CDさん太郎 VOL.13 2019/4/18購入盤

こんにちは。本記事はCD特化のディグ日記シリーズ「CDさん太郎」の第13回目になります。今回は2019年4月18日東京・吉祥寺で購入したCDを計10枚紹介します。

この日、HMVコピス吉祥寺店にてジャンクCD放出セールがあり、5枚まとめ買いで100円という暴力的価格で売り出されていたのでした。そのため、ここで紹介する10枚の購入には200円しかかかっていません。そのようなものに結構な時間をかけてレビュー執筆をするという行為、とても上質な暮らしと言えるでしょう。

このゴールデンウィーク中も沢山CDを買っているのですが、そろそろ本ブログ紹介ペースが周回遅れな感じになってきているので、ヤバイ。食事や睡眠時間も削って頑張っていきます。よろしくお願い致します。

 

唐突に告知です。

5/11、東京・宮の坂の素敵なお店、「バレアリック飲食店」にてDjをさせていただくことになりました。

素敵な皆様とともに、最近の釣果を交えプレイさせていただきます。

是非お越しください。

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本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。 

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

1.

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アーティスト:Leslie Smith

タイトル:“Les” is More

発売年:1992年

レーベル:ポリドール(オリジナル:MORRISON ENTERTAINMENT)

入手場所:HMVコピス吉祥寺店

購入価格:20円

寸評:米イーストコーストのファンク〜ライトメロウ名アクト、クラッキンの元ボーカリストであるレスリー・スミスが92年にリリースしたブラックAOR好作です。レスリー・スミスといえば82年のデビュー作『ハートエイク』がAOR名盤として著名です。そのジェントル〜メロウな内容は、ソウル系のファンよりむしろAORファンに支持されているというのが面白く、同時代に活躍したスティーブ・ウッズなどにも通じる魅力かと思います。このセカンド作は全てAOR名曲のカバー曲となっており、ブレンダ・ラッセル「イッツ・サムシング」、ルパート・ホルムズ「レス・イズ・モア」、クリス・レア「フール」、ジノ・ヴァネリ「アイ・ジャスト・ウォナ・ストップ」、ネッド・ドヒニー「ア・ラヴ・オブ・ユア・オウン」、果てはボズ・スキャッグス「ウィー・アー・オール・アローン」までを歌っています。その全てのアレンジがおしなべて素晴らしく、レスリーのスムーズな歌唱を暖かに包み込んでいます。時代を反映したエレクトロ・ビートもじつに奥ゆかしく配置され、あくまでAOR的溌剌とスムースネスを妨げることをしません。今作、森口哲也氏という米在住の日本人ミュージシャンがプロデュースを務めており、氏のセンスがこのバランス感を生んでいるようです。白眉はネッド・ドヒニー「ア・ラヴ・オブ・ユア・オウン」と、マーヴィン・ゲイ「ホワッツ・ゴーイン・オン」の実直なカバーでしょうか。後期AORの名盤と言っていいでしょう。

 

2.

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アーティスト:CHAKA KHAN

タイトル:NAUGHTY

発売年:1991年(オリジナル:1980年)

レーベル:ワーナー

入手場所:HMVコピス吉祥寺店

購入価格:20円

寸評:こういう有名アーティスト作品というのは、最近ではあまりCDで買うことが少ないのですが(アナログで買うかサブスクで聞くことが多いので)、この値段なのでそういうこと関係なくつい買ってしまいました。ご存知の通りチャカ・カーンは今も現役バリバリ。スウィッチと組んで12年ぶりにリリースした今年のアルバムがめちゃめちゃカッコよく、ルーファス時代の作品から聴き直していた所、この未所持盤を超安価で発見。前作のインパクトと次作のヒットに挟まれて若干印象の薄いところのあるアルバムなのですが(ジャケも地味)、その内容は当たり前のように超一級品。アシュフォード&シンプソン作のM1「Cloud」からしてディスコ〜ガラージの一番幸せな時代を思わせる充実の音作り。おそらく当時世界一のテクニックを誇っていたボーカルは、ますます溌剌。余裕すら感じさせます。アリフ・マーディンのプロデュースも過不足なく、実に職人的。名盤です。

 

3.

