【復活】CDさん太郎 VOL.17 2019/11/17 購入盤

大変ご無沙汰しております。約半年ぶりの「CDさん太郎」更新です。
当初、「戦争とかは起こらない限り続けていきたい」などと大きなことをいってしまったわけですが、大変不甲斐ないことに、全く更新が滞ってしまっておりました。
 6月には「CDさん太郎」関連のイベントなどにもお呼ばれしていたのに、その後急に止めてしまって、関係者の方々へも非常に申し訳ないなあ…時間をみつけていつか再開しなきゃなあ、などと考えてはや6ヶ月もたっているという。相変わらずの不精さ…。
 実のところを言うと、引っ越しや結婚など、公私ともども色々目まぐるし変化がありまして、単純に記事を書く時間が取れなかったという、何の意外性もない理由なのでした(その間、以前から集めていたCDの中から、サブスクで聴けるものは殆ど売ってしまったりということもありました)。

 そんな個人的事情をつらつらと書いていてもしょうがないので話題を変えます。
さて、この6ヶ月の間、CDディグを取り巻く状況はどのように推移してきたのでしょうか。私個人としても、若干の状況変化を感じていました。このブログを楽しみにしてくれているという奇特な方と新たに幾人か知り合う機会もあって、そういう方々は軒並み私と同じようなディグ生活を送っているのでした。
 CDのヘゲモニーが極端に低下して以来、今まで点々と各地に散らばっていたそういったみなさん(のCD偏愛)が、SNSを通して急に可視化されてきたような感もあったり。予てからの知り合いであるlightmellowbuの面々(我々が90年代編の選盤を努めた『レコード・コレクターズ』誌のシティ・ポップ・ムックの刊行という大きなトピックもありました)や「トレンディー歌謡」のanouta若山さんはもちろん、以前から8cmCDを掘ってらっしゃるDJ 610さんや関根圭さん。ラテンCDを各地で掘りまくり、DJも行っているshowgunnさん。「廃サロン」という新概念の元、図書館所蔵CDなども漁場とする若きディガーのながいさん。そして、「100円名盤」を求めて日々ニッチなCDを買いまくるデラさん。ほか沢山の方々……。
 そういったことが顕在化してきた一方で、例えば大きな話題となったele-king books刊の『和レアリック ディスクガイド』においてもCDオンリーeraの作品が数多く取り上げたり、webマガジンのbelong magazineにて、280円コーナーに眠る名盤(洋ロック中心でしたが)を再発掘するというそのものズバリの企画が始動したりと、メディア側からの発信にも面白いものがありました。
 管見ゆえ、見落としているムーヴや個人発信も多々あるはずですが、いずれにしても、このブログシリーズを立ちあげた当時に比べ、超低温が低温になった、くらいの活性化はあったのではないでしょうか…。もちろん、なにか大仰な使命感をもっているわけではなく、本当に単なる&ささやかな楽しみ(釣りの後、一杯やりながら家族に釣果を報告しているような感じ)なので、ダイナミックな話にするつもりはない(ならない)のですが、同好の方々が寄り会えるネット空間が醸成されるというのは、悪くないことと思います。

 前置きが長くなってしまいました…。
 本記事は、「CDさん太郎」の第17回目になります。今回は2019年11/17、東京・上野で購入したCDを計8枚紹介します。
(※前回の更新からこの間に購入した大量のCDについては、不幸なミッシングパーツとして掲載を見送らせていただきます…もちろん素晴らしい発見は少なくありませんでしたので、随時言及できればと思っていると同時に、いつかどこかで大規模発表できればと思っています)

 本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

1.

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アーティスト:V.A.
タイトル:松本一起ラブ・エッセイ・シリーズ Vol.2 夏のセントバレンタイン
発売年:1992年
レーベル:VAP
入手場所:ブックオフ上野広小路
購入価格:150円
寸評:著名作詞家・松本一起が監修&歌詞&ポエムを手掛けたサウンド・エッセイ・シリーズ全8作中の二作目。皆口裕子堀川亮、小山裕香、草尾毅という有名声優たちが歌とリーディングを務める、まさにCD全盛期に向けて「なんでも売れる」ようになっていた時代の産物。作/編曲を担当するのはex花伸で80年代からビーイング系のアレンジャーとして著名な葉山たけし。氏の作風に倣った健全なロックを想像していたところ、ミディアムメロウなシティ・ポップM1がのっけから流れてきて椅子から転げ落ちそうになるのだった。これは素晴らしいです!皆口裕子の不安定な歌唱とあいまって、めちゃくちゃ切ないティーン・シティ・ポップとなっています。挿入されるポエトリー・リーディングも、アルバムタイトル通り、夏の青春を謳歌する野球部のマネージャーの物語。当時どういう人が聴いていたんだろうか?M2、3はいかにもビーイング的なポップス。M4は、ドゥービー・ブラザーズなどを思わせるAORポップスで、悪くない。が、草尾毅によってリーディングされるポエムはかなり自己陶酔的でツライ。当時どういう人が聴いていたんだろうか?

 

2.

