CDさん太郎 VOL.23 2020/1/4、5購入盤

 今回は、2020年1月4日と5日に東京・三鷹秋葉原で購入したCD計14枚を紹介します。
 5日、3月までの期間限定で営業中のレコファン秋葉原店に行ってきたのですが、レコードともども想像していた以上の在庫量でびっくりしました。先だって閉店した(一時閉店という体ですが)横浜店の在庫ともおそらく被ってないようだし、渋谷BEAM店から持ってきたものではなさそうだし、一体どこにこれだけの量が隠されていたんだろう…と思いましたが、この10年間でバタバタと閉店していった首都圏近郊各店舗の在庫をこの機会に放出しているということなのでしょうか。そうだとしたらレコファンのウェアハウスにはまだまだ沢山の音楽ソフトが眠っているということで、油断がなりませんね。この日の収穫もかなり芳しかったので、是非引き続き放出をお願いしたいところです…。
 本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

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アーティスト:伊東真由美
タイトル:美人声
発売年:1992年
レーベル:テイチク
購入価格:500円
購入場所:三鷹パレード
寸評:ガールズ・シンセポップ・バンド白雪姫BANDのボーカリストとしてデビューした伊東真由美による92年作のソロ・アルバム。これより以前の東芝EMI時代におけるガールポップ路線から大幅な音楽的変異を遂げた盤とされており、住友紀人のアレンジと相まり一部で和レアリック歌謡の名盤として評価の高い作品であります。私はanoutaさんの『トレンディ歌謡に抱かれて』で取り上げられていることによって本作の存在を知り、更にその後佐藤あんこさんの『後追いGiRLPOPディスクガイド 別館』でも取り上げられているのをみて、これは必ずや手に入れなければと思っていたものでした。果たして、相当な好内容ですね。冒頭から住友紀人の打ち込みワークが冴えまくりで、①「ドラキュラ感覚」はトライバルなパーカッション(ペッカーによるもの。彼は本作のプロデュースも務めています)の連打からサスペンスフルな歌謡ファンクになだれ込むその流れだけで最高。タイトル曲②のアンニュイ・ポップぶりも素晴らしい。中森明菜に歌詞提供した⑦「Dear Friend」も、今の感覚だと原曲よりもこちらの方が好ましく聴けることでしょう。随所で聴かれるツボを押さえたギターは鳥山雄司松下誠によるもの。

 

 

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アーティスト:井ノ浦英雄
タイトル:イラマイノウラ
発売年:1992年
レーベル:A-Z-A Records
購入価格:500円
購入場所:三鷹パレード
寸評:かつては大滝詠一とも演奏をともにし、その後細野晴臣の勧めで久保田麻琴&夕焼け楽団〜サンディー & サンセッツのドラマーとして活動した井ノ浦英雄によるファースト・ソロ・アルバム。これ、めちゃくちゃ最高です…。なんとなく買ったんですが、サンセッツ本隊よりも好きかもしれません。この時期一大(?)ブームをここ日本にも巻き起こしていたインドネシアン・ポップスの大御所、テディ・クルニアやエルフィ・スカエシのリズム・プログラマーとしても活躍していた氏だけあって、サンセッツ経由の(そんじょそこらの付け焼き刃的作品を寄せ付けない)深い理解に基づいたエスノ・グルーヴ・ポップスが展開されるのですが、そのいわゆる「ワールド性」の取り入れ方が非常に奥ゆかしく、本人による品の良いエレクトロニクス使いやジェントルなヴォーカルと相まって、素晴らしく上質なポップスに昇華されています。言うなれば、細野晴臣トロピカル三部作が東南アジアへ出張し、さらなる洗練を重ねたような作品というべきか。現地録音も織り交ぜ、文化収奪的な仕草を丁寧に避けるようなプロダクションがなされているのも素晴らしい。発売元レーベルがWAVEの傘下というのもイイですね。

 

 

