CDさん太郎 VOL.7 2019/3/1、3 購入盤

こんばんは。本記事は、<次のレアグルーヴはCDから来る>を標語とする(?)、CD特化のディグ日記シリーズ「CDさん太郎」の第7回目になります。今回は2019年3月1日と3日に、それぞれ東京・新宿、中野〜高円寺で購入したCDを計12枚紹介します。

3/3に訪れたRARE高円寺店ですが、4月末をもって40年以上の歴史に幕を閉じるということで、今月から閉店セールを実施しています。昔話で恐縮ですが、20数年前、当時高円寺に下宿していた兄を訪ねて上京した際、駅で落ち合ってすぐに連れて行ってくれたのがRARE高円寺店だったと記憶しています。それがおそらく人生で初めてのレコード屋さん体験だったように思います。雑多で埃っぽい店内、隣接の仲屋むげん堂と曖昧に侵食し合う区画(と漂ってくるお香の匂い)、それらすべてが当時思い描いていた「ザ・高円寺」そのもので、私はいたく感動したのでした。今は去りし90'sサブカルチャー

今回久々に訪れた店内、その時からほとんど時間が止まったままのような空間でした。独特のダルい空気…懐かしいな〜とLP/CDを掘っていたら、どこからかずーっと強烈なモスキート音が鳴っていることに気づき、場所によってはガンガン頭痛がするほどに。音の出元を探したら、ジャズLPコーナー脇のエアコンの裏に超高周波用スピーカーが付けられていました。これは一体何のためなんだろう。若者DJが漁りすぎるのを防ぐためなのか…?閉店セール期間なのだからむしろなるべく客を長居させた方がいいんじゃないか…?万引き防止なのかな…性悪説〜。

こういってはなんですが、以前吉祥寺店でもお客さんと罵り合っている(新春早々)光景を目にしたりと、RAREというのはそういう独特の殺伐があるんですね。老舗レコード屋特有のそういう感じ、今はどんどん失われつつあり、好ましくもあります。他店舗はこれからも元気に営業を続けていくとのことです。頑張ってください!

本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第一回目のエントリをご参照ください。

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

1.

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アーティスト:フィニス・アフリカエ
タイトル:ア・ラスト・ディスカバリー:ジ・エッセンシャル・コレクション 1984-2001
発売年:2013年
レーベル:EM RECORDS (オリジナルMúsica Sin Fin)
購入日:2019/3/1
入手場所:ディスクユニオン新宿中古センター
購入価格:1,152円
寸評:これぞ現在に続くバレアリック・ブームを内外に印象づけた、エム・レコードによる傑作コンピレーション。スペイン人ミュージシャン、ホワン・アルベルト・アルテシェ・グエルが1980年代初頭に発足したユニットであるフィニス・アフリカエ。本作は彼らが84年から2001年に残した作品をコンパイルしたものです。私はこれまでこの音源をデジタルで愛聴しており、のちに出たEPもCDとして所持していたのですが(彼らのオリジナル作のLPは高くて買えない…)、バレアリック、アンビエント、アフロ、エスノ、ファンク、ポスト・パンク、シンセ・ウェイブ、アンビエント、ニュー・エイジ(系の思想は本人には無いとのことですが、サウンド的連関を感じざるを得ない)、そういった今色々な場面で喧伝されるタームの全てが、このフィニス・アフリカエにはあると思います。これは言い過ぎではないのですが、今2019年3月の時点で、自分にとって一番カッコいい音楽です。この感覚に匹敵するのはアーサー・ラッセルしか思い浮かばないです。最高です。ダンス・ミュージック・コミュニティ内での知名度が先行している感がありますが、私のように<夜遊びしてない人>にも是非聴いてもらいたい。

 

2.

