CDさん太郎 VOL.20 2019/12/13、16、25 購入盤

 こんにちは。復活後第4弾の「CDさん太郎」です。
 今回は2019年12月12、16、25日にそれぞれ東京・駒場三軒茶屋、神保町で購入したCDを計13枚紹介します。2019年内最後の更新になります。今年もよくCDを買いました。来年もよくCDを買うことでしょう…。


 本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

 

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アーティスト:西村直記
タイトル:漂流 John's Dream
発売年:1991年
レーベル:ポリスター
入手場所:ブックオフ246駒沢店
購入価格:510円
寸評:愛媛県在住の作曲家/シンセスト西村直記によるセカンド・アルバム。バチカンにてローマ法王の御前で演奏を行ったり、広島で平和記念公演を行ったり、世界中を巡礼して演奏活動を行うといったことを繰り広げてきたことが書かれたプロフィールの通り、非常に壮大な交響曲的作風を得意とする方で、ちょっと私の電子音楽趣味からは外れるかなという感じです…。本作は林英哲渡辺香津美といった著名ミュージシャンも参加しており、さすがメジャー製の出来栄えなのですが、それにしてもポリスターがこういうニューエイジを制作販売していたという事実に少し驚きます。本人のシンセや各種打楽器の絡み合いにはオッと思わせる瞬間も少なくなく(特にウードも交えた⑪「オリ・アラギ」は絶妙なエスニック・バレアリックで相当に素晴らしい!)、個人的には、思い切って分厚いストリングスやコーラス隊を全面的に廃してくれたら良かったのになあと思うのでした。ちなみに、西村氏、その後も活発な活動を行っており、環境問題を訴えるアニメ映画『MOTHER 最後の少女イヴ』のサントラに参加したり、また更に後にはおそらく自主制作でかなりの数のCDをリリースしています。私もいくつか所有していますが、かなり直球の俗流アンビエントという感じです。YouTubeに過去作を紹介する日記を兼ねたような動画を毎日アップしています。再生回数はどれも極小ですが、その信念に敬服します。インスタグラムやTwitterアカウントもアクティブです。

 

 

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アーティスト:川村栄二小泉今日子
タイトル:東映/バーニング・プロダクション提携作品『ボクの女に手を出すな』オリジナル・サウンドトラック
発売年:1987年
レーベル:ビクター
入手場所:ブックオフ246駒沢店
購入価格:510円
寸評:1986年12月公開の映画『『ボクの女に手を出すな』(監督:中原俊)のオリジナル・サウンドトラック盤です。LPも同時発売。残念ながら映画は未見なのですが、名匠・中原俊が全盛期のキョンキョンの魅力を切り取った作品としてファンの中では好作とされているもののようです。小泉今日子歌による「木枯しに抱かれて」は彼女の代表曲として今でも人気の高い曲で、1987年の紅白歌合戦には本曲を歌唱しています(詞曲は高見沢俊彦、編曲は井上鑑)。今になってはその歌謡感が若干遠慮したい感じの同曲より、疾走するB面のエレクトロ・ロック・チューン「Blueage Dream」(本サントラにも収録)に肩入れしたくなりますが。さて、このサントラの主役はキョンキョンでなくて、川村栄二です。『小説吉田学校』で劇伴作家としてデビュー以来、東映映画のサントラを手掛けまくってきた彼。その『小説吉田学校』がかなりどんくさい映画だったので、音楽のことは印象に残っていたかったのですが、本作はかなりいいですね。氏得意の主情的なストリングス〜ホーン・アレンジに野暮ったさを拭えないながら、この時代特有のバキバキ・ビートと融合することで(スラップを決めまくるベースが良い)、なんとも言い難い歌謡エレクトロニックな劇伴となっています。⑤、⑧、⑨、⑩あたり、かなり面白いです。一方、生ピアノやストリングス・メインのトラックは、やっぱり聴き飛ばしてしまうという。

 

 

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アーティスト:TiTi松村
タイトル:ふなのような女
発売年:1993年
レーベル:エピック・ソニー
入手場所:ブックオフ246駒沢店
購入価格:290円
寸評:ご存知・ゴンチチチチ松村氏によるソロ・アルバム。アコースティックなイージー・リスニング・ギター・デュオというイメージを超えて内外で再評価高まるゴンチチですが(ニューエイジ系に限らず元々かなりヴァーサイタルな音楽性の方々なので納得)、このソロ作ではギターは引かず、なんとヴォーカルに専念。元々フォーク畑にいた方なので、非常に温かな歌心あるヴォーカルを聴かせてくれます。アレンジはマーク・マーダーが手掛け前編フランス録音。ジャズとライト・クラシックやシャンソンの間をいくようなアレンジがじつに柔和かつシルキーで、ちょっとリンダ・ロンシュタットネルソン・リドルのコラボレーションに近いものも感じさせてくれます。ある時期のムッシュかまやつの作風にも近いか。実に豪奢な世界。ゲスト・ボーカルにはCharaも参加し、華を添えます。90年前後のピチカート・ファイヴなどが好きな方にもおすすめできる、高クオリティ盤。

