CDさん太郎 VOL.8 2019/3/6、8、10 購入盤

こんにちは。本記事は、<次のレアグルーヴはCDから来る>を標語とする(?)、CD特化のディグ日記シリーズ「CDさん太郎」の第8回目になります。今回は2019年3月6日、8日、10日に、それぞれ東京・吉祥寺、渋谷、三鷹で購入したCDを計11枚紹介します。

三鷹の「パレード」というお店、(行きつけている散髪店が近隣にあるので)定期的に訪れているのですが、実に名店です。このところどんどんとその姿を消しつつある、いわゆる「町のレコード屋さん」で、オールジャンルを幅広く扱い、セレクトされた廃盤やレア盤などよりベーシックな有名盤や帯付き日本盤を多く置く店なのですが、とにかくその商品管理の質が高く、盤質表記も非常に厳密。また、行く度に「こんなアイテムがこんなお手頃価格で!」という発見もあり、常連客が多数いるのも納得のお店です。店主の方は、数年前に惜しくも閉店した高田馬場の名店「タイム」で修行を積み1986年に独立、パレードを開店されたらしいです。思えばタイムもとても素晴らしいお店でした。ご夫婦でやられているようなのですが、お二人ともとても優しく、ヒーリングポイントも高いです。永く地域の音楽文化へ貢献してきたお店だけが醸し出せる雰囲気がありますね。是非お近くへ寄った際は訪ねてみてください。もちろんCDも充実しています。


本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

1.

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アーティスト:ジョン・C・リリィ/リミックス:PBC
タイトル:◀エコ▶[地球暗号制御局]
発売年:1993年
レーベル:八幡書店
入手場所:吉祥寺 よみたや
購入価格:300円
寸評:吉祥寺駅南口を出て井の頭通りを東に少し行ったところに店を構える硬派な古書店「よみたや」。その店頭ガレージセール箱にて発見。ジョン・C・リリィ氏は50年代から活動する米国の脳科学者で、ライフワークだったイルカとのコミュニケーション研究が映画『イルカの日の』のモデルになったことでも有名。著書も多数ある方ですが、このような音楽作品があるとは知りませんでした。これは、日本のオカルト系出版社「八幡書店」がリリースした、氏のモノローグに放送作家などとしても活動する谷崎テトラ氏による日本のテクノ・ユニット「PBC」がトラックを付けた作品。タイトルにある「エコ=E.C.C.O.」とは「地球暗号制御局」のことで、我々には通常偶然だと思われるものも実はこの高次的存在たる「エコ」によって司られているとする独特の思想が展開されます。言ってしまうなら相当にオカルト臭の強い内容なのですが、肝心の音楽がかなり良く。PBCは近年活動再開して国内フェスなどにも出演していますが、ここでの音楽は彼らならではのインダストリアル&アンビエントな絶妙のエレクトロニック・ミュージック。ピエール・アンリをミニマル化したようなミュージック・コンクレート的楽曲もあり、それらの先鋭性もよい。もちろんイルカの声も収録。本作は94年に米のアンビエントレーベル<silent>からも発売されているようです。

 

2.

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アーティスト:AMAHORO
タイトル:Flowering of the Spirit いのちの花
発売年:1995年
レーベル:アマホロミュージック
入手場所:吉祥寺 よみたや
購入価格:300円
寸評:コラ/シンセサイザー奏者の川岸宏吉氏とインドの弓奏弦楽器エスラージ奏者の向後隆氏によるニューエイジ系ユニットAROHOROによるファーストアルバム。こうした民族楽器系ニューエイジにありがちな、有名曲をなんとなく演奏してお茶を濁す的なものではなく、全編オリジナル曲。しかも数曲では川岸氏がボーカルもとるという意欲作です。シンセサイザー使いといってもエレクトロニックな質感はほぼなく、色付け程度で、あくまでコラとエスラージのアンサンブルを楽しむロハシーもの。CDを再生する前、ボーカル入りの旨をみて一瞬嫌な予感がしたのですが、聴いてみると清廉でフォーキーな魅力があり、ニューエイジ系のボーカル物によくある抹香臭さや芝居臭さはありません。ラーガ調のM6「ハレルヤソラ」がとくに良い。

 

3.

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アーティスト:Chris Thompson
タイトル:Chris Thompson
発売年:2001年(オリジナル 1973年)
レーベル:Scenescof Records (オリジナル The Village Thing)
入手場所:ディスクユニオン 渋谷中古センター
購入価格:240円
寸評:クリス・トンプソンニュージーランド出身のミュージシャン。渡英後73年にヴィレッジ・シングからリリースした1stアルバムが本作。ヴィレッジ・シングのオリジナル盤は目玉が飛び出るほど高いのですが、CD再発されているのを今まで知らず今回偶然発見し勇んで購入。UKフォークにハマっていたころ、マジック・カーペットというユニットの作品がとくに好きでよく聴いていたのですが、本作にはそのマジック・カーペットのメンバーが参加しているというのもポイントが高いです。ラーガ調アシッド・フォークの名盤と言っていいと思います。キース・クリスマス、ロビン・スコットなどとも比肩すべき存在かなと…。ギターも相当に巧いですね。ボーカルはややニック・ドレイク調。

 

4.

