CDさん太郎 VOL.5 2019/2/18、20、22 購入盤

こんばんは。本記事は、<次のレアグルーヴはCDから来る>を標語とする(?)、CD特化のディグ日記シリーズ「CDさん太郎」のVOL.5になります。今回は2019年2月18日から22日にかけて、仕事で訪れた都内各所で散発的に購入したCDを計10枚紹介します。

出先から自宅へ戻る際、少しの迂回で寄ることのできるブックオフ店舗があると必ず訪れてしまう体質になってしまいました。こういうとき、基本23時まで営業しているブックオフの有り難みが身に染みます。急にCDが欲しくなっても安心ですね。

(本シリーズ要旨、並びに凡例は第一回目のエントリをご参照ください)

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

 今回はどうしてもはじめに取り上げる盤のジャケ写を頭に持ってきたかったので、購入時系列としては逆になってしまうのですが、昨日2/22に入手したものから紹介していきます。(1〜4が2/22、5が2/20、6〜10が2/18購入盤)

 

1.

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アーティスト:翠光
タイトル:黎明
発売年:1998年
レーベル:MUSIC OFFICE TIKA
入手場所:ブックオフ分倍河原
購入価格:280円
寸評:勇み足でTwitterでも予告をしてしまいましたが、ここ最近手に入れたCDの中でも最もよくわからない盤です…。おそらくジャケット表1のポートレイトを見ただけでは買わなかったと思うのですが、裏返してみると抹香臭MAXの仏教絵画がドーンと。ヤンキーと仏教という、まったく想定していなかった組み合わせに、只事ではなさを強く感じ、購入。ヤンキー系ニューエイジ?そんなものが存在しうるのか?

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いったいどんな音楽が収録されているのか期待に胸踊らせながら、まずはブックレットを開いてみる。すると飛び込んでくるのは、法衣を着て霊峰を臨む翠光(すいこう、と読みます)くんの姿。素晴らしい。期待感が高まる。先日紹介したIZANAGIのようなシンセサイザー音楽を想像。もう1ページめくってみると…なんとアコギを抱えており、しかも自作歌詞が掲載されている…。一瞬嫌な予感が…。

その前に、そもそもこの翠光くんが何者なのかって話ですが、本当に怖くなるほどネット上に情報皆無なので、ブックレットに書いていることから察するに、どうやら香川県真言宗善通寺周辺で生活していた(?)、録音当時20代半ばの若者のようです。なぜこのようなスピリチュアルな音楽活動を行うようになったかと言うと、この録音から先立つ93年、ネパールへ自分探しの旅をした際、雄大なヒマラヤを眼前にしアウェアネスを得たということがきっかけのようです。たまたま日本から持参していたアコギを片手に、そこで得た霊感を歌に託した…という物語。それがまたどうして数年後にアルバムにまとめられたのかは謎に包まれていますが、剃髪していないところを見ると、どうやら善通寺の在家信者/檀家かなにかで、どこからか宗教筋からの出資があってこうして制作・作品化したというところでしょうか…?(ブックレット中に高価なアコギが沢山クレジットされているのですが、これを全て自分で買ったんだとしたらスゴイことです)

