CDさん太郎 VOL.23 2020/1/4、5購入盤

 今回は、2020年1月4日と5日に東京・三鷹秋葉原で購入したCD計14枚を紹介します。
 5日、3月までの期間限定で営業中のレコファン秋葉原店に行ってきたのですが、レコードともども想像していた以上の在庫量でびっくりしました。先だって閉店した(一時閉店という体ですが)横浜店の在庫ともおそらく被ってないようだし、渋谷BEAM店から持ってきたものではなさそうだし、一体どこにこれだけの量が隠されていたんだろう…と思いましたが、この10年間でバタバタと閉店していった首都圏近郊各店舗の在庫をこの機会に放出しているということなのでしょうか。そうだとしたらレコファンのウェアハウスにはまだまだ沢山の音楽ソフトが眠っているということで、油断がなりませんね。この日の収穫もかなり芳しかったので、是非引き続き放出をお願いしたいところです…。
 本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

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アーティスト:伊東真由美
タイトル:美人声
発売年:1992年
レーベル:テイチク
購入価格:500円
購入場所:三鷹パレード
寸評:ガールズ・シンセポップ・バンド白雪姫BANDのボーカリストとしてデビューした伊東真由美による92年作のソロ・アルバム。これより以前の東芝EMI時代におけるガールポップ路線から大幅な音楽的変異を遂げた盤とされており、住友紀人のアレンジと相まり一部で和レアリック歌謡の名盤として評価の高い作品であります。私はanoutaさんの『トレンディ歌謡に抱かれて』で取り上げられていることによって本作の存在を知り、更にその後佐藤あんこさんの『後追いGiRLPOPディスクガイド 別館』でも取り上げられているのをみて、これは必ずや手に入れなければと思っていたものでした。果たして、相当な好内容ですね。冒頭から住友紀人の打ち込みワークが冴えまくりで、①「ドラキュラ感覚」はトライバルなパーカッション(ペッカーによるもの。彼は本作のプロデュースも務めています)の連打からサスペンスフルな歌謡ファンクになだれ込むその流れだけで最高。タイトル曲②のアンニュイ・ポップぶりも素晴らしい。中森明菜に歌詞提供した⑦「Dear Friend」も、今の感覚だと原曲よりもこちらの方が好ましく聴けることでしょう。随所で聴かれるツボを押さえたギターは鳥山雄司松下誠によるもの。

 

 

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アーティスト:井ノ浦英雄
タイトル:イラマイノウラ
発売年:1992年
レーベル:A-Z-A Records
購入価格:500円
購入場所:三鷹パレード
寸評:かつては大滝詠一とも演奏をともにし、その後細野晴臣の勧めで久保田麻琴&夕焼け楽団〜サンディー & サンセッツのドラマーとして活動した井ノ浦英雄によるファースト・ソロ・アルバム。これ、めちゃくちゃ最高です…。なんとなく買ったんですが、サンセッツ本隊よりも好きかもしれません。この時期一大(?)ブームをここ日本にも巻き起こしていたインドネシアン・ポップスの大御所、テディ・クルニアやエルフィ・スカエシのリズム・プログラマーとしても活躍していた氏だけあって、サンセッツ経由の(そんじょそこらの付け焼き刃的作品を寄せ付けない)深い理解に基づいたエスノ・グルーヴ・ポップスが展開されるのですが、そのいわゆる「ワールド性」の取り入れ方が非常に奥ゆかしく、本人による品の良いエレクトロニクス使いやジェントルなヴォーカルと相まって、素晴らしく上質なポップスに昇華されています。言うなれば、細野晴臣トロピカル三部作が東南アジアへ出張し、さらなる洗練を重ねたような作品というべきか。現地録音も織り交ぜ、文化収奪的な仕草を丁寧に避けるようなプロダクションがなされているのも素晴らしい。発売元レーベルがWAVEの傘下というのもイイですね。

 

 

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アーティスト:葛生千夏
タイトル:THE CITY IN THE SEA
発売年:1991年
レーベル:Salisbury
購入価格:500円
購入場所:三鷹パレード
寸評:これは長らく探し求めていた盤でした(ブログ「FOND/SOUND」で取り上げられているのを見て以来欲しかった)。嬉しい。葛生千夏は86年に自主リリースEP「ST. AGNES' EVE」でデビューした音楽家で、一般にはあまりひろく知られていないかも知れませんが、『ファイナルファンタジーVI』のCMソングの作詞/編曲/歌唱や、女性向け恋愛シュミレーション・ゲーム『アンジェリーク』劇中曲の作曲を手掛けるなど、ゲーム〜アニメ音楽畑で主に活動していた人です。あの三宅純作品にも頻繁に参加していた彼女の音楽性は、一般的なゲーム音楽とは隔絶しており、レコメン系プログレッシブ・ロックや初期4AD等のゴシック・ロック、あるいはUKフォークなどの影響色濃いものです。この1stフル・アルバムにおいてもそうした音楽性は全面的に開陳されており、ニコやブリジッド・セント・ジョンを思わせる低音ヴォーカルも含めて、非常に好事家受けしそうな世界です。オケの方はシンセサイザーを全面的に駆使したデジタルな質感で統一されており、なんとも形容しがたい無機と有機の結合ともいえるゴシック・ニューエイジを展開しています(よりニューウェーブ色を加味すると、ZABADAKにも近づく気がします)。本作には、ディノスリョービ等のCFイメージソングが6曲も収められていることから、元々オリジナル・アルバムとして企図されたわけでなく、そういったワークスが溜まってきたためリリースしたものかと思うのですが、一貫した統一感があり、オリジナル・アルバムとして非常に聴き応えがあるように思います。白眉は日本語で歌う間を活かしたエスノ・ニューエイジ⑪「真珠」。素晴らしい。

 

 

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アーティスト:上原和夫
タイトル:COSMOS Ⅰ
発売年:1990年
レーベル:AIR Records
購入価格:110円
入手場所:レコファン秋葉原
寸評:これぞ今回最も注目すべき発見。大阪芸術大学音楽学科大学院芸術研究科教授などを務めた日本におけるコンピュータ音楽の草分け的存在、上原和夫が80年代末にソヴィエト、ブラジル、合衆国で行ったコンサートを記録した盤です。70年代初頭にニューヨークに渡り実験音楽/アートの聖地であるThe KITCHENでも公演を行い、その後も現代音楽界においては華々しい活躍をしてきた方ですが、一般的な知名度はそこまで高くないのではないでしょうか。私自身もお恥ずかしながらこの作品に出会うまでお名前も存じ上げませんでした。本作のリリース元はなんと(?)吉村弘の諸作リリースで知られるAIR Recordからで、どういった経緯で制作されたものかほとんど情報がないのですが、全編にわたり非常な緊張感が漲るごくハイクオリティの電子現代音楽となっています。かといってとっつきにくい印象ではなくて、むしろ各種ミニマル・ミュージックやジャパニーズ・アンビエントなどに慣れ親しんだ耳に相当親しみやすいものだと思います。人声とコンピュータによる電子音をコラージュする①や⑤、非常に崇高な電子音楽世界(ちょっとワーグナー風)を描き出す②、2本のクラリネットによるミニマルな反復と深遠な電子音がからむ④、もはやアンビエント・テクノの様相を呈する⑥と、すべてが素晴らしいです……。Discogsやネットなどを見るにCDオンリーのリリースなようで、まだ海外ディガー諸氏にも発見されていない模様です。こんなものが100円で(しかも未開封品)買えてしまうレコファン秋葉原店……。ありがとうございます。

 

 

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アーティスト:KOICHI WATANABE
タイトル:ELECTRONIC MUSIC 1978-1979
発売年:1998年
レーベル:DOPPELGANGER RECORDS
購入価格:650円
入手場所:レコファン秋葉原
寸評:ノイズ、アヴァンギャルド実験音楽等のオンライン・レコード店DOPPELGANGER RECORDSのオーナーである渡辺晃一が12歳の時に制作したという電子音楽作品を後年にコンパイルの上セルフ・リリースしたCD。商品説明によると「荒涼とした関東平野を12歳の時旅したあと、少年ながらそのイメージをサウンドデザインしたもの」とのことで、一台のシンセサイザーとギターのみによって作られたプリミティブ極まりない電子音楽シュトックハウゼンクセナキスの影響を受けているというのも納得のかなり現代音楽「風」の作品ですが、あれらが強靭な理論や実験精神/思想的方法論の上に行われているものだとすると、この音楽はあくまで「難解なもの/抽象的なものを狙った子供によるそれ風の作品」という印象が…(上記書品ページにも「意味不明な電子音」と自分で書いてしまっている)。しかしながら、そのピュアな表現欲求の律動が好ましくもあり、本作に特異な魅力を纏わせることになっていると思います。「アングラ」が覇権を失った今だからこそ、こういった作品の真価を冷静に捉え直していくべきなのかもしれませんね。

 

 

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アーティスト:千堂あきほ
タイトルHOT BOX
発売年:1991年
レーベル:ワーナー・パイオニア
購入価格:250円
入手場所:レコファン秋葉原
寸評:女優/タレントの千堂あきほが91年にリリースしたセカンド・アルバム。『オブスキュア・シティポップ・ディスクガイド』掲載盤です。この時期の「学園祭の女王」らしく(?)、非常に軽薄なトレンディー・エレクトロ歌謡なのですが、総じてサウンドのクオリティが高く、聴いていて全然飽きないですね。歌も結構上手です。どうやらプロダクション的にはリリース元ワーナー・パイオニアつながりで中森明菜作品のプロダクション人脈が参加しているようで、そのあたりも高クオリティに寄与しているように思います。ライトメロウ的にみると特に良いのはバキバキなアップ②、ニュー・ミュージックっぽいミディアム・メロウ⑤、そしてドラマチックなブリッジがカッコいい隙間系エレクトロ・ファンク⑦、ボッサ調の⑩でしょうか。

 

 

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アーティスト:中森明菜
タイトル:不思議
発売年:1986年
レーベル:ワーナー・パイオニア
購入価格:110円
入手場所:レコファン秋葉原
寸評:この『CDさん太郎』をやっていると、「それ持ってなかったのかよ!」と突っ込まれても致し方ない盤も紹介しなくてはいけないというアレがあるのですが、本作などはその最たるものじゃないでしょうか。なんというか、「いつでも買える盤は後回しになってしまう」に法則というのがあってですね…そんな話はどうでもよい。このアルバムが中森明菜ディスコグラフィー中にあって非常に特異なものであるということは各所で聞かされて(読まされて)きたわけですが、先だって自分も寄稿させていただいた『ユリイカ』誌のヴェイパーウェイヴ特集内で触れられているのをみて、あ、やっぱり聴かなきゃ、と。本来LPで買ったほうが良さそうな盤ですが、タイミングよく底値でCDが転がっていたため購入。本作の特徴として言われるのがリヴァーブの異常な深さとそれに埋没したヴォーカルですが、こうして聴いてみるとたしかにすごい。アレンジもすごい。ベスト・トラックはやはり③「Labyrinth」か(今まで各所でさんざん語られている作品かと思いますので、アルバムの詳しい内容については割愛します)。

 

 

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アーティスト:原田克彦
タイトル:セイム ドリーム
発売年:1995年
レーベル:トライクル
購入価格:110円
入手場所:レコファン秋葉原
寸評:しゃがれ声が特徴的なAORシンガー・原田克彦による唯一のアルバム。元新日本プロレス社長の原田克彦氏と同一人物か?!と思ったが違う様子。全編を通して骨ばったマッチョなAOR〜ストリート・ロックが収録されており、今の感覚からすると結構キツイ感じなのですが、時折メロウな曲があるので油断できません。特に③はバネのあるビートが軽快なミディアムAORで好ましい。安易なダンスビートに一瞬ぎょっとする⑤も、楽曲構造としてはこれより前の時代のシティ・ポップという感じで、面白く聴けます。氏のブライアン・アダムス的声質、個人的には嫌いではないのですが、こういう曲調とはやや齟齬をきたしている感も…。バックは松下誠美久月千晴湊雅史、中西康晴、岩戸崇など盤石。しかしこの原田克彦、ブックレットをみるとめちゃおしゃれで、2020年ぽいファッションですね(スタイリストさんの良い仕事)。

 

 

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アーティスト:MAYUMI
タイトル:メモリーズ …あなたに会えてよかった
発売年:1992年
レーベル:エイベックス
購入価格:110円
入手場所:レコファン秋葉原
寸評:MAYUMIといってもあのMAYUMI(堀川まゆみ)とは別の人物による(当時の)ドラマ主題歌J-POPカヴァー(小田和正楠瀬誠志郎CHAGE and ASKA今井美樹小泉今日子サザンオールスターズ等)集で、まだクラウンを流通社としていたころの初期エイベックスのリリース作品です。もちろんエグゼクティブ・プロデュースはマックス・マツウラ。TRFブレイク前のエイベックスについては、若干ニセモノっぽいというか、同時期のアルファにも通じるようなチープ感を湛えており、本作もそうしたカラーを反映したものかなと思います。このMAYUMIというのは調べてもよくわからん人で、帯曰く「NYヴィレッジゲートで活躍する注目の本格派ヴォーカリスト」ということなのですが、ホントか!?と思ってしまいます。というのも、下手というのとも違うんですが、なんとも華のないのっぺりした声で、やる気も感じられない「歌い流し」感が……。救いといえるのがオケの方で、後にSMAP等の仕事で大活躍するCHOKKAKUが全面的にサウンド・プロデュースを担ってしています。いかにも時代がかったユーロビート的な意匠をまといつつも、安直なアレンジは周到に避けられ、今聴いてもなかなか心地よいサウンドかなと思います。lightmellowbu的視点ですと、中山美穂遠い街のどこかで…」のカヴァー⑤とB'z「ALONE」のカヴァー⑨が好ましいように思います。

 

 

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アーティスト:吉田美和
タイトル:beauty and harmony
発売年:1995年
レーベル:エピック・ソニー
購入価格:110円
入手場所:レコファン秋葉原
寸評:Twitterにも書きましたが、これ、私が生まれて始めて買ったCDアルバムなのでした(ちなみに、シングルはアルフィー)。別にドリカムのファンでもなかったのになぜなのだろう…と思い返していたのですが、当時いろいろ音楽について教えてくれた親戚のおじさんが「吉田美和の歌はホンモノ」とおっしゃっていたので、そうなのかー!と思って買った記憶が。当時はよくわからず「歌ウメー」みたいな感じで聴いていた記憶がありますが、その後「こんなCD持っているの恥ずかしい…」となって売ってしまったのでした。で、24年後。lightmellowbuとして選盤に参加したレココレ増刊の『シティポップ 1973-2019』で、ハタさんが本作をチョイスしており、懐かしっ!と思ったのでした。で、今回100円だったのでなんとなく再購入してみた次第。いやこれ、めちゃくちゃ素晴らしい!ライトメロウというか、フリーソウル的なをものを感じさせる演奏なのですが、デヴィッド・T・ウォーカー、チャック・レイニーハーヴィー・メイソン、ジェイ・ワインディング、マイケル・ブレッカー、ラルフ・マクドナルド、ジーン・ペイジという超豪華海外ミュージシャンが演奏に参加し、作は全部吉田美和、編曲は中村正人。こういう「玄人目配せ」みたいなインペグは(当時)よくあるけど、仕草を超えて本当に良質というのは実はそこまで多くないような気がしており、そういう意味でも大変貴重だと思います。②「つめたくしないで」と⑦「DARLIN'」は本当に素晴らしい…。とくに前者は当時の記憶が蘇ってくることも相まって、ちょっと泣いてしまいました。Aメロのメロディーと吉田美和の歌唱の美しさはただごとでない。ソングライターとしてもすごい人なのだなと再認識した次第。いや、本当に耳(聴取意識)の変化というのは面白い…。どこのブックオフでも高確率で売っているので、是非どうぞ。サブスクにもあります。

 

 

