CDさん太郎 VOL.14 2019/4/20 購入盤

こんにちは。本記事はCD特化のディグ日記シリーズ「CDさん太郎」の第14回目になります。今回は2019年4月20日東京・八王子周辺で購入したCDを計12枚紹介します。

スパイク・リーの『ブラック・クランズマン』を観に行くべく各映画館の上映時間を調べていたところ、近場ではうまい時間にやっていないことがわかり、それならとブックオフ巡りとくっつけていっそ遠方の劇場に行ってやろうとたどり着いたのたのが、TOHOシネマズ南大沢。35年地面に這いつくばってきましたが、この日初めて行きました。郊外シネコン特有のファジーなムードが漂っており、好ましかったです。

八王子周辺のブックオフについては、なかなか堅調だったといっていいかなと思います。かなりのペースで各店回ったので、まだまだ見落としが多々ある気がします。例によって電車でのアクセスが困難で行けなかった店舗もあり、近くレンタカーdigを開催したく思います。

 

唐突に告知です。

6/1、愛知県・蒲郡で毎年開催されている音楽フェスタ『森、道、市場』で、Dj係をさせていただくことになりました。大丈夫なのでしょうか。まだお客さんが寝ていたり会場に向かっている途中だろう時間帯なので、遠慮なく選曲させていただこうと思っております。

詳細はこちら  http://mori-michi-ichiba.info/

 

本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。 

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

1.

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アーティスト:松崎裕子

タイトル:Paradise

発売年:1996年

レーベル:ワールド・エンタテインメント

入手場所:BOOKOFF SUPER BAZAAR 八王子みなみ野

購入価格:500円

寸評:90年代に頻出した環境系写真家と音楽家のコラボレーションCDですが、これはその中でも相当な秀作と思われます。大体においてこうしたCDは、写真家の名前におんぶして音楽内容が陳腐、あるいは音楽が収録されているように見せかけてそもそもただの環境音(森とか海とかの)が収録されているだけというのが多く、俗流アンビエントDIGの鬼門なのですが、どうしてどうして良い作品に出会うこともあるのだなあ、という感じ。写真を担当している水口博也氏、その界隈では有名な方のようで、クジラやイルカなどの動物写真を得意にしているとの由。が、そういう情報はどうでもよくて、肝心の音楽内容、これがとっても良く。松崎裕子氏という方は、ネットで調べる限りほとんど情報がなく、この他に世界遺産をテーマにしたニューエイジ作があるだけのようです(プロスイマーの方で同姓同名の方がいらっしゃるようですが、海を扱った本CDのテーマ的にも遠からず…もしかして同一人物でしょうか?)。基本、ノンビートのアンビエントというよりはガムランなどを取り入れたミニマルミュージック調です(おそらくすべて打ち込み&シンセサイザー)。明らかに西アフリカ民族音楽に影響を受けた曲などもあり面白い。ムクワジュ・アンサンブルを俗的にした感じとでもいいますか、各楽器の旋律や音色から若干の歌謡臭が発散されていますが、それがまた珍妙なスパイスになっています。かなり目撃頻度の低いCDだと思いますので、見つけたら是非ゲットすることをオススメします。

 

2.

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アーティスト:鷲尾いさ子

タイトル:彼女の風

発売年:1987年

レーベル:ビクター

入手場所:BOOKOFF SUPER BAZAAR 八王子みなみ野

購入価格:280円

寸評:女優/モデルの鷲尾いさ子が87年にリリースしたミニ・アルバム。わたしの世代では、鷲尾さんといえば何をおいても「鉄骨飲料」ですね。そのお姿をテレビで拝見するたび「キレイな人だけどなんか他と違う感じ」を感得していたような気がします。このEPは全編フレンチテイストで彩られており、鷲尾さんのアンニュイなキャラクターに寄せてのディレクションだったのかなと想像する次第。自身もシャンソンシンガーや映画評論家として活動する遠藤突無也氏がプロデュースを務め、同時期の高岡早紀作品なども思わせる作風に。実際、ゲンズブール曲なども日本語カバーで取り上げ、その気の入れようは相当です。少しプレ渋谷系的な雰囲気も漂わせており、当時の日本人の「オシャレ」が具体的にどのようなものだったのかという民俗学的資料にもなっているかと思います。鷲尾さんのヘタウマな歌謡も実にフレンチポップ的で好ましいのですが、なんといってもオケの完成度の高さ。出色は2曲の山口美央子提供曲「下級生」と「風の絵葉書」ですね。ちなみにこの作品、3年後の90年、「鉄骨飲料」CMでのブレイクを受けて未発表曲を大量に加えたデラックス版(?)として再リリースされています。

 

3.

