CDさん太郎 VOL.15 2019/4/24、29購入盤

 こんにちは。本記事はCD特化のディグ日記シリーズ「CDさん太郎」の第15回目になります。今回は2019年4月24日に東京・吉祥寺で、28日に池袋で購入したCDを計11枚紹介します。

 

 ひたすら目の前のタスクをこなす日々にあって、「CDさん太郎」の更新がどうしても後手後手になってしまっており、この辺で自らに喝を入れなければと考えています。たとえば、目下の「CDさん太郎」を更新するまでその先へ更に積んであるCDを聴いてはいけない、あるいは購入してはいけない…など。いや、それをすると単にCDを買わなくなってしまいそうなので本末転倒か。一番良い方法は、買って聴いたら一枚一枚その場ですぐ書いて溜めておく、ということでしょうか。今回の更新の先にも、現在30数枚のCDが積まれている状況です。すみません、誰も気にないだろうことをダラダラと書いてしまいました。

 

 唐突に告知です。

 来週末6/9(日)、なんと本「CDさん太郎」の出張イベントがディスクユニオンのキャンペーン「DIVE INTO MUSIC」の一環として開催されることになりました。大丈夫なのでしょうか。場所はディスクユニオン新宿本館の1F、「du cafe新宿」にて、時間は16:00〜17;30を予定しております。本「CDさん太郎」にこれまで登場した盤を中心に持参しプレイするとともに、DU池部さんをお相手にあれこれトークする予定です。入場無料(要1ドリンクオーダー)です。是非お越しください。

 詳細はこちら:http://blog-shinjuku-rockcd.diskunion.net/Entry/375/

 

 本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。 

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

1.

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アーティスト:STEVE ROACH, KEVIN BRAHENY, MICHAEL STEARNS

タイトル:DESERT SOLITAIRE

発売年:1989年

レーベル:FORTUNA RAECORDS

入手場所:BOOKOFF吉祥寺店

購入価格:224円

寸評:米国南西部アリゾナ州ツーソンに本拠地を置いていたニュー・エイジ系レーベルFortuna Recordsからリリースされた米アンビエント系作家3名のコラボレーション盤です。中心となっているのはFortuna Recordsの筆頭アクトでもあるスティーブ・ローチ。各種民族打楽器なども取り入れたストイックな作風は、大味な感傷に流されがちな作風の人の多い米ニュー・エイジ界でも異端で、相当に良質な音楽センスの持ち主であると思います(2019年基準)。他の二人の作品も非常に奥ゆかしい静謐を携えたもので、ありがちな自己陶酔系ニュー・エイジになることを避けています。アルバム全体、シリアスな(従来の価値観における非ニュー・エイジ系の)アンビエント・ファンにもぜひ聴いてもらいたい充実の内容なのですが、特にM1は素晴らしい。米南西部の砂漠風景を実際に目にしたことがないので想像する他ありませんが、荒涼とした音像とアレンジが実にそれっぽく、カッコいい。要はエッジーで自覚的なムード・ミュージック。米本国ではかなりの名盤/定番とされているようで、アマゾンなどでも称賛する英文レビューが目立ちます。

 

2.

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アーティスト:MARK GOLDENBERG

タイトル:ある旅行者の手記

発売年:1987年

レーベル:KITTY

入手場所:BOOKOFF吉祥寺店

購入価格:224円

寸評:元々1980年デビューのクレトーンズという米西海岸のパワー・ポップ・バンド(いいバンドです。2枚のLPは激安で叩き売られているのをよく見る)でギタリストとして活動していたマーク・ゴールドバーグは、傍らでリンダ・ロンシュタットジャクソン・ブラウンといったビッグネームのサイドマンを務めるようになり、いつしか当初のパワーポップ魂はどこへやら、ソロ作品では完全にイージー・リスニング的な作品をリリースするようになるのでした。世界広しと言えども、パワー・ポップからニュー・エイジに転向した例は彼の他に無いような気がしますね…。この人はかつて日本で非常な人気があり、代表作『鞄を持った男』のジャケを見れば、安レコ/CDディガーなら「ああ、あの人ね〜」となるんじゃないでしょうか。当時爆発的に売れたからこそ今でもそれくらい目撃頻度が高いわけですが、なぜかといえば、一時期サントリーのTV-CMのサウンド・プロデューサーを努めていたゆえであり、『鞄を持った男』もそのタイアップに絡んで日本国内制作されたものなのでした。続く今作も日本制作で、基本的に前作を踏襲するような軟弱なニュー・エイジ〜イージー・リスニングなのですが、この人の持ち味であるヨーロッパ趣味(あくまで「それ風」というだけなのがミソ)が開陳されます。この80年代感バリバリのエセ観光音楽風味、実に寒々しく(良い意味で言ってます)、ほとんどそのまま初期Vaporwaveに通じる味わいが…あるような…ないような…。中村とうようがマイナス100点を付けそうな音楽です。寒々とした雨の日、今にも潰れそうなレジャー施設(そういうのも今や本当に片っ端から潰れて無くなってしまいましたが…)の誰もいないエントランス・ホールでかかっている音楽、というか。全体的に、鬱を誘発しかねない音楽が満載です。

 

3.