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アーティスト:不明
タイトル:パワーアップ マインド・コントロールサウンド
発売年:1996年
レーベル:Della
購入価格:110円
入手場所:レコファン秋葉原
寸評:毎度おなじみDellaの『マインド・コントロールサウンド』から「パワーアップ」をテーマにした商品。いつものようにサブリミナル・メッセージ入り。他作と同様シンセサイザーを駆使した作品であるのですが、「パワーアップ」という打ち出しほどにはそこまでパワーを感じない、どちらかというとリラクゼーション効果を狙っているように感じる内容です。全編、アンビエントというにはややメロディックすぎ、ポップ・インストゥルメンタルというには躍動感にかけるのですが、かといって聞き所がないかと言えばそうではなく、アレンジやシンセの音色選択など、なかなかおもしろいアイデアが盛り込まれているように感じます。特にマンボのリズムとフレーズを極限までテンポ・ダウンの上で無機質に敷き詰めたような①は、あまり他で聴いたことのないような妙なヒーリング・ミュージック。他、喜多郎みたいなディープ・ニューエイジ③も面白い。が、なんといっても本作最大の魅力はジャケでしょうか。

 

 

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アーティスト:V.A.
タイトル:甲子園 KOSHIEN OF DREAMS 夢のかたち
発売年:1991年
レーベル:プラッツ
購入価格:110円
入手場所:レコファン秋葉原
寸評:後のビーイング傘下ZAINレコードにも連なる学研によるレーベル、プラッツに所属する(当時)若手アーティストが傘下したオムニバス作品で、甲子園を目指す高校球児たちを応援するという体のもの。参加アーティストは松浦有希奥井亜紀、斉藤さおり、小野寺明敏といったアニメ・ソング系のアーティストたち。正直言ってなかなか聞き所を探すことが困難な、同時期のビーイング系作品を劣化させたような中庸な印象なのですが、ところどころアレンジや音色の面でおっと思わせる箇所がないでもなく…。特に松浦有希作の②はなぜか岡田徹が編曲を手掛けており、なるほど作品中もっと凝ったアレンジを聴かせてくれます。それにしても、今も昔も、応援ソングというのはなぜこうも保守的な曲調になるのでしょうか。最大公約数な人心動員を狙うという意図が、こうした当たり障りのない音楽を作り上げてしまうのでしょうか。例によってCDジャーナルのミニレビューが傑作なので転載します。「新曲8曲を含んだプラッツ・レーベルの甲子園球児向けガンバレ・ソング。だけど内容は苦くて甘酸っぱい涙を流したOB向けの歌詞がいっぱいで試合中に使える曲はない。やっぱ大人のオモチャなんだよね高校野球って。①はウイ・アー・ザ・ワールド型。」内容はおろか甲子園それ自体すら否定する有様。

 

 

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アーティスト:V.A.
タイトル:バブルガムクライシス5 MOONLIGHT RAMBLER
発売年:1988年
レーベル:ユーメックス
購入価格:650円
入手場所:レコファン秋葉原
寸評:87年から91年にかけて連続して発売されたサイバーパンクOVAシリーズ『バブルガムクライシス』第5弾のサウンドトラック盤。全編の編曲とほとんどの作曲を馬飼野康二が務め、氏特有のダイナミックでエッジーな劇伴が特徴的で、エレクトロニックなプログレとしてもかなり面白く聴けるかと思います。また、坪倉唯子歌唱のOPテーマとEDテーマも収録していますが、それぞれハイエナジーなロック調、ハードなバラードでそこまで面白くないですね…。一番の聴きものがリンナ役の声優・富沢美智恵の歌う③「真夜中の主役」で、相当に素晴らしいエレクトロ・シティポップ(馬飼野氏の狙いによるとマイケル・ジャクソン風だとか)。この一曲でありがとうございますという感じ。ライナにはレコーディング風景をレポートした写真とテキストも付属しているのですが、これがなかなか面白い。当日、虫歯に苦しむ坪倉唯子がパンチインでなんとか歌を仕上げたことや、忙しすぎる馬飼野康二がスタジオ作業を中座して坪倉に任せて帰ってしまったこと、休憩中みんなでテレビ再放送の『ルパン三世』に見入ったりしたことなど…いいなあ。

 

次回へ続く…。

CDさん太郎 VOL.22 2019/12/30、31購入盤 後半

 怒涛の更新(正月休み中に書き溜めておいてよかった)。今回は、前回に引き続き2019年12月30日と31日に千葉県西部にて購入したCD群から、その後半分20枚を紹介します。
 本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

 

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アーティスト:Alan Roubik
タイトル:Immune System / Pain Relief Series 1
発売年:1995年
レーベル:Hado music
購入価格:110円
購入場所:ハードオフ千葉美浜店
寸評:アラン・ルービックは66年米カリフォルニア州生まれのピアニストで、元々は地元のジャズ・クラブで演奏を行ってきた人。93年に『Promises』というライト・フュージョン・アルバムをリリースするなどしていましたが、95年、当時ニューヨーク在住のI.H.M.国際波動友の会代表で作家の江本勝氏と出会い、「波動」という概念に開眼、それ以降多くのニューエイジ音楽の制作に携わるようになりました。これはその時期の初期作品で、そのものズバリ「Hado music」というレーベルからリリースされています。ロナルド・J・ワインストック博士の監修の元、人体に好影響を及ぼすという「波動」をふんだんに入れ込んだ音楽、という、まあ、よくある実用ヒーリングCD。その演奏はアンビエントというより無個性なスムース・ジャズ〜ライト・クラシック系の生演奏が主体で、個人的趣味からは外れるかなという感じ…。全編にタブラが敷かれた①は少しだけ面白く聴けるか。

 

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アーティスト:The Checkers
タイトル:Blue Moon Stone
発売年:1992年
レーベル:ポニーキャニオン
購入価格:110円
購入場所:ハードオフ千葉美浜店
寸評:チェッカーズのラスト・アルバムで、これ以前から取り組んできたソウル〜R&B路線の集大成的内容。しかも旧来型のシテ・ポップというより同時代に勃興していたアシッド・ジャズ経由のサウンドを志向しているというところが非常に重要。しかも、ほぼ全曲が明確にそういった志向の元で制作されているので、トータル・アルバムとしても素晴らしいです。ファンの中ではラスト・アルバムということもあってどうも悲観的な思い出とともに語られるフシがあるように思いますが、これは本当に傑作だと思います。とくに藤井尚之の才気煥発が印象的。作曲者としてはもちろん、こういうメロウ&ファンキーな曲想でこそ彼のキング・カーティス的サックス・プレイが光るというものではないでしょうか。ソウルフルなボーカリストとしての郁弥の魅力も満天。渋谷系の裏側にあって(一応メインストリームにおいて)こういった洒脱な音楽が作られた(そして正当に評価されることはなかった)ということが非常に興味深いですね。

 

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アーティスト:V.A.
タイトル:藤本ひとみ コレクション
発売年:1989年
レーベル:日本コロムビア
購入価格:110円
購入場所:ハードオフ千葉美浜店
寸評:後に影山ヒロノブのバンド「AIRBLANCA」を迎えてオリジナル・アルバムまで作ってしまうことになるライトノベル作家藤本ひとみ。厚生省職員〜地方公務員として務めながら少年/少女漫画の原作を手がけきたという極めて異色な経歴の持ち主なのですが、80年代から90年代にかけて全国の少女から絶大な支持を集めました。このCDは、藤本作品に登場するキャラクターが演奏を手掛ける?という体のイメージ・アルバムの第二弾作品なのですが、ほとんどが既存のクラシック曲をほぼそのまんま演奏したものとなっており、モノは言いようだな、と思わされます。編曲を手掛けるのは武蔵野音楽大学教授で作編曲家の川辺真で、ここでは商業仕事を行う際の変名たる風戸慎介名義で参加しています。それらクラシック曲はまあ聴いたとおりなので特に言及すべきところはないのですが、唯一の聴きものは唐突に現れるディスコ・ナンバー「DISCO with KARK」。ソウルの欠落した非常に即物的なオーケストラル・インスト・ディスコで、なかなか良いですね。

 

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アーティスト:KUSU KUSU
タイトル:光の国の子供達
発売年:1989年
レーベル:Gorilland Records
購入価格:110円
入手場所:ブックオフ千葉美浜店
寸評:『イカ天』への出演をきっかけにデビューに至ったエスノ・ファンク・ニューヴェイヴ・バンドの1stアルバム。当時若干20歳そこそこ、可愛らしいルックスのためアイドル的な人気もあったといいますが(デビュー前の原宿ホコ天でのライブは1000人を動員したらしい)、じゃがたらの中村テイユウがプロデュースを務めていることからもわかるとおり、その音楽性はかなり本格的、というかめちゃくちゃ上手い。「じゃがたらのアフロ・ファンク色をポップに薄めたようなバンド」という印象をなんとなく持っていたのですが、改めてこのファーストを聴いて、その演奏力とセンスに恐れ入りました。リンガラやハイチのコンパなどまで射程に収めるパースペクティブ。やや一本調子なことが気にかかりますが、当時のメンバーの年齢を考えれば驚嘆すべきクオリティだと思います。もう少し電子楽器などを取り入れていればバレアリック視点での再評価もできるのかもしれませんが、当時の感覚からすれば生演奏こそモノホン、ということだったのでしょうから、ないものねだりというものですね。その後94年に活動休止するも、幾度か復活ライブを行っています。

 

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アーティスト:ズボンドズボン
タイトル:skirt
発売年:2001年
レーベル:フェスタトライスター
購入価格:110円
入手場所:ブックオフ千葉美浜店
寸評:亜細亜大学のサークルに集ったメンバーによって結成されたバンド、ブコビッチから発展する形で誕生したズボンドズボン。一般的にはRAG FAIRのフロントマンでタモリ電車クラブ会員の土屋礼央が率いたバンドということで有名だと思います。私もリアルタイムでその存在を認識していたのですが、まさか2020年になって彼らのCDを(100円とはいえ)買うことになるとは思っておりませんでした。lightmellowbuブログ等において部長ハタさんが彼らの音楽を今シティ・ポップ的視点できけないこともないことを度々論じているのを読むうち、すっかり気になる存在に…そしてこの度安価で購入という物語。たしかにグルーヴ・ポップス風のJ-POPとしてかなりの水準だと感じました。演奏もアレンジ力も素晴らしく、いかにも「渋谷系をくぐり抜けた時代のJ-POP」という感じ。しかし、土屋のニキニキした歌唱法に違和感が…歌い方という点ではRAG FAIRのときの方が好ましいように感じました。ラストに収録されているミニ・コントはユーモアのグレイブヤード。ジャケットはなにからなにまでゼロ年代初頭の雰囲気。

 

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アーティスト:玉木宏樹
タイトル:玉木宏樹純正律ミネラル・サウンド remake vol.2
発売年:2004年
レーベル:有限会社アルキ
購入価格:110円
入手場所:ブックオフ千葉美浜店
寸評:かつて本『CDさん太郎』第8弾にも登場した玉木宏樹。かねてより、玉木宏樹&S・M・T名義での名盤『タイム・パラドックス』(75年作)がプログレッシヴ・ロック・ファンの間で評価が高い東京芸大出身の作曲家/バイオリニストなのですが、そういった作風は一時的なものでむしろヒーリング的な文脈での作品リリースが多くを占めているように思われます。生前、氏の提唱した「純正律」という概念(西洋の平均律に対応する12等分音階)に基づいた作品を多数残していますが、この作品もそんなシリーズの一貫としてリリースされたものです。永六輔がラジオで純正律のヒーリング効果を取り上げるなど、一種のバブル的状況の中でリリースされた本作、その反響の大きさに戸惑う様子が本人執筆のライナーにしたためられており、なかなか面白いです。音楽内容としては、以前取り上げた『音楽浴 高原…はるか空よ』に通じるようなアコースティック・アンサンブルによる保守的なヒーリング・ミュージックで、まあ、そこまで面白いものではないように思います…。確かに音階の特異さが耳に入ってくることもありますが、それ以上にフレーズやアンサンブル構成に既聴感が横溢しており、もっとアヴァンギャルドな方法論での平均律音楽を聴いてみたいな、という欲求が立ち上がってきます。

 

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アーティスト:Do moja
タイトル:Do moja
発売年:1989年
レーベル:MASH RERCORDS
購入価格:290円
入手場所:ブックオフ千葉美浜店
寸評:これはまったくもって素晴らしいCDです。年に一度レベルの収穫と言っていいかもしれません。このDo mojaについてはネットにもほとんど情報がなく、例によってCDジャーナルのミニ・レビューと、Discogsへ本作の登録情報があるのみ。どうやら日本人音楽家によるプロジェクト?のようなのですが、これがファースト・アルバムのようです。音楽内容としては、ダブを経由したニュー・ウェーブ〜アヴァンギャルド・コラージュ・ファンク〜歪なラウンジ・ミュージックという感じなのですが、究めてドープな展開の中で時折妙にポップなフレーズが繰り出されたりと、まったくルーツというかジャンル傾向がつかめない…のですが、めちゃくちゃ素晴らしい。80年代のノイエ・ドイチェ・ヴェレなどが好きな人にとってはたまらないのではないでしょうか(私のように)。一方でテリー・ライリーをチープ化したような踊れないミニマル・テクノがあったり、アコースティック・ギターの極めて美しい爪弾きが主導する謎めいたニューエイジ曲があったりと、ますます不可思議。4トラのマルチ・トラック・レコーダーとテレコを駆使して録られたらしい音像もちょうどよいローファイさ(初期vaporwaveっぽい)。discogsなどの情報から推察するに、どうやらレゲエ〜ダブあるいはザ・フールズ〜じゃがたら界隈の「Carioka」という人(おそらく変名?)によるプロジェクトのようです。その諧謔性からはボアダムス的な要素も感じ取れるように思いますし、ミュート・ビート的クールさもあるという。それでいて、全体にメロウネスすら漂っているという。これ、完全に今聴きたい音ですね。90年代初頭にかけて他にも数枚を自主リリースし、6枚組のボックスなんてものも出しているようです(欲しい!)。このDo mojaについて何か情報をお持ちの方、是非ご教示ください。

 

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アーティスト:百石元
タイトル:θ波 潜在脳力開発
発売年:1991年
レーベル:アポロン
購入価格:510円
入手場所:ブックオフ千葉美浜店
寸評:SSI脳力活性研究所所長・田中孝顕氏監修による、アポロン発「シータ波ミュージック」シリーズ中の一作。私は他に2枚ほど所有しているのですが、数多い俗流アンビエントのシリーズ中にあって、なかなかに奥ゆかしい音楽的魅力をそなえたもの揃いだと思っています。本作を手掛けたのは、昨今ではAKB関連の編曲仕事でも知られる、百石元。かつては少なくないアニメ関連作品において実に音楽的な楽曲を手掛けている人なので(近年だと「けいおん!」シリーズが代表的仕事か)、俗流アンビエント仕事においても手を抜くことはなかろう、という憶測の元購入。果たしてなかなかの好内容だと感じます。基本的にシンセサイザー・オンリーのよくある俗流アンビエントかと思わせつつ、あくまでメロディーを重視する姿勢が新鮮です。かといって、よくある俗的旋律に陥らないところがさすがで、少ない音数をもって含蓄のあるアレンジを施したりと、プロの作家としての矜持が伝わってくるようです。本業の環境音楽作家の作品にはない面白みが確かに織り込まれているように思います。

 

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アーティスト:V.A.
タイトル:機甲警察 メタルジャック・HARD PLAY
発売年:1991年
レーベル:キング
購入価格:110円
入手場所:ブックオフ千葉美浜店
寸評:91年4月から12までテレビ東京で毎週月曜夕方に放送されたサンライズ制作SFアニメ作品のオリジナル・ドラマ〜サントラCD。ドラマ部を聴くにサイバー・パンク系の内容のようで、むしろ今になってアニメ作品自体も観てみたい気がしますが…。ついついドラマ部をスキップしたくなるのですが、このCDは場面転換のようにやけにカッコいい劇伴(主にハード・フュージョン)が入っていたりして油断がなりません。とはいえ注目すべきは劇中スコアの方で、これらはすべて初期のZOOの楽曲の編曲も手がけた岩崎文紀の手によるもの。しっかりと生楽器演奏も交えたなかなかにクオリティの高い劇伴です(ちょっと前時代的ではありますが…)。

 