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アーティスト:葛生千夏
タイトル:THE CITY IN THE SEA
発売年:1991年
レーベル:Salisbury
購入価格:500円
購入場所:三鷹パレード
寸評:これは長らく探し求めていた盤でした(ブログ「FOND/SOUND」で取り上げられているのを見て以来欲しかった)。嬉しい。葛生千夏は86年に自主リリースEP「ST. AGNES' EVE」でデビューした音楽家で、一般にはあまりひろく知られていないかも知れませんが、『ファイナルファンタジーVI』のCMソングの作詞/編曲/歌唱や、女性向け恋愛シュミレーション・ゲーム『アンジェリーク』劇中曲の作曲を手掛けるなど、ゲーム〜アニメ音楽畑で主に活動していた人です。あの三宅純作品にも頻繁に参加していた彼女の音楽性は、一般的なゲーム音楽とは隔絶しており、レコメン系プログレッシブ・ロックや初期4AD等のゴシック・ロック、あるいはUKフォークなどの影響色濃いものです。この1stフル・アルバムにおいてもそうした音楽性は全面的に開陳されており、ニコやブリジッド・セント・ジョンを思わせる低音ヴォーカルも含めて、非常に好事家受けしそうな世界です。オケの方はシンセサイザーを全面的に駆使したデジタルな質感で統一されており、なんとも形容しがたい無機と有機の結合ともいえるゴシック・ニューエイジを展開しています(よりニューウェーブ色を加味すると、ZABADAKにも近づく気がします)。本作には、ディノスリョービ等のCFイメージソングが6曲も収められていることから、元々オリジナル・アルバムとして企図されたわけでなく、そういったワークスが溜まってきたためリリースしたものかと思うのですが、一貫した統一感があり、オリジナル・アルバムとして非常に聴き応えがあるように思います。白眉は日本語で歌う間を活かしたエスノ・ニューエイジ⑪「真珠」。素晴らしい。

 

 

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アーティスト:上原和夫
タイトル:COSMOS Ⅰ
発売年:1990年
レーベル:AIR Records
購入価格:110円
入手場所:レコファン秋葉原
寸評:これぞ今回最も注目すべき発見。大阪芸術大学音楽学科大学院芸術研究科教授などを務めた日本におけるコンピュータ音楽の草分け的存在、上原和夫が80年代末にソヴィエト、ブラジル、合衆国で行ったコンサートを記録した盤です。70年代初頭にニューヨークに渡り実験音楽/アートの聖地であるThe KITCHENでも公演を行い、その後も現代音楽界においては華々しい活躍をしてきた方ですが、一般的な知名度はそこまで高くないのではないでしょうか。私自身もお恥ずかしながらこの作品に出会うまでお名前も存じ上げませんでした。本作のリリース元はなんと(?)吉村弘の諸作リリースで知られるAIR Recordからで、どういった経緯で制作されたものかほとんど情報がないのですが、全編にわたり非常な緊張感が漲るごくハイクオリティの電子現代音楽となっています。かといってとっつきにくい印象ではなくて、むしろ各種ミニマル・ミュージックやジャパニーズ・アンビエントなどに慣れ親しんだ耳に相当親しみやすいものだと思います。人声とコンピュータによる電子音をコラージュする①や⑤、非常に崇高な電子音楽世界(ちょっとワーグナー風)を描き出す②、2本のクラリネットによるミニマルな反復と深遠な電子音がからむ④、もはやアンビエント・テクノの様相を呈する⑥と、すべてが素晴らしいです……。Discogsやネットなどを見るにCDオンリーのリリースなようで、まだ海外ディガー諸氏にも発見されていない模様です。こんなものが100円で(しかも未開封品)買えてしまうレコファン秋葉原店……。ありがとうございます。

 

 