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アーティスト:NDUGU & THE CHOCOLATE JAM COMPANY

タイトル:DO I MAKE YOU FEEL BETTER?

発売年:2001年(オリジナル:1980年)

レーベル:エピックソニー (オリジナル:EPIC)

入手場所:HMVコピス吉祥寺店

購入価格:20円

寸評:これはいくらなんでも安すぎます!ンドゥグことレオン・チャンスラーは60年代からジャズ・シーンで活動を開始したドラマーで、一時期はハービー・ハンコックのMWANDISHやエレクトリック・マイルスのバンドにも参加した才人。70年代以降はクロスオーバー色を強め、サンタナジョージ・デュークなどと活動を共にし、更にソウル色を強めボーカルを迎え結成したのがこのチョコレート・ジャム・カンパニーです。ファーストにあたる前作ではアース・ウィンド&ファイアーのアル・マッケイが全面的に参加したこともあり、かなりアース風の内容だったのですが、今作はよりディスコ色を全面に打ち出したものになっています。内容は一級品です。冒頭の「SHADOW DANSING」などのアップも秀逸ですが、マッドリブネタのミディアム「TAKE SOME TIME」などシブいメロウネスを聴かせる曲がカッコいい。このキラキラしたストリングス・アレンジ、ヴォーカル・アンサンブルの艶、リズム隊の粘り、至福ですね。このCDは日本のソニーが2000年代初頭にやっていた「洋楽秘宝館」という再発ラインの一連として出たものなのですが、マスタリングが非常に素晴らしいのです。リマスター技術の黎明期にあたるこの時代、志の高い仕事が沢山ある印象です。

 

4.

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アーティスト:GREG MATHIESON PROJECT

タイトル:BAKED POTETO SUPER LIVE!

発売年:1986年(オリジナル:1982年)

レーベル:CBSソニー

入手場所:HMVコピス吉祥寺店

購入価格:20円

寸評:ラリー・カールトンとの活動で知られるキーボード奏者グレッグ・マティソンが、スティーブ・ルカサー(ギター)とジェフ・ポーカロ(ドラム)というTOTOの二人、そして盟友のロバート・ポップウェル(ベース)と組んだセッション・グループによる唯一作にしてライブ盤。TOTOからの二人にしてもそうなのですが、個人的に、こうした腕達者なミュージシャンの人達の魅力はむしろウェルメイドなアレンジの中でこそ味わい深い、という考え方があり…いわゆるバリバリ弾きまくりセッション的なものはどうしても苦手なのでした…。特にロッキッシュになった時のルカサーのプレイは昔からずっと苦手ですね…。じゃあなんで買ったんだ?というと正直言ってまとめ買いの数合わせです。すみませんでした。今色々なところでフュージョンの揺り戻しが興っていますが、これは「そういうのじゃない」側のフュージョンの代表的な音を聴かせてくれます。ライナーノーツで、松原正樹土方隆行野呂一生という日本のトップギタリスト達が本作を聴いた印象を寄せているんですが、ルカサーのプレイに対してもどこか冷めており、かつアレンジ、ミックスなどについても結構手厳しいことを言っていて面白いです。やっぱりこの人達は信頼できる、と思いました。

 

5.

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アーティスト:Flank Gambale

タイトル:a present for the future

発売年:1987年

レーベル:ジムコ(オリジナル:LEGATO)

入手場所:HMVコピス吉祥寺店

購入価格:20円

寸評:すみません、数合わせです。チック・コリア・エレクトリック・バンドの一員でもあったギタリスト、フランク・ギャンバレが87年にリリースしたセカンド作。一回のストロークで複数弦に渡って単音フレーズを弾く(ストロークの間に左手のパッセージを行っているということ?)という、フュージョン界に衝撃を与えた「スピード・プレイ」なる奏法で有名な氏ですが、ここではそのテクを余すところなく発揮しております。ということは、上段のグレッグ・マティスン・バンドと同じく、私の好みではありません…。ただ、曲がロッキッシュではなくマイルドなものが多く、その分まあ聴けるかなあ…という印象。が、アレンジが凡庸で如何ともし難いですね(ジャケからニューエイジ的テイストを期待したのですが、そういった音楽要素は残念ながらありません)。本来のフュージョンアイデンティティを考えると本末転倒な言い方なのですが、プレイ志向に走っているフュージョンは今の感覚だとやはりキッツイですね。アレンジや編集、音像面でのアイデアに閃きのあるものでないとリスニング的にツライです。

 

6.