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アーティスト:V.A.
タイトル:新選組異聞 蒼き狼たちの神話1.「天道」
発売年:1991年
レーベル:ビクター
購入価格:110円
入手場所:ブックオフ千葉美浜店
寸評:『クルセイダー』などで知られる漫画家・水縞とおる原作の新選組作品のドラマCD。ほとんどがドラマなのですが3曲だけ歌ものが収録されています。どれもまあここで言及すべきものでもない気もしつつ…③のOPテーマだけは跳ねたビートとオケのアレンジがすこしだけ面白いテクノロジー・ポップス。が、ただ、それだけ。

 

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アーティスト:V.A.
タイトル:真東砂波オリジナルアルバム ペンギンの王様
発売年:1994年
レーベル:テイチク
購入価格:110円
入手場所:ブックオフ千葉美浜店
寸評:BL漫画家・真東砂波の作品『ペンギンの王様』のイメージ・アルバム。藤木和人と石塚まみによるThousand Sketchesや、五味美保(五味千賀庫名義)、寺嶋民哉、山口英次など主にアニソン系の作家が集結していますが、全体にめちゃチープな打ち込みハード・ロック〜ポップスがひしめきあっており、ちょっと個人的趣味からは遠慮したい感じ。要するにスーパーのBGM的な感じなのですが、少しでもフュージョン寄りだったら良かったなあ、という。いくつか入っている歌ものもツライ。

 

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アーティスト:V.A.
タイトル:逮捕しちゃうぞキャラクターソングス 歌う警察官
発売年:1995年
レーベル:ビクター
購入価格:290円
入手場所:ブックオフ千葉美浜店
寸評:藤島康介原作の漫画『逮捕しちゃうぞ』はアニメ作品としても多大な人気を誇っていた作品で、関連CDも大量にリリースされています。どれを買っていいものかよくわからんなあというところなのですが、安価で売っていたのでコレを購入。キャラクター・ソングスというのは一般的に歌ものにフォーカスした(比較的)練られた楽曲が多く収録されていることが多いのですが、まさに本作もその類でした。ロック調やアイドル・ポップス調を基本として、宴会の演歌カラオケを模したものなどおちゃらけた曲も多いのですが、③、⑤、⑨が素晴らしいです。特に③は「データとデート」という曲名の通り、この当時起こりつつあったパソコン情報革命をモチーフとしたもので、相当に素晴らしいテクノ歌謡。おそらくいわゆる「YMO歌謡」を意識しているのが明白で、小池玉緒などにも通じる世界。本当に良いです。⑤はハイエナジーなテクノロジー・ポップ。⑨は男女警官が歌うロマンチックなテクノロジー・ボッサ。これもかなり良いです。A&M的なソフトロックを確実に視野に入れている感じで、おそらく90年前後のピチカート・ファイヴを意識しているかと思われます。戦前歌謡風のジャケットは意味不明。

 

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アーティスト:V.A.
タイトル:20面相におねがい!! 恋ほど素敵なミュージカルはない
発売年:1991年
レーベル:ビクター
購入価格:110円
入手場所:ブックオフ千葉美浜店
寸評:CLAMPによる『20面相におねがい!!』の、ミュージカル仕立てオリジナル・ドラマCD。セリフ部は置くとして、OP曲がなかなかよくできたビッグ・バンド・スウィング・ジャズ風のミュージカル・ポップスになっています(歌は新居昭乃)。それもそのはず、全ての作編曲をSMAPの仕事で著名な長岡成貢が手掛けているのでした。とはいえども、キャラクターと原作ありきなことも確かで、音楽単体で楽しもうとするのはなかなか無理があるかもしれません…。

 

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アーティスト:V.A.
タイトル:バトルアスリーテス 大運動会・北海慕情
発売年:1997年
レーベル:パイオニアLDC
購入価格:110円
入手場所:ブックオフ千葉美浜店
寸評:西暦4998年を舞台として、エリートのみが出場することができるスポーツ大会「大運動会」を目指す少女達の姿を描くスペース・オペラOVA作品のオリジナル・ドラマ〜サントラCD。冒頭からあからさまに初期ビートルズ調のテーマソングが流れてきて面食らういますが、その後はいい塩梅にチープな劇伴フュージョン〜ポップスが続きます。少しドゥービー・ブラザーズ風の⑨が好ましいですね。だが、まあ、それだけ。

 

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アーティスト:上野耕路、他
タイトル:帝都大サウンドトラック
発売年:1989年
レーベル:東芝EMI
購入価格:290円
購入場所:ブックオフイオンモール成田店
寸評:荒俣宏原作、実相寺昭雄監督の映画『帝都物語』(88年公開)は、加藤保憲役の嶋田久作インパクトもあって、幼少期からなんとなくおどろおどろしい作品だなあ、と畏怖を抱いていました。後年大人になってから観てみると、なんとも狙いすました映画でまったく怖くない、というより残念ながら単純に映画美学的な魅力を感じることがなかったのですが…。ということで、その続編にあたる『帝都大戦』も未鑑賞なのですが、音楽の方に関しては上野耕路が担当しているということでなんとなく興味をもっていたのでした。前作の石井眞木の重厚な作風を受け継ぐような弦楽曲で占められているのですが、どこかコケおどしの昭和ゴシック感というか、妙に深刻ぶりつつ内実は軽薄というか…一連の帝都物語シリーズそのものに通底する軽さが目立っています。しかしそれ自体が悪いことかといとそうでもなく、いかにもこの時代ならではのペダンチック(なのに軽い)ポストモダンぽい文化人仕草に通じるような気がし、時代的資料としても面白いなあと思ってしまうのでした。このあたりが上野耕路の個性とも合致している気がし、そういう意味ではとても含蓄のある劇伴仕事だな、とも。最後、主題歌として使われた(なんで?)ジャニス・イアンの「Heaven Knows」が流れてくるんですが、あまりのギャップに笑ってしまいます。

 

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アーティスト:駒沢裕城
タイトル:イン コンサート
発売年:1994年
レーベル:PANORAMA MUSIC
購入価格:510円
購入場所:ブックオフイオンモール成田店
寸評:ex.小坂忠とFour Joe Half〜はちみつぱいのメンバーで、日本におけるペダル・スチール・ギター演奏の第一人者である駒沢裕城のライブ作品。録音はそれぞれ91年に北沢タウンホールで、そして92年にクラブクアトロで行われたもの。これ以前にリリースされたソロ・アルバム『Feliz』(91年作)同様ペダル・スチール・ギターという楽器が奏でる音色の麗美さと、非常に綿密で静謐なアンサンブルの妙を聴かせてくれるインスト曲が揃っています。端的に言って、最高…です…。かねてよりハロルド・バッドやダニエル・ラノワが表現してきたアンビエント世界を日本において独自に究めたといえるような、もはや崇高さすら湛えた音楽。今作においては、田村玄一篠田昌已、関島岳郎、中尾勘二向島ゆり子、六川雅彦、横澤龍太郎という素晴らしいバックアップ・メンバーを得て、より一層深遠な音楽世界を聴かせてくれます。本当に素晴らしい!

 

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アーティスト:吉村弘
タイトル:WET LAND
発売年:1993年
レーベル:東芝EMI
購入価格:510円
購入場所:ブックオフイオンモール成田店
寸評:以前吉村弘の『サラウンド』を埼玉のブックオフで発見した時は我が目を疑ったというか、こんな僥倖もう二度とないだろうなあと思っていたのですが、再びあるもんなのですね…しかも大晦日に…。この『WET LAND』は当時東芝EMIが企画した「心の音楽 リラクゼーション・ミュージック」シリーズの一作として企画されたもので、私はこの他に森本浩正氏による作品も所持しているのですが、その作家チョイスからわかるようにそこいらの俗流アンビエントを完膚なきまでに蹴散らす素晴らしい内容です…。生前吉村氏のオフィシャル・ディスコグラフィーから除外されていた作品のようで、その存在が広く知られるようになったのは数年前にYouTubeにフル・アルバムがアップされてからでしょう。Teen Daze始め本作からの影響を公言するアーティストがいたり、その波及力は『サラウンド』や『A.I.R.』、『MUSIC FOR NINE POSTCARD』などに勝るとも劣らないかと思われます。内容に関しては本当に何も言い添える必要がない、どこまでも素晴らしい珠玉の環境音楽。こうやってあらためてじっくり聴くと、本当にハーモーニーのセンスが素晴らしすぎますね。CDオンリーの本作、現在の時価は200ドル前後となっています(CDは逆に発掘されづらいこともあり、出品自体をあまり見かけませんが)。

 

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アーティスト:RHINOCEROS
タイトル:FUNK ON THE RAILROAD
発売年:1991年
レーベル:東芝EMI
購入価格:290円
購入場所:ブックオフイオンモール成田店
寸評:江川ホージン、44マグナムのヴォーカリストのPaulこと梅原達也、山根もとつぐ、堀尾てつじらからなるファンク・ポップ・バンドによるセカンド・アルバム。粘りのある相当本格的なリズム・セクションが特長で、デジタル・サウンドに逃げないところも好感が持てます。ボーカルはちょっとKONTA風。華もあり売れそうな要素もあるのですが、いかんせん曲(というかメロディー)がちょっと地味かなあ、という…(済みません)。本来そういう聴き方をするものではないと思うのですが、シティポップ・ディガーからするとやはり物足りないですね(そういう意味でやはりE-ZEE BANDなどは素晴らしい…)。

 

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アーティスト:V.A.
タイトル:外科医 有森冴子Ⅱ オリジナル・サウンドトラック
発売年:1992年
レーベル:バップ
購入価格:290円
購入場所:ブックオフイオンモール成田店
寸評:92年10から12月まで日本テレビ系列で放送されたドラマ『外科医 有森冴子 パート2』のオリジナル・サウンドトラック。大橋純子の主題歌に加えて、大野雄二が担当したスコアが収録されています。いきなりバート・バカラック風のオープニング・テーマが楽しく、大野雄二の気合いの入った仕事ぶりが味わえます。他、日常描写系フュージョン⑤、サスペンスフルなシンセ・ウェイブ⑦、もろクインシー・ジョーンズな⑨などなかなか聴きごたえのある曲が多いように思います。しかし、こういう豪奢(で少し歌謡的な)なストリングス・アレンジがほどこされたスコアって本当に減りましたね…。

 

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アーティスト:V.A.
タイトル:倉橋燿子 ラストシーン
発売年:1994年
レーベル:日本コロムビア
購入価格:290円
購入場所:ブックオフイオンモール成田店
寸評:ライトノベル作家・倉橋燿子の文庫作品『ラストシーン』のイメージ・アルバム。ムーンライダーズ周辺の仕事や文筆業でも知られる渚十吾と、カーネーションのメンバーでもあったキーボーディスト棚谷祐一が全面的に演奏に参加しており、ちょっと一般的なイメージ・アルバムとは様相を異にしております。どういった経緯でこの仕事を受けることなったのかは謎めいていますが、倉橋燿子の世界に寄せつつも、ちゃんと音楽的意思や作家性が入っているところが流石。チープなシンセ・サウンドがホームセンター感をそこはかとなく演出しますが、楽曲構造やアレンジはやはりかなり凝ったものが多く思います。⑦なんて同時期のカーネーションを彷彿とさせるようなロック曲。ヨーロッパ趣味の味付けもなかなか面白いですね。石田よう子の歌う⑩の浮遊感あふれるエイス・ワンダー風トラックも素晴らしい。


次回へ続く…。

CDさん太郎 VOL.21 2019/12/30、31購入盤

 本年も宜しくお願い致します。


 まず告知です。私も末席に加えていただいている、CDエラのシティポップを掘りまくるディガーサークル「lightmellowbu」による本、『オブスキュア・シティポップ・ディスクガイド』が来る1/17に刊行されることになりました。僭越ながら私が全体の編集を務め、各コラムや冒頭文書、そしてもちろん一部レビュー執筆にも参加しております。
 これまでのbu紙(ZINE)やブログ掲載レビューを再構成の上収録しているのをはじめ、多数の書き下ろしを交えた合計512枚のCDについてのテキストが一堂に会する様は、まさに圧巻。「集大成」というよりはあくまで濃密な「現状報告」といいたいその内容は、初心者はもちろん、ライトメロウ〜シティポップを熱心に掘ってきた方々にとっても大変な驚きに満ちたものになっているかと思います。一言でいうと、奇書。
 また、単なるオブスキュアなCDの羅列にならぬよう、編年形式を採用し1986年から2006年にかけての音楽シーンにおいて「シティポップ的なるもの」がどのように盛衰/定着/拡散していったのかを追体験してもらえるような作りを意識しました。一般的には「シティポップが終わった時代」とされるこの時代に隠された様々な(ときにいびつな)果実の数々の存在を今2020年において振り返ってみること。シティポップ・ブームの向こう側へと手をのばさんとする、単なるノスタルジーをはねつける刺激的/示唆的な本になったと自負しております。全編に渡り、この『CDさん太郎』と強く共振する意識も横溢しているようにも感じ、今、先鋭的なリスナーにとって、ますますCDの光と影が亡霊のように取り憑きつつあるということを鮮やかに提示している書でもあると考えています。是非お手に取ってみてください。

書籍詳細はこちらから:

diskunion.net

 さて、今回は2019年12/30と31に千葉県西部にて購入したCDを紹介しようと思うのですが…。妻の実家に帰省する工程にくっつけてブックオフハードオフ各店を周遊したのですが、師走ハイも入り混じり、近年まれに見る購入数となってしまいました…。というか、単純に各店在庫の充実ぶりがすごく、興奮のうちに破茶滅茶に買ってしまったのでした(合計39枚)。ですので、2回に分けて更新させていただきます…。今回はその前半回で、30日に全てブックオフSUPER BAZAAER東千葉祐光店で購入した19枚を紹介します。
 本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

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アーティスト:石川よしひろ
タイトル:CHAPTER 002
発売年:1995年
レーベル:パイオニアLDC
購入価格:290円
寸評:渡辺美里藤井フミヤへの楽曲提供経験もあるシンガー・ソングライター石川よしひろによる(タイトルが紛らわしいが)7thアルバム。90年デビューということを考えるとすごいペースですね。熱心なラジオ・リスナーの方であれば「オールナイトニッポン」のパーソナリティを務めていたことや伊集院光と交流が深いことでもご存知かもしれません。この人のCDは今までもブックオフで見かけることがあったのですが、ロック寄りなルックスや帯の惹句に気圧されて購入を躊躇していたのでした。が、(時折そういう店舗がありますが)ブックオフSUPER BAZAAER東千葉祐光店はセールコーナーのCDにOP袋を被せず陳列しているためにブックレットの中身も確認可能。このCDについてもクレジット部を参照してみると、Dr.ストレンジラブなどのロック人脈のミュージシャンに混じって編曲に井上鑑の名が。ジャケットもそれ風だし、これはライトメロウ的可能性がなくはないのでは?ということで購入。はたして…恐れていたとおりの(歌謡的)ストリート・ロック盤でした。つらい気持ちで聴き進めていくと、ただ一曲だけ、井上鑑編曲の⑦だけはかなり良い!やや「ナイト・イン・ニューヨーク」を思わせるイントロから軽やかなAORサウンドに流れ込んでいきます。これぞまさにアレンジの妙ですね。

 

 

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アーティスト:上田知華
タイトル:I WILL
発売年:1991年
レーベル:ビクター
購入価格:290円
寸評:84年リリースの『Classiest』以来久々となる上田知華による歌ものオリジナル・ソロ・アルバム。KARYOBIN時代のワークス含め常に高クオリティな作品を連発してきた彼女ですが、この作品は全編海外プロダクションとなっており、その参加面子の豪華なことがなにより注目すべきトピックでしょう。全編をデヴィッド・キャンベルがアレンジを担当し、ウィルトン・フェルダー、マイケル・ポーカロ、カルロス・ヴェガ、マイケル・ランドウ、ディーン・パークス、デヴィッド・T・ウォーカー、ジェイ・ワインディング、レニー・カストロ、アーニー・フィールズ等…という超豪華メンバー。ザ・バブル。上田自身による作詞作曲のある意味中庸な魅力とハイクオリティなアレンジ/演奏が入り混じり、さすが本場ミュージシャン参加というべき「派手すぎず地味すぎない」盤石のプロダクション。生演奏の魅力を前景に据えることで、ポップスにおける「中道を行く」ことの力強さがよりいっそう表出しているように思います。これといってどの曲が良いとかないんですが…それが好ましさに転換することが幸せ。次作『朝昼夜晴れ』も同様のプロダクションによる佳作となっています。