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アーティスト:Mark Thompson
タイトル:Open Windows Empty Rooms
発売年:2012年(オリジナル 1982年)
レーベル:BIG PINK (オリジナル Never Summer Productions)
入手場所:ディスクユニオン 渋谷中古センター
購入価格:340円
寸評:似たような名前の人が続きますね。このマーク・トンプソンは米コロラド州出身のシンガー・ソングライターで、本作の前年リリースとなる1stアルバムがアシッド・フォーク名盤としてファンには有名な方です。その1stはマイケル・アンジェロなども思わせるサイケデリックで奇妙な浮遊感ある名盤でわたしも愛聴しているのですが、この2nd、いきなり冒頭からスリージーなギターとタイトなドラムが主導するストリートロックで、この人にそういうものを求めてなかったので面食らいました(ストリートロック、大好きなんですけど)。基本そういった路線の曲が多いので聴きながらメゲそうになりますが、1stに通じる弾き語り曲はやはり素晴らしいですね。儚げなボーカルが◎。

 

5.

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アーティスト:Mike Williamson
タイトル:Mike
発売年:2010年(オリジナル 1978年)
レーベル:BANDIERA MUSIC (オリジナル SELECT MUSIC PRODUCTIONS)
入手場所:ディスクユニオン 渋谷中古センター
購入価格:340円
寸評:米ポピュラー系シンガー、マイク・ウィリアムソンの2ndアルバムです。次作3rdがライトメロウ〜AORの隠れ名盤として評価されている人で、僕もその3rdを愛聴しております(例のミュージック・マガジン誌、AOR〜ヨットロック特集の個人ランキングでも30位以内にいれるかどうかかなり迷った)。この2nd、AORというより、全編バリー・マニロウ的なポピュラーボーカル風で、ライトメロウ的視点からは若干の物足りなさがありますね…。ですが、M2「Starry Night」は準キラーな感じで可。しかしこの人の声、相当ジョン・セバスチャンに似てますね。あとこのCD、なぜかマスタリングレベルが異様に小さくて減点。

 

6.

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アーティスト:吉田弘
タイトル:キャットコール
発売年:1991年
レーベル:キングレコード
入手場所:ディスクユニオン 渋谷中古センター
購入価格:140円
寸評:ライトクラシック系のバイオリニスト、吉田弘子の3rdアルバム。毳々しいジャケからは想像の難しいスマートなフュージョン路線のアルバムです。ラテンテイストの曲がいくつか入っているので、そのあたりがこのジャケたらしめているのでしょうか。こうしたライトクラシックmeetsフュージョンなものは相変わらずいろいろ買っているますが、これはニューエイジ色が希薄な分、2019年基準だとギリギリな感があります。直居隆雄、天野正道といったアニメ〜劇伴界の作家が作編曲を担当、松本峰明(pf.)、渡辺直樹(ba.)、市原康(Dr.)、塚山エリコ(syn.)といったフュージョン系のミュージシャンがバックを努めているのですが、なぜか数曲でルーファスのベーシスト、ボビー・ワトソンが加わっていて喫驚しました。何故。なお吉田弘子さんは現在も活躍中で、よりクラシック寄りの演奏活動を行っているようです。数年前にはピアソラ集もリリースされた模様。

 

7.

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アーティスト:結城比呂
タイトル:Prism
発売年:1998年
レーベル:日本コロムビア
入手場所:GEO三鷹
購入価格:180円
寸評:90年代初頭から活動する男性声優による、98年リリースのオリジナル歌唱アルバム。作編曲陣は見良津武雄、鶴由雄、甲斐完治、安西史孝などで、結城氏自身のペンになる曲も3曲収録されています。基本的には当時のミドルオブロードなJ-POP路線(ZAINとかビーイング系の香り)なのですが、M5の「ねむれない夜」はなぜかパーシー・スレッジ「男が女を愛するとき」やプロコル・ハルム「青い影」的な、メンフィスソウル調バラードで面白いです。他、M6「Night Song」はさすがの安西史孝ワークと思わせるライトメロウバラード。出色はM8、同じく安西作編曲&シンセプログラミングのシティポップチューン「LADY」。結城氏のスムースなハイトーンボイスとこうしたアップナンバーの相性はとても良いですね。この一曲だけでlight mellow部案件かと思われます。

 

8.

