CDさん太郎 VOL.19 2019/12/2、4、5 購入盤

こんばんは。復活後第3弾の「CDさん太郎」です。
今回は2019年12月2、4、5日にそれぞれ東京・高円寺、吉祥寺、高田馬場で購入したCDを計11枚紹介します。
本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

f:id:shibasakiyuji:20191215180742j:plain

 アーティスト:V.A.
タイトル:エキゾチカ慕情
発売年:1991年
レーベル:ソニー
入手場所:ブックオフ新高円寺
購入価格:290円
寸評:以前から探していた盤。これはお得な買い物でした。レゲエ界隈からの派生や細野晴臣チルドレンの活躍、渋谷系の勃興、ヤン富田の活動、マーティン・デニー来日、沖縄音楽ブームなどが混交され、90年代初頭に小さくないエキゾチック音楽ブームが興っていたことを知る大変貴重な資料です。後の『モンド・ミュージック』などに接続する潮流としても興味深く(実際『モンド・ミュージック』の主幹である鈴木惣一朗氏在籍のEverything Playも参加)、今も一線で活躍するミュージシャンの方々に若かりし頃の記録としても面白い。参加アーティストは、エマーソン北村、タッケナー・アンサンブル、ONE DPOPS、ピアニカ前田+キオト(from QUJIRA) feat.渡辺満里奈ネーネーズ、チエコ・ビューティー、Everything Playという面々です。チープなダンスホールエキゾチューンをキメるエマーソン北村氏は今と全く変わらぬヒップさで、深い尊敬の念が沸き起こります。この盤が時折アイドルオタク方面からも語られる要因である渡辺満里奈の参加曲は、なんと岡崎京子作詞。岡崎京子は帯にもコメントを寄せています「猿もおお喜び(笑)」とのこと。注目すべき作詞参加はチエコ・ビューティー曲においても。なんと高橋健太郎氏による歌詞なのでした。そして、今最もこの盤が注目されるべきなのは、なんといっても昨今国内外からの再評価著しいEverything Playのオリジナル・アルバム未収録曲が収められているということでしょう。時期としては『Posh』の頃にあたり、同路線のキッチュなエキゾ路線が聴かれます。ちなみに、本作リリースに際し、同年11月には渋谷ON AIRで収録アーティスト総出のリリース記念ライブもあったようです。

 

 

f:id:shibasakiyuji:20191215180803j:plain

アーティスト:Linda Sharrock
タイトル:On Holiday
発売年:1990年
レーベル:Polygram
入手場所:ブックオフ新高円寺
購入価格:290円
寸評:先だって私監修で再発したオーストリアフュージョンバンドZENITのアルバム『Straight Ahead』へフィーチャリングヴォーカリストとして大々的に参加していたリンダ・シャーロック。以来彼女の仕事へ興味が湧いて色々と調べている中、タイミングよく90年のソロアルバムを発見。やー、これはかなりいいですねー。全体をジョニー・クルーム、リチャード・タッカーというアレンジャーが参加する中、全ての曲へ「アディショナル・アレンジャー」としてオーネット・コールマンのプライムタイムへの参加でも名高いジャマラディーン・タクマが関わっており、同時期の氏の作品にも通じるようなデジタルファンク全開となっています。完全に逆転的な表現なのですが、同時期の日本のデジタル化したシティポップ作品(しかもかなり良質な)にも近い雰囲気。リンダ・シャーロックのボーカルも相変わらず流麗。ジャケも地味だし、いろいろな文脈からスルーされている感のある作品ですが、非常に良いです。

 

 

f:id:shibasakiyuji:20191215180822j:plain

アーティスト:保坂由佳
タイトル:Will ―心の華
発売年:2001年
レーベル:J・DNAレコーズ
入手場所:ブックオフ新高円寺
購入価格:290円
寸評:箏奏者・保坂由佳がパーカッション奏者の大久保宙、尺八の善養寺恵介らと2001年に制作/リリースしたアルバム。和モノニュー・エイジの中でも純邦楽に接近したもの、しかも2000年以降のものは避けてきた部分なのですが、どうやらシンセサイザーもバリバリ使われているらしいということで購入。なんというか…時代の新しいニューエイジものは現実/実際の生活と距離がまだまだ近い気がして価値の回転はまだ先かな…という感じで、正直申し上げて聴き通すのが辛かったです…。その上箏というのは、数ある和楽器の中でもとくにその俗流っぷりという点でもっとも煽りを食っている楽器に思われ…どうも耳が拒絶反応を…ごめんなさい。吉田兄弟女子十二楽坊などのファン向け。ちなみに本CD、保坂さんのサイン入りでした。

 