 

 

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アーティスト:小久保隆
タイトル:DHC SOUND COLLECTION 小久保隆の癒やしの音楽 水
発売年:2008年
レーベル:DHC
購入価格:290円
寸評:以前に本『CDさん太郎』のVol.5でも「森」編をとりあげた小久保隆によるDHCオリジナル非売品俗流アンビエントCDの、「水」編。相変わらずの素晴らしい内容で、やはりこの人はちょっと別格だなあという気持ち。個人的な好みでいうと90年代までのイオン・シリーズにおけるクリスタルかつアブストラクトな作風に入れ込んでいるので、2000年代後期作の一連シリーズは「あの時代のデジタル・シンセサイザーのマジック」が薄まってしまっている気がしてしまうのですが、そもそもの楽曲の良さとアレンジにおける奥ゆかしさ/趣味の良さは健在。水滴る音をバックグラウンドに繰り広げられるメロディック俗流アンビエント世界は、ある種フォーキーとすらいえる魅力を湛えています。一般的な作家がお手軽にピアニックな主情的表現に 流れがちなところ、アコースティック・ギターの清涼感あふれるたゆたいに楽曲自体のムード支配を委ねているのも素晴らしいセンスです。

 

 

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アーティスト:SATOKO
タイトル:BECAUSE I LOVE YOU
発売年:1991年
レーベル:キング
入手場所:ブックオフSUPER BAZAAER東千葉祐光店(※以下全て同店につき略)
購入価格:510円
寸評:テレビアニメ『天空戦記シュラト』主題歌「SHINING SOUL」の歌唱で主に知られる歌手・清水咲斗子(SATOKO)によるサード・アルバム。表題曲が前年にリリースされたスティービー・Bによるヒット曲のカヴァーであることにみられるように、折に触れて洋楽風キャラクターで売り出されていたフシが見受けられる人。(アニソン・ファン的にそれってどう映っただろうか)。それ故にか本盤でもSATOKOという英表記のアーティスト名になっています。他、レニー & ザ・リー・キングスのヒットで知られるビート曲「STOP THE MUSIC」(渋い!)をチープなマハラジャ・ディスコ・アレンジで取り上げるという謎いセンスも面白いですね。全編にわたってジャケットの通りムーディーかつアダルトなブラコン歌謡といった雰囲気で、シティポップ的躍動感はそこまで観察できないものの、捨て置くにはいかない妙なる魅惑が漂っているように思います。特に、全編に編曲を施す勝又隆一が作曲も担当した④あたりはかなり好ましいと感じます。一曲だけでもメジャー・キーのアップ曲があればもっと好印象なのですが。

 

 

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アーティスト:清水綾子
タイトル:JUNE BRIDE
発売年:1990年
レーベル:ビクター
購入価格:290円
寸評:88年に荒木とよひさ作詞、堀内孝雄作曲の「旅愁人~たびびと」でデビューしたシンガー清水綾子のセカンド・アルバム。1stは湯川れい子プロデュースでしたが、ここでは前述の荒木や服部克久がプロダクションに加わっています。編曲に新川博や佐藤凖などライトメロウ者が関わっているので好内容を期待をしたのですが、全編これぞ(前時代型の)ニューミュージックというべき中庸な歌謡曲感が漂っており、なかなかに厳しい内容…。それもそのはずというか、ほとんどの曲を鹿文太郎ことやしきたかじんんが作曲を務めているのでした。そう言われてみると、そのままたかじんの歌唱に脳内で置き換えてしっくりくる湿性の主情的バラードばかり。さようなら…。

 

 

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アーティスト:Jupiter Project
タイトル:VINTAGE WORKS
発売年:1993年
レーベル:東芝EMI
購入価格:290円
寸評:ラジオDJ/評論家の鈴木しょう治が監修、モンチ田中こと田中正彦サウンド・プロデュースを務めた日本国内制作ソウル〜R&Bカヴァー集。若きマーク・パンサードナルド・フェイゲン『ナイトフライ』のジャケットに扮しているアートワークだけで合格!という感じですが、中身もなかなかに充実しています。後述の難波正司作品にも登場しているメロディー・セクストンやケイレブ・ジョーンズがここにも参加し、日本国内制作の本場出身シンガー歌唱R&Bというニッチなジャンルの人的寡占状況に思いを馳せさせてくれます。サウンド的ににも同時代のR&Bやハウスをうまく取り入れており、ようやく一回転して聴けるようになった音楽、という感じでしょうか(まだギリギリNG?)。そこはかとなき「当時のFM」っぽさ。いつかの夜、どこかのステーションのなにかの番組をぼんやりときいている、そんな気分になります。音像も妙にくぐもっており、余計にそんな気分を駆り立てます。

 

 

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アーティスト:杉本竜一
タイトル:NHKスペシャル・オリジナル・サウンド・トラック集 北極圏Ⅱ
発売年:1989年
レーベル:ポリドール
購入価格:510円
寸評:後に同じくNHKの『生きもの地球紀行』の音楽を担当し、その中の楽曲「BELIEVE」が学校教育現場における卒業式時の合唱曲としても定着することになった作曲家・杉本竜一。このNHKスペシャル『北極圏』のサントラでは、よりシンセサイザー音楽寄りの内容となっており、おそらく現在の視点ではこちらの方が好ましく聴けるかと思います。ペレストロイカ期のソ連北部の北極圏を探索する全12回シリーズとあって、壮大な大自然を描かんとする剛健な楽想にまぎれて、偶然にもバレアリックな瞬間がいくつも散りばめられているのでした。番組の舞台が北方ということもあり、いわゆるエスノ〜トロピカル的色彩はまったくなく、厳しい寒さを演出するようなクールなシンセサイザーサウンドが実に素晴らしいです。マイナー・キー楽曲が目立つところは、ドイツのシンセサイザー音楽、あるいはソ連のレーベル<メロディア>の80年代作品との連関も感じさせるといったら言い過ぎでしょうか。特にフュージョン的とすらいえる⑤では途中バラライカ的フレーズが現れるなど、地域性への目配せもされています。⑥はかなり明確にミュンヘン・ディスコを狙っている節があり、杉本竜一の作家イメージがいい意味で覆されます。これは名盤と言っていいのではないでしょうか。なかなか見かけない作品ゆえ、今回は続編のⅡから購入することになってしまいましたが、いつかⅠも手に入れたいと思います。

 

 

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アーティスト:SM-ART
タイトル:夢想美術館
発売年:1993年
レーベル:東芝EMI
購入価格:290円
寸評:作曲、アレンジ、キーボード担当のsuzukiと、ヴォーカル担当のsachiからなる女性二人組ユニット「スマート」のデビュー・ミニ・アルバム。suzuki(鈴木貴子)は元々ソロ活動をしており、89年に行われたヤマハ・EOSシリーズを使用しての楽曲コンテスト「YAMAHA BIG EOS DAY '89」でグランプリを受賞するなど、シンセサイザープ・ログラミングにも長けた人です。92年のソロ・デビュー・アルバムでは小室哲哉も関わっているようです。このスマートも実質suzukiのプロジェクトユニットといって良さそうで、ほぼ全ての音が鈴木による打ち込みサウンドとなっています。音楽性としてはTMNからの強い影響を感じる硬質なテクノ・ファンクといった様相。sachiのヴォーカルも聴きものですが、アイデアフルなトラックの魅力を味わうにはやはりインスト曲が面白いように感じます。出色は④の「深海魚」。イントロが流れ出した瞬間、2020年のiPhoneユーザーならだれしも入電を疑うであろう、iPhoneの着信音に酷似したミニマルなマリンバが主導するドラマティック・テクノ。

 

 

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アーティスト:難波正司 and PACINI SOUND FACTORY Vol.2
タイトル:Pavlov's Dream
発売年:1991年
レーベル:ソニー
購入価格:290円
寸評:桑名正博&ティアードロップスのキーボードでもあり、アラゴンやTスクエアにも参加した難波正司によるソロ名義作品…なのだが、これが妙なコンセプトを掲げた珍作なのでした。男性の亀頭や女性のクリトリスに密集しているパニチ小体という性感帯にもっとも刺激を与えるという帯域(=200Hz)を強調したオリジナル楽曲集と謳われています。要は媚薬的効果が期待できるアルバムということなのですが、その音楽内容は極めてまっとうな和フュージョン〜ポップ・ソウル。たしかに低音域にブーミーな処理が施されているようにも思いますが、あくまで音楽優先でアレンジされているのがいいですね。難波正司のオリジナル曲も聴きものですが、カヴァー曲も「恋のバカンス」「マシュ・ケ・ナダ」「ユー・アー・オンリー・ロンリー」など粒揃いです。演奏陣も松原正樹、今剛、美久月千晴、ジェイク・H・コンセプションなど、非常に豪華。ボーカル陣もメロディー・セクストン、新倉よしみ、スージー・キム、ケイレブ・ジェームス、織田純一郎といった実力派が揃っています。ライナーノーツには女性にモテるためのデート・テクニックや話題について書かれたエッセイも掲載。ジャケットもカッコいい。カーステレオでの再生も推奨されているようですが、一見オシャレなジャケットをまとわせデート相手に本当の効能を悟らせない、という魂胆なのでしょうか。これもVol.2の方を先に見つけてしまったので、ゆくゆくは1や他作も手に入れたいところです(全4集に渡るシリーズらしい)。

 

 

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アーティスト:松田昌
タイトル:オーロラに乗って
発売年:1995年
レーベル:ポニーキャニオン
購入価格:290円
寸評:大野雄二と組んだ79年作『Silent Dialogue』などが予てより中古レコード市場でも人気のエレクトーン/シンセサイザー/ピアノ奏者・松田昌。これは90年代に入りよりニューエイジ的な作風に接近した時期のCDで、オーロラ写真家・門脇久芳のミニ写真集(という体のブックレット)が付属した企画盤です。ソフト・タッチなピアノ・インストは置くとして、やはりここでの聴きものはエレクトーンやシンセをフィーチャーした曲たち。元々ポップスの素養がある人(ビージーズのカヴァー集などというのもあった)だけに、アンビエントというにはやや快活な作風。ときにプログレッシブな構成を聴かせる曲などもあり、若干フォーカスがボケている感も。とくにストリングスが大幅導入されている大仰な曲は遠慮したい…その中にあって、⑥のミディアム・フュージョンは出色です。エアリーなシンセのサウンドをさらまろやかに包み込む多重シンセ・アンサンブル。あの三原善隆による極上作『ナイト・ライダー』へも一脈通じる曲ですね。「サイバー・ワルツ」とでもいいたい⑧もかなり良いです。ちなみに、本作へシンセサイザー・プログラミングで参加している著名エンジニア北城浩志は、私が音楽業界に入って一等最初にお仕事をともにさせていただいたエンジニアさんでもあります。その素晴らしいお仕事ぶりは本作でも十分に味わうことが出来ます。

 

 

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アーティスト:Midori Takahashi
タイトル:プラス思考 〜マインド・コントロールサウンド
発売年:1997年
レーベル:Della
購入価格:290円
寸評:おなじみDellaによる、サブリミナル効果を謳った「マインド・コントロールサウンド」シリーズの中においてもひときわ有名(というか目撃頻度の高い)作品であろう本作。このいかにもA E S T H E T I Cなジャケットもあいまって、俗流アンビエント諸作の中でも人気の高い一作でもあるようなのですが、却ってその目撃頻度ゆえ「いつでも買えるしな」などとたかをくくってきた私、実はこの日まで未所持だったのでした。音楽的には相当に俗的なピアノ・イージーリスニング〜ポップ・インストゥルメンタルという感じで、個人的な好みからいうと結構ツライものが…。が、④はかなり良いと思いました。ミニマルなピアノ・フレーズの上に品のいいシンセ音がゆらいでいくトラック。途中からソプラノ・サックス(のプリセット音)が挿入されてくる構成も素晴らしい。ちょっとポール・ウィンターの作品にも近いかなと。しかしこの音楽を手掛けたMidori Takahasiという人物がどんな方なのか、ネットにあたってもほぼ情報がなくよくわかりません。かなりニューエイジに傾倒している風の同名のTwitterアカウントの存在を確認しましたが、同一人物なのでしょうか。

 

 

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アーティスト:米田健一
タイトル:空が好きだった君に
発売年:1995年
レーベル:GENTLE HRARTS
購入価格:290円
寸評:東京芸術大学音楽学部作曲科出身のシンガソングライター/ピアニストによるファースト・アルバム。90年には名プログレ・バンドKENSOに加入する人ですが、一般的にはスターダスト・レビューのサポート・メンバー(後に正式メンバー)やラグフェアーのプロデューサーとして知られているかと思います。すごく多作な人なので、店頭で見かけてもどれがなんだかよくわからず(キャリア情報から漂うとらえどころのなさもあって)これまで購入を躊躇していたのですが、あまり見かけないファースト・アルバムを発見し、購入。一曲くらいスタレビに通じるようなシティポップが入っていたらいいなあくらいの期待感だったのですが、そのバタ臭いジャケット通りのハードコアなMORが連発する内容。まあそうですよね、と…。しかし、⑤はシティポップといえなくもないような曲で好ましいですね。ニュー・ジャック・スウィングのイディオムを取り入れつつ、それを最大限薄めたようなリズム構成が面白いです。元来きれいなハイトーン・ボイスを持つ人なので、こういうメロウな作風はかなりハマっていると思います。それだけに、他に同傾向の曲がないのが残念。⑥もリズムアレンジにもう少しこだわってくれればJ.D.サウザー的なAORチューンになりえたような、惜しい出来栄え。珍しくシンセを駆使したマイナー・キー曲⑦が、井上陽水をバレアリック視点で再評価線とする昨今の風潮にすこしだけリンクするかもしれないですね。

 

 

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アーティスト:THE RHYTHM KINGS
タイトル:DRAGON COCKTAIL
発売年:1996年
レーベル:パイオニアLDC
購入価格:290円
寸評:米米CLUBパーカッショニストMATAROが中心となって結成されたラテン・ファンク・プロジェクトの唯一作。昨今、80年代を通じてシティ・ポップ文化の一部に強大な影響を与えていたことが考証され、にわかに再注目を浴びるエルボウ・ボーンズ&ザ・ラケッティアーズとその代表曲「ナイト・イン・ニューヨーク」。が、これほどまでにリスペクトと自覚的なオマージュをそれへ捧げたユニットは稀で、実際MATAROはオーガスト・ダーネルを崇拝し、メンバーにもそれ風の衣裳を着させたりしています。また、実際に「ナイト・イン・ニューヨーク」の気合の入ったカバーも収められており、崇拝ぶりが見て取れます(そのあたりを見誤るとこのギャングスタ風のジャケットの意味が理解できないかもしれない。今思うと、米米CLUB本隊も音楽性/ルックスふくめ相当キッド・クレオール&ココナッツぽいわけですが)。さて、その内容はこれ全編傾聴に値する素晴らしいクオリティのラテン・ファンク〜ソウルのオンパレードで。ずばり名作といえるんじゃないかと思います。数曲あるラガマフィン曲も「時代」ですね。主にヴォーカルを務めるのはCHIERI伊藤智恵理)と、同じく米米CLUB人脈からシュークリームシュのMariが参加しています。また、注目すべきがONE STEP Communicateの三人がコーラス参加し、一部曲でリードを取ったりしているところでしょう。また、バッキングのメンツも松原正樹、有賀哲雄など、豪華です。

 

 

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アーティスト:ワンダフルフィッシュ with デヤケン
タイトル:海辺のわが家
発売年:2001年
レーベル:ニューセンチュリーレコード
購入価格:290円
寸評:千葉県南房総各ビーチの観光振興キャンペーン「ワンダフル・ビーチ」のために結成された中学生から社会人まで幅広い年齢で構成されたご当地アイドルグループによるシングルで、タイトル曲はそのキャンペーンのテーマソングに抜擢されていた由。ベタなバラード調のタイトル曲、当時のアイドル・ポップスの流行りを安易に取り入れたようなc/wとも相当キツイ(歌唱も素人のカラオケ感満天)内容で再び聴くことはないでしょう…。両曲とも作詞に康珍化を迎えており、無駄に贅沢。ワンダフルフィッシュに寄り添う男性ボーカルはデヤケンこと出山謙一によるもの。あのX JAPANのToshlの実兄で、音楽業界で働いた後35歳の時に地元の館山に戻るも、06年からはベトナムホーチミンでカラオケ店経営をしているらしいです。