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アーティスト:酒井俊
タイトル:マイ・イマジネイション
発売年:1999年(オリジナル1979年)
レーベル:VIVID SOUND (オリジナル トリオ)
購入日:2019/3/1
入手場所:ディスクユニオン新宿中古センター
購入価格:612円
寸評:今もバリバリ現役で活動されているジャズ・シンガー酒井俊による3rdアルバム。「女性ジャズ・シンガー」と聞く時に連想される小粋でクルーナー的スタイルというより、もっと野趣溢れるダイナミックな歌唱法で、さらにいえば非常にソウルフル。以前ネット上で試聴音源を聴いて以来LPを探していたのですが、旧規格盤CDが安価で売られていたのでこの度購入しました。なんといっても全編にわたって聴かれる坂本龍一によるアレンジが秀逸!M1.のジョニー・ブリストル作のソウル名曲筆頭に、いわゆる洋楽スタンダードを取り上げたものなのですが、そのアレンジの妙のおかげで、単にクオリティの高いライトメロウ名盤という印象を超え出て実に刺激的です。参加メンバーはというと、坂本龍一に加えて松原正樹鈴木茂小原礼高橋幸宏浜口茂外也etc.という豪華メンツ。これは要するに、同時期の坂本龍一&カクトウギセッションの面々を中心とした布陣で、当時の日本フュージョンの最高峰的メンバーとも言えます。演奏の闊達さはさることながら、YMO初期に通じるシンセサイザー使いの編曲が素晴らしい。前述のM1におけるテクノ・ブギーっぷり、そして特筆すべきがアルバムタイトル曲M5におけるKORG ポリシンセ使いのバレアリック・フローター感。浜口茂外也のper.と大徳俊幸のエレピのみを従えたシンプルな編成で、コズミックなメロウネスが際立つ秀曲。このところの探求テーマである<ニューエイジ・ポップ>としても素晴らしい。

 

3.

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アーティスト:笠井紀美子
タイトル:TOKYO SPECIAL
発売年:1990年(オリジナル1977年)
レーベル:CBSソニー
購入日:2019/3/1
入手場所:ディスクユニオン新宿中古センター
購入価格:522円
寸評:上記作に引き続き、和ジャズ女性ボーカル名盤を。わたし、お恥ずかしながらこの大名盤、これまで未所持でした。音楽ライターを自称しライトメロウ周辺にもかすらせていただいているのにもかかわらず…こういうことが赤裸々になってしまうのも、本シリーズの(自分だけにとっての…)スリルです。日本を代表する女性ジャズ・シンガー笠井紀美子が77年にリリースした本作、全て安井かずみによる日本語詞で、筒美京平、横槍裕、鈴木勲、森士郎、矢野顕子山下達郎による曲を歌ったポップス寄りのアルバムです。この場合のポップスというのは、AORシティ・ポップになるのですが、全編本当に素晴らしい楽曲のオン・ザ・パレードで、溜め息…。笠井さんのしなやかで繊細な歌唱の魅力、鈴木宏昌を中心とした<プレイヤーズ>へと後に発展する<コルゲンバンド>によるフレッシュ極まりない演奏(激ウマ!)。特にキラーなのが、山下達郎が後に『GO AHEAD!』の中で「LOVE SELEBRATION」としてセルフカヴァーすることになるミディアム・ファンク、M1「ヴァイブレーション」ですね。このウィスパー・ボイスを交えた歌唱とクール&ホットな(ファンクの妙を押さえた)演奏の合体、たまりませんね〜。今回入手したのはCD選書シリーズ の旧規格盤ですが、LP当時と同じ惹句が帯に書かれています。曰く「キミコは、TOKYOに何を求めたのか?何をコミュニケイトしたいのか?」。よくわからないけど最高!

 

4.

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アーティスト:宇都美慶子
タイトル:シンパシィ
発売年:1990年
レーベル:ポリドール
購入日:2019/3/1
入手場所:ディスクユニオン新宿中古センター
購入価格:224円
寸評:1990年デビュー、歌手/作曲活動とともに現在では料理研究家やエッセイストとしても活動する宇都美慶子によるファースト・アルバムです。宇都美さん、埼玉のFMラジオ局NACK5で月〜木朝帯にミニ番組をお持ちで、以前わたしがラジオ宣伝仕事で同局に頻繁に通っていた際、そのお姿をお見かけしたような記憶があります。なので、個人的に<才色兼備のラジオパーソナリティ>というイメージが強く、音楽作品を聴くのは今回が初めて。本デビュー盤は全編プロデュースを松任谷正隆が担当、編曲を同氏と新川博が分け合っており、この時点でライトメロウ視点的には大期待なわけですが。しかもそこへさして土方隆行鈴木茂、今剛、伊藤広規青山純、ジェイク・H・コンセプションなどが参加しているのだから、大期待以上になってしまうわけで。果たしてその内容は、上述の豪華メンツから想像されるよりかなりロック〜MOR(ミドル・オブ・ロード)的で、今の感覚からすると若干の物足りなさが…。というかまあ、このソツなさこそ、ガールポップ全盛期において<大人の女性ポップス>を演出するには正道であったのでしょう。当たり前のことなのですが、<シティ・ポップ調>というのは、当時にしても取りうる音楽的戦略/志向の一つでしかなかったんですよね。そんな中、以前本ブログにも登場した障子久美(そちらもマンタがプロデュース)に通じるファットなエレクトロ・ファンクM7「会いに来ないで」は、ボーカルとトラックの乖離感など含めて少しだけ面白い。

  

5.