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アーティスト:井上美樹

タイトル:DOOR

発売年:1991年

レーベル:アポロン

入手場所:BOOKOFF SUPER BAZAAR 八王子みなみ野

購入価格:280円

寸評:医療器メーカー「ニプロ」のCMソング「君の元気は 僕の元気さ ファイト!」で有名(?実際にはこの曲は何バージョンか存在しており、世代によって刷り込まれている歌声が違うという現象があるようです)な、ガールポップシンガー井上美樹による3作目。元気一杯系のガールポップシンガーとは一線を画し、どちらかといえばアダルティーでアンニュイな歌唱を聴かせてくれます。そういうことであれば普通シティ・ポップ路線になりそうなものなのですが、井上さんの場合はフォークロック路線を選択しているのが実に面白い(が、その分2019年的評価軸からは完全にこぼれ落ちるでしょう…)。作曲も基本全て本人が手がけてらっしゃいます。なんというか、この中庸さがクセになる…といえないこともない。

 

4.

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アーティスト:B.J. Cole

タイトル:Transparent Music

発売年:1990年

レーベル:MIDI(オリジナル:HANNIBAL)

入手場所:BOOKOFF橋本津久井街道店

購入価格:500円

寸評:英ロックシーンを代表するペダルスチールギター奏者、B.J.コールによるインスト作品です。クーチーズ在籍時から英ロックにおけるペダルスチール需要を一身にこなしているのでは?と思わせるハードワークぶりで、その名をロック名盤のクレジットに見つけること度々です。もちろん元々はカントリー系のプレイを得意とする人だったわけですが、英ロックの名プロデューサー、ジョー・ボイドが興したHANNIBALレコードからリリースされたこのソロ作では、完全にアンビエントニューエイジ的音楽世界となっています。その内容の至福ぶりを以前から噂にきいていたのですが、そこまでレアでないはずなのに店頭で何故か遭遇することなくこれまできていたのでした。それをこの度ようやくゲットという物語。内容はといえば、噂に違わぬ幽玄ぶりで、この楽器の霊妙な響きを十二分に活かした作品となっています。まさに隠れ名盤といっていいでしょう。印象としては、日本を代表するペダルスチール奏者駒沢裕城氏の名作『Feliz』とかなり近いものを感じますね。しかし、このCDに入っている日本盤ライナーを担当しているミュージックコラムニスト(って何?)の伊藤史朗という方、B.J.コールがだれなのかか知らない、と普通に書いていて職業倫理を疑います。こういうのが普通にまかりとおったというところに、かえって当時の音楽業界の好景気ぶりを思います。

 

5.

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アーティスト:鈴木結女

タイトル:自分の色

発売年:1992年

レーベル:メディア レモラス

入手場所:BOOKOFF橋本津久井街道店

購入価格:280円

寸評:実はこのCD、以前リサイクル店において結構な値段で売られているのをみかけて(結果ただの法外値付けだったようですが…)、その後気になってネットで検索していたところ現在サブスク配信でもリリースされていることを知り、密かに愛聴していたものです。この度晴れて280円で発見という物語。鈴木結女さんは、一般的知名度はそこまで高くないかもしれないのですが、アニメ『NINKU -忍空-』のテーマソングを歌ってらっしゃった方なので、わたしの世代ですと、そちらの方で覚えている方もいるかもしれません(私は覚えていませんでしたが)。これは1stアルバムにあたる作品ですが、全編これ最高のエレクトロ・ファンク〜ブラコン路線の隠れ名盤です。ほぼ全て打ち込みによって作られており、大竹徹夫氏、杉山卓夫らによるバキバキ&ハードメロウなプログラミングが最高ですね。注目すべきは、あのハウスレジェンド寺田創一氏が数曲でプログラミング参加しているということでしょうか。明らかに他曲にくらべ現場感のある音を作っていて流石です。コーラスではアマゾンズや楠瀬誠志郎も参加し、鉄壁。鈴木結女さんの歌唱も、実にみずみずしくそして上手い(英語もラップもめちゃくちゃ上手!)。ちなみに、CDジャーナルでは「紀宮の御学友ってのがスゲェ~」とまったく音楽内容と関係ない部分を一文目からイジられています。

 

6.