 

 

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アーティスト:V.A.
タイトル:アイドル防衛隊 ハミングバード'94夏 ☆トラ・トラ・トラ
発売年:1994年
レーベル:東芝EMI
購入価格:290円
寸評:アイドル+自衛隊という組み合わせをOVA界に提示し、『艦隊これくしょん -艦これ-』や『ガールズ&パンツァー』などに先鞭をつけたというべきアニメ『アイドル防衛隊ハミングバード』のサントラ第二弾。主演声優のヴォーカル曲やBGMにカラオケ版を加えたものですが、さすがにこの設定のアニメにライトメロウ的なものを求めるには無理があったか…全体にタイトル通りスポーティーかつ体育会系の内容でした(ハードロック系が多い)。ただ、工藤崇作、宮城純子編曲の③だけは割に良質なアイドル・テクノ・ポップでした。しかし、自衛隊をテーマにした作品のサブタイトルに「トラ・トラ・トラ」って、いいんでしょうか…。

 

 

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アーティスト:V.A.
タイトル:アルファ波分析による 胎児と妊婦のバイオミュージック
発売年:1990年
レーベル:ソニー
購入価格:290円
寸評:88年からソニーが展開していた『アルファ波分析によるバイオミュージック』シリーズ中の一作。全作、筑波大学講師でバイオミュージック研究所所長の貫行子氏が監修を手掛けています。同一アーティストでなく、何人かの作家作品をコンパイルしているところが同シリーズの特徴なのですが、現代音楽〜アンビエント・ファンとして見逃せない人が参加していることがあるので油断がなりません。同作にも(他作品と同じく)名盤『カオス・ゾーン』で一部マニアに有名な森本浩正氏が2曲提供しており、注目に値します(逆に言うと、他のライトクラシック系の作家作品はなかなかツライので、スルー)。平素相当に先鋭的な作風の森本氏ですが、ここでは本CDのテーマとして謳われている効能に寄せてきたのか、かなり保守的な楽曲を提供しています。マタニティ・ブルーを解消するという曲②は、ちょっと聴き通すのがしんどかったです…。それでも、楽しいクッキングを謳う③は氏の尖ったセンスを少しだけ垣間見せてくれるミニマルなシンセ曲。しかし、こんな空疎な曲想で楽しいクッキングなどできるのだろうか…。ときおり和気藹々としたフレーズを混ぜ込もうとするプロ意識も感じますが、かえって寒々しい空気を招来しているような気がします。

 

 

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アーティスト:V.A.
タイトル:アンジェリーク 永遠のヴァカンス Vol.1 〜La Mer〜
発売年:2000年
レーベル:コーエー
購入価格:290円
寸評:コーエー発の女性向け恋愛シミュレーションゲームアンジェリーク』に登場する男性キャラクターのソロ・ボーカル集。このシリーズはどれから手を付けていいか迷ってしまうほどに多数の関連作がリリースされているのですが、かつてlightmellowbu部長のハタさんが本作をライトメロウ的隠れ名作としてZINEにレビューを寄せているのを見て以来気になっていたものです。のっけからいきなりミディアム・ブギーな①が流れ出て、なるほど!という気持ち。これは確かに良いですね。ナレーション曲は飛ばすとして、ミディアムR&B④や⑮、エロチックなボッサ⑨もなかなか。出色は⑦。チープなシンセ・ホーンが気持ちのよいグルーヴィーなアップ・ナンバー。全体に歌唱力に難のある声優さんも降り混じっていますが、そこを稀なる味わいと取れるかどうかが今後のディグにおける分水嶺になってきそうだな、と。

 

 

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アーティスト:V.A.
タイトル:折原みと ティーンズハート・コレクション
発売年:1990年
レーベル:日本コロムビア
購入価格:290円
寸評:講談社X文庫ティーンズハートから刊行された一連の折原みとラノベのイメージアルバム。これはその第一弾作品です。全編の演奏をNONSECTというバンドが務め、川村万梨阿や亀卦川真浩、そして折原みと自身が代わる代わる歌唱するという構成になっています。NONSECTは後にB'zのサポートキーボードを務める広本葉子や、ELLEGARDENへ楽曲を提供することになるギタリストのホリエアキラらが在籍したバンドで、そういった情報から察されるように、かなりロック志向の音楽性を持っています。ですので、ここでの演奏も基本的にロッキッシュ。おもしろいのは川村万梨阿が歌う②「君だけのブルー」と⑧「Memories」で、曲調さえ違えどそれぞれモロにブルーハーツ「青空」と松田聖子SWEET MEMORIES」を大胆オマージュ(パクリ?)しています。ちなみに、②のいななくようなサックス・ソロはEiji Tokiとクレジットされていますが、これはおそらく誤字で、土岐英史(ときひでふみ)のことではないかなと思います。おもいきりクラレンス・クレモンズ風のソロで爽快。が、隠れたニューエイジやライトメロウを求めて本作を買った身からすると、やはり全編ロック色が強すぎてなかなかツライものがあります…。

 

 

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アーティスト:V.A.
タイトル:ふしぎ遊戯 オリジナル・サウンドトラック
発売年:1995年
レーベル:アポロン
購入価格:290円
寸評:95年4月からテレビ東京で放映されていた人気アニメのサウンドトラック盤。佐藤朱美と今野友加里による主題歌もミレニアル世代の郷愁を誘うかもしれませんが、聴きものは本間勇輔によるスコアの方。早稲田大学の音楽サークル「ナレオ」出身の氏は、『ポンキッキーズ』や『古畑任三郎』のテーマなどで知られる職業作曲家で、スタジオぴえろ系のアニメ音楽を多数手がけたことでも知られています。時空と世界を旅する魔術系アニメという設定にふさわしく、時にオリエンタルに、時にプログレッシブに、時にシリアスにころころと表情を帰る劇伴は、まさしくプロの仕事…という感じ。非常に面白く聞けます。時代柄、ハウスやトランス的な要素が垣間見えるとことも興味深いですね。それにしても全体に異様に高音質なCDで、CDジャーナルからも「さらにBGMの不思議なな立体感には,TV東京系とは思えぬ「やる気」が光っていて感心しました。CDとしてのマスタリングのレベルも高いので,エンジニア志望者も聴くべし。」と賛辞を送られています。


後半へ続く…。

CDさん太郎 VOL.20 2019/12/13、16、25 購入盤

 こんにちは。復活後第4弾の「CDさん太郎」です。
 今回は2019年12月12、16、25日にそれぞれ東京・駒場三軒茶屋、神保町で購入したCDを計13枚紹介します。2019年内最後の更新になります。今年もよくCDを買いました。来年もよくCDを買うことでしょう…。


 本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

 

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アーティスト:西村直記
タイトル:漂流 John's Dream
発売年:1991年
レーベル:ポリスター
入手場所:ブックオフ246駒沢店
購入価格:510円
寸評:愛媛県在住の作曲家/シンセスト西村直記によるセカンド・アルバム。バチカンにてローマ法王の御前で演奏を行ったり、広島で平和記念公演を行ったり、世界中を巡礼して演奏活動を行うといったことを繰り広げてきたことが書かれたプロフィールの通り、非常に壮大な交響曲的作風を得意とする方で、ちょっと私の電子音楽趣味からは外れるかなという感じです…。本作は林英哲渡辺香津美といった著名ミュージシャンも参加しており、さすがメジャー製の出来栄えなのですが、それにしてもポリスターがこういうニューエイジを制作販売していたという事実に少し驚きます。本人のシンセや各種打楽器の絡み合いにはオッと思わせる瞬間も少なくなく(特にウードも交えた⑪「オリ・アラギ」は絶妙なエスニック・バレアリックで相当に素晴らしい!)、個人的には、思い切って分厚いストリングスやコーラス隊を全面的に廃してくれたら良かったのになあと思うのでした。ちなみに、西村氏、その後も活発な活動を行っており、環境問題を訴えるアニメ映画『MOTHER 最後の少女イヴ』のサントラに参加したり、また更に後にはおそらく自主制作でかなりの数のCDをリリースしています。私もいくつか所有していますが、かなり直球の俗流アンビエントという感じです。YouTubeに過去作を紹介する日記を兼ねたような動画を毎日アップしています。再生回数はどれも極小ですが、その信念に敬服します。インスタグラムやTwitterアカウントもアクティブです。

 

 

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アーティスト:川村栄二小泉今日子
タイトル:東映/バーニング・プロダクション提携作品『ボクの女に手を出すな』オリジナル・サウンドトラック
発売年:1987年
レーベル:ビクター
入手場所:ブックオフ246駒沢店
購入価格:510円
寸評:1986年12月公開の映画『『ボクの女に手を出すな』(監督:中原俊)のオリジナル・サウンドトラック盤です。LPも同時発売。残念ながら映画は未見なのですが、名匠・中原俊が全盛期のキョンキョンの魅力を切り取った作品としてファンの中では好作とされているもののようです。小泉今日子歌による「木枯しに抱かれて」は彼女の代表曲として今でも人気の高い曲で、1987年の紅白歌合戦には本曲を歌唱しています(詞曲は高見沢俊彦、編曲は井上鑑)。今になってはその歌謡感が若干遠慮したい感じの同曲より、疾走するB面のエレクトロ・ロック・チューン「Blueage Dream」(本サントラにも収録)に肩入れしたくなりますが。さて、このサントラの主役はキョンキョンでなくて、川村栄二です。『小説吉田学校』で劇伴作家としてデビュー以来、東映映画のサントラを手掛けまくってきた彼。その『小説吉田学校』がかなりどんくさい映画だったので、音楽のことは印象に残っていたかったのですが、本作はかなりいいですね。氏得意の主情的なストリングス〜ホーン・アレンジに野暮ったさを拭えないながら、この時代特有のバキバキ・ビートと融合することで(スラップを決めまくるベースが良い)、なんとも言い難い歌謡エレクトロニックな劇伴となっています。⑤、⑧、⑨、⑩あたり、かなり面白いです。一方、生ピアノやストリングス・メインのトラックは、やっぱり聴き飛ばしてしまうという。

 

 

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アーティスト:TiTi松村
タイトル:ふなのような女
発売年:1993年
レーベル:エピック・ソニー
入手場所:ブックオフ246駒沢店
購入価格:290円
寸評:ご存知・ゴンチチチチ松村氏によるソロ・アルバム。アコースティックなイージー・リスニング・ギター・デュオというイメージを超えて内外で再評価高まるゴンチチですが(ニューエイジ系に限らず元々かなりヴァーサイタルな音楽性の方々なので納得)、このソロ作ではギターは引かず、なんとヴォーカルに専念。元々フォーク畑にいた方なので、非常に温かな歌心あるヴォーカルを聴かせてくれます。アレンジはマーク・マーダーが手掛け前編フランス録音。ジャズとライト・クラシックやシャンソンの間をいくようなアレンジがじつに柔和かつシルキーで、ちょっとリンダ・ロンシュタットネルソン・リドルのコラボレーションに近いものも感じさせてくれます。ある時期のムッシュかまやつの作風にも近いか。実に豪奢な世界。ゲスト・ボーカルにはCharaも参加し、華を添えます。90年前後のピチカート・ファイヴなどが好きな方にもおすすめできる、高クオリティ盤。

 

 

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アーティスト:タイガー大越
タイトル:Face to Face
発売年:1989年
レーベル:ビクター
入手場所:ブックオフ246駒沢店
購入価格:290円
寸評:ジャズ・トランペッターにして現バークリー音楽大学教授/昭和音楽大学客員教授のタイガー大越によるサード・アルバム。この時代らしいハードなフュージョンが満載なのですが、タバコのCMソングにもなったというスクリッティ・ポリッティ風の①筆頭に、かなりエレクトロニックなサウンド。いくつかのスタンダード曲も、無理やりエレクトロニックなアレンジが施されており、やや苦笑を誘う。それにくらべると、やはり①はじめオリジナル曲の方が断然良いですね。ジェリー・エトキンス、清水興土方隆行、 東原力哉が参加しており、丁々発止の演奏を繰り広げるあたりはザ・和フュージョン。しかし、エレクトロニック色強めの曲に関しては、タイガー大越氏のメイナード・ファーガソン風の(優等生的)トランペット無しで聴きたいなあという邪念が立ち上がってくるのでした。一時期のマイルス・デイヴィスドン・チェリー、あるいは後述の近藤等則氏などのようなある種のアブストラクトなプレイ/フレーズでないと、そもそもトランペットのサウンドというのはバキバキの電子音になじまないのではないだろうか、という思いが…。

 

 

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アーティスト:V.A.
タイトル:『七人のおたく』 オリジナル・サウンドトラック
発売年:1992年
レーベル:エピック・ソニー
入手場所:ブックオフ246三軒茶屋
購入価格:290円
寸評:水戸芸術館、幻想工房、スパイラルホール、立川国際芸術祭などの環境音楽の作曲、音楽監督を務めてきた山辺義大と、京都市立芸術大学音楽学声楽家卒で、様々な舞台音楽などを手掛けてきた崎久保吉啓による2人が劇伴制作を務めた映画『七人のおたく』のサウンドトラック盤。映画自体へも、ウッチャンナンチャン売出しに伴う軽薄なコメディー、という先入観があったので音楽にも期待していなかったのですが、この時期のサントラとあればとりあえず買うことを日課にしているゆえ、購入。果たしてこれは相当に素晴らしいですね。ほぼ全編シンセサイザーを主体とした楽曲が並ぶのですが、シチュエーションごとにディープなアンビエントやメロウなミディアム・フュージョン、デジタル・ボッサ、マリンバ使いのミニマル・エスノ・フュージョン、トライバルなテクノなどが入り乱れる好内容。いや本当に素晴らしい。あの辛口なCDジャーナルでも、「大ヒット公開中のギャグ・コメディー映画のサントラ、とは思えないほど心地よい響きに満ちたアルバム。南の島で元気なヴァカンス、みたいな気分になれます。マルチなサウンド・クリエイター、山辺義大と崎久保吉啓はきっと真摯な音楽オタクだったのだ!?」と高評価を得ています。バブルガム・ブラザーズ京野ことみのタイアップ曲については特に添える感想はありませんが、杉本理恵の「ときめきアイランド」は絶妙にノーテンキなトレンディー・エスノ歌謡で面白いです。

 

 

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アーティスト:安藤治彦
タイトル:Call it Love
発売年:1991年
レーベル:ポリドール
入手場所:ブックオフ246三軒茶屋
購入価格:290円
寸評:大江千里のバッキング・ヴォーカルなどを務める中でソロ・デビューに至ったシンガー安藤治彦によるセカンド・アルバム。ハスキーな声質が特徴的で、大沢誉志幸や、バービーボーイズKONTAを彷彿とさせます。ということで、あまりライトメロウ向けの声ではないのですが、④が非常にスムースなミディアムAORで、素晴らしいですね。ほかは全体にニュー・ジャック・スウィングとハイエナジーが合体したような世界。「ポストモダンパラダイス」という曲名がすごい⑧も好ましい。実際はポストモダン色(テクノ・ポップ色?)が強いわけでなく、AOR期のシカゴなどに近いスタイル。全体に隠れた佳作、という感じです。

 

 

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アーティスト:FENCE OF DEFENSE
タイトル:S.T.
発売年:1987年
レーベル:エピック・ソニー
入手場所:ブックオフ246三軒茶屋
購入価格:290円
寸評:ベーシスト西村麻聡は初期ビーイングのセッションマンとしてもその筋で著名で、昨今だと亜蘭知子の『浮遊空間』への参加などでも知られる人。これはそんな彼が、日本のエディ・ヴァン・ヘイレンこと北島健二とドラマーの山田わたると結成したロックバンドFENCE OF DEFENSEのデビュー作。基本的にはエアロスミスボン・ジョヴィヴァン・ヘイレン等の正道アメリカン・ハードロックを受け継ぐ作風なのですが、各人の先鋭的なセンスはそれだけにとどまらず、非常にヴァーサイタルなもの。ギャンギャンいうサウンドの中に突如エレクトロニクスが挿入されたり、硬質なファンク・リズムが導入されるさまは、素直にカッコいい(ような気がする。一昔前なら絶対に途中茹で再生を止めていたと思う)。本作で言うと、④⑤あたりが面白い。