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アーティスト:村田和人

タイトル:GO POP

発売年:1988年

レーベル:EASTWORLD(東芝EMI)

入手場所:BOOKOFF吉祥寺店

購入価格:400円

寸評:「シティ・ポップの良心」(と私が呼んでいるだけですが。シティ・ポッピストの方にはこの感覚は伝わると思います)こと村田和人がMOONから東芝EMIへ移籍後リリースしたアルバムで、アニメ音楽などで突然変異的なメロウ仕事をしてきた名匠・幾見雅博氏がプロデュースした作品です。この作品の特長といえばその幾見氏の編曲と、大胆なエレクトロニクス・サウンドの導入でしょう。特にリズム・トラックはほとんどがドラムマシン(AKAI MPC-60)で制作されています。そこのところが旧来のシティ・ポップ・ファンからはあまりウケが良くないようですが、今となっては完全に気分なのでした。オーセンティックかつべらぼうにうまい村田氏のボーカルとエレクトロニクス・サウンドは確かにある意味でのミス・マッチ感もあるのですが、それこそあの時代のなせる業、旨味として味わいたいところです。アップだとエレクトロ・ファンク調、スロー〜ミディアムだとマーヴィン・ゲイ「セクシャル・ヒーリング」やアイズレー・ブラザーズ「ビトウィーン・ザ・シーツ」のような有機的エロさも漂い、実に良い。今クレジットを眺めていたら数曲でカーネーションの直枝政太郎(現:直枝政広氏)が作詞を手掛けており、そこ繋がりあったんですね…!とびっくり。

 

4.

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アーティスト:東正任

タイトル:E LA NAVE VA そして船はゆく

発売年:1987年

レーベル:クラウン

入手場所:BOOKOFF池袋サンシャイン60通り

購入価格:280円

寸評:現在はイベント企画や広告を手がける会社の代表を務め、実業界では大変に有名らしい(実業界にまったく興味がないので知らなかったのですが)東正任氏による歌手時代唯一のアルバムです。ジャケットや発売年からしてJ-AOR的雰囲気満点ですが、その実、まさしくそんな作品といえます。が、どこか芯を食ってない感じ≒空虚感が漂っており…。フェビアン・レザ・パネ勝又隆一といった編曲陣が参加していますが、なんというか、非常にそつなくて、だからこそあまり印象に残らないなあ…というのが正直なところ。ボーカルもどちらからといえば「ソングライター・ボイス」という感じで、レンジも狭め。それを逆手に取ってアレンジの妙で聴かせるわけでもないので、楽曲自体と東氏の歌唱法に巣食っているなんとも凡々とした歌謡感が目立つ結果に。スロウ〜ミディアムばかりなのも、「大人の色香」というより、ただ躍動感が無いだけに聞こえてしまうという不幸。ジャズ的解釈の曲も、お仕着せな「ジャジー」が支配し、ややキツイ。このあたりのイキリがのちにビジネスマンとして成功される片鱗なような気もします。

 

5.

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アーティスト:DARLIN'

タイトル:LOVE EDUCATION

発売年:1991年

レーベル:東芝EMI

入手場所:BOOKOFF池袋サンシャイン60通り

購入価格:280円

寸評:石田正人(ボーカル)と高田次郎(ギター)によるデュオ「ダーリン」のセカンド・アルバムです。まったく何の予備知識もなくほとんど賭けで買ってみたのですが、これは相当シンドいものがありますね…。オケだけ切り出してみると、「オッ」と感じる部分も稀にあるのですが、中途半端にロックに寄せたアレンジ(多分エアプレイ期前後のデヴィッド・フォスターを参考にしているような気がするのですが)が実にクサイのと、泣きのギター、そしてボーカルの過剰さがいかにもキツく…。CDジャーナルで「矢沢永吉がB'zに強制加入したような世界。あるいはクサくカッコつけまくったNOBODY!?」とイジられているんですが、まさにそうですねという感じ。名レビューじゃないでしょうか。メジャー発のポップスとしてもターゲッティングが謎すぎるし、結果、ポップスとしても何がしたいのかよくわからないものになってしまっている気がします(これで解散したようです)。スミマセンが、最後まで聴き通せませんでした…。

 

6.