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アーティスト:KOICHI WATANABE
タイトル:ELECTRONIC MUSIC 1978-1979
発売年:1998年
レーベル:DOPPELGANGER RECORDS
購入価格:650円
入手場所:レコファン秋葉原
寸評:ノイズ、アヴァンギャルド実験音楽等のオンライン・レコード店DOPPELGANGER RECORDSのオーナーである渡辺晃一が12歳の時に制作したという電子音楽作品を後年にコンパイルの上セルフ・リリースしたCD。商品説明によると「荒涼とした関東平野を12歳の時旅したあと、少年ながらそのイメージをサウンドデザインしたもの」とのことで、一台のシンセサイザーとギターのみによって作られたプリミティブ極まりない電子音楽シュトックハウゼンクセナキスの影響を受けているというのも納得のかなり現代音楽「風」の作品ですが、あれらが強靭な理論や実験精神/思想的方法論の上に行われているものだとすると、この音楽はあくまで「難解なもの/抽象的なものを狙った子供によるそれ風の作品」という印象が…(上記書品ページにも「意味不明な電子音」と自分で書いてしまっている)。しかしながら、そのピュアな表現欲求の律動が好ましくもあり、本作に特異な魅力を纏わせることになっていると思います。「アングラ」が覇権を失った今だからこそ、こういった作品の真価を冷静に捉え直していくべきなのかもしれませんね。

 

 

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アーティスト:千堂あきほ
タイトルHOT BOX
発売年:1991年
レーベル:ワーナー・パイオニア
購入価格:250円
入手場所:レコファン秋葉原
寸評:女優/タレントの千堂あきほが91年にリリースしたセカンド・アルバム。『オブスキュア・シティポップ・ディスクガイド』掲載盤です。この時期の「学園祭の女王」らしく(?)、非常に軽薄なトレンディー・エレクトロ歌謡なのですが、総じてサウンドのクオリティが高く、聴いていて全然飽きないですね。歌も結構上手です。どうやらプロダクション的にはリリース元ワーナー・パイオニアつながりで中森明菜作品のプロダクション人脈が参加しているようで、そのあたりも高クオリティに寄与しているように思います。ライトメロウ的にみると特に良いのはバキバキなアップ②、ニュー・ミュージックっぽいミディアム・メロウ⑤、そしてドラマチックなブリッジがカッコいい隙間系エレクトロ・ファンク⑦、ボッサ調の⑩でしょうか。

 

 

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アーティスト:中森明菜
タイトル:不思議
発売年:1986年
レーベル:ワーナー・パイオニア
購入価格:110円
入手場所:レコファン秋葉原
寸評:この『CDさん太郎』をやっていると、「それ持ってなかったのかよ!」と突っ込まれても致し方ない盤も紹介しなくてはいけないというアレがあるのですが、本作などはその最たるものじゃないでしょうか。なんというか、「いつでも買える盤は後回しになってしまう」に法則というのがあってですね…そんな話はどうでもよい。このアルバムが中森明菜ディスコグラフィー中にあって非常に特異なものであるということは各所で聞かされて(読まされて)きたわけですが、先だって自分も寄稿させていただいた『ユリイカ』誌のヴェイパーウェイヴ特集内で触れられているのをみて、あ、やっぱり聴かなきゃ、と。本来LPで買ったほうが良さそうな盤ですが、タイミングよく底値でCDが転がっていたため購入。本作の特徴として言われるのがリヴァーブの異常な深さとそれに埋没したヴォーカルですが、こうして聴いてみるとたしかにすごい。アレンジもすごい。ベスト・トラックはやはり③「Labyrinth」か(今まで各所でさんざん語られている作品かと思いますので、アルバムの詳しい内容については割愛します)。

 

 

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アーティスト:原田克彦
タイトル:セイム ドリーム
発売年:1995年
レーベル:トライクル
購入価格:110円
入手場所:レコファン秋葉原
寸評:しゃがれ声が特徴的なAORシンガー・原田克彦による唯一のアルバム。元新日本プロレス社長の原田克彦氏と同一人物か?!と思ったが違う様子。全編を通して骨ばったマッチョなAOR〜ストリート・ロックが収録されており、今の感覚からすると結構キツイ感じなのですが、時折メロウな曲があるので油断できません。特に③はバネのあるビートが軽快なミディアムAORで好ましい。安易なダンスビートに一瞬ぎょっとする⑤も、楽曲構造としてはこれより前の時代のシティ・ポップという感じで、面白く聴けます。氏のブライアン・アダムス的声質、個人的には嫌いではないのですが、こういう曲調とはやや齟齬をきたしている感も…。バックは松下誠美久月千晴湊雅史、中西康晴、岩戸崇など盤石。しかしこの原田克彦、ブックレットをみるとめちゃおしゃれで、2020年ぽいファッションですね(スタイリストさんの良い仕事)。