 

 

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アーティスト:木谷響羽子
タイトル:ウォーター ブルー
発売年:1998年
レーベル:Xebec Music
入手場所:ブックオフ246三軒茶屋
購入価格:110円
寸評:マリンバ奏者の安倍圭子を母に持つ木谷響羽子は、91年にシングル「遠い星をみつめて」で日本コロムビアよりデビューしたシンガソングライター/マリンバ奏者。後にエンヤの作風に触発され、ニューエイジ音楽と多重録音に身を投じることになる。KYOKO Sound Laboratory、KYOKO、木村恭子木谷響羽子、木谷恭子、木屋響子木村恭子KYOKO Sound Laboratory木村恭子KYOKOと、Vektroidなみに多数の名義を持つ人であり、しかも沢山のシングル、ミニアルバム、アルバムを色々なレーベルから出しまくっており、ディスコグラフィーが非常にややこしいことになっています。これは木谷響羽子名義でリリースした(おそらく)15thシングル(?)で、海洋写真家・水口博也がジャケット写真を提供しているもの。エンヤに触発されたという経歴通りの、歌ものニューエイジが4曲並んでいますが、メロディーや曲構成、アレンジはアンビエントというよりプログレに近いもの。ということで、残念ながら私の趣味ではありませんでした…。

 

 

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アーティスト:木屋響子
タイトル:MIDNIGHT CALLING
発売年:2000年
レーベル:Xebec Music
入手場所:ブックオフ246三軒茶屋
購入価格:110円
寸評:上述の木谷響羽子氏が木屋響子名義でリリースしたミニアルバム。ジャケットやタイトルからしてアーベインなものなのか!?と期待していたのですが、のっけからバキバキのトランシーなダンスビートが飛び出し、面食らいました。ボーカルのローファイなエフェクト処理によって、なんともいえないカラオケ感が漂っていますが…。メロディーはパワー・メタルに近いか。全編あいかわらずエンヤ的なニューエイジ感もたしかに感じるのですが、ダンスビート(という風のいびつな何か)が大幅導入されることで、一層大仰な世界になっている気がします。菅野よう子の作風を彷彿とさせるところがありながらも、溢れ出るアマチュア感によって、なんとも不可思議な宅録シンフォニック音楽になっているように思います。

 

 

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アーティスト:早瀬優香子
タイトル:POLYESTER
発売年:1987年
レーベル:SIXTY RECORDS
入手場所:ディスクユニオン神保町店
購入価格:650円
寸評:『躁鬱 SO・UTSU』を始めとして早瀬優香子がシックスティ・レコードから80年代にリリースした3枚は、昨年タワーレコード発の『Tower to the people』シリーズの一環でリイシューされ入手がたやすくなりましたが、それまではCDもLPも比較的手に入りづらいものでした。再発以降、こうして旧規格盤が安めの値段で手に入るようになったのは嬉しいことです。前2作のフレンチテイストな作風からより一層はっきりとテクノ・ポップ的な意匠を取り入れた本作は、SHI-SHONENの戸田誠司がプロデュース。バックには塚田嗣人(g)、中原信雄(b)、石坪信也(ds)、寺谷誠一(ds)、矢口博康(sax)、福原まり(key)らが参加しています。作曲は戸田誠司小森田実細野晴臣など。内容については予てより名盤と名高いものなので、ここで特に付け加えることもないのですが…素晴らしいですね。先だって刊行された『和レアリック・ディスクガイド』にも掲載されていました。

 

 

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アーティスト:兵藤未来
タイトル:ONE PARADISE -MIKI FIRST-
発売年:2015年(オリジナル:1977年)
レーベル:ユニバーサル(オリジナル:ポリドール)
入手場所:ディスクユニオン神保町店
購入価格:650円
寸評:上述のタワーレコード専売再発シリーズ『Tower to the People』や、同じくタワーレコード専売による音楽ライター・金澤寿和氏が手掛けた『Light Mellow Picks』シリーズは、10年代和モノ再発掘のもっとも重要な仕事の一つだったと思います。現在興隆している(HMVなどが主導する)アナログ・フォーマットでの和モノ再発が若年マーケットも視野に入れた上で展開しているように見える一方、タワーレコード専売のそれらは若干年配層(オリジナル世代)向けのマーケティングがなされていたように感じ、良作を矢継ぎ早に再発していたのにも関わらず、その重要性がネット世代からはあまり顧みられていないような気もしたり…。が、この兵藤未来のリイシューも、なかなかマニアックかつ良心的仕事の例だと思います。LPは結構プレミアがついているので手が出せなかったのですが、こうしてCDで手に入りやすい状況になったことは非常にありがたいですね(このCD、未開封新品がユニオンに流れてきたもののようなのですが、すごく安価で手に入れることが出来て嬉しいような寂しいような)。本作は、森尾由美三田寛子などのアイドルから井上艦まで様々なアーティストへの楽曲提供でも知られる女性シンガーソングライター兵藤未来のファースト・アルバムで、ライトメロウ的隠れ名盤といわれてきたもの。深町栄率いる「GAME」を中心としたミュージシャンがバッキングをつとめており、非常に高クオリティの(シティ・ポップというには若干ファンキー度高めな)和モノ・レアグルーヴ作となっています。ジャケットはプラスチックス始動直後の立花ハジメ中西俊夫が手掛けているのですが、素晴らしいですね(このプレ・ニュー・ウェイブ感)。

 

 

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アーティスト:近藤等則&チベタン・ブルー・エアー・リキッド・バンド
タイトル:空中浮遊
発売年:1990年(オリジナル:1983年)
レーベル:アート・ユニオン(オリジナル:トリオ)
入手場所:ディスクユニオン神保町店
購入価格:580円
寸評:近藤等則のトリオからのメジャー・デビュー作を、後にアート・ユニオンがCD再発したもの。今まで何度も再発を重ねられてきた名作ですが、上記早瀬優香子と同じく、こうして旧規格盤CDの中古品が安価で手に入れられるのは素直に嬉しく。フリー・ジャズの伝統を受け継ぎつつも、当時のポスト・パンク以降のクールかつポップなファンク・サウンドを取り入れたような内容、今聴くとかなりしっくり来るように思います。ロドニー・ドラマー(b)、セシル・モンロー(Dr)、豊住芳三郎(per)に加え、渡辺香津美(g)が大フィーチャーされており、各人のプレイヤビリティの高さも存分に味わえる内容。特に渡辺香津美はいつもの流麗なプレイ・スタイルをあえて崩し、アート・リンゼイジェイムス・ブラッド・ウルマー以降の感性を取り入れたエッジーな演奏を聴かせてくれるのですが、実にカッコいい。それと、本作もジャケットがめちゃくちゃいいですよね。「あの頃のポストモダン」だわー。

 

 

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アーティスト:鮎川麻弥
タイトル:FACE
発売年:1986年
レーベル:キング
入手場所:ディスクユニオン神保町店
購入価格:520円
寸評:『重戦機エルガイム』後期オープニング「風のノー・リプライ」『機動戦士Ζガンダム』前期オープニング「Ζ・刻をこえて」等サンライズ製アニメ主題歌などで有名なシンガソングライター/歌手による4thアルバム。全て彼女自身の作詞による作品で、ファンの中でも人気の高いもの。LP、CDともにあまり史上で見かけないアルバムですが、プレ・ガールポップ的な(いい意味での)中庸さに貫かれています。作曲陣は本人のほか斉藤英夫土橋安騎夫小林明子岡崎律子村松邦男など、かなり職人的な人たちを揃えています。個人的には船山基紀が編曲を手掛けたデジタル・ストリート・ロック⑧が好ましい。ほか曲も全体的にロック調〜バラードが多く、それらはあまり私自身の趣味に合致するものではありません…。

 

 

それでは皆さん良いお年を…。

CDさん太郎 VOL.19 2019/12/2、4、5 購入盤

こんばんは。復活後第3弾の「CDさん太郎」です。
今回は2019年12月2、4、5日にそれぞれ東京・高円寺、吉祥寺、高田馬場で購入したCDを計11枚紹介します。
本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

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 アーティスト:V.A.
タイトル:エキゾチカ慕情
発売年:1991年
レーベル:ソニー
入手場所:ブックオフ新高円寺
購入価格:290円
寸評:以前から探していた盤。これはお得な買い物でした。レゲエ界隈からの派生や細野晴臣チルドレンの活躍、渋谷系の勃興、ヤン富田の活動、マーティン・デニー来日、沖縄音楽ブームなどが混交され、90年代初頭に小さくないエキゾチック音楽ブームが興っていたことを知る大変貴重な資料です。後の『モンド・ミュージック』などに接続する潮流としても興味深く(実際『モンド・ミュージック』の主幹である鈴木惣一朗氏在籍のEverything Playも参加)、今も一線で活躍するミュージシャンの方々に若かりし頃の記録としても面白い。参加アーティストは、エマーソン北村、タッケナー・アンサンブル、ONE DPOPS、ピアニカ前田+キオト(from QUJIRA) feat.渡辺満里奈ネーネーズ、チエコ・ビューティー、Everything Playという面々です。チープなダンスホールエキゾチューンをキメるエマーソン北村氏は今と全く変わらぬヒップさで、深い尊敬の念が沸き起こります。この盤が時折アイドルオタク方面からも語られる要因である渡辺満里奈の参加曲は、なんと岡崎京子作詞。岡崎京子は帯にもコメントを寄せています「猿もおお喜び(笑)」とのこと。注目すべき作詞参加はチエコ・ビューティー曲においても。なんと高橋健太郎氏による歌詞なのでした。そして、今最もこの盤が注目されるべきなのは、なんといっても昨今国内外からの再評価著しいEverything Playのオリジナル・アルバム未収録曲が収められているということでしょう。時期としては『Posh』の頃にあたり、同路線のキッチュなエキゾ路線が聴かれます。ちなみに、本作リリースに際し、同年11月には渋谷ON AIRで収録アーティスト総出のリリース記念ライブもあったようです。

 

 

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アーティスト:Linda Sharrock
タイトル:On Holiday
発売年:1990年
レーベル:Polygram
入手場所:ブックオフ新高円寺
購入価格:290円
寸評:先だって私監修で再発したオーストリアフュージョンバンドZENITのアルバム『Straight Ahead』へフィーチャリングヴォーカリストとして大々的に参加していたリンダ・シャーロック。以来彼女の仕事へ興味が湧いて色々と調べている中、タイミングよく90年のソロアルバムを発見。やー、これはかなりいいですねー。全体をジョニー・クルーム、リチャード・タッカーというアレンジャーが参加する中、全ての曲へ「アディショナル・アレンジャー」としてオーネット・コールマンのプライムタイムへの参加でも名高いジャマラディーン・タクマが関わっており、同時期の氏の作品にも通じるようなデジタルファンク全開となっています。完全に逆転的な表現なのですが、同時期の日本のデジタル化したシティポップ作品(しかもかなり良質な)にも近い雰囲気。リンダ・シャーロックのボーカルも相変わらず流麗。ジャケも地味だし、いろいろな文脈からスルーされている感のある作品ですが、非常に良いです。

 

 

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アーティスト:保坂由佳
タイトル:Will ―心の華
発売年:2001年
レーベル:J・DNAレコーズ
入手場所:ブックオフ新高円寺
購入価格:290円
寸評:箏奏者・保坂由佳がパーカッション奏者の大久保宙、尺八の善養寺恵介らと2001年に制作/リリースしたアルバム。和モノニュー・エイジの中でも純邦楽に接近したもの、しかも2000年以降のものは避けてきた部分なのですが、どうやらシンセサイザーもバリバリ使われているらしいということで購入。なんというか…時代の新しいニューエイジものは現実/実際の生活と距離がまだまだ近い気がして価値の回転はまだ先かな…という感じで、正直申し上げて聴き通すのが辛かったです…。その上箏というのは、数ある和楽器の中でもとくにその俗流っぷりという点でもっとも煽りを食っている楽器に思われ…どうも耳が拒絶反応を…ごめんなさい。吉田兄弟女子十二楽坊などのファン向け。ちなみに本CD、保坂さんのサイン入りでした。

 

 

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アーティスト:パチンコ・オリジナル・ゲーム・サウンド/SANKYO YAKUMONO企画
タイトル:ザ・パチンコ・ミュージック・フロム・三共Ⅱ
発売年:1991年
レーベル:キング
入手場所:ブックオフ吉祥寺店
購入価格:290円
寸評:パチンコ台メーカー三共の各筐体に収録されていた様々なオリジナル音楽を網羅したシリーズの第二弾CD。基本的には同時期、あるいはそれ以前の時代におけるゲーム音楽と同じような音源内蔵チップを駆使した2和音構成。今のオーディオファイルをフルで駆使した筐体と比べると実に牧歌的なのですが、そこが味わいどころといえばそうなのでしょう。当時どのようなリスナーターゲットを想定していたのか謎ですが、このような作品も商品として成り立っていたことに感慨を覚えます(ゲーム音楽マニアというのはもちろん分厚い層がありますが、パチンコに足繁く通いながらチップチューンオタク、という人物像をあまり想像できない)。注目すべきは後半のアレンジバージョン(実際の筐体発生音ではないもの)で、PCM音源を駆使したシンフォニックなものも多く、このあたりはゲーム音楽マニアが喜びそうに思います。

 

 

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アーティスト:不明
タイトル:ゴルフ 〜マインド・コントロールサウンド
発売年:1995年
レーベル:DELLA
入手場所:ブックオフ吉祥寺店
購入価格:290円
寸評:「俗流アンビエントブルーノート」ことDELLAより数多くリリースされた『マインド・コントロールサウンド』シリーズ中の一作。様々な効能を謳ってきた同シリーズですが、ゴルフのスコアアップというのはかなり珍しいテーマですね。寡聞にして、ほかメーカーでもこのようなテーマを掲げた例を知りません。音楽内容としては、アンビエントというよりはむしろスムースなフュージョンが主体となっており、スポーティーなアレンジの施されたものが多いです。もちろん全編シンセサイザーによる多重電子サウンドで、生演奏ではありません。その点こそが聴き心地の面で実に得難い味わいを醸し出しており、本作を珍重すべきものにしています。角松敏生『She is a Lady』的なギター(を模したプリセット音による)フュージョン③、アコギ(を模したプリセット音による)ブリージーサンバ④、カシオペア的な⑤、70年代後半のハービー・ハンコックから完全にやる気を奪ったかのようなプラスチックファンク⑥⑦⑧、あたりが良い。つまりほぼ全編良いです。これはかなりの名盤と言っていいでしょう。ちなみに全編、日英中韓各語で高周波数帯にスコア向上のサブリミナルメッセージが入っているとのこと。

 

 

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アーティスト:Michael Garrick Septet
タイトル:Black Marigolds
発売年:2005年(オリジナル:1966年)
レーベル:vocalion(オリジナル:Argo)
入手場所:ブックオフ吉祥寺店
購入価格:510円
寸評:唐突にUKジャズ名盤登場です。ここまでの数枚、なかば一般的な観点からするとほとんど顧みられることのない音楽ばかり紹介してきたので、この、どこからどう切り取っても良質としかいいようのないUKジャズの世界にうっとりとしてしまいますね。その後74年に『Troppo』というスピリチュアルな名作を残しているマイケル・ガーリックですが、この頃は同時代の米新主流派からの影響を感じさせる非常に抑制的な作風で、実に好感が持てます。時折入るチェレスタの響きも実に英国的。ノーブルなキングスイングリッシュによるポエトリー・リーディングを交えたM2、6なども、実にヒップ極まりない。パイプとツイード生地のモーダルジャズ。演奏参加陣も、イアン・カー(Tp)、やドン・ランデルなど(Ts,As)、豪華です。ジャケットもカッコいい。M5「URSULA」はジャイルス・ピーターソン監修コンピにも収録された由。

 

 