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アーティスト:野村宏伸

タイトル:GUILTY

発売年:1990年

レーベル:ビクター

入手場所:BOOKOFF池袋サンシャイン60通り

購入価格:280円

寸評:「びんびんシリーズ」で御馴染みの俳優・野村宏伸によるアダルト路線のアルバム。lightmellowbuブログでタイさんが紹介しているのを読んで以来、是非手に入れたいと思っていたのをこの度入手。かなり詳細に渡ってタイさんが書いているので、私がここで繰り返すべきこともほとんどないですが、なんと言っても素晴らしいのは鷺巣詩郎・奥慶一の両氏によるアレンジですね。ふんにゃりした歌唱にリズミックな表情と色彩を加えることで、「俳優のアルバム」としての格をそれまでの作品から一つ上げている印象があります。個人的出色曲はやっぱりタイトル・ソングの「GUILTY」。素晴らしい。

 

7.

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アーティスト:柿原明美

タイトル:Refile

発売年:1993年

レーベル:ポリスター

入手場所:BOOKOFF池袋サンシャイン60通り

購入価格:280円

寸評:AKこと柿原明美による初期楽曲コンピレーション盤。今井美樹への曲提供でも名を上げた彼女ですが、現在のような体育会系になる前の作品を聴いてみると、改めてソングライターとしての才能にハッとさせられます…。これはおそらくシティ・ポップというより、オーセンティックなシンガー・ソングライター音楽の系譜として味わうのが正しいように思われます。演奏陣は青山純鳥山雄司松下誠美久月千晴など手練多数なのですが、遠山淳のアレンジの元、あえて滋味深い(はっきりいうなら地味な)演奏をすることにより、70年代シンガー・ソングライター的な品格が漂っています。この感じ、同時期の渋谷系の味わいとも遠からからずという感じで、ポリスター発とうのも影響しているのでしょうか。全体の印象としては、2000年代以降のアコースティック系女性シンガーソングライターの音楽を先取りしている感もあります。それにしても全曲素晴らしい…。今井美樹への提供曲もこちらの本人版のほうが大分良いなあと思ってしまします(元来ジャニス・イアンリッキー・リー・ジョーンズ、ジェニファー・ウォーンズなどが大好きなSSWおじさんなので)。

 

8.

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アーティスト:GWINKO

タイトル:EVERY GIRL

発売年:1989年

レーベル:CBSソニー

入手場所:BOOKOFF池袋サンシャイン60通り

購入価格:280円

寸評:沖縄アクターズ・スクール第一期生として若年でデビュー、シティ・ポップとは違った系譜でのダンス・ポップを推し進めた存在として今こそ再評価すべき(だと思う)GWINKOによる、脂が乗ってきた3rdアルバム。今になって聴くと、音楽的にも後の安室奈美恵らの素形になっている感じがしますね。もちろんTKサウンドほどにはバキバキのダンス・オリエンテッド路線ではないのですが、そのあたりの新世代への架け橋とでもいうべき折衷的な魅力があります。今作は全て海外ミュージシャンがプロダクションに関わったことで、より気ィの入った仕上がりに。竹を割ったようなエレクトロ・ビートに、抜群のリズム感とピッチ感で溌剌とした歌唱を載せてくる様に、快楽指数急上昇。作曲陣も、楠瀬誠志郎大沢誉志幸、羽田一郎など、一流ミュージシャンが大挙参加。めちゃくちゃ今DJユースだと思うし、リミックスなどを施される以前にこのままで既にフューチャーファンクっぽくないですか??という。付属のポスターに写るスタイリッシュな様も最高です。

 

9.