肝心の内容に触れるまで前置きが長くなりました。なんと言ったら良いのやら…結論から言うと、かなり良質なCDなんじゃないでしょうか。ともかく他に似ている音楽が見当たらないのですが、強いて言うならば、ニューミュージック調フォークとケヴィン・エアーズ風ドンファン流アシッド・フォークが合体した世界というか…。歌詞はもう完全にそっちの世界だし、メロディはといえばほとんどビリー・バンバンで、時に海援隊みたいな瞬間さえ現出するのですが、大きく構えるリズム感覚、くぐもり気味ながら不思議な色気を孕んだ歌声など、ちょっとフレッド・ニールやディノ・ヴァレンテ、スキップ・スペンスなどに近い気もします(オタクの関心を惹こうとして嘘を言っているのではなく、本当にそうなんです…本人はおそらく無自覚かと思いますが)。そして、特筆すべきはそのアレンジと音像。基本的なセットは本人のアコギとイシイユウジ(誰…?)という人の弾くフラット・マンドリンを伴ったシンプルなものなのですが、そこへピアノ、シンセサイザー(キター!)、タブラなど各種パーカッション、時に分厚いコーラスが垂れ込めるという、アシッド・フォーク傾向のサウンド構成です。そして、誰がどうやって録ってどうミックスをしたのか全く不明ですが、ほぼ全ての音要素にヒジョーに深いリヴァーブが…。これは………素晴らしい。この全く新鮮な音楽に無理矢理名前を付けるとすれば、「レリジャス・ヤンキー・アシッド・フォーク」ですかね。特に良いのが、意外にもメジャー7th系コードのストロークを交える夢幻ナンバーM3「moon light」、そして「ナマステ」のリフレインと般若心経の朗唱がドープすぎる9分超えの一大叙事詩M6「ティカ」(ほとんどデヴィッド・クロスビー)あたり。素晴らしいです。世界は広い…!!

  

2.

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アーティスト:V.A.
タイトル:高橋美由紀オリジナルアルバム 天を見つめて地の底で
発売年:1993年
レーベル:PONY CANYON
入手場所:ブックオフ分倍河原
購入価格:280円
寸評:秋田書店の漫画雑誌月間「パンドラ」で1990年〜2000年まで連載された高橋美由紀の代表作『天を見つめて地の底で』のイメージ・アルバムです、と書きましたが、すみません、高橋美由紀先生についてもこの漫画についても今回始めて知りました…。なぜこのCDを買ったかというと、ネットで調べたらあのライトメロウ寸前系伊達男、野見山正貴が歌唱参加しているらしいから。それ以外にも高橋先生自らが歌唱する曲などもあり興味深い。曲ごとでまったく違った音楽傾向にあり、ユーロプログレ風インスト、ライトクラシック風インストなど、全体にばらつきのある盤なのですが、やはり野見山参加曲がその中でも比較的よく、ミディアム・メロウな魅力あり。演奏陣も淡海悟郎ほか、手堅い。原作を知らないので何とも言えないけれど、ファンタジックで瞑想的な雰囲気がよく出ている。

 

3.

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アーティスト:川村万梨阿
タイトル:春の夢
発売年:1991年
レーベル:日本コロムビア
入手場所:ブックオフ調布南店
購入価格:280円
寸評:声優の川村万梨阿がリリースしたおそらく5作目(?)のソロアルバム。私はお恥ずかしながらアニメ文化に全く明るくないので、この方がその世界では非常に高名な声優さんであることも知りませんでした。なぜ今回本作を購入したかというと、light mellow部で小川直人さんがこの後にリリースした作品をレビューしていて気になっていたからなのです。小川さんも書いている通り、音楽クオリティに比してあまりに語られなさ過ぎではないか?と、僕も今作を聴いて強く思いました。川村さん、歌声や節の付け方など、どことなくZABADAK上野洋子さんを彷彿とさせるところもあり、非常に清廉かつコケットな魅力をお持ち。歌唱力もすごい。それを支えるのは、全編非常にクオリティの高いオケ。本人も作曲していますが(それもスゴイ)、外部コンポーザー陣が非常に豪華で、ラジ、吉川洋一郎、副島邦明、果ては細野晴臣…!曲調はライトメロウというより、ニューウェーブ調というか、はっきりいえばニューエイジ調。ニューエイジ・ポップの名作、福島祐子『時の記憶』などに通じる世界。和やラーガの香りも濃密にあり、相当にアヴァンです。出色はラジ作・編曲のM1「PLANET BLUE」、細野晴臣作曲のM4「月夜の子猫」あたりか。オタクに聴かせるには出来が良すぎる。

 

4.