 

f:id:shibasakiyuji:20191215180837j:plain

アーティスト:パチンコ・オリジナル・ゲーム・サウンド/SANKYO YAKUMONO企画
タイトル:ザ・パチンコ・ミュージック・フロム・三共Ⅱ
発売年:1991年
レーベル:キング
入手場所:ブックオフ吉祥寺店
購入価格:290円
寸評:パチンコ台メーカー三共の各筐体に収録されていた様々なオリジナル音楽を網羅したシリーズの第二弾CD。基本的には同時期、あるいはそれ以前の時代におけるゲーム音楽と同じような音源内蔵チップを駆使した2和音構成。今のオーディオファイルをフルで駆使した筐体と比べると実に牧歌的なのですが、そこが味わいどころといえばそうなのでしょう。当時どのようなリスナーターゲットを想定していたのか謎ですが、このような作品も商品として成り立っていたことに感慨を覚えます(ゲーム音楽マニアというのはもちろん分厚い層がありますが、パチンコに足繁く通いながらチップチューンオタク、という人物像をあまり想像できない)。注目すべきは後半のアレンジバージョン(実際の筐体発生音ではないもの)で、PCM音源を駆使したシンフォニックなものも多く、このあたりはゲーム音楽マニアが喜びそうに思います。

 

 

f:id:shibasakiyuji:20191215180903j:plain

アーティスト:不明
タイトル:ゴルフ 〜マインド・コントロールサウンド
発売年:1995年
レーベル:DELLA
入手場所:ブックオフ吉祥寺店
購入価格:290円
寸評:「俗流アンビエントブルーノート」ことDELLAより数多くリリースされた『マインド・コントロールサウンド』シリーズ中の一作。様々な効能を謳ってきた同シリーズですが、ゴルフのスコアアップというのはかなり珍しいテーマですね。寡聞にして、ほかメーカーでもこのようなテーマを掲げた例を知りません。音楽内容としては、アンビエントというよりはむしろスムースなフュージョンが主体となっており、スポーティーなアレンジの施されたものが多いです。もちろん全編シンセサイザーによる多重電子サウンドで、生演奏ではありません。その点こそが聴き心地の面で実に得難い味わいを醸し出しており、本作を珍重すべきものにしています。角松敏生『She is a Lady』的なギター(を模したプリセット音による)フュージョン③、アコギ(を模したプリセット音による)ブリージーサンバ④、カシオペア的な⑤、70年代後半のハービー・ハンコックから完全にやる気を奪ったかのようなプラスチックファンク⑥⑦⑧、あたりが良い。つまりほぼ全編良いです。これはかなりの名盤と言っていいでしょう。ちなみに全編、日英中韓各語で高周波数帯にスコア向上のサブリミナルメッセージが入っているとのこと。

 

 

f:id:shibasakiyuji:20191215180925j:plain

アーティスト:Michael Garrick Septet
タイトル:Black Marigolds
発売年:2005年(オリジナル:1966年)
レーベル:vocalion(オリジナル:Argo)
入手場所:ブックオフ吉祥寺店
購入価格:510円
寸評:唐突にUKジャズ名盤登場です。ここまでの数枚、なかば一般的な観点からするとほとんど顧みられることのない音楽ばかり紹介してきたので、この、どこからどう切り取っても良質としかいいようのないUKジャズの世界にうっとりとしてしまいますね。その後74年に『Troppo』というスピリチュアルな名作を残しているマイケル・ガーリックですが、この頃は同時代の米新主流派からの影響を感じさせる非常に抑制的な作風で、実に好感が持てます。時折入るチェレスタの響きも実に英国的。ノーブルなキングスイングリッシュによるポエトリー・リーディングを交えたM2、6なども、実にヒップ極まりない。パイプとツイード生地のモーダルジャズ。演奏参加陣も、イアン・カー(Tp)、やドン・ランデルなど(Ts,As)、豪華です。ジャケットもカッコいい。M5「URSULA」はジャイルス・ピーターソン監修コンピにも収録された由。

 

 

f:id:shibasakiyuji:20191215180948j:plain

アーティスト:V.A.
タイトル:FLAVOR IN THE AIR
発売年:2003年
レーベル:bounce records
入手場所:ブックオフ吉祥寺店
購入価格:510円
寸評:タワーレコード発行のフリーマガジン『bounce』誌による00年代初頭のライトメロウ系インディー作家作品をコンパイルした作品。その筋(ライトメロウ者コミュニティ)ではわりに有名で、かつ異常なほどのプレ値がついていいることでも知られています。今ヤフオクをチェックしてみたら6万前後…。実のところ、その値付けはハイプ(しかもかなり局地的な)以外なにものでもないのではとは思うのですが…このような値付けになったきかけとして、『Light Mellow和モノSpecial』に廃盤になって久しい本作が掲載されている、ということが挙げられると思います。が、たしかにかなり好内容であることはいえると思います。全体に、00年代的な生音回帰志向の、いかにもJ-WEAVEでかかっていそうな「フリー・ソウル」以降のグルーヴ音楽集といった感じです(なぜか普通のロックも混入されているけれど)。参加陣も有名な人は少なく、どちらかというと裏方志向の方々が集っているようです。詳しいトラックリストなどは各種商品ページに掲載されていますので、気になる方はそちらをどうぞ。

 