 

 

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アーティスト:タイガー大越
タイトル:Face to Face
発売年:1989年
レーベル:ビクター
入手場所:ブックオフ246駒沢店
購入価格:290円
寸評:ジャズ・トランペッターにして現バークリー音楽大学教授/昭和音楽大学客員教授のタイガー大越によるサード・アルバム。この時代らしいハードなフュージョンが満載なのですが、タバコのCMソングにもなったというスクリッティ・ポリッティ風の①筆頭に、かなりエレクトロニックなサウンド。いくつかのスタンダード曲も、無理やりエレクトロニックなアレンジが施されており、やや苦笑を誘う。それにくらべると、やはり①はじめオリジナル曲の方が断然良いですね。ジェリー・エトキンス、清水興土方隆行、 東原力哉が参加しており、丁々発止の演奏を繰り広げるあたりはザ・和フュージョン。しかし、エレクトロニック色強めの曲に関しては、タイガー大越氏のメイナード・ファーガソン風の(優等生的)トランペット無しで聴きたいなあという邪念が立ち上がってくるのでした。一時期のマイルス・デイヴィスドン・チェリー、あるいは後述の近藤等則氏などのようなある種のアブストラクトなプレイ/フレーズでないと、そもそもトランペットのサウンドというのはバキバキの電子音になじまないのではないだろうか、という思いが…。

 

 

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アーティスト:V.A.
タイトル:『七人のおたく』 オリジナル・サウンドトラック
発売年:1992年
レーベル:エピック・ソニー
入手場所:ブックオフ246三軒茶屋
購入価格:290円
寸評:水戸芸術館、幻想工房、スパイラルホール、立川国際芸術祭などの環境音楽の作曲、音楽監督を務めてきた山辺義大と、京都市立芸術大学音楽学声楽家卒で、様々な舞台音楽などを手掛けてきた崎久保吉啓による2人が劇伴制作を務めた映画『七人のおたく』のサウンドトラック盤。映画自体へも、ウッチャンナンチャン売出しに伴う軽薄なコメディー、という先入観があったので音楽にも期待していなかったのですが、この時期のサントラとあればとりあえず買うことを日課にしているゆえ、購入。果たしてこれは相当に素晴らしいですね。ほぼ全編シンセサイザーを主体とした楽曲が並ぶのですが、シチュエーションごとにディープなアンビエントやメロウなミディアム・フュージョン、デジタル・ボッサ、マリンバ使いのミニマル・エスノ・フュージョン、トライバルなテクノなどが入り乱れる好内容。いや本当に素晴らしい。あの辛口なCDジャーナルでも、「大ヒット公開中のギャグ・コメディー映画のサントラ、とは思えないほど心地よい響きに満ちたアルバム。南の島で元気なヴァカンス、みたいな気分になれます。マルチなサウンド・クリエイター、山辺義大と崎久保吉啓はきっと真摯な音楽オタクだったのだ!?」と高評価を得ています。バブルガム・ブラザーズ京野ことみのタイアップ曲については特に添える感想はありませんが、杉本理恵の「ときめきアイランド」は絶妙にノーテンキなトレンディー・エスノ歌謡で面白いです。

 

 

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アーティスト:安藤治彦
タイトル:Call it Love
発売年:1991年
レーベル:ポリドール
入手場所:ブックオフ246三軒茶屋
購入価格:290円
寸評:大江千里のバッキング・ヴォーカルなどを務める中でソロ・デビューに至ったシンガー安藤治彦によるセカンド・アルバム。ハスキーな声質が特徴的で、大沢誉志幸や、バービーボーイズKONTAを彷彿とさせます。ということで、あまりライトメロウ向けの声ではないのですが、④が非常にスムースなミディアムAORで、素晴らしいですね。ほかは全体にニュー・ジャック・スウィングとハイエナジーが合体したような世界。「ポストモダンパラダイス」という曲名がすごい⑧も好ましい。実際はポストモダン色(テクノ・ポップ色?)が強いわけでなく、AOR期のシカゴなどに近いスタイル。全体に隠れた佳作、という感じです。