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アーティスト:梅林茂

タイトル:教師夏休み物語 オリジナル・サウンドトラック

発売年:1992年

レーベル:ファンハウス

入手場所:BOOKOFF池袋サンシャイン60通り

購入価格:280円

寸評:石橋凌主演、古尾谷雅人鷲尾いさ子近藤敦(バービーボーイズ)、萬田久子津川雅彦、川谷拓三(!)出演の日本テレビ系ドラマ『教師夏休み物語』のサントラ盤です。残念ながら私はドラマをリアルタイムで観た記憶が無いのですが、22:00から放送だったらしく、92年当時その時間にはもうネンネしてましたので見てないのも当然なのでした。ということでドラマ自体には触れることができないのですが、純粋にサントラだけを聴くとわりに面白い。音楽担当の梅林茂氏は、1981年に加藤和彦プロデュースの「EX」でバンドデビュー、その後映画音楽畑で活躍をした音楽家。角川〜東映と映画会社を股にかけながらも、かなり硬質の、というかアウトローチックな作品をよく手掛けている印象です。特に崔洋一監督の『友よ静かに眠れ』(85年)のスコアは素晴らしいです!ここでも梅林氏はその才能を発揮、なかなかに折衷的かつバラエティに富んだスコアを提供しています。主軸としてワールド・ミュージック感を据え、トロピカル感、ロック感、ニュー・エイジを混ぜ合わせていくような感覚といいますか。タイアップ・ソングだった陣内大蔵によるテーマ曲も冒頭に収録されていますが、これは蛇足。

 

10.

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アーティスト:佐藤準

タイトル:ポール・ポジション! 愛しき人へ…

発売年:1992年

レーベル:PONY CANYON

入手場所:BOOKOFF池袋サンシャイン60通り

購入価格:280円

寸評:『ポールポジション!愛しき人へ…』は1992年から1クールだけ放映されていた日本テレビ系の連続ドラマ。こちらも放送枠が22:00からだったということもあり(?)、私の記憶には全く残っていません…。F3レーサーを主人公とした作品だったようですが、第一話目のラストでいきなり加勢大周演じる主演が事故死し、二話目以降は同じく加勢大周演じるその弟が主役となるという、あだち充『タッチ』を圧縮したようなトリッキーな脚本だったようです。その加勢大周がジャケットにドーンと登場するこちらのサントラですが、音楽を手掛けたのは名匠・佐藤準今井美樹のアレンジ・ワークやソロ作のリリースなどを経て充実した活動を行っていた時期でもあり、実に手堅いライト・フュージョン風劇伴を寄せています。これに先行するソロ作『彩』(88年)、『Chaos』(90年)の斬新なアレンジ・アイデア溢れるニュー・エイジ風ライト・メロウぶりからすると物足りない感じがありますが、それでもさすがのクオリティと言えるでしょう。ピアノ独奏バラードの類は無視するとして、F3の疾走音をSEとして織り交ぜたスポーツ・フュージョンM2、気の抜けたヴァン・ヘイレンみたいなインストM7、アブストラクトさと繊細さのバランスが好ましいアンビエントM11あたりが聴きものです。

 

 

11.

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アーティスト:SKY LOVE

タイトル:超便利 効果音楽集 〜イメージ・アップ演出の決め手〜

発売年:1997年

レーベル:キング

入手場所:BOOKOFF池袋サンシャイン60通り

購入価格:280円

寸評:今回の目玉盤です。「効果音楽集」というのは、いわゆるよく見かける「効果音」CDとは違い、「あなたがオリジナルの映像作品を作ろうとするとき、適宜この音楽を貼り付けると巧い演出効果が期待できますよ」というもので、ホームビデオ文化浸透期に多く見られた商品ジャンルです。わけてもキングレコードはこの分野のトップ・ランナーで、様々なシチュエーションに応じた効果音楽集をリリースしています。これまで購入し所持しているだけでも、季節やムードごとにテーマ分けしたものなど色々とありますが、今回購入したのはおそらくそれらの決定版的な位置づけでリリースされたであろう2枚組CD。「オープニング」「アーバン」「パストラル」「アクティブ」「イメージ」「エンディング」というテーマ分けがなされ、さらにその中で「〜〜風の力強い曲」だったり、「朝もや、日の出をイメージして」など、具体的な曲説明が付属しており、確かに当時のホームビデオ作家のみなさんに易しいものとなっています。放送業界向けにプロ・ユースとして供給されるいわゆる「ライブラリー」音楽というのがありますが、本商品はその一般家庭向けのものと言えるでしょう。肝心の内容ですが、良い意味でありがちなハード/ライト・フュージョンのラッシュで、その全てがシンセサイザー/打ち込みで作成されています。演奏者のSKY LOVEというグループ名はおそらく実態の無いもので、実際のところはキングレコード学芸部門が懇意にする職業作家が委嘱を受け制作したものだと考えるのが妥当でしょう。2019年基準に照らしわせるならやはりロッキッシュなものよりライト・メロウかつニュー・エイジ風味のものが好ましく、「アーバン・タイプ」「アクティブ・タイプ」「イメージ・タイプ」に良い曲が多いように思います。特に、ビルの谷間の朝焼けのシーンに使用することをレコメンドされている「HORIZON DREAM」、ゆったり流れる大河をイメージさせる効果があるという「黄河の流れ」あたりは秀逸です。後者については私自身も最近のDjでよくプレイしています。

 

次回へ続く…。