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アーティスト:SECRET CRUISE
タイトル:TELL YOU WANT
発売年:1996年
レーベル:エピックソニー
入手場所:三鷹 パレード
購入価格:500円
寸評:これぞ今回の一押し盤。元シャムロックの高橋一路によるソロプロジェクト「シークレット・クルーズ」によるセカンドアルバムです。シャムロックといえばネオモッズをルーツとする和製スタイル・カウンシル的なポップスを量産した名ユニットですが、その頃からあったUKソウル〜メロウ志向により特化したのがこのシークレット・クルーズだと言えると思います。帯には「Japanese AOR会心作」とありますが、その惹句通りUKソウル〜アシッド・ジャズなテイストに加えてもっとオーセンティックなAOR感覚が多く注入されているように思います。強いて言えば、オリジナル・ラヴをよりAOR寄りにした感じでしょうか。そういった連想するワードを並べてみるだけでも、この作品の魅力が伝わるのではないかと思いますが、何よりも楽曲自体の出来が良いということが最大のポイントかと感じます。全編に渡って決してスキを見せることのないメロウチューンのオンパレードです。プロデュースは高橋氏自身、バック演奏には大竹徹夫(key.)、植田博之(Ba.)、成田昭彦(dr.)など凄腕スタジオミュージシャンたちを迎え、誠に盤石。ほんと素晴らしい盤だなあとおもい、さらなる情報を求めネットを回遊していたら過去既にハタさんの「シティ・ポップ記録簿」に登場しており褒められていました。得心。

 

9.

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アーティスト:安西史孝、小椋佳薬師丸ひろ子
タイトル:レディ!レディ オリジナル・サウンドトラック
発売年:2013年(オリジナル1989年)
レーベル:ユニバーサルミュージック(オリジナル イーストワールド)
入手場所:三鷹 パレード
購入価格:500円
寸評:太田圭監督、薬師丸ひろ子桃井かおりダブル主演による89年公開のトレンディラブコメディ『READY! LADY』のサントラ盤です。2013年頃ユニバーサルから、どういう基準で選抜されたのかよくわからない過去映画サントラの廉価再発ラッシュがあったのですが、その中の一枚です。当時は詳細タイトルまでよくチェックしていなかったので、まさかこんなものまでが紛れていたとは知らず。この映画は未見なのですが、サントラが安西史孝ワークスの隠れ名盤という情報を目にしていたので、いつか欲しいなと思っていたのでした。のっけから安西氏らしいシンセ使いのエレクトロブギーが飛び込んできて、実にカッコいい。かと思えばオールドタイミーなディキシーランドジャズのようなものや教会音楽風のもの、スリラー的演出をもり立てるのであろうアヴァンかつプログレッシブなもの、スーパーで流れていそうなシンセボッサ、ピアノバラード、タブラを導入したミニマルファンクなど、相当に多彩。小椋佳との共作「Dear Painter」のニューエイジ歌謡感も◎。テーマ曲の高見沢俊彦作・薬師丸ひろ子歌「Wind Boy」の歌謡ニューエイジ感も悪くないですね。

 

10.

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アーティスト:玉木宏樹とMIND MESSENGERS
タイトル:音楽浴 高原…はるか空よ
発売年:1992年
レーベル:日本コロムビア
入手場所:三鷹 パレード
購入価格:400円
寸評:玉木宏樹&S・M・T名義での名盤『タイム・パラドックス』(75年作)がプログレッシヴロックファンの間で評価が高い、東京芸大出身の作曲家/バイオリニスト玉木宏樹。ムーグシンセサイザーとバイオリンが融合するその『タイム・パラドックス』のインパクトが大きいため、クラシック界での活躍が忘れられがちですが、純正律を用いた作曲などでその世界でも大きな足跡を残している方です。これは、もしかするとシンセサイザー使いのアヴァンエレクトロニック音楽が入っているのか?と思って買ったヒーリング音楽集なのですが、残念ながらそういったものは入っておりませんでした…。ハープ、二胡、タブラ、ギター、ケーナチャランゴ、フルート、オカリナ、チェロ、そして自身のヴァイオリンからなる室内楽風音楽で、これはこれで上質です。ちなみに、2012年の逝去後も氏のTwitterアカウントは更新され続けており、ひたすら楽理についてつぶやいていて凄みがあります。スタッフさんが遺志を継ぎ運営されているようです。

 

11.

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アーティスト:ロマ・イラマ
タイトル:ブガダーン グレイテスト・ヒッツ 1975〜1980
発売年:1995年 (オリジナル 1975年〜1980年)
レーベル:オルターポップ(オリジナル SONETA CORPORATION)
入手場所:三鷹 パレード
購入価格:600円
寸評:オルターポップが90年代に展開していた「ロード・トゥ・ダンドゥット」シリーズの第一弾となった、大スターのロマ・イラマの初期音源を集めたCD。ダンドゥットはインドネシアの大衆音楽で、ここ日本でも90年前後のワールドミュージックブームの折、<女王>エルフィ・スカエシやヘティ・クース・エンダンの作品が沢山紹介されたことで、お馴染みでしょう。私はオルターポップによるこのシリーズのCDを数枚所持しておりますが、その丁寧なコンパイル仕事やライナーの充実ぶりに非常なリスペクトを捧げております。男性シンガーでは最大のスターといえるロマ・イラマのこのCDも、監修の田中勝則氏がロマ本人とやり取りの上丁寧に制作したもので、そのアーカイバーぶりに畏敬の念を覚えます。内容はもちろん素晴らしく、ダンドゥットの精髄を心ゆくまで味わえるものになっています。

 

次回へ続く…