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アーティスト:SMAP

タイトル:007〜Gold Singer〜

発売年:1995年

レーベル:ビクター

入手場所:BOOKOFF橋本津久井街道店

購入価格:280円

寸評:「それ持ってなかったの?」案件ですね。Smappiesがバックを務めていたレア・グルーヴ〜アシッド・ジャズ路線期のSMAPについては、これまでも沢山の人が言及しまくっているので、あまり僕がここで付け足すこともありません。これまでもことあるごとに聴かされてきた作品ですが(大学時代などイキった友人から「逆にSMAPやべえよ?」などとよくきかされた)、改めて購入してじっくり聴いてみると、素晴らしいですね。「やっぱり名盤ですね」ということでよいかと思います。

 

7.

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アーティスト:YUTAKA

タイトル:ANOTHER SUN

発売年:1993年

レーベル:MCAビクター (オリジナル:GRP Records)

入手場所:BOOKOFF橋本南口店

購入価格:500円

寸評:またしても横倉裕の登場です。プロデュースやアレンジなどで言及したものも含めると、本「CDさん太郎」における現時点での最多登場者ではないかと思われます。これは以前取り上げた『Brazilasia』(第二回目を参照)から約3年、セルジオ・メンデスのグループで活動するシンガー、ケヴィン・レトーとの仕事やポーリン・ウィルソンのプロデュースなどを経てリリースした通算4作目のアルバム。ファンの間では、これぞYUTAKAの真髄と言われる名作にして、残念ながらソロ名義では今のところ最後の作品となっています(現在では、ボス:セルジオ・メンデスと行動をともにしたり、かつて日本で組んでいたバンドNOVOの再発足プロジェクトなどで活動)。特筆すべきが、セルジオ・メンデスと3曲で共同プロデュースを行っていることでしょう。果たしてこれらの楽曲が本当に至福で…特にM4「スマイル・フォー・ミー」はあのイヴァン・リンスがボーカルで参加するなど、実に豪華…。他曲でもいつもどおり極上のブラジリアン・メロウネスを聴かせてくれますし、琴の闊達なプレイも本当に「マスター」と呼ぶに相応しいオーラを発散しています。最高です。

 

8.

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アーティスト:セルフィッシュ

タイトル:Colors of Love

発売年:1993年

レーベル:PONY CANYON

入手場所:ハードオフ 八王子堀之内店

購入価格:108円

寸評:金澤寿和氏の『Light Mellow和モノSpecial』にも数少ない90年代産アイテムとして登場、更にはハタさんの「シティ・ポップ記録簿」にも登場するなど、ここ数年で急に注目を集めつつある(のか?)男性三人組グループ、セルフィッシュによる第一作。ふにゃふにゃした見た目からはあまり想像できないような、ソリッドなブラコン感を武器とする人達です。楽曲的完成度に照らして一般的評価はセカンドの『ディグ・イット』の方が高いようですが、こちらもなかなかの佳作じゃないでしょうか。一応「バンド」という体を意識しているのか、一般的なJ-AOR諸作よりビートが強力な気がします。特にドラムはメンバーの松本幸弘が担当していることもあり、そのあたりの挟持があるのかもしれません。他演奏陣も、羽田一郎、増崎孝司美久月千晴渡辺直樹、山田秀俊、富樫春生、柿崎陽一郎という手練多数。

 

9.

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アーティスト:刀根麻理子

タイトル:Vois de L'ame

発売年:1990年

レーベル:ワーナー・パイオニア

入手場所:BOOKOFF 八王子堀之内店

購入価格:280円

寸評:この日の一連のディグの翌日、京都メトロで開催された「Yu-Koh α版」へ伺ったのですが(めちゃくちゃ楽しかった…)、lighmellowbuの一員としてDJしていたバルベースさんが本作M1「ソワレの夜 突然に」をかけていて、ブチ上がりました。そんなシンクロニシティ、なかなか無い。本盤は、その山口美央子ペンになる名曲を筆頭に、全編これ高クオリティ。上田知華作のM2における「SPARKLAE」風ラテンフレイバー、山口美央子作のマイナーミディアムM5、テクノポップ感湛えたレイトサマーミディアムM8などが好ましい。その他のマイナーバラードも、そんじょそこらのシンガーのものだと聞くのがツライな―となるところなのですが、なによりこの人は歌がべらぼうに上手いので、飽きずに聴けてしまうというのがありますね。かなり多作な方で、他作品もブックオフに大量の在庫があるはずなので、コツコツ集めていこうと思っています。90年代シティ・ポップにおけるいい意味での中庸を代表するような方かなと…。

 

10.