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アーティスト:小久保隆
タイトル:DHC SOUND COLLECTION 小久保隆の癒やしの音楽 森
発売年:2008年
レーベル:DHC
入手場所:ブックオフ調布南店
購入価格:280円
寸評:俗流アンビエントもので、2000年代リリースのの商品を買うことは珍しいのですが、この小久保隆だけは別。古くはジャパニーズプログレバンド<新月>のドラマーとして活動、のちバッハ・レボリューションなどにも関わりソロ独立、現在は日本の背景音楽界の最重鎮と言うべき存在。近年海外リスナーから発見され、87年作の『Get At the Wave』が国外リイシューされるなど、その注目度は急上昇中(例のLight in the Atticからの環境音楽コンピにももちろん氏の楽曲は収録されています)。わたしは<イオンシリーズ>という90年代初頭のテイチクでの名作群でその存在を知ったのですが、もう本当にどれを買ってみても全部素晴らしいんですよね。氏のトレードマークともいうべきディレイ処理されたアコギとクリスタル極まりないシンセサイザーの融合、それだけで夢見心地です…。これは2008年にDHCからの委嘱で制作された非売品アルバムのようです。(エステサロンでの配布用とかだったのでしょうか)。森をテーマに環境音と楽音を静かに溶け合わせていきます。自身の<ION>レーベルからの近年諸作はサブスク上にもありますが、これはネットでは聴けない。

 

5.

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アーティスト:조용필(チョー・ヨンピル)
タイトル:5
発売年:1990年 (オリジナル 1983年)
レーベル:JIGU RECORDS
入手場所:レコファン渋谷店
購入価格:108円
寸評:チョー・ヨンピルといえば日本でも非常に有名なトロット歌手ですが、僕が彼の音楽を意識するようになったきっかけは昨年日本公開されたソン・ガンホ主演映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』の冒頭、カーステレオから流れてくる、超最高のシンセ・ディスコ曲「おかっぱ娘」(79年)でした。その後同曲の入った第一集(という名のセカンド・アルバム。ややこしい…)の再発CDを入手し愛聴しているのですが、「ということは他のアルバムにもそういうナイスメロウチューンが入っているのかな?」という期待のもと、オリジナルアルバムを探し求めていたら、こんな値段で転がっており購入(したあとにAppleMusicでも聴けることに気付いた)。果たして…残念ながら全編これド演歌の世界でそういったものは入っていなかった…がっかり…という物語。といいつつ、もちろんトロットも嫌いじゃないので、普通に聴いている分には好ましいのですが。

 

6.

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アーティスト:蘭広昭
タイトル:ナチュラル・サウンド・シリーズ 海のシンフォニー THE WAVE
発売年:1989年
レーベル:PONY CANYON
入手場所:ブックオフ飯田橋
購入価格:500円
寸評:今回の大失敗盤です。クリスタルなシンセサイザー使いの俗流アンビエントを期待したのですが、背景というレベルじゃないめちゃ大きい音でザッブーン!ジャバジャバ〜!、みたいな波のサウンド主体、そこへ気が向いた時に絡んでくる楽音。この音楽がまあ良くない…。よく調べて買えばよかったんですが、作曲・演奏の蘭氏は、ニューエイジ畑の方じゃなくて、演歌〜歌謡畑の方らしい。R80のペンタトニック・ピアノ・ミュージックでした。蘭さんに罪はない。

 

7.

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アーティスト:折野順三、浅倉大介
タイトル:F.DISC 〜今あなたがあなたを超える〜
発売年:不明(1990年代初頭?)
レーベル:スポーツ体力研究所
入手場所:ブックオフ飯田橋
購入価格:280円
寸評:aestheticなジャケに惹かれ購入した俗流アンビエント。ジャケ裏にナレーション入りとあるので、覚悟していたのですが、覚悟していた以上に全編ナレーション入りで、ウザったいこと極まりない(と思う人は本来このCDを聴いてはいけない)。要は自分に自信を持ってハツラツと生きることができるようになるためのインディー系セルフコントロールCDですね。スポーツ体力研究所というのは、静岡県にあるSANRIというその世界では大手の会社が運営していた団体のようです。基本的にはヒジョーに適当に作られた感じのシンセサイザー・ペンタトニック・アンビエントなのですが、展開というものに極めて乏しく、残念ながら途中停止。折野順三さんという方は存じ上げませんでしたが、Twitter上にビートルズアイコンのフォロワー3の同名アカウントを発見。同一人物なのでしょうか。そして…浅倉大介って、あのaccessのか…!?ホントに!?