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アーティスト:Dave Grusin

タイトル:MOUNTAIN DANCE

発売年:1998年(オリジナル:1980年)

レーベル:          JVC(オリジナル:GRP)

入手場所:HMVコピス吉祥寺店

購入価格:20円

寸評:この辺りで「良いフュージョン」を取り上げましょう。デイブ・グルーシンフュージョン界を代表するキーボード奏者、作曲家、プロデューサー。これは多作な彼の代表作と目される一枚で、1980年にリリースされたアルバムです。タイトル曲は日本でもヒットした洒脱な恋愛映画『恋におちて』(ウール・グロスバード監督、ロバート・デ・ニーロメリル・ストリープ主演)のテーマ・ソングとなっており、50代以上の方ならうっすらメロディーをご存知でないかなと思います。上述してきたテクニック志向フュージョンの真逆に位置する作曲とアレンジメント重視の超一級品で、やっぱり私はこちらの方が好きですね…。もちろん、デイブ自身の鍵盤含め参加メンバー全員テクニック的にもものすごく巧いのですが(ハーヴィー・メイソンマーカス・ミラーなどが参加)。今の感覚的にはデイブとエドワード・ウォルシュのキーボード〜シンセサイザーのトーンに惹かれます。絶妙に暖かなシンセサイザーサウンドのセンスは、同時期のフュージョンの中でも突出したものに思えます。完璧な構築美という点からも、スティーリー・ダンなどが好きな人にも聴かず嫌いせずにチャレンジしてほしいなと思ったりします。

 

7.

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アーティスト:V.A.

タイトル:HAPPY ANNIVERSARY, Charlie Brown!

発売年:1989年

レーベル:ビクター(オリジナル:GRP)

入手場所:HMVコピス吉祥寺店

購入価格:20円

寸評:漫画『Peanuts』の音楽といえば、今も昔もTVシリーズにおけるヴィンス・ガラルディの名が挙がることでしょう。そのオリジナル音楽の素晴らしさは今更ここで強調する必要のないほどですが、それを大物アーティストにカバーさせ、作品誕生40周年を記念する盤として制作されたのが本CDです。上段のデイブ・グルーシン主宰のGRP所属アーティストが中心となり、同レーベルから出されたこれは、さながらフュージョンチャーリー・ブラウン・トリビュート。内容はじつに手堅く、ヴィンス楽曲の魅力へリスペクトを捧げ真っ向からカバーしている印象です。デヴィッド・ベネイの「ライナス&ルーシー」、リー・リトナーの「レッド・バロン」、パティ・オースティンの「クリスマス・タイム・イズ・ヒア」あたりが特に好ましく聴けます。が、そういうある意味中庸な音楽内容にましてこのCDが魅力的なのは、漫画とイラストがふんだんに用いられたブックレットと言えます。アニバーサリーということもあってかルーシーも妙にしとやかで、いつもの皮肉も控えめです。

 

8.

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アーティスト:MARLENE

タイトル:LOOKING FOR LOVE

発売年:1984

レーベル:CBSソニー

入手場所:HMVコピス吉祥寺店

購入価格:20円

寸評:80年代初頭から日本で活動するフィリピン人ジャズ歌手マリーンによる84年リリースの6thアルバムです。この人は異様に多作で、中古店頭でみかけるたび「コレって持っていたっけ?持っていなかったかったけ?」となるのですが、このジャケは以前から妙に印象に残っていたのでした。ラリー・カールトンやジェイ・クルスカ、ネイザン・イーストなどを迎えたLA録音で、相当にクオリティの高いプロダクションです。マリーンのボーカルも完璧にこなれた英語なので、もはや和的な要素はほぼありません(たまにマイナー調曲に顔を覗かせる程度)。ということで、改めてAOR作品として聴いてみると、その素晴らしさに感じ入る次第です。LAらしいロック・テイストも随所で聴かれますが、今の感覚的にナイスなのはジョイフル・ポップなM6「ニードル・イン・ア・ヘイスタック」、ロバート・クラフトのカバーM7「アイ・ワンダー・ホワット・ユー・アー・ライク」、うっすらバレアリックなブギーM8「ア・リトル・T.L.C.」あたりかなと思います。

 

9.