 

 

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アーティスト:FENCE OF DEFENSE
タイトル:S.T.
発売年:1987年
レーベル:エピック・ソニー
入手場所:ブックオフ246三軒茶屋
購入価格:290円
寸評:ベーシスト西村麻聡は初期ビーイングのセッションマンとしてもその筋で著名で、昨今だと亜蘭知子の『浮遊空間』への参加などでも知られる人。これはそんな彼が、日本のエディ・ヴァン・ヘイレンこと北島健二とドラマーの山田わたると結成したロックバンドFENCE OF DEFENSEのデビュー作。基本的にはエアロスミスボン・ジョヴィヴァン・ヘイレン等の正道アメリカン・ハードロックを受け継ぐ作風なのですが、各人の先鋭的なセンスはそれだけにとどまらず、非常にヴァーサイタルなもの。ギャンギャンいうサウンドの中に突如エレクトロニクスが挿入されたり、硬質なファンク・リズムが導入されるさまは、素直にカッコいい(ような気がする。一昔前なら絶対に途中茹で再生を止めていたと思う)。本作で言うと、④⑤あたりが面白い。

 

 

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アーティスト:木谷響羽子
タイトル:ウォーター ブルー
発売年:1998年
レーベル:Xebec Music
入手場所:ブックオフ246三軒茶屋
購入価格:110円
寸評:マリンバ奏者の安倍圭子を母に持つ木谷響羽子は、91年にシングル「遠い星をみつめて」で日本コロムビアよりデビューしたシンガソングライター/マリンバ奏者。後にエンヤの作風に触発され、ニューエイジ音楽と多重録音に身を投じることになる。KYOKO Sound Laboratory、KYOKO、木村恭子木谷響羽子、木谷恭子、木屋響子木村恭子KYOKO Sound Laboratory木村恭子KYOKOと、Vektroidなみに多数の名義を持つ人であり、しかも沢山のシングル、ミニアルバム、アルバムを色々なレーベルから出しまくっており、ディスコグラフィーが非常にややこしいことになっています。これは木谷響羽子名義でリリースした(おそらく)15thシングル(?)で、海洋写真家・水口博也がジャケット写真を提供しているもの。エンヤに触発されたという経歴通りの、歌ものニューエイジが4曲並んでいますが、メロディーや曲構成、アレンジはアンビエントというよりプログレに近いもの。ということで、残念ながら私の趣味ではありませんでした…。

 

 

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アーティスト:木屋響子
タイトル:MIDNIGHT CALLING
発売年:2000年
レーベル:Xebec Music
入手場所:ブックオフ246三軒茶屋
購入価格:110円
寸評:上述の木谷響羽子氏が木屋響子名義でリリースしたミニアルバム。ジャケットやタイトルからしてアーベインなものなのか!?と期待していたのですが、のっけからバキバキのトランシーなダンスビートが飛び出し、面食らいました。ボーカルのローファイなエフェクト処理によって、なんともいえないカラオケ感が漂っていますが…。メロディーはパワー・メタルに近いか。全編あいかわらずエンヤ的なニューエイジ感もたしかに感じるのですが、ダンスビート(という風のいびつな何か)が大幅導入されることで、一層大仰な世界になっている気がします。菅野よう子の作風を彷彿とさせるところがありながらも、溢れ出るアマチュア感によって、なんとも不可思議な宅録シンフォニック音楽になっているように思います。

 

 

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アーティスト:早瀬優香子
タイトル:POLYESTER
発売年:1987年
レーベル:SIXTY RECORDS
入手場所:ディスクユニオン神保町店
購入価格:650円
寸評:『躁鬱 SO・UTSU』を始めとして早瀬優香子がシックスティ・レコードから80年代にリリースした3枚は、昨年タワーレコード発の『Tower to the people』シリーズの一環でリイシューされ入手がたやすくなりましたが、それまではCDもLPも比較的手に入りづらいものでした。再発以降、こうして旧規格盤が安めの値段で手に入るようになったのは嬉しいことです。前2作のフレンチテイストな作風からより一層はっきりとテクノ・ポップ的な意匠を取り入れた本作は、SHI-SHONENの戸田誠司がプロデュース。バックには塚田嗣人(g)、中原信雄(b)、石坪信也(ds)、寺谷誠一(ds)、矢口博康(sax)、福原まり(key)らが参加しています。作曲は戸田誠司小森田実細野晴臣など。内容については予てより名盤と名高いものなので、ここで特に付け加えることもないのですが…素晴らしいですね。先だって刊行された『和レアリック・ディスクガイド』にも掲載されていました。