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アーティスト:S. JOB ORGANIZATION
タイトル:FREEDOM ANTHEM
発売年:2016年(オリジナル 1978年)
レーベル:Presch Media GmbH (オリジナル Shanu Olu Records)
購入日:2019/3/1
入手場所:ディスクユニオン新宿中古センター
購入価格:702円
寸評:ナイジェリアのアフロサイケバンドS.JOB MOVEMENTから派生したS. JOB ORGANIZATIONによる1978年作。S.JOB MOVEMENTはかなりアタッキーで戦闘的なロックテイストが特徴で、一時期そういう音も好きでよく聴いました。が、最近はもうちょっとダンス・オリエンテッドなものが好きで、78年というディスコ全盛のリリース年代に惹かれて購入。これを再発しているPresch Media GmbHは一時期狂ったようにアフロものを再発しており、途中まで追っかけていたのですが、リリース量が関心を上回ってしまい最近はご無沙汰状態になっていたので、今回は久々の購入です。内容はといえば、硬派なアフロ・ファンクとレゲエとの融合が実に面白いです!M2、M3あたりのコロコロした弦楽器と電子楽器使いの大胆な感覚はアフリカ産レゲエにしかない味わいかなと思います。その他ディスコ時代対応のトラックも辛口の良さがあり。最近離れていたアフロものですが、また色々買ってみようかな、と思ったります。

 

6.

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アーティスト:COUNTRY LIVING
タイトル:COUNTRY LIVING
発売年:2014年(オリジナル 1980年)
レーベル:BIG PINK MUSIC (オリジナル FRONT ROW MUSIC)
購入日:2019/3/3
入手場所:ディスクユニオン中野店
購入価格:686円
寸評:スチールギター音楽、スラックキーギター音楽、コンテンポラリー・ハワイアンからAORまで、ハワイ産音楽に惹かれ続けております。その独特のロコテイストにハマって以来、「これ以上至福の音楽があるだろうか…」と呆けながら聴くわけですが、個人的趣味としては、カントリー・コンフォートやルイなどといったコンテンポラリー・ハワイアンmeetsメロウなものがわけても好きです。そんな中、それらの中でも名盤とされるCONTRY LIVINGの唯一作のBIG PINKからのリイシュー盤を今回購入(BIG PINK、正直ハーフブートなのであまり積極的には買いたくないのですが…)。全編にハワイアン・コンテンポラリーらしいルーラルでアコースティックな演奏が聴けますが、出色は当時の米AORやウェストコースト・ロックとも共振するM3、M5。M6、あたり。特にバンド名をタイトルに冠したM6は、あのブレッド&バターの名曲「ピンク・シャドウ」に酷似したコード、メロ、譜割りが堪らないキラーなメジャー7thチューン。ちなみにハワイ、人生でまだ未踏なのですが、いざ行ったらめちゃくちゃハマりそう。

 

7.

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アーティスト:HOLD UP
タイトル:島まで10マイル
発売年:2013年(オリジナル 1978年)
レーベル:キングレコード
購入日:2019/3/3
入手場所:ディスクユニオン中野店
購入価格:686円
寸評:パラシュート〜AB'sの安藤芳彦がそれらの前に組んでいた幻のバンドによる唯一作が、タワーレコード流通限定の「Tower to the People」シリーズでリイシューされたもの。監修は金澤寿和氏です。これまで数度店頭で目にしつつもなんとなくその地味〜なジャケで素通りしていた盤なのですが、これはもっと早く聴いておきたかった!という内容でした。驚かされるのがそのメンバー構成。安藤氏の他、のちにチャクラ〜パスカルズへと渡り歩くドラムの横澤龍太郎、佐藤奈々子SPYを結成するベースの戸田吉則などが在籍しています。このレコード制作の直前までは清水信之紀伊国屋バンドとかけもち在籍していたらしく。そう、これは和光大学紀伊国屋バンド周辺のシーンで活躍した人達によるバンドなのでした。その内容はというと、これまさに全編細野晴臣のトロピカル3部作に通じるチャンキー路線で、「赤いアルバム」のムーンライダーズ、あるいは同時期のサディスティックス夕焼け楽団などにも通じる味わい。それらを青年らしく素直に表現した感じも良い。楽曲、演奏ともにクオリティは非常に高く、プロジェクト性が強くパーマネントな稼働が難しかったからなのかもしれませんが、なぜ後年にきちんと語り継がれなかったのか不思議。おそらく清水信之界隈を介した参加だと思いますが、細野晴臣大滝詠一もゲスト演奏に名を連ねています。

 

8.