 

 

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アーティスト:MAYUMI
タイトル:メモリーズ …あなたに会えてよかった
発売年:1992年
レーベル:エイベックス
購入価格:110円
入手場所:レコファン秋葉原
寸評:MAYUMIといってもあのMAYUMI(堀川まゆみ)とは別の人物による(当時の)ドラマ主題歌J-POPカヴァー(小田和正楠瀬誠志郎CHAGE and ASKA今井美樹小泉今日子サザンオールスターズ等)集で、まだクラウンを流通社としていたころの初期エイベックスのリリース作品です。もちろんエグゼクティブ・プロデュースはマックス・マツウラ。TRFブレイク前のエイベックスについては、若干ニセモノっぽいというか、同時期のアルファにも通じるようなチープ感を湛えており、本作もそうしたカラーを反映したものかなと思います。このMAYUMIというのは調べてもよくわからん人で、帯曰く「NYヴィレッジゲートで活躍する注目の本格派ヴォーカリスト」ということなのですが、ホントか!?と思ってしまいます。というのも、下手というのとも違うんですが、なんとも華のないのっぺりした声で、やる気も感じられない「歌い流し」感が……。救いといえるのがオケの方で、後にSMAP等の仕事で大活躍するCHOKKAKUが全面的にサウンド・プロデュースを担ってしています。いかにも時代がかったユーロビート的な意匠をまといつつも、安直なアレンジは周到に避けられ、今聴いてもなかなか心地よいサウンドかなと思います。lightmellowbu的視点ですと、中山美穂遠い街のどこかで…」のカヴァー⑤とB'z「ALONE」のカヴァー⑨が好ましいように思います。

 

 

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アーティスト:吉田美和
タイトル:beauty and harmony
発売年:1995年
レーベル:エピック・ソニー
購入価格:110円
入手場所:レコファン秋葉原
寸評:Twitterにも書きましたが、これ、私が生まれて始めて買ったCDアルバムなのでした(ちなみに、シングルはアルフィー)。別にドリカムのファンでもなかったのになぜなのだろう…と思い返していたのですが、当時いろいろ音楽について教えてくれた親戚のおじさんが「吉田美和の歌はホンモノ」とおっしゃっていたので、そうなのかー!と思って買った記憶が。当時はよくわからず「歌ウメー」みたいな感じで聴いていた記憶がありますが、その後「こんなCD持っているの恥ずかしい…」となって売ってしまったのでした。で、24年後。lightmellowbuとして選盤に参加したレココレ増刊の『シティポップ 1973-2019』で、ハタさんが本作をチョイスしており、懐かしっ!と思ったのでした。で、今回100円だったのでなんとなく再購入してみた次第。いやこれ、めちゃくちゃ素晴らしい!ライトメロウというか、フリーソウル的なをものを感じさせる演奏なのですが、デヴィッド・T・ウォーカー、チャック・レイニーハーヴィー・メイソン、ジェイ・ワインディング、マイケル・ブレッカー、ラルフ・マクドナルド、ジーン・ペイジという超豪華海外ミュージシャンが演奏に参加し、作は全部吉田美和、編曲は中村正人。こういう「玄人目配せ」みたいなインペグは(当時)よくあるけど、仕草を超えて本当に良質というのは実はそこまで多くないような気がしており、そういう意味でも大変貴重だと思います。②「つめたくしないで」と⑦「DARLIN'」は本当に素晴らしい…。とくに前者は当時の記憶が蘇ってくることも相まって、ちょっと泣いてしまいました。Aメロのメロディーと吉田美和の歌唱の美しさはただごとでない。ソングライターとしてもすごい人なのだなと再認識した次第。いや、本当に耳(聴取意識)の変化というのは面白い…。どこのブックオフでも高確率で売っているので、是非どうぞ。サブスクにもあります。

 

 