 

 

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アーティスト:兵藤未来
タイトル:ONE PARADISE -MIKI FIRST-
発売年:2015年(オリジナル:1977年)
レーベル:ユニバーサル(オリジナル:ポリドール)
入手場所:ディスクユニオン神保町店
購入価格:650円
寸評:上述のタワーレコード専売再発シリーズ『Tower to the People』や、同じくタワーレコード専売による音楽ライター・金澤寿和氏が手掛けた『Light Mellow Picks』シリーズは、10年代和モノ再発掘のもっとも重要な仕事の一つだったと思います。現在興隆している(HMVなどが主導する)アナログ・フォーマットでの和モノ再発が若年マーケットも視野に入れた上で展開しているように見える一方、タワーレコード専売のそれらは若干年配層(オリジナル世代)向けのマーケティングがなされていたように感じ、良作を矢継ぎ早に再発していたのにも関わらず、その重要性がネット世代からはあまり顧みられていないような気もしたり…。が、この兵藤未来のリイシューも、なかなかマニアックかつ良心的仕事の例だと思います。LPは結構プレミアがついているので手が出せなかったのですが、こうしてCDで手に入りやすい状況になったことは非常にありがたいですね(このCD、未開封新品がユニオンに流れてきたもののようなのですが、すごく安価で手に入れることが出来て嬉しいような寂しいような)。本作は、森尾由美三田寛子などのアイドルから井上艦まで様々なアーティストへの楽曲提供でも知られる女性シンガーソングライター兵藤未来のファースト・アルバムで、ライトメロウ的隠れ名盤といわれてきたもの。深町栄率いる「GAME」を中心としたミュージシャンがバッキングをつとめており、非常に高クオリティの(シティ・ポップというには若干ファンキー度高めな)和モノ・レアグルーヴ作となっています。ジャケットはプラスチックス始動直後の立花ハジメ中西俊夫が手掛けているのですが、素晴らしいですね(このプレ・ニュー・ウェイブ感)。

 

 

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アーティスト:近藤等則&チベタン・ブルー・エアー・リキッド・バンド
タイトル:空中浮遊
発売年:1990年(オリジナル:1983年)
レーベル:アート・ユニオン(オリジナル:トリオ)
入手場所:ディスクユニオン神保町店
購入価格:580円
寸評:近藤等則のトリオからのメジャー・デビュー作を、後にアート・ユニオンがCD再発したもの。今まで何度も再発を重ねられてきた名作ですが、上記早瀬優香子と同じく、こうして旧規格盤CDの中古品が安価で手に入れられるのは素直に嬉しく。フリー・ジャズの伝統を受け継ぎつつも、当時のポスト・パンク以降のクールかつポップなファンク・サウンドを取り入れたような内容、今聴くとかなりしっくり来るように思います。ロドニー・ドラマー(b)、セシル・モンロー(Dr)、豊住芳三郎(per)に加え、渡辺香津美(g)が大フィーチャーされており、各人のプレイヤビリティの高さも存分に味わえる内容。特に渡辺香津美はいつもの流麗なプレイ・スタイルをあえて崩し、アート・リンゼイジェイムス・ブラッド・ウルマー以降の感性を取り入れたエッジーな演奏を聴かせてくれるのですが、実にカッコいい。それと、本作もジャケットがめちゃくちゃいいですよね。「あの頃のポストモダン」だわー。

 

 

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アーティスト:鮎川麻弥
タイトル:FACE
発売年:1986年
レーベル:キング
入手場所:ディスクユニオン神保町店
購入価格:520円
寸評:『重戦機エルガイム』後期オープニング「風のノー・リプライ」『機動戦士Ζガンダム』前期オープニング「Ζ・刻をこえて」等サンライズ製アニメ主題歌などで有名なシンガソングライター/歌手による4thアルバム。全て彼女自身の作詞による作品で、ファンの中でも人気の高いもの。LP、CDともにあまり史上で見かけないアルバムですが、プレ・ガールポップ的な(いい意味での)中庸さに貫かれています。作曲陣は本人のほか斉藤英夫土橋安騎夫小林明子岡崎律子村松邦男など、かなり職人的な人たちを揃えています。個人的には船山基紀が編曲を手掛けたデジタル・ストリート・ロック⑧が好ましい。ほか曲も全体的にロック調〜バラードが多く、それらはあまり私自身の趣味に合致するものではありません…。

 

 

それでは皆さん良いお年を…。