 

f:id:shibasakiyuji:20191215181004j:plain

アーティスト:V.A.
タイトル:KAIGAN GROWN
発売年:1996年
レーベル:KAIGAN RECORDS
入手場所:ブックオフ吉祥寺店
購入価格:510円
寸評:KAIGAN RECORDSは96年に少年に設立されたレーベルで、様々な原盤制作やライセンス発売とともに、何故かアーロ・ガスリーのリプリーズ諸作を日本リイシューしていた隠れ名門(と思います。現在は閉鎖)。これはそのレーベル第一弾作で、レーベル名通り、サーフ・ミュージックやウェスト・コースト系、リゾート・ミュージック風の曲が揃っています。参加者のほとんどはかなりマニアック、というか無名の方なのですが、その中にドン的な存在感をはなっているのがブレッド&バターの岩沢二弓。苦み走ったデジタルAORを収録(娘の岩沢シーマもM11を定提供)。また、この盤の購入の後押しになったのがジャパニーズソウルシンガー、タイロン橋本の参加。全打ち込みによるオケの「Close To You」カヴァーを聴かせてくれます。相変わらず豪放な歌声です。また、桑田バンドのベーシストとして知られた琢磨仁&啓子の夫婦のユニット「Half Moon」のM1もアコースティックなメロウナンバーで、わりに良い。ちなみに、タイトルの「KAIGAN GROWN」というのは、ハワイアンAORの名コンピ『HOME GROWN』へのオマージュなのでしょうか(だとしたら非常にカッコいい)。

 

 

f:id:shibasakiyuji:20191215181030j:plain
アーティスト:ANNA BANANA
タイトル:大きな絵
発売年:1991年
レーベル:sixty records
入手場所:ブックオフ吉祥寺店
購入価格:290円
寸評:これもまた以前より探していた盤。佐藤あんこさんの『後追いGiRLPOPディスクガイド 別館』に掲載されており、気になっていたのでした。アンナ・バナナといえば、ライトメロウ的感覚から言うと、田島貴男がプロデュースを務めた5thアルバムが著名かもわかりませんが、この3rdアルバムもかなり素晴らしいと感じました。ライトメロウというよりは、「和レアリック」の文脈で語るべき盤じゃないかなと思います。プロデュースを担当したのは井上ヨシマサと久保幹一郎によるユニット「ATOM」で、テクノ・ポップの伝統も受け継いだ彼らの先鋭的センスが全面に押し出された打ち込み中心の内容になっています。全曲高クオリティなのですが、「サー・デューク」と「男の子 女の子」のカヴァーがかなりアヴァンギャルドな仕上がり。特に後者は原曲のサンプリングからはじまり、実にエキゾなデジタルバレアリック世界が現出。チョップやスクリューも用いられるなど、かなりヴェイパーウェイヴっぽい。最後のM11「Garden Of Love」も蒸気の充満した世界。

 

 

f:id:shibasakiyuji:20191215181045j:plain

アーティスト:FACE TWO FACE
タイトル:FAKES
発売年:1992年
レーベル:ポニーキャニオン
入手場所:ブックオフ吉祥寺店
購入価格:290円
寸評:中森明菜アン・ルイスに楽曲提供したこともあるソングライターの日比野健と、二人の女性シンガーによる「FACE TWO FACE」による(おそらく)唯一作。「逆ドリカム」な編成はこの時代のJ-POPシーンの中にあっては結構特異なものに感じます。二人の女性シンガーの歌もうまく、編曲陣も佐藤凖、ジョー・リノイエ、今剛、清水信之西脇辰弥などのシティ・ポップ界にレジェンドたち、しかも作詞には松本隆も参加するなど、ポニーキャニオンの気合が感じられるプロダクションなのですが、残念ながらヒットには至らなかったよう。肝心の曲がなんとも中庸と言うか、地味というか…バラードが多いのも後年のリスナーとしては気勢をくじかれる点。クレジットだけみると最高のシティポップ集を想像するわけですが、残念ながらあまりそういう感じではないですね。そんな中、M2は好ましいJ-AORかな、という感じ。ライナーノーツには何故かオリジナルデザインのグリーティングカードが数枚封入されています。今度突然使ってみようかな。

 

f:id:shibasakiyuji:20191215181105j:plain

アーティスト:DAISAKU
タイトル:EASTERN SHORE
発売年:1993年
レーベル:MESA(オリジナル:Moo Records)
入手場所:ブックオフ高田馬場
購入価格:290円
寸評:元プリズム〜スクエアの久米大作によるリーダー作で、同年に徳間ジャパンコ内のフュージョン系レーベルMoo Recordsよりリリースされたものを米国のニュー・エイジ系レーベルMESAがライセンス発売したもの(と思われます)。ジャケットのイメージ通り、「東洋性」を東洋人たる感覚から再帰的に表現したエスノ・ニューエイジ作で、今こそ聴きたい実に素晴らしい内容。盟友・仙波清彦がパーカッションで全面参加することによってダンスミュージック的な快楽性も担保されている格好です。いかにも「西洋からみたオリエンタリズム」的作風は、たしかに政治的次元での脆弱性をはらんでいることも確かなように思われますが、まずは何より音楽的完成度を貫徹せんとする志によって、却ってそうしたエスニシティ要素が自覚性を帯びるような形になっているように感じます。いわゆる「和レアリック」という文脈に置いたとしても、かなりの名盤ではないかなと思います。

 

次回へ続く……。