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アーティスト:杉真理

タイトル:STARGAZER

発売年:1983年

レーベル:CBSソニー

入手場所:HMVコピス吉祥寺店

購入価格:20円

寸評:珍しい「LPでも持っているけどCDも買ってしまった」盤です。杉真理の初期キャリアを代表する、そして80年代シティ・ポップ・シーンも代表する名盤なので、改めてここで僕が内容について詳細することも無いのですが、当然のごとく非常に素晴らしいです。以前杉さんにインタビューした際、僕は田舎者なのでシティ・ポップといわれると不思議な感覚があって、と笑いながら謙遜されていましたが、その発言を僕なりに解釈するなら、杉さんの志向はあくまでオールディーズ〜マージービートで、いわゆる今でいう都会的「ライトメロウ」感覚というのをことさら意識していたわけでないということになのかもしれません。実際ここで聴かれる音楽は、アレンジこそシティ・ポップ感覚にあふれていますが、現在に続く曲作りの妙の骨格はやはり60年代ロック〜ポップスとしてのそれです。もしかしたら若い世代にはその辺りの勘所が掴みづらいかもしれないのですが、一度魅力に開眼すると、膨大なディスコグラフィー全てが愛おしく思えてくるのでした(私も未聴作品を順次クエストしようと思っているところです)。ちなみにこのCD、83年発売ということでCD黎明期のものなのですが、マスタリングレベルの極端な小ささに時代を感じます(そもそもマスタリングという概念自体もこの頃産まれたものなので…)。かといって「悪い音」というわけではなく、コンプ感希薄な透明性のある音で、これはこれで好ましいのでした。上段のマーリンも84年のCDなので、同じようなマスタリング傾向です。

 

10.

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アーティスト:YOUNG SWALLOWS

タイトル:TO THE TOP VICTORY ROAD

発売年:1993年

レーベル:東芝EMI

入手場所:HMVコピス吉祥寺店

購入価格:20円

寸評:めちゃくちゃトレンディーなジャケットを見て、「ヤングスワローズ」なんてライト・メロウ・グループいるのか?なんて思ったんですが、その実、ヤクルトスワローズの選手たち。よく見たら確かに、私が小学生だった頃のスタメンがジャケでふにゃふにゃ微笑んでいます。制作陣に佐藤準鈴木博文白井良明小室哲哉サエキけんぞうなどの名前を発見し、音楽的にマジの雰囲気を感じたので購入しました。果たして…。佐藤準作のインストM1はいきなり暑苦しいアメリカン・ハード・ロックの雰囲気で聴き進める意欲を著しく挫くのですが、橋上、飯田、加藤、西村、高津、内藤、小阪の歌うM2「負けず嫌いなLOVE SONG」はギリギリでシティ・ポップに分類可能な烏合の衆系合唱曲でした。M3は古田による中庸なミディアム、小室哲哉曲M4はかなり保守的なミディアムと、なんとも言い難いぬるい世界が続いていきます。そんな中、秦による歌唱の鈴木慶一詞、白井良明作曲「愛を数えよう」は実にシブいオリエンタル・フォーク・ロックで好ましい。なんでこのCDにこんな曲が!? つづく広沢はJ-WALKの「何も言えなくて…夏」を55点の歌唱力で歌い上げます。M8は髙野による凡庸な歌謡ロック。全員によるM9はこれまでの曲のメドレーとなっています(しつこいなあ…)。という感じで(当たり前ですが)お遊びの範疇を出ないノベルティ作品ですが、時代の記録としては貴重かなと…。多分再び聴くことはないので、スワローズ・ファンの方へ謹呈します。

 

次回へ続く…。