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アーティスト:長谷川武 & ALBATROSS

タイトル:α波 1/fゆらぎ 四季・夏<Vigor>

発売年:1992年

レーベル:アポロン

入手場所:BOOKOFF 八王子堀之内店

購入価格:280円

寸評:アポロン謹製のα波 1/fゆらぎシリーズ、様々なシュチュエーションごとに沢山の作品がリリースされているのですが、その制作総てをほぼ一手に担っているのが長谷川武氏。北海道出身の氏は、はじめ脚本家をめざし日大芸術学部に入学するものの、かたわらでマンドリンをよくするなど、音楽の道へ徐々に惹かれていき、後にはクラッシックを学びながら環境音楽の世界へ足をふみいれることになったということです。作風としてはそうした遍歴が素直に表出したかなりクラッシック色濃い俗流アンビエントが主になっているのですが、ときたま息を呑むほど美しいアンビエント作をつくったりするので、油断がなりません。ということで、氏の作品は見つける度できるだけ買うことにしているのですが、琴線に触れてくるにはまあ5回に一回といったところで…これは4回の側のやつでした。クラシック名曲のニューエイジアレンジ作品というのはキツものがおおくてなるべく買わないようにしているのですが、まさにそのことを再認識せざるを得ない内容…。しかもヴィヴァルディの『四季』という地雷曲で、二重の苦難です。一応それ以外にもオリジナル曲も入っているのですが、これも実にキツく…。一曲だけ「SUMMER ISLAND」という鈍重な謎フュージョンが入っており、一瞬笑えますが。

 

11.

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アーティスト:久石譲

タイトル:MELODY Blvd.

発売年:1995年

レーベル:パイオニアLDC

入手場所:BOOKOFF 八王子堀之内店

購入価格:500円

寸評:そこへいくと久石譲という人はいつでも素晴らしいクオリティの作品を作っているなあと感心せざるを得ませんね。当たり前ですね。これは氏が映画音楽作家としてブレイクした後にリリースしたリアレンジ・セルフカバー作です。『水の旅人』、『魔女の宅急便』、『この愛の物語』、『ふたり』、『はるか、ノスタルジィ』、『時をかける少女』、『紅の豚』、『ぴあの』、『青春デンデケデケデケ』などから、聴き馴染みあるテーマ曲/挿入曲をチョイスし英語詞を付けた上、トミー・ファンダーバークやウォーレン・ウェイブといった外国人歌手に歌わせる、といった企画です。バッキングにもLAのセッションミュージシャンを一同に集めています。存在は知っていたのですが、氏のディスコグラフィーの中でも手に入りづらい部類(売れなかったのか?)ということもあり、この日ようやくゲット。内容は、まったく盤石極まりない高クオリティなAORで、全編安心印の久石ワーク。出色はミディアム〜アップの「あたなになら」「木洩れ陽の路地」、「追憶のX.T.C.」あたりでしょうか。バラードになると例の過剰な叙情性が鼻についてくるところもあります。

 

12.

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アーティスト:ELLIS

タイトル:Fragile

発売年:1992年

レーベル:ポリスター

入手場所:BOOKOFF 八王子堀之内店

購入価格:280円

寸評:元四人囃子〜プリズムの森園勝敏プロデュースという、つい身を乗り出さざるを得ないプロダクションによって89年にデビューした男女ユニット「エリ」。森園勝敏といえば、上記バンドでのワークスはもちろん、ソロ独立後の諸作に至高のフュージョン名作が多く、中でも78年の『バッドアニマ』はオールタイムフェイバリットであり…と森園氏の話ばかりになってしまいました、すみません。elliの歌、近藤洋史のプログラミングを軸とする彼らのサウンド、若干捉え方に迷う折衷的なものなのですが、それこそ森園氏のセンスがこのあたりに反映されている気もしますね。ボーカルはやや頼りない感じ(だからこそ良いという見方も出来る)なのですが、サウンドクオリティは一級品という対比にも妙味があります。曲調はさすが洒脱なものが多く、シティ・ポップに分類して良いのではないかと思います。彼らは6枚のオリジナアルバムを発表後、活動休止。二人は近年も積極的活動を行っており、特にボーカルのelliは、Elli & Petz Gelatoとして、また、鈴木雄大とのユニットZEBRA ONEとしても活躍されています。

 

次回へ続く…。