CDさん太郎 VOL.11 2019/3/30〜4/6購入盤

こんばんは。本記事はCD特化のディグ日記シリーズ「CDさん太郎」の第11回目になります。今回は2019年3月30日に御茶ノ水、31日に下北沢、4/2に吉祥寺、4/6日に神保町で購入したCD10枚、そして知人から借りたCD2枚を紹介します。相変わらず未リスCDが積み上がりつつあるので、ペースを上げていきたいところです。

唐突に告知です。
4/17(木)の20:00〜22:00まで、コメカさんパンスさんによるテキストユニットTVODと、音楽ライターの高岡洋詞さんがホストを務めるweb番組「TVODの焼け跡テレビ #3」にゲスト出演します。
テーマはずばり「CD」。本ブログ内容とも関連する話をさせていただくことになるかと思いますので、ご興味ある方は是非ご覧ください。

ご視聴は以下リンクより。

http://ttps://www.lotuslotus.tv/video/843


本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

1.

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アーティスト:ヘンリー川原
タイトル:臨死体験 / NEAR DEATH
発売年:1992年
レーベル:グリーンエナジー
入手場所:ディスクユニオン 御茶ノ水駅前店
購入価格:480円
寸評:一口に俗流アンビエントと言っても、その中には様々な傍系ジャンルがあるのですが、オカルティズム的色彩の濃いものも一時期大量に発売されていました。一連のオウム事件がピークを迎える95年の以前は、こうした商品が巷に溢れていたのでした。私個人としても、小学生時分スーパーでそういう怪しげなCDが売られていた様子をおぼろげながらに覚えています。このグリーンエナジーレーベルのヘンリー川原氏による「サイコジェネシスシリーズ」はその中でも最も代表的な存在と言えるかもしれません。そもそもヘンリー川原氏って何者なのか?という話なのですが、ネットを調べてみても確定的な情報に乏しく、推測の枠をこえませんが、オカルト実践家・研究家、スピリチュアリスト、ライターなどとして当時活動していた方のようです。どうやら氏はその後カンボジアに移住、レストラン経営などを行い成功を収められたようですが、現在は亡くなられているようです。トリックスター感。本作は、臨死体験中の人間の脳波をもとに制作したCDということで、集中して聴くとある種の解脱効果がある(らしい)というもの。音楽的にはかなり地味なシンセサイザードローンで、低音フレーズがウオンウオンずっと鳴っているのがやや特徴的か。オカルティックな雰囲気はそこまで強くなく、むしろ全般的にリラクゼーション向けの穏やかな音楽です。ですが、M1の1:20過ぎ、マスタリング〜プレス工程上の事故なのではないかと思うくらいの大音量の「キー!!!」というけたたましいノイズが一瞬入っており、かなり心臓に悪いです。ジャケットが強烈にタンジェリンドリームの『フェードラ』っぽいのですが、音楽的にもおそらく影響を受けている感があります。色々な意味で時代の徒花的俗流アンビエント

 

2.

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アーティスト:鈴木雄大
タイトル:STREET OF ECHOS
発売年:1987年
レーベル:ファンハウス
入手場所:ディスクユニオン 御茶ノ水駅前店
購入価格:100円
寸評:かつて東芝EMI在籍時代、井上鑑稲垣潤一安部恭弘と並んで「ニューウェーブ四人衆」の1人として売り出されていたという鈴木雄大井上鑑にはちょっとその傾向がある気もするけど、「ニューウェーブ」は違うだろ、と今となっては思いますが。むしろ錚々たる「シティポップ四人衆」です。本作はその鈴木氏が87年にリリースした4枚目のアルバム。ここでの聴きものは、本人による卓越したソングライティングはもちろん、なんといっても4曲のアレンジを久石譲が手がけているということでしょう。この時期の久石譲といえば、映画音楽作曲家としてのブレイク前、本人名義作品でもJ-AOR的作品を作っていた頃なので、鈴木雄大の持ち味ともバッチリハマっています。特にM2のいかにも久石譲的風情漂う湿性のメロウネス。たまりませんね。シンセサイザーワークも冴えています。他M5、6も良い。その他の曲は椎名和夫、くりはらまさきが手堅くアレンジを担当しています。バックバンドも豪華。上原裕、長谷部徹、岡沢茂、伊藤広規芳野藤丸土方隆行浜口茂外也、ペッカー、ジェイク・H・コンセプション、土岐英史等、相当に豪勢な顔ぶれ。

 

3.