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アーティスト:ジュン上久保
タイトル:サンフランシスコの奇跡
発売年:2004年(オリジナル 1972年)
レーベル:富士 (オリジナル 東芝EMI)
購入日:2019/3/3
入手場所:ディスクユニオン中野店
購入価格:1,024円
寸評:昨年読んだ音楽関連書の中でも飛び抜けてウィアードな書、田沼正史著『日本ロック史』。80年代当時に書かれほとんど世に出ずお蔵入り、たまたま昨年デッドストックが見つかった(とされている?)本著、いわゆる<はっぴいえんどYMO史観>に反駁するため書かれているのは明白。一般的には周縁的(あるいはそれまで振り返られることが稀だった、メインストリーム寄り)とされるアーティストらに多くの頁が割かれ、ほとんどもう一つの<あり得た歴史>を読み聞かされているような不思議な内容なのですが、その話法の巧みさやパラノイアックな視点は、同じく昨年に出た名著『The KLF: ハウス・ミュージック伝説のユニットはなぜ100万ポンドを燃やすにいたったのか』へ通じるモノを感じます。歴史を<編む>ということの恣意性と創造性を見せつけられた稀代の奇書といえるでしょう。未読の方は是非探して読んでみてください。さて、この上久保ジュンは同著の中でも重要ミュージシャンの一人として紹介されていた人。これは1972年当時20歳にも満たない氏が一人多重録音した唯一作にして、世界に誇るストーナーハード・ロック盤です。今はシティ・ポップアンビエントが流行っているせいであまり語る人がいなくなっていますが、スピード,グルー&シンキやフード・ブレイン、水谷公生などの日本のニューロック盤というのは、海外マーケットでコアな人気を維持しているもので、この作品は一際カルトなものとして人気が高かったようです。僕がこの盤を知ったのもそういう文脈からで、いつか買おうと思っていたのですが、時は過ぎ…しかし上述の『日本ロック史』を読み、これは是非手に入れなければと思っていたところ入手。内容は、全編非常なボルテージにまみれたダウナー系ストーナー・ロック〜ブルース・ロックで、なぜこれを多重録音にしようとおもったのかという謎も含めて、嗚呼素晴らしい。ライナー執筆者の円盤・田口氏も触れていますが、ほとんど初期DMBQですね。カッコいい。

 

9.

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アーティスト:桃山晴衣
タイトル:弾き詠み草
発売年:2005年(オリジナル 1979年)
レーベル:ビクター
購入日:2019/3/3
入手場所:ディスクユニオン中野店
購入価格:1,344円
寸評:これも上述の『日本ロック史』、あるいは田中雄二氏による大著『電子音楽 in JAPAN』を読み、手に入れたいと思っていた盤。厳格性を重んじる純邦楽界にあって、自作曲を歌い、演奏も闊達自在、斯界でも特異な存在としてその名を広めつつあった三味線奏者・桃山晴衣を、あの中村とうようが今様にプロデュースして産まれた名盤(問題作)。入間市民会館にて行われた録音に加え(これらがまず本当に素晴らしい…。シークを交えたM6など、アコースティック版の裸のラリーズとでもいいたくなる夢幻世界)、なんとモノローグも交えた12分超えの大作M7「虚空の舟歌」に坂本龍一シンセサイザーで参加しています。中村とうようの仕切りで発注したようですが、いったいどういうつもりだったんでしょうか。マッチしているとかしていないとかいう常識的な判断基準を超えて、非常に特異な世界が現出しています。基本的には桃山の詠唱と三味線に、ドローン的にシンセサイザーが絡んでくるという形なのですが、なにかそうやって文字に書く以上のドープさが充満しています。後年頻出する純邦楽ニューエイジの安易な融合とは似て非なる、非常な緊張感に満ちた音楽で、むしろ武満徹湯浅譲二一柳慧など、初期電子音楽時代における現代音楽作家の作品に近いような気がします。

 

10.