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アーティスト:V.A.
タイトル:FLAVOR IN THE AIR
発売年:2003年
レーベル:bounce records
入手場所:ブックオフ吉祥寺店
購入価格:510円
寸評:タワーレコード発行のフリーマガジン『bounce』誌による00年代初頭のライトメロウ系インディー作家作品をコンパイルした作品。その筋(ライトメロウ者コミュニティ)ではわりに有名で、かつ異常なほどのプレ値がついていいることでも知られています。今ヤフオクをチェックしてみたら6万前後…。実のところ、その値付けはハイプ(しかもかなり局地的な)以外なにものでもないのではとは思うのですが…このような値付けになったきかけとして、『Light Mellow和モノSpecial』に廃盤になって久しい本作が掲載されている、ということが挙げられると思います。が、たしかにかなり好内容であることはいえると思います。全体に、00年代的な生音回帰志向の、いかにもJ-WEAVEでかかっていそうな「フリー・ソウル」以降のグルーヴ音楽集といった感じです(なぜか普通のロックも混入されているけれど)。参加陣も有名な人は少なく、どちらかというと裏方志向の方々が集っているようです。詳しいトラックリストなどは各種商品ページに掲載されていますので、気になる方はそちらをどうぞ。

 

 

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アーティスト:V.A.
タイトル:KAIGAN GROWN
発売年:1996年
レーベル:KAIGAN RECORDS
入手場所:ブックオフ吉祥寺店
購入価格:510円
寸評:KAIGAN RECORDSは96年に少年に設立されたレーベルで、様々な原盤制作やライセンス発売とともに、何故かアーロ・ガスリーのリプリーズ諸作を日本リイシューしていた隠れ名門(と思います。現在は閉鎖)。これはそのレーベル第一弾作で、レーベル名通り、サーフ・ミュージックやウェスト・コースト系、リゾート・ミュージック風の曲が揃っています。参加者のほとんどはかなりマニアック、というか無名の方なのですが、その中にドン的な存在感をはなっているのがブレッド&バターの岩沢二弓。苦み走ったデジタルAORを収録(娘の岩沢シーマもM11を定提供)。また、この盤の購入の後押しになったのがジャパニーズソウルシンガー、タイロン橋本の参加。全打ち込みによるオケの「Close To You」カヴァーを聴かせてくれます。相変わらず豪放な歌声です。また、桑田バンドのベーシストとして知られた琢磨仁&啓子の夫婦のユニット「Half Moon」のM1もアコースティックなメロウナンバーで、わりに良い。ちなみに、タイトルの「KAIGAN GROWN」というのは、ハワイアンAORの名コンピ『HOME GROWN』へのオマージュなのでしょうか(だとしたら非常にカッコいい)。

 

 

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アーティスト:ANNA BANANA
タイトル:大きな絵
発売年:1991年
レーベル:sixty records
入手場所:ブックオフ吉祥寺店
購入価格:290円
寸評:これもまた以前より探していた盤。佐藤あんこさんの『後追いGiRLPOPディスクガイド 別館』に掲載されており、気になっていたのでした。アンナ・バナナといえば、ライトメロウ的感覚から言うと、田島貴男がプロデュースを務めた5thアルバムが著名かもわかりませんが、この3rdアルバムもかなり素晴らしいと感じました。ライトメロウというよりは、「和レアリック」の文脈で語るべき盤じゃないかなと思います。プロデュースを担当したのは井上ヨシマサと久保幹一郎によるユニット「ATOM」で、テクノ・ポップの伝統も受け継いだ彼らの先鋭的センスが全面に押し出された打ち込み中心の内容になっています。全曲高クオリティなのですが、「サー・デューク」と「男の子 女の子」のカヴァーがかなりアヴァンギャルドな仕上がり。特に後者は原曲のサンプリングからはじまり、実にエキゾなデジタルバレアリック世界が現出。チョップやスクリューも用いられるなど、かなりヴェイパーウェイヴっぽい。最後のM11「Garden Of Love」も蒸気の充満した世界。

 

 

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アーティスト:FACE TWO FACE
タイトル:FAKES
発売年:1992年
レーベル:ポニーキャニオン
入手場所:ブックオフ吉祥寺店
購入価格:290円
寸評:中森明菜アン・ルイスに楽曲提供したこともあるソングライターの日比野健と、二人の女性シンガーによる「FACE TWO FACE」による(おそらく)唯一作。「逆ドリカム」な編成はこの時代のJ-POPシーンの中にあっては結構特異なものに感じます。二人の女性シンガーの歌もうまく、編曲陣も佐藤凖、ジョー・リノイエ、今剛、清水信之西脇辰弥などのシティ・ポップ界にレジェンドたち、しかも作詞には松本隆も参加するなど、ポニーキャニオンの気合が感じられるプロダクションなのですが、残念ながらヒットには至らなかったよう。肝心の曲がなんとも中庸と言うか、地味というか…バラードが多いのも後年のリスナーとしては気勢をくじかれる点。クレジットだけみると最高のシティポップ集を想像するわけですが、残念ながらあまりそういう感じではないですね。そんな中、M2は好ましいJ-AORかな、という感じ。ライナーノーツには何故かオリジナルデザインのグリーティングカードが数枚封入されています。今度突然使ってみようかな。

 

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アーティスト:DAISAKU
タイトル:EASTERN SHORE
発売年:1993年
レーベル:MESA(オリジナル:Moo Records)
入手場所:ブックオフ高田馬場
購入価格:290円
寸評:元プリズム〜スクエアの久米大作によるリーダー作で、同年に徳間ジャパンコ内のフュージョン系レーベルMoo Recordsよりリリースされたものを米国のニュー・エイジ系レーベルMESAがライセンス発売したもの(と思われます)。ジャケットのイメージ通り、「東洋性」を東洋人たる感覚から再帰的に表現したエスノ・ニューエイジ作で、今こそ聴きたい実に素晴らしい内容。盟友・仙波清彦がパーカッションで全面参加することによってダンスミュージック的な快楽性も担保されている格好です。いかにも「西洋からみたオリエンタリズム」的作風は、たしかに政治的次元での脆弱性をはらんでいることも確かなように思われますが、まずは何より音楽的完成度を貫徹せんとする志によって、却ってそうしたエスニシティ要素が自覚性を帯びるような形になっているように感じます。いわゆる「和レアリック」という文脈に置いたとしても、かなりの名盤ではないかなと思います。

 

次回へ続く……。

CDさん太郎 VOL.18 2019/11/14、25 購入盤

 こんばんは。前回までの半年ブランクをものともしない元気でお送りする、復活後第二弾の「CDさん太郎」です。

 まず告知です。
 今年5月、普段からよくしていただいているpanparth(パンス)さんから誘っていただいてDJをさせてもらった世田谷宮坂バレアリック飲食店(店名です)での「Laid Back Ground Music」。そのパンスさんをはじめ、磯部涼さん、cherryboyさんというめちゃ素敵なメンツに混ぜてもらい主にアンビエントをプレイしたのですが、すごく楽しかったんですね。
 で、年の瀬12/14に再び同じ陣容で同所にてDJをさせていただくことになりました。嬉しい…!通常営業でのBGM係を担当する形になりますので、お椅子もありますし、本当に素敵な空間とご飯(う・ま・い)ですので、是非お越しください。もちろん予約も不要。今回もアンビエントを中心に持ち寄る予定です(本CDさん太郎登場作も持参することでしょう)。

日程:2019/12/14(土)

場所:世田谷宮坂バレアリック飲食店 https://balearic-inshokuten.business.site/

DJタイム:19:00-23:00予定


 さて、今回は2019年11/24と25に東京・吉祥寺、中野、で購入したCDを計枚紹介します。
本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。

shibasakiyuji.hatenablog.com

 
1.

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アーティスト:宝達奈巳
タイトル:たからたち
発売年:1993年
レーベル:グリーン・エナジー
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
購入価格:380円
寸評:宝達奈巳は、93年にこのCDでデビューしたシンセサイザー奏者/シンガー・ソングライター。早くからクラシックの英才教育を受けるもその世界にうまく馴染めずいるところに出会ったYMOに大きな衝撃を受け、シンセサイザーを手にしたといいます。その後国立音楽大学に進学し楽理学科を卒業するという輝かしい経歴をお持ち方なのですが、この作品も、明らかに音楽的な下地と素養を感じさせる非常に上質のニュー・エイジ・ポップとなっています。作曲の巧みさやシンセサイザー・プログラミングやサンプラー使いの巧みさは、同時代の国内テクノ・シーンなどと比べても相当なレベルと言っていいと思います。非常にメディテーショナルでノンビートの楽曲も良いのですが、ミニマル・ミュージックや前衛音楽の影響を感じさせるトラックや、同時代のテクノやハウスからの影響を直接的に感じさせる曲も優れています。そして、その歌声も極めて麗しい…。細野晴臣氏が彼女の声を絶賛したこともあるとの由。あまり一般的な知名度がないのが不思議ですね。ちなみに次作も所有しているのですが、そちらも同傾向の秀作。現在は同じく音楽家たる夫君と活動をともにし、日本古代音楽の研究や歌唱活動も行われているようです。以下URLから本人インタビューを読むことができます。
https://www.kunitachi.ac.jp/introduction/kunion_cafe/interview/50on/ha/hotatsunami.html


2.

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アーティスト:栗林誠一郎
タイトル:La Jolla
発売年:1989年
レーベル:BMGビクター
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
購入価格:650円
寸評:大名盤が登場してしました。栗林誠一郎ビーイング系の諸作で名高いソングライター/ベーシスト。これは彼の1st作です。ビーイング系にまったく明るくない私、彼の名はlightmellowbuのタイさんが紹介していた他作品を通して知ったのでした。で、ちょこちょこネットで試聴をしてみて、そのドエラいクオリティのシティ・ポップに心底驚きまして。このファーストはそれ以来のウォント盤でありました。もう全編これ本当に最高のシティ・ポップのラッシュでして、オーセンティックなシティ・ポップ史からこのひとの名がスポイルされがちなことに不可解さを感じますね〜。まず、曲が良い。ポップではあるのだけど、どこか切なさを孕んだ湿ったメロウネスが横溢しています(ロッキッシュな曲も全然いい)。そして、声。か細い声でメロウな旋律を歌うという、いわゆるソングライター・ボイスなんですが、ちょっとベン・シドランを感じたりも。そして、本人によるアイデアフルなアレンジ、巧みな演奏も素晴らしい。マルチプレイヤー的にギターやキーボードもこなしています。バックも豪華。青山純(ds)、青木智仁(b)、葉山たけし(g)、斉藤ノブ(per)、数原 晋(tp)、土岐 英史(sax)等々…。ずばり、完璧なアルバム。次回レコードの日とかでLPリイシューすればよろしいんじゃないでしょうか。

 

3.

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アーティスト:井出泰彰
タイトル:COOL BLUE
発売年:1995年
レーベル:キューン・ソニー
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
購入価格:380円
寸評:男性和AORが続きます。井出泰彰は1970年生まれのシンガー・ソングライターで、94年にシングル「情熱」でデビューした方。今作はセカンド・アルバムです。参加メンツがとにかく豪華で、NY、ロンドン、東京で行われたセッションではスティーヴ・ガッドマイケル・ブレッカー、ロベン・フォード、ウィル・リー、ポール・キャラック、ラルフ・マクドナルド等、とてつもない。CDって売れてたんだなあ、という感慨…。ということで、完全海外プロダクション仕様の本作、そのサウンドも実に骨太で、純日本産ライトメロウにくらべるとかなりずっしりした質感となっています。井出の歌声がしゃがれた野性的なもの(ブライアン・アダムス風?)なので、非常にしっくりとバックに調和しているような格好です。彼の書く曲もソウルやR&Bからの影響を強く感じさせるしっかりしたものなので、早すぎたJ-R&Bの傑作としても聴くことが出来るように思います。何故か中川五郎がライナーに寄稿。そして、以前台車さんがTwitterで指摘されていましたが、このジャケは確かにインスタストーリーっぽい。

 

4.

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アーティスト:豆田将
タイトル:臘雪 ROUSETU
発売年:1990年
レーベル:パフSOUND
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
購入価格:280円
寸評:豆田将(まめだすすむ)は、アニメ/ゲーム音楽系の作詞家/作曲家/編曲家/キーボーディスト。これは彼のファースト・アルバムで、(おそらく)自主制作盤Suaraや元田恵美といった大阪のフィックスレコード系アーティストの作品を手掛けているほか、國府田マリ子中山愛梨沙などにも曲提供するなど、かの業界ではそれなりの存在感のある人らしいです。2色刷りのいかにもインディーなアートワークや「臘雪」というものものしいタイトルからその中身を想像するのが難しく、完全な当てずっぽうで購入したのですが、結果、なかなかの拾い物でした。冒頭の①で感傷的なピアノがそろそろとバラ―ディーに流れ出るのを聴いて嫌な予感が走るのですが、②以降はなかなかに聴きごたえのあるMORポップスが展開されます。とくに②⑦⑨あたりはギリギリでシティ・ポップに分類することもできなくない楽曲で、同時期のメジャーなJ-AORシンガーのアルバムに入っていてもおかしくなさそう。メロディのセンスには安部恭弘などに近いものも感知できます。おそらく周囲のセミアマ・ミュージシャンを集めたと思われるバッキング陣も手堅いプレイを披露しており、好印象です。謄写版っぽい手作り感満点の歌詞カードのスペシャル・サンクス欄へ、「大阪写真専門学校音響芸術家の卒業生・在校」とあることから、当時豆田氏は同校の関係者だったのだと思われます。なので、本作ももしかするとある種の「身内音楽」なのかもしれません。

 

5.

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アーティスト:ESCALATORS
タイトル:Sprite
発売年:1995年
レーベル:日本コロムビア
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
購入価格:280円
寸評:アシッド・ジャズフリー・ソウル的な要素を早い時期から自覚的に取り入れつつメジャー・フィールドで活動したバンド、ESCALATORS。これは3rdアルバムです。90年代後半にボーカルZOOCOの脱退により活動休止となりましたが、もう少し長く活動していたら、本格的に興りつつあったR&Bブームともリンクする形でもっと人気のあるバンドになっていたように思います。3作目ということもあり初期にもまして非常に堂に入った演奏となっており、一層安心して聴くことができます。プロデュ―スは笹路正徳が担当。楽曲、演奏、そして歌唱ともに一級品と言っていいですね。こうしたアシッド・ジャズ派生のアクトたちは、(当時風)の「クラビー」な洒脱感ゆえなのか昨今のシティ・ポップリバイバルから微妙にこぼれ落ちてしまっている気もしますが、捨て置くにはもったいないように思います。ブラン・ニュー・ヘヴィーズインコグニートとかの再評価が今後あったりするならば(Suchmosのブレイクをもってしてもそこまでへは至らなかったという…)、このESCALATORSも再発掘されることでしょう。

 

6.

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アーティスト:pas de chat
タイトル:Player
発売年:1996年
レーベル:テイチク
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
購入価格:280円
寸評:平井堅「楽園」などの作曲で著名な中野雅仁と、同じく平井堅福原美穂今井美樹鈴木雅之などのコーラスを務めた藤原美穂によるデュオ、pas de chat(パディシャ)のサードにしてラスト・アルバムです。アルファからリリースされた前2作ではR&B風味のポップス、という印象ですが、こにサードではグッとR&B色を増しています。見事なソバージュヘアでーワインレッドのコンシャスな衣装に身を包み女豹がごとく平伏(?)するインパクト強大なジャケットもそれ風(ボーカルは時にCHARAを思わせます。ので、そこまで「ソウルフル!!」という感じでもない)。基本的にプログラミング・サウンドが主導する格好なのですが、沼澤尚ASA-CHANG(!)らが参加しグルーヴに深い彫り込みを与えています。どれもR&Bポップスとして好ましく聴けますが、やはり⑤や⑥、⑩、⑪などのミディアム〜アップが良いですね。

 

7.