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アーティスト:藤田朋子
タイトル:THE WOMAN IN ME
発売年:1989年
レーベル:PONY CANYON
入手場所:ディスクユニオン 御茶ノ水駅前店
購入価格:380円
寸評:「THE MAN IN ME」はボブ・ディラン、「THE WOMAN IN ME」は藤田朋子です。私の世代ですと、『渡る世間に鬼ばかり』における聞き分けのない末娘役が大きな印象を締めており、歌手として活動していたことはほとんど顧みられることのないと思われる彼女ですが、このデビュー作含め、ライトメロウ的には傑作揃いなのでした。この1st作で何より特筆すべきが、全編を横倉裕がプロデュース/アレンジを務めているということでしょう。YUATKA名義のGRP盤を以前本「CDさん太郎」でも紹介した横倉氏、ここでも抜群の音楽センスを爆発させています。ブラジリアン風味は抑え気味で、落ち着きのある大人のAORサウンドを聴かせてくれます。また、藤田朋子の英語歌唱も実に巧く、しかも味わい深い。女優さんの余技の粋を軽く越えていますね。Oscar Castro Neves他、横倉氏ゆかりの外国人ミュージシャンが多数参加し、派手すぎず地味すぎず、実に素晴らしい演奏を聴かせてくれます。ずばり名盤。

 

4.

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アーティスト:PETER MERGENER/MICHAEL WEISSER
タイトル:PHANCYFUL-FIRE
発売年:1988年(オリジナル 1985年)
レーベル:キングレコード(オリジナル Inovative Communication)
入手場所:ジャニス 2号店
購入価格:580円
寸評:あまり広く知られてないようなのですが、惜しくも閉店してしまったレンタルCDショップのジャニス、実は中古販売専門店舗は変わらず継続営業しています。これはそこで見つけたニューエイジ名盤。SOFTWARE名義(なんて今っぽいネーミングなんだ!)による活動でも知られるPETER MERGENER & MICHAEL WEISSERのシンセサイザー奏者二人による85年作で、他一連作と同じくKlaus Schulze主宰 のレーベル、Innovative Communicationからリリースされたものを、日本のキングレコードが国内盤化したものです。このInnovative Communication、ニューエイジ全盛期を代表するレーベルで、かなりのリリース数を誇る名門。一時期はLP含めめちゃめちゃ安価で売っていたのですが、このところのニューエイジブームもあり、徐々に店頭で見かけことが少なくなってきました。本作も全編非常に素晴らしく、今の空気にドンピシャと思います。ジャーマンプログレ〜ノイエ・ドイチュ・ヴェレ的なストイシズムと、柔和なニューエイジ〜ヒーリング感が理想的に融合しており、プリミティブなテクノとしても素晴らしい。SOFTWAREの各作、並びにInnovative Communicationのカタログ、出来うる限り集めていこうと思っています。

 

5.

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アーティスト:E-ZEE BAND
タイトル:HOT JAM
発売年:1992年
レーベル:ロックイットレコード
入手場所:ディスクユニオン 下北沢店
購入価格:280円
寸評:前回の「CDさん太郎」にも登場した、ジャパニーズファンクポップバンド、E-ZEE BANDの3rdアルバム。翌年にメジャーからリリースした大名曲「My Girl」で本格ブレイクを果たす前夜ですが、前回挙げたファーストに比べるとかなりこなれてポップ路線に寄せてきている印象を持ちます。1stにあった粗野で猥雑なエレクトロファンクと次作以降の振り切れたポップ路線の架け橋という感じで、今聴くと若干の物足りなさを覚えます。スクラッチの入れ方とか、いかにもニュージャックスウィング以降の感覚なんですが、どこかトッポい(さかしまな表現ですが、デビュー当初のSMAPっぽくもありますね)。それが魅力だとは思うのですが。その中でもシティポップ調のミディアムM4「Shady Dance」、マーヴィンゲイ風スローM8「それでも僕は、一層僕は」辺りはかなり良く、その後のブレイクを期待させてくれます。このバンドの魅力はやはりこういうヒリヒリした青さ漲るメロウチューンだよな、と思わせてくれます。岡村靖幸調の高速ファンクM6「Boys meet Girl」も面白い。思いっきりレニー・クラヴィッツなM7「STAND UP!!」の時代感に微笑。

 

6.

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アーティスト:麗美
タイトル:パンジー
発売年:1985年
レーベル:日本コロムビア
入手場所:ディスクユニオン 下北沢店
購入価格:200円
寸評:松任谷夫妻が全面バックアップした麗美の初期三部作、これで全て揃いました。ユーミン提供曲に特に顕著ですが、ビブラートを極力排した歌唱法にやはりユーミンライクな味わいを感じます。本当に心地よい歌声ですね。正隆氏のアレンジも過不足なく曲を盛り上げます。三部作中ではもっとも地味な印象を受けますが、全てA級クオリティ。現在的ライトメロウ基準ですと、ユーミン曲よりむしろ実姉堀川まゆみ提供曲の方に面白味があるかもしれません。シティポップリバイバルの中でも見過ごされている好作品といえると思います。そのため初期三部作はLP、CDともに相場的にも非常な安価で手に入りますヨ。

 

7.

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アーティスト:THE WIND
タイトル:DANDY STEERING
発売年:1989年
レーベル:日本コロムビア
入手場所:ディスクユニオン 神保町店
購入価格:780円
寸評:国外からのJ-FUSIONへの熱い注目も伴い、現在空前の鳥山雄司リバイバル真っ盛りですが、ソロアルバム以外はまだまだ掘られていない感があります。このTHE WINDは、鳥山雄司を中心に、森村献、石黒彰、本田雅人美久月千晴というメンツが参加したプロジェクト作。作曲も数人で分け合っており、同時期の鳥山雄司のデジタルフュージョン的質感よりもだいぶイージーリスニングよりの作風となっています。そこに若干の物足りなさも感じますが、このCDのBGM的効能を考えると、物足りないくらいがちょうどよいのだろうとも思います。ブックレットにはクルマや大人の恋についてのポエムが掲載されており、強烈な時代感を発散しています。個別の楽曲としてはミディアムファンクのM6、打ち込み主体のファットなファンクM7、山川恵津子作曲のトロピカルテクノサンバM8あたりが出色です。

 

8.

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アーティスト:DOOPIES
タイトル:DOOPIE TIME
発売年:1995年
レーベル:フォーライフ
入手場所:ディスクユニオン 吉祥寺店
購入価格:280円
寸評:「そんな名盤を持っていなかったのかよ案件」です。ヤン富田氏による架空のバンド「DOOPIES」による唯一のアルバム(他にEPあり)。スペースエイジバチェラーパッドミュージックやラウンジ、モンドミュージックブーム華やかりしあの頃を象徴するような盤で、当時兄か姉の友人がこの盤の話をしていたのを覚えています。今聴くと、このいわゆる「90年代的編集感覚」はかなり古色蒼然とたものだなあ…という印象ですね(主にこの“CDさん太郎”で取り扱っているのは、このDOOPIESなどの「オルタナティブな編集感覚」の勃興で却って歴史から抹殺されてしまった知られざる<主流音楽>なのですが、そういったものが復権している現在の空気感からすると、どうしても当時の<オルタナティブ>はより古めかしく感じてしまうというのがあります)。しかしながら、ヤン富田氏仕事ということで当然ながらこのDOOPIESは当時乱発された雰囲気ラウンジモノとは一線を画しており、且つそもそもの音楽的骨格が強靭なので、今でも充分楽しく聴くことができます。当時、この声は誰なの?と話題になったボーカルですが、後にバッファロードーターの大野由美子さんの声をテープ変調したものだということが明らかにされました。

 

9.

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アーティスト:COLORED MUSIC
タイトル:COLORED MUSIC
発売年:2018年(オリジナル1981年)
レーベル:BETTER DAYS(日本コロムビア)
入手場所:ディスクユニオン 吉祥寺店
購入価格:1,280円
寸評:またしても名盤登場です。橋本一子と藤本敦夫によるユニットCOLORED MUSICは、ここに収録されている「Heartbeat」という曲をきっかけに現在世界的再評価が巻きおこり中です。僕は先に何故か、幻の2nd収録予定曲と未発表曲集を編んだ編集盤『INDIVIDUAL BEAUTY』をLPで入手し愛聴しているのですが、この1stをフィジカルとして所持しておりませんでした。今回お手頃価格で高音質CDを発見し、購入した次第。内容については既に色々な方が色々に言及されているので、今僕が付け足すことも特にありませんが、最高の一言ですね。バレアリック、ニューエイジ、シンセウェイブ、アンビエント、様々な角度から面白く聴くことの出来る名盤です。このような音楽が昨今まで熱心なファン以外に殆ど知られずにいたということに、不可思議と奇妙なロマンを感じます。

 

10.

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アーティスト:V.A.
タイトル:冬・の・贈・り・物 ジェントル・スノー
発売年:1992年
レーベル:アポロン
入手場所:ササキレコード社
購入価格:500円
寸評:この日、めちゃくちゃ久々に神保町界隈の老舗レコード店を回ってみたのでした。色んな意味で時が止まっており、感銘を受けました。案の定ほとんど収穫はありませんでしたが、唯一ササキレコード社2Fでこれを発見。季節物イージーリスニングというと基本的に夏を題材にしたものばかりなのですが、これは珍しく冬がテーマ。アポロンお得意の俗流アンビエントかと思いきや、それぞれポップスとして独立した個性を持つ楽曲が収められており、いい意味で期待を裏切られました。作曲家陣が実に豪華で、鈴木茂伊勢正三らが曲を寄せています。他、ボーカルに彩恵津子、ベースに小原礼、ドラムに長谷部徹、キーボードに国吉良一など、ライトメロウ的レジェンドが名を連ねています。各曲「冬」というコンセプトのもと無理やり寄せ集められたような感じで、統一感の欠如という面で制作意図を計りかねますが、鈴木茂作彩恵津子歌のバラードM2、鶴来正基作のジェントルなエレクトロファンク(冬…ですかねこれ?)M3、鈴木茂歌のロッキンAORM5などが聴きどころか。

 

【番外編】
以下、友人のhikaru yamada氏から借りたCD2Wをレビューします。

 

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アーティスト:ロルフ・クライン
タイトル:Restmill
発売年:1998年
レーベル:森企画

 

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アーティスト:ロルフ・クライン
タイトル:崩壊
発売年:1999年
レーベル:森企画

寸評:yamadaさん曰く、神保町古書店の店頭投げ売りコーナーで入手したというこちらのCD、色々調べてみてもその概要は霧に包まれています。ロルフ・クラインというドイツ出身ミュージシャンが日本移住後神奈川県湘南の自宅(?)スタジオにてコンピューターで制作したテクノ作ということのようです。ロルフ氏はかつて『音楽家のためのコンピューター入門』という本を上梓したと帯にあるのですが、その本の情報を突き止めることは叶いませんでした。ドイツの国民的商業ロックバンド「バースコントロール」のメンバーに同名のギタリストがいますが、音楽的にも世代的にも離れているので別人物かと思われます。この2作はほぼ同時期に制作されたもののようで、基本的に音楽傾向的にも近しい内容なのですが、ズバリ定義するならラウンジ風ハードコアテクノ、となるでしょうか。その時代がかった音は正直今聴くには結構キツイ感じもあるんですが、アートワークやブックレットのテキストの不可思議さに通じる無自覚の狂気のようなものがにじみ出ている瞬間がいくつもあり、なかなかおもしろいです。グリッド感の不整合、チージーな音色、レイヤーごとにバース意識がちぐはぐな感じ、いきなりフォーキーな詩情がもたげてくる妙に奥ゆかしいアンビエント感覚など、かなり興味深いです。yamadaさんは端的に「怖い」と表現していましたが、確かに頷けます。