 

8.

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アーティスト:谷川賢作
タイトル:東宝映画 「つるー鶴ー」オリジナル・サウンドトラック
発売年:1988年
レーベル:PONY CANYON
入手場所:ブックオフ飯田橋
購入価格:500円
寸評:市川崑監督、吉永小百合主演の1988年公開映画『つる ー鶴ー』のサントラ盤です。吉永小百合の映画出演100本記念作でもあるらしいのですが、私は未見、というか今回初めてこの映画の存在を知りました。相手役が野田秀樹なのか〜、菅原文太も出てるのか〜、とかとか興味が湧きますが、なにより音楽を谷川賢作が手がけているというのが素敵。谷川賢作といえば父は詩人の谷川俊太郎で、あの佐藤允彦に師事していたこともあるという作曲家/ピアニストですが、この時期、市川崑監督作品の音楽を連続して担当しています。この「つる ー鶴ー」は、民話「鶴の恩返し」を映像化したものなのですが、名作『怪談』(武満徹が音楽を担当)しかり、そういう作品は往々にしてスコアが大変素晴らしいという経験則があるので買ってみました。果たして…これは本当に素晴らしいですね〜。なぜか「アメイジング・グレイス」がテーマ曲だったらしく、それが時おり変奏される以外は全て谷川氏の描き下ろし。特に硬派なシンセサイザー使いのトラックが良い。これ、おそらく武満徹の前述『怪談』の劇伴を相当意識しているような気がしますが、どんなもんでしょうか。ちなみに、映画自体は、レビューサイトなどをみると結構ヒドい言われようです。

 

9.

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アーティスト:矢吹紫帆
タイトル:α波 1/fゆらぎ ブリリアント・エナジー
発売年:1990年
レーベル:アポロン
入手場所:ブックオフ飯田橋
購入価格:500円
寸評:俗流アンビエントのプレステッジ、アポロン。この矢吹紫帆は一時期アポロンの専属だったのか、同レーベルにアルバムを吹き込みまくっている女性シンセシストなのですが、僕はこの人の音楽がとても好きで、CDを見かける度に買ってしまいます。87年のファーストアルバム『からだは宇宙のメッセージ』が昨年スウェーデンのSubliminal Soundsからリイシューされたことからもわかるように(そして当然先述のLight in the Atticのコンピにも収録)、ここへ来て海外からも熱い注目を浴びている方です。鍵盤奏者としても、たおやかなメロディー感覚や精細なダイナミズムにあふれたタッチが素晴らしく、そのあたりの華と綾はこの人ならでは。本作も相変わらずの高クオリティで、心地よい眠りに誘ってくれます…(これを書きながら一度寝落ちしました)。

 

10.

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アーティスト:宮本文昭
タイトル:ニペンシィ
発売年:1989年
レーベル:CBS/SONY
入手場所:ブックオフ飯田橋
購入価格:200円
寸評:指揮者としても著名なオーボエ奏者、宮本文昭による5作目のソロ作。ライト・クラシックとフュージョンニューエイジの合体というのは、このところのDIGのテーマでもあって、掘れば掘るほど良い作品がどんどん出てくるのですが(中西俊博溝口肇村松健西村由紀江城之内ミサ山形由美etc..)、その中でも本作はかなりの高クオリティなのじゃないでしょうか。クラッシク名曲をフュージョン調にアレンジするという、その世界からしたらこれ以上のセルアウトってあるの!?と未来の私が心配になるやり方ですが、今聞くとそれが実にいい塩梅。本作はクラッシク曲だけではなく、ポピュラー曲も入っているのですが、それらがイヴァン・リンス「ラヴ・ダンス」とジョビンの「波」というブラジル志向。案の定これらの曲が特筆して良い。編曲は佐橋俊彦などが中心となって行っているのだけど、尼崎勝士というどこかで見た名前が…。あの台車レコメンでお馴染み、『バンボレオ』の「与野」氏でした。こんなところでつながるとは。急に麻布〜ギロッポンの匂いがしてきましたネ。