CDさん太郎 VOL.21 2019/12/30、31購入盤
本年も宜しくお願い致します。
まず告知です。私も末席に加えていただいている、CDエラのシティポップを掘りまくるディガーサークル「lightmellowbu」による本、『オブスキュア・シティポップ・ディスクガイド』が来る1/17に刊行されることになりました。僭越ながら私が全体の編集を務め、各コラムや冒頭文書、そしてもちろん一部レビュー執筆にも参加しております。
これまでのbu紙(ZINE)やブログ掲載レビューを再構成の上収録しているのをはじめ、多数の書き下ろしを交えた合計512枚のCDについてのテキストが一堂に会する様は、まさに圧巻。「集大成」というよりはあくまで濃密な「現状報告」といいたいその内容は、初心者はもちろん、ライトメロウ〜シティポップを熱心に掘ってきた方々にとっても大変な驚きに満ちたものになっているかと思います。一言でいうと、奇書。
また、単なるオブスキュアなCDの羅列にならぬよう、編年形式を採用し1986年から2006年にかけての音楽シーンにおいて「シティポップ的なるもの」がどのように盛衰/定着/拡散していったのかを追体験してもらえるような作りを意識しました。一般的には「シティポップが終わった時代」とされるこの時代に隠された様々な(ときにいびつな)果実の数々の存在を今2020年において振り返ってみること。シティポップ・ブームの向こう側へと手をのばさんとする、単なるノスタルジーをはねつける刺激的/示唆的な本になったと自負しております。全編に渡り、この『CDさん太郎』と強く共振する意識も横溢しているようにも感じ、今、先鋭的なリスナーにとって、ますますCDの光と影が亡霊のように取り憑きつつあるということを鮮やかに提示している書でもあると考えています。是非お手に取ってみてください。
書籍詳