:YOUNG SWALLOWS

タイトル:TO THE TOP VICTORY ROAD

発売年:1993年

レーベル:東芝EMI

入手場所:HMVコピス吉祥寺店

購入価格:20円

寸評:めちゃくちゃトレンディーなジャケットを見て、「ヤングスワローズ」なんてライト・メロウ・グループいるのか?なんて思ったんですが、その実、ヤクルトスワローズの選手たち。よく見たら確かに、私が小学生だった頃のスタメンがジャケでふにゃふにゃ微笑んでいます。制作陣に佐藤準鈴木博文白井良明小室哲哉サエキけんぞうなどの名前を発見し、音楽的にマジの雰囲気を感じたので購入しました。果たして…。佐藤準作のインストM1はいきなり暑苦しいアメリカン・ハード・ロックの雰囲気で聴き進める意欲を著しく挫くのですが、橋上、飯田、加藤、西村、高津、内藤、小阪の歌うM2「負けず嫌いなLOVE SONG」はギリギリでシティ・ポップに分類可能な烏合の衆系合唱曲でした。M3は古田による中庸なミディアム、小室哲哉曲M4はかなり保守的なミディアムと、なんとも言い難いぬるい世界が続いていきます。そんな中、秦による歌唱の鈴木慶一詞、白井良明作曲「愛を数えよう」は実にシブいオリエンタル・フォーク・ロックで好ましい。なんでこのCDにこんな曲が!? つづく広沢はJ-WALKの「何も言えなくて…夏」を55点の歌唱力で歌い上げます。M8は髙野による凡庸な歌謡ロック。全員によるM9はこれまでの曲のメドレーとなっています(しつこいなあ…)。という感じで(当たり前ですが)お遊びの範疇を出ないノベルティ作品ですが、時代の記録としては貴重かなと…。多分再び聴くことはないので、スワローズ・ファンの方へ謹呈します。

 

次回へ続く…。