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アーティスト:梨木良成
タイトル:IMAGE WORK 調和への共振 5 川を聴く
発売年:1992年
レーベル:NASH MUSIC PUBLISHING
入手場所:ブックオフ上野広小路
購入価格:510円
寸評:相変わらずコツコツと買っている俗流アンビエントです。ロックバンドBuxのボーカルとして76年にデビュー、その後80年代から環境音楽家として活動していたようですが、どうやらその時期は自身名義のリリース物はなさそうです(あれば是非聴いてみたい)。これは、初となる(らしい)アルバム作品集「IMAGE WORK」シリーズの中の一作。哲学者の三浦俊彦が同シリーズ諸作を「環境音楽の最高傑作」と認定したということなのですが、そう言ったのはおそらく本当なのでしょう(客観的にみて最高傑作かどうかは別の話だが)。が、その実、この作品はかなり良質だと思います。アルバムタイトル通り川のせせらぎの音に導かれてパッド音が浮遊するM1。アブストラクトなメロディが寄せては返す12分超えのM2。一層スピリチュアルでニューエイジ色濃いアンビエントM3やM4など、かなり硬質で理知的な作風で好感が持てます。(ゆえに「俗流」感は少し薄いとも言える)。アンビエントDJをする際のセトリ入り確定で。ちなみに、同シリーズは他にも「森を聴く」「星を聴く」等、全10作品がラインナップさてれているようなのですが、どれもあまり見かけません。発売元が自身のインディー・レーベルだということもその希少性に寄与しているのでしょう。

 

3.

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アーティスト:Millie Face
タイトル:Millie Face
発売年:1996年
レーベル:Nature Records
入手場所:ブックオフ上野広小路
購入価格:150円
寸評:一般的には『機動戦士ガンダム00 スペシャルエディション』のテーマソングを担当したことで辛うじて知られているであろうユニット、Millie Faceによる(おそらく)デビューアルバムです。上記のテーマソングに抜擢される以前から地道にインディーズ活動を続けてきた人たちのようで、ここ最近でもライブを行うなど、活動を継続しているようです。メンバーはボーカルのMIKA HIGASHIとキーボード/プログラミング/プロデュースを担当するTETSUYA KUMAMOTOの二人。その編成や背景から同時期から活動するTWO-MIXなどを思い起こしますが、まさしくそういった志向性をもつユニットだといえます。どちらかというとわたしの漁場とは無関係な盤に感じられますが、そのミニマル極まりないジャケが得難いオーラを放っていたので購入してみました。正直言うと、アップテンポなロック風楽曲やバラードも多く今では結構ツライものがあるのですが(すみません)、全体に敷き詰められているシンセのサウンドに「おっ!」と思わせるものが少なくなく、これはなかなかの好盤といっていいのではないでしょうか。M3はかなり上質なアンビエント・テクノ風トラック。M5はガムランの影響を感じさせるエスニック・テクノ。M8、11、12あたりはちょっと川村万梨阿などにも通じるようなニューエイジ・ポップ。そう、曲名も含め全体にニューエイジ感濃厚なのが好ましいのでした。


4.

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アーティスト:川崎真弘
タイトル:「RAMPO」オリジナル・サウンドトラック
発売年:1994年
レーベル:日本コロムビア
入手場所:ブックオフ上野広小路
購入価格:150円
寸評:「映画生誕100年・江戸川乱歩生誕100周年・松竹創業100周年記念作品」として公開された映画『RAMPO』のサントラ。この作品は未見なのだが、黛りんたろう監督版と、それに納得が行かなかったプロデューサー奥山和由が作り変えた版2つが存在し、当時同時公開でロードショーされたといいます。そんなことってあるんだ、と思いつつ、うっすらとした記憶として、TV等で本作の予告を目にしたことをが思い出されてきました。子供心にはただ「不気味」という印象でした…。サントラを手掛けたのは80年代から映画音楽を制作してきた川崎真弘。元はイエローやカルメン・マキ&OZ、金子マリ&バックスバニー、竜童組などで活躍したキーボード奏者ですが、映画音楽作家としてはロック的な出自はほとんど感じさせず、この作品でも主に荘厳なストリングスを用いた重厚な音楽を作り上げています。…ということは、あまり私の趣味には合致しないのわけですが、ミステリー/ファンタジー映画ということもあり、ところどころおどろおどろしいドローン音楽が聞けて嬉しい。江戸川乱歩モノということで、お馴染みの和洋折衷趣味的世界も顔を出すのですが、このあたりはまだ再評価困難だなあ、と思ってしまいます。冒頭、ミルドレット・ベイリー歌による「オール・オブ・ミー」から始まるので、CD中身違いを疑いますが、これがテーマ曲的な扱いだった由。

 

5.