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アーティスト:YAS-KAZ
タイトル:風の卵
発売年:1985年
レーベル:PONY CANYON
購入日:2019/3/3
入手場所:RARE 高円寺店
購入価格:400円
寸評:60年代後半から、小杉武久阿部薫坂田明など様々なミュージシャンと演奏活動を繰り広げてきたYAS-KAZこと佐藤康和氏による85年のソロ・アルバム。この時期と前後して姫神との共演作をリリースし、それが大ヒットしたことなどもあり、今では和ニューエイジ的文脈からの評価が主だったものになっている気がしますが、実際は上記のように前衛音楽界隈にも属していた人で、「山海塾」の為の舞踏用音楽を作曲したりもしている硬派な音楽家。若年世代からの再発見が遅れているような気がしますが、この時期のソロアルバムは全て今こそ聴きたいかっこよさにあふれたものだと思っており、見かける度に買ってしまうのでした。全編エスノ〜ファンク、シンセ・ウェイブ、ニューエイジ色濃厚で、特にこの作品はM1「マドモアゼル スタインベルグ」が素晴らしい。ほとんど上述のフィニス・アフリカエにまんま通じる世界だと思いますが、どんなもんでしょうか。パーカッショニストとしても本当に巧くセンスフルで、トータルなサウンドクリエイターとしての側面と奏者としての側面がここまで上手くバランスしているというのはスゴイことだなあと思うのでした。

 

11.

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アーティスト:YAS-KAZ吉川洋一郎
タイトル:OMOTE THE GRAZED SURFACE そっと触れられた表面
発売年:1992年
レーベル:WSP
購入日:2019/3/3
入手場所:RARE 高円寺店
購入価格:500円
寸評:上のYAS-KAZ氏が、作編曲家・吉川洋一郎と組んで制作した暗黒舞踏山海塾のための舞台音楽集です。この時期、このタッグにくわえピアニストの加古隆氏も山海塾のために音楽を制作しており、WAVE傘下のレーベルWSPから数枚のリリースがありました。ジャケが似たり寄ったりなので、いつも「あれ、これ持ってたっけ…?」と店頭で煩悶することになります。吉川洋一郎氏は一時期ヤプーズの鍵盤も担当していた才人で、NHKドキュメンタリーのサントラなどに秀作の多い人なのですが、ここでは舞踏音楽ということで普段の作風よりシリアスな色合いが濃く、かなり聴き応えのあるスコアを制作しています。ボーカルで秋吉みちる(マンデイ満ちる)が参加していますが、どういう繋がりなのだろうか…。こういう舞台向けサントラCDには、数多くアンビエントニューエイジ的傑作が隠れていると思われるので、今後とも掘っていきたい心つもりです。

 

12.

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アーティスト:柴野さつき
タイトル:rendez-vous
発売年:1991年
レーベル:NEWSIC
購入日:2019/3/3
入手場所:RARE 高円寺店
購入価格:500円
寸評:この『CDさん太郎』で度々その名が出てくるのが、現在のニューエイジリバイバルを推進してきた中心的存在のVisble Cloaks。既にアナウンスされている通り、来月にリリースされる彼らの新作は、日本の作家尾島由郎と柴野さつきをフィーチャーしたものになるということで、大変期待が膨らみます。これはその女性ピアニスト、柴野さつきによるパスカル・コムラード・カバー集です(プロデュースは尾島由郎氏で、リリース元は氏の作品も発売している青山スパイラル傘下のNEWSIC)。これ以前にリリースしているエリック・サティ集がマケプレ等でかなりの値段に跳ね上がっていることもあって、CDオンリーでのリリースとはいえ、このコムラード集もまあ簡単には手に入らないだろうなあと思っていたところ、モスキート音が駆け巡るRARE高円寺店のイージーリスニング・コーナーでゲットしました。これは嬉しい。パスカル・コムラードといえば、フランスを代表するアヴァン・トイ・ポップの大家ですが、ここでは元のトイ・ミュージック感を活かしながらも、よりエレクトロニック〜アンビエント的な色彩が強く、実に2019年的ムードです。そしてなにより柴野氏のピアノ演奏が素晴らしく、コムラード曲のキッチュな表皮の奥に潜むノーブルな要素を美しく引き出しています。また、自身によるフランス語のモノローグなども交え、90年代初頭のあの時代、フランス文化に対して日本文化が抱いていた爽やかな憧憬が描き出されているように思います。

 

次回へ続く…