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アーティスト:John Martyn
タイトル:Sweet Certain Surprise
発売年:不明
レーベル:Boyds Music
入手場所:ディスクユニオン中野店
購入価格:110円
寸評:私はかねてより、UKのフォーク系シンガー・ソングライター、ジョン・マーティンの大ファンです。ニック・ドレイクなどにも通じる繊細で深遠な楽曲、キャリアを進むごとにジャズやフュージョンへも接近し、ほぼ「ジョン・マーティン節」としか言いようのない数々の名作を世に送りだしています(日本での知名度はいまいち高くありませんが、本国では国民的な大歌手とされています)。その全てがとても素晴らしい出来栄えで、どれもこれも、ジョン・マーティンの作品とみると否応なしに手に取りたくなってしまうのでした。これはぶっちゃけブートレッグCDです(どういうわけなのかこの人は大量の発掘ライブCDがあり、その全貌を把握することが困難なくらいなのですが)。これだけ一流の人になると、こうした粗雑なCDにすら感動させられる演奏がぎゅうぎゅうに詰まっているのでした。本CDには、録音日時など詳細なクレジットがないのですが、①〜⑦に関しては「70年代、アメリカのどっか」と(おそらく出元を掴まれないために)曖昧に記載されています。選曲からみるに、おそらく70年代半ばと思われ、ほぼ途切れることなく、まるまる公演の模様が収められいます。ギター弾き語りでこれだけ多彩なニュアンスを表現できた人は地球上にまたといないのではないでしょうか。本当に素晴らしい(当然音質は良くないですが)。⑧、⑨は81年ロンドンでのライブ録音とあります。名盤『グレイシャス・フール』リリース前後の公演かと思われます。こちらはエレキの弾き語り。相変わらず素晴らしい(もしこの記事でジョン・マーティンに興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、くれぐれもこういうブートじゃなくて、オリジナル・アルバム群から先にお聴きください)。

 

次回へ続く…。

【復活】CDさん太郎 VOL.17 2019/11/17 購入盤

大変ご無沙汰しております。約半年ぶりの「CDさん太郎」更新です。
当初、「戦争とかは起こらない限り続けていきたい」などと大きなことをいってしまったわけですが、大変不甲斐ないことに、全く更新が滞ってしまっておりました。
 6月には「CDさん太郎」関連のイベントなどにもお呼ばれしていたのに、その後急に止めてしまって、関係者の方々へも非常に申し訳ないなあ…時間をみつけていつか再開しなきゃなあ、などと考えてはや6ヶ月もたっているという。相変わらずの不精さ…。
 実のところを言うと、引っ越しや結婚など、公私ともども色々目まぐるし変化がありまして、単純に記事を書く時間が取れなかったという、何の意外性もない理由なのでした(その間、以前から集めていたCDの中から、サブスクで聴けるものは殆ど売ってしまったりということもありました)。

 そんな個人的事情をつらつらと書いていてもしょうがないので話題を変えます。
さて、この6ヶ月の間、CDディグを取り巻く状況はどのように推移してきたのでしょうか。私個人としても、若干の状況変化を感じていました。このブログを楽しみにしてくれているという奇特な方と新たに幾人か知り合う機会もあって、そういう方々は軒並み私と同じようなディグ生活を送っているのでした。
 CDのヘゲモニーが極端に低下して以来、今まで点々と各地に散らばっていたそういったみなさん(のCD偏愛)が、SNSを通して急に可視化されてきたような感もあったり。予てからの知り合いであるlightmellowbuの面々(我々が90年代編の選盤を努めた『レコード・コレクターズ』誌のシティ・ポップ・ムックの刊行という大きなトピックもありました)や「トレンディー歌謡」のanouta若山さんはもちろん、以前から8cmCDを掘ってらっしゃるDJ 610さんや関根圭さん。ラテンCDを各地で掘りまくり、DJも行っているshowgunnさん。「廃サロン」という新概念の元、図書館所蔵CDなども漁場とする若きディガーのながいさん。そして、「100円名盤」を求めて日々ニッチなCDを買いまくるデラさん。ほか沢山の方々……。
 そういったことが顕在化してきた一方で、例えば大きな話題となったele-king books刊の『和レアリック ディスクガイド』においてもCDオンリーeraの作品が数多く取り上げたり、webマガジンのbelong magazineにて、280円コーナーに眠る名盤(洋ロック中心でしたが)を再発掘するというそのものズバリの企画が始動したりと、メディア側からの発信にも面白いものがありました。
 管見ゆえ、見落としているムーヴや個人発信も多々あるはずですが、いずれにしても、このブログシリーズを立ちあげた当時に比べ、超低温が低温になった、くらいの活性化はあったのではないでしょうか…。もちろん、なにか大仰な使命感をもっているわけではなく、本当に単なる&ささやかな楽しみ(釣りの後、一杯やりながら家族に釣果を報告しているような感じ)なので、ダイナミックな話にするつもりはない(ならない)のですが、同好の方々が寄り会えるネット空間が醸成されるというのは、悪くないことと思います。

 前置きが長くなってしまいました…。
 本記事は、「CDさん太郎」の第17回目になります。今回は2019年11/17、東京・上野で購入したCDを計8枚紹介します。
(※前回の更新からこの間に購入した大量のCDについては、不幸なミッシングパーツとして掲載を見送らせていただきます…もちろん素晴らしい発見は少なくありませんでしたので、随時言及できればと思っていると同時に、いつかどこかで大規模発表できればと思っています)

 本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

1.

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アーティスト:V.A.
タイトル:松本一起ラブ・エッセイ・シリーズ Vol.2 夏のセントバレンタイン
発売年:1992年
レーベル:VAP
入手場所:ブックオフ上野広小路
購入価格:150円
寸評:著名作詞家・松本一起が監修&歌詞&ポエムを手掛けたサウンド・エッセイ・シリーズ全8作中の二作目。皆口裕子堀川亮、小山裕香、草尾毅という有名声優たちが歌とリーディングを務める、まさにCD全盛期に向けて「なんでも売れる」ようになっていた時代の産物。作/編曲を担当するのはex花伸で80年代からビーイング系のアレンジャーとして著名な葉山たけし。氏の作風に倣った健全なロックを想像していたところ、ミディアムメロウなシティ・ポップM1がのっけから流れてきて椅子から転げ落ちそうになるのだった。これは素晴らしいです!皆口裕子の不安定な歌唱とあいまって、めちゃくちゃ切ないティーン・シティ・ポップとなっています。挿入されるポエトリー・リーディングも、アルバムタイトル通り、夏の青春を謳歌する野球部のマネージャーの物語。当時どういう人が聴いていたんだろうか?M2、3はいかにもビーイング的なポップス。M4は、ドゥービー・ブラザーズなどを思わせるAORポップスで、悪くない。が、草尾毅によってリーディングされるポエムはかなり自己陶酔的でツライ。当時どういう人が聴いていたんだろうか?

 

2.

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アーティスト:梨木良成
タイトル:IMAGE WORK 調和への共振 5 川を聴く
発売年:1992年
レーベル:NASH MUSIC PUBLISHING
入手場所:ブックオフ上野広小路
購入価格:510円
寸評:相変わらずコツコツと買っている俗流アンビエントです。ロックバンドBuxのボーカルとして76年にデビュー、その後80年代から環境音楽家として活動していたようですが、どうやらその時期は自身名義のリリース物はなさそうです(あれば是非聴いてみたい)。これは、初となる(らしい)アルバム作品集「IMAGE WORK」シリーズの中の一作。哲学者の三浦俊彦が同シリーズ諸作を「環境音楽の最高傑作」と認定したということなのですが、そう言ったのはおそらく本当なのでしょう(客観的にみて最高傑作かどうかは別の話だが)。が、その実、この作品はかなり良質だと思います。アルバムタイトル通り川のせせらぎの音に導かれてパッド音が浮遊するM1。アブストラクトなメロディが寄せては返す12分超えのM2。一層スピリチュアルでニューエイジ色濃いアンビエントM3やM4など、かなり硬質で理知的な作風で好感が持てます。(ゆえに「俗流」感は少し薄いとも言える)。アンビエントDJをする際のセトリ入り確定で。ちなみに、同シリーズは他にも「森を聴く」「星を聴く」等、全10作品がラインナップさてれているようなのですが、どれもあまり見かけません。発売元が自身のインディー・レーベルだということもその希少性に寄与しているのでしょう。

 

3.

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アーティスト:Millie Face
タイトル:Millie Face
発売年:1996年
レーベル:Nature Records
入手場所:ブックオフ上野広小路
購入価格:150円
寸評:一般的には『機動戦士ガンダム00 スペシャルエディション』のテーマソングを担当したことで辛うじて知られているであろうユニット、Millie Faceによる(おそらく)デビューアルバムです。上記のテーマソングに抜擢される以前から地道にインディーズ活動を続けてきた人たちのようで、ここ最近でもライブを行うなど、活動を継続しているようです。メンバーはボーカルのMIKA HIGASHIとキーボード/プログラミング/プロデュースを担当するTETSUYA KUMAMOTOの二人。その編成や背景から同時期から活動するTWO-MIXなどを思い起こしますが、まさしくそういった志向性をもつユニットだといえます。どちらかというとわたしの漁場とは無関係な盤に感じられますが、そのミニマル極まりないジャケが得難いオーラを放っていたので購入してみました。正直言うと、アップテンポなロック風楽曲やバラードも多く今では結構ツライものがあるのですが(すみません)、全体に敷き詰められているシンセのサウンドに「おっ!」と思わせるものが少なくなく、これはなかなかの好盤といっていいのではないでしょうか。M3はかなり上質なアンビエント・テクノ風トラック。M5はガムランの影響を感じさせるエスニック・テクノ。M8、11、12あたりはちょっと川村万梨阿などにも通じるようなニューエイジ・ポップ。そう、曲名も含め全体にニューエイジ感濃厚なのが好ましいのでした。


4.

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アーティスト:川崎真弘
タイトル:「RAMPO」オリジナル・サウンドトラック
発売年:1994年
レーベル:日本コロムビア
入手場所:ブックオフ上野広小路
購入価格:150円
寸評:「映画生誕100年・江戸川乱歩生誕100周年・松竹創業100周年記念作品」として公開された映画『RAMPO』のサントラ。この作品は未見なのだが、黛りんたろう監督版と、それに納得が行かなかったプロデューサー奥山和由が作り変えた版2つが存在し、当時同時公開でロードショーされたといいます。そんなことってあるんだ、と思いつつ、うっすらとした記憶として、TV等で本作の予告を目にしたことをが思い出されてきました。子供心にはただ「不気味」という印象でした…。サントラを手掛けたのは80年代から映画音楽を制作してきた川崎真弘。元はイエローやカルメン・マキ&OZ、金子マリ&バックスバニー、竜童組などで活躍したキーボード奏者ですが、映画音楽作家としてはロック的な出自はほとんど感じさせず、この作品でも主に荘厳なストリングスを用いた重厚な音楽を作り上げています。…ということは、あまり私の趣味には合致しないのわけですが、ミステリー/ファンタジー映画ということもあり、ところどころおどろおどろしいドローン音楽が聞けて嬉しい。江戸川乱歩モノということで、お馴染みの和洋折衷趣味的世界も顔を出すのですが、このあたりはまだ再評価困難だなあ、と思ってしまいます。冒頭、ミルドレット・ベイリー歌による「オール・オブ・ミー」から始まるので、CD中身違いを疑いますが、これがテーマ曲的な扱いだった由。

 

5.

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アーティスト:SHIHO
タイトル:Love Sequence
発売年:1991年
レーベル:日本コロムビア
入手場所:ブックオフ上野広小路
購入価格:290円
寸評:当時全国の学園祭を騒がせた(?)というセクシーアイドル坂本志穂が、歌手としてSHIHO名義でリリースしたおそらく2枚目のアルバム。全編この時代の典型的なバブリー・ハイエナジー歌謡で、一曲くらいなら付き合えるのですが、全編その調子で突き通されるとなかなかツライものがあります。いくらエレクトリックかつダンサブルなアレンジを施したとしても肝心の楽曲の歌謡性が濃厚で、そのあたりもツライ…。アレンジを手掛けるShimizu Yasuoとは、ジョー山中などへ曲提供を行っている人物と同じでしょうか…?ほか、すかんち小川文明、HR系ギタリストの高橋マコト(BOOWYのドラマーとは同名異人)、ムーンライダーズ界隈からデビューしたプラチナKITの金津ヒロシなどが参加しています。M1に参加しているラッパーMC・Yにいたってはその検索困難性もあり、まったく何者かわかりません(ラップも超チャラい)。

 

6.

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アーティスト:岡野弘幹 with 天空オーケストラ
タイトル:天空 〜Heaven in the KOO
発売年:1997年
レーベル:プレム・プロモーション
入手場所:ブックオフ上野広小路
購入価格:290円
寸評:和ニューエイジの巨匠・岡野弘幹による天空オーケストラとの97年作。この人の作品は店頭で見かけることが結構多いのですが、その内容の高水準ぶりの割にあまり話題にしている人が少ないような印象もあります。おそらく、現在に続く和ニューエイジアンビエントの再評価があくまで電子音主体で展開されてきたことと無関係でないでしょう。岡野氏本人もブズーキやフルートを演奏し、「天空オーケストラ」も、シタール、タブラ、ディジュリドゥ、ジンベ等、といった生楽器編成。しかし、即興によって奏でられるその音楽は極めて上質で、安易に電子音を取り入れたニューエイジ作品よりもむしろ真摯であると言えると思います。全曲極めてメディテーショナルで、いわゆる「トライバル」な味わいもあるのですが、エスニシティの欺瞞に陥ることを回避するようなストリクトさで貫かれているのでした。例えば、DJミックスで使用する場合は、これらにプリミティブなモジュラーシンセ音を混ぜ込めばとたんに現代の聴取感覚に訴えうるものになるのではないでしょうか。帯には細野晴臣氏からの賛辞も掲載。

 

7.

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アーティスト:古村敏比古
タイトル:Gypsy Planet
発売年:1991年
レーベル:フォーライフ
入手場所:ブックオフ上野広小路
購入価格:290円
寸評:明治学院大学在籍中からサックス奏者として一線で活動する古村敏比古の名は、浜田省吾のライブバンドメンバーとして長く活躍していることで一般的にも知られているでしょう。元々は金子マリ&バックスバニーのメンバーとしても活躍していたという彼ですが、織田哲郎とのユニット「織田哲郎 & 9th IMAGE」などをへて現在の地位を確立したとの由。ハマショーの相棒ということは、ブルース・スプリングスティーン&Eストリートバンドにおけるボスとクラレンス・クレモンズの関係性を彷彿とさせますが、このファーストソロ作はクレモンズのロッキッシュなそれとは異なります。ジプシー音楽やケルト音楽などを消化した音楽性は、ジャケットの印象に反し、むしろプログレに近い気がします。たとえるなら…コンポステラとかを思い切りポップ寄りにしやような…。が、今聴きたいのは残念ながらそういうのではないのでした。そんな中で、M5、6は思い切りデヴィッド・サンボーン〜ケニーGライクなストライク・フュージョン。ボーカル曲M9は浜田省吾フュージョンバンドに参加したような雰囲気。出色はM10のプログラミング・スポーツ・フュージョン。いななくサックスとバキバキの打ち込みの対比が面白いです。中山信彦、中西俊博美久月千晴、古田たかし、梁邦彦などの手練がバッキングしています。

 

8.

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アーティスト:V.A.
タイトル:螺旋のかけら ―オリジナルアルバム―
発売年:1993年
レーベル:パイオニアLDC
入手場所:ハードオフ上野御徒町
購入価格:110円
寸評:橘皆無による転生ものファンタジー漫画『螺旋のかけら』のイメージアルバム。オリジナル楽曲とドラマが交互に収録されています。音楽を手掛けたのは、近年、大友克洋原作『童夢』のサントラが国内外で高騰するアニメ系音楽作家の伊豆一彦。氏らしいニューエイジ的作風を期待して買ったのですが、(全曲ではないが)まさしくアタリ。特にM5のサスペンスフルな和レアリックインストが相当に素晴らしいです。逆に声優陣による歌モノは当たり障りのない出来栄え。一部歌唱の壊滅的なマズさとあいまって、聴き通すのがツライ曲も。その中では、M9はギリギリでシティ・ポップに含めることができるメロウな曲調(が、これが一番歌唱のクオリティが低い)。また、M11は何故か英語詞のAORバラードで、悪くない出来栄え。また、ドラマにも一応(?)劇伴的な音楽が付いており、時折それが絶妙にバレアリックなので油断がなりません。トラックのみのデータがほしいですね。

次回へ続く…。