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アーティスト:不明
タイトル:パワーアップ マインド・コントロールサウンド
発売年:1996年
レーベル:Della
購入価格:110円
入手場所:レコファン秋葉原
寸評:毎度おなじみDellaの『マインド・コントロールサウンド』から「パワーアップ」をテーマにした商品。いつものようにサブリミナル・メッセージ入り。他作と同様シンセサイザーを駆使した作品であるのですが、「パワーアップ」という打ち出しほどにはそこまでパワーを感じない、どちらかというとリラクゼーション効果を狙っているように感じる内容です。全編、アンビエントというにはややメロディックすぎ、ポップ・インストゥルメンタルというには躍動感にかけるのですが、かといって聞き所がないかと言えばそうではなく、アレンジやシンセの音色選択など、なかなかおもしろいアイデアが盛り込まれているように感じます。特にマンボのリズムとフレーズを極限までテンポ・ダウンの上で無機質に敷き詰めたような①は、あまり他で聴いたことのないような妙なヒーリング・ミュージック。他、喜多郎みたいなディープ・ニューエイジ③も面白い。が、なんといっても本作最大の魅力はジャケでしょうか。

 

 

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アーティスト:V.A.
タイトル:甲子園 KOSHIEN OF DREAMS 夢のかたち
発売年:1991年
レーベル:プラッツ
購入価格:110円
入手場所:レコファン秋葉原
寸評:後のビーイング傘下ZAINレコードにも連なる学研によるレーベル、プラッツに所属する(当時)若手アーティストが傘下したオムニバス作品で、甲子園を目指す高校球児たちを応援するという体のもの。参加アーティストは松浦有希奥井亜紀、斉藤さおり、小野寺明敏といったアニメ・ソング系のアーティストたち。正直言ってなかなか聞き所を探すことが困難な、同時期のビーイング系作品を劣化させたような中庸な印象なのですが、ところどころアレンジや音色の面でおっと思わせる箇所がないでもなく…。特に松浦有希作の②はなぜか岡田徹が編曲を手掛けており、なるほど作品中もっと凝ったアレンジを聴かせてくれます。それにしても、今も昔も、応援ソングというのはなぜこうも保守的な曲調になるのでしょうか。最大公約数な人心動員を狙うという意図が、こうした当たり障りのない音楽を作り上げてしまうのでしょうか。例によってCDジャーナルのミニレビューが傑作なので転載します。「新曲8曲を含んだプラッツ・レーベルの甲子園球児向けガンバレ・ソング。だけど内容は苦くて甘酸っぱい涙を流したOB向けの歌詞がいっぱいで試合中に使える曲はない。やっぱ大人のオモチャなんだよね高校野球って。①はウイ・アー・ザ・ワールド型。」内容はおろか甲子園それ自体すら否定する有様。

 

 

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アーティスト:V.A.
タイトル:バブルガムクライシス5 MOONLIGHT RAMBLER
発売年:1988年
レーベル:ユーメックス
購入価格:650円
入手場所:レコファン秋葉原
寸評:87年から91年にかけて連続して発売されたサイバーパンクOVAシリーズ『バブルガムクライシス』第5弾のサウンドトラック盤。全編の編曲とほとんどの作曲を馬飼野康二が務め、氏特有のダイナミックでエッジーな劇伴が特徴的で、エレクトロニックなプログレとしてもかなり面白く聴けるかと思います。また、坪倉唯子歌唱のOPテーマとEDテーマも収録していますが、それぞれハイエナジーなロック調、ハードなバラードでそこまで面白くないですね…。一番の聴きものがリンナ役の声優・富沢美智恵の歌う③「真夜中の主役」で、相当に素晴らしいエレクトロ・シティポップ(馬飼野氏の狙いによるとマイケル・ジャクソン風だとか)。この一曲でありがとうございますという感じ。ライナにはレコーディング風景をレポートした写真とテキストも付属しているのですが、これがなかなか面白い。当日、虫歯に苦しむ坪倉唯子がパンチインでなんとか歌を仕上げたことや、忙しすぎる馬飼野康二がスタジオ作業を中座して坪倉に任せて帰ってしまったこと、休憩中みんなでテレビ再放送の『ルパン三世』に見入ったりしたことなど…いいなあ。

 

次回へ続く…。