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アーティスト:SHIHO
タイトル:Love Sequence
発売年:1991年
レーベル:日本コロムビア
入手場所:ブックオフ上野広小路
購入価格:290円
寸評:当時全国の学園祭を騒がせた(?)というセクシーアイドル坂本志穂が、歌手としてSHIHO名義でリリースしたおそらく2枚目のアルバム。全編この時代の典型的なバブリー・ハイエナジー歌謡で、一曲くらいなら付き合えるのですが、全編その調子で突き通されるとなかなかツライものがあります。いくらエレクトリックかつダンサブルなアレンジを施したとしても肝心の楽曲の歌謡性が濃厚で、そのあたりもツライ…。アレンジを手掛けるShimizu Yasuoとは、ジョー山中などへ曲提供を行っている人物と同じでしょうか…?ほか、すかんち小川文明、HR系ギタリストの高橋マコト(BOOWYのドラマーとは同名異人)、ムーンライダーズ界隈からデビューしたプラチナKITの金津ヒロシなどが参加しています。M1に参加しているラッパーMC・Yにいたってはその検索困難性もあり、まったく何者かわかりません(ラップも超チャラい)。

 

6.

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アーティスト:岡野弘幹 with 天空オーケストラ
タイトル:天空 〜Heaven in the KOO
発売年:1997年
レーベル:プレム・プロモーション
入手場所:ブックオフ上野広小路
購入価格:290円
寸評:和ニューエイジの巨匠・岡野弘幹による天空オーケストラとの97年作。この人の作品は店頭で見かけることが結構多いのですが、その内容の高水準ぶりの割にあまり話題にしている人が少ないような印象もあります。おそらく、現在に続く和ニューエイジアンビエントの再評価があくまで電子音主体で展開されてきたことと無関係でないでしょう。岡野氏本人もブズーキやフルートを演奏し、「天空オーケストラ」も、シタール、タブラ、ディジュリドゥ、ジンベ等、といった生楽器編成。しかし、即興によって奏でられるその音楽は極めて上質で、安易に電子音を取り入れたニューエイジ作品よりもむしろ真摯であると言えると思います。全曲極めてメディテーショナルで、いわゆる「トライバル」な味わいもあるのですが、エスニシティの欺瞞に陥ることを回避するようなストリクトさで貫かれているのでした。例えば、DJミックスで使用する場合は、これらにプリミティブなモジュラーシンセ音を混ぜ込めばとたんに現代の聴取感覚に訴えうるものになるのではないでしょうか。帯には細野晴臣氏からの賛辞も掲載。

 

7.

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アーティスト:古村敏比古
タイトル:Gypsy Planet
発売年:1991年
レーベル:フォーライフ
入手場所:ブックオフ上野広小路
購入価格:290円
寸評:明治学院大学在籍中からサックス奏者として一線で活動する古村敏比古の名は、浜田省吾のライブバンドメンバーとして長く活躍していることで一般的にも知られているでしょう。元々は金子マリ&バックスバニーのメンバーとしても活躍していたという彼ですが、織田哲郎とのユニット「織田哲郎 & 9th IMAGE」などをへて現在の地位を確立したとの由。ハマショーの相棒ということは、ブルース・スプリングスティーン&Eストリートバンドにおけるボスとクラレンス・クレモンズの関係性を彷彿とさせますが、このファーストソロ作はクレモンズのロッキッシュなそれとは異なります。ジプシー音楽やケルト音楽などを消化した音楽性は、ジャケットの印象に反し、むしろプログレに近い気がします。たとえるなら…コンポステラとかを思い切りポップ寄りにしやような…。が、今聴きたいのは残念ながらそういうのではないのでした。そんな中で、M5、6は思い切りデヴィッド・サンボーン〜ケニーGライクなストライク・フュージョン。ボーカル曲M9は浜田省吾フュージョンバンドに参加したような雰囲気。出色はM10のプログラミング・スポーツ・フュージョン。いななくサックスとバキバキの打ち込みの対比が面白いです。中山信彦、中西俊博美久月千晴、古田たかし、梁邦彦などの手練がバッキングしています。

 

8.

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アーティスト:V.A.
タイトル:螺旋のかけら ―オリジナルアルバム―
発売年:1993年
レーベル:パイオニアLDC
入手場所:ハードオフ上野御徒町
購入価格:110円
寸評:橘皆無による転生ものファンタジー漫画『螺旋のかけら』のイメージアルバム。オリジナル楽曲とドラマが交互に収録されています。音楽を手掛けたのは、近年、大友克洋原作『童夢』のサントラが国内外で高騰するアニメ系音楽作家の伊豆一彦。氏らしいニューエイジ的作風を期待して買ったのですが、(全曲ではないが)まさしくアタリ。特にM5のサスペンスフルな和レアリックインストが相当に素晴らしいです。逆に声優陣による歌モノは当たり障りのない出来栄え。一部歌唱の壊滅的なマズさとあいまって、聴き通すのがツライ曲も。その中では、M9はギリギリでシティ・ポップに含めることができるメロウな曲調(が、これが一番歌唱のクオリティが低い)。また、M11は何故か英語詞のAORバラードで、悪くない出来栄え。また、ドラマにも一応(?)劇伴的な音楽が付いており、時折それが絶妙にバレアリックなので油断がなりません。トラックのみのデータがほしいですね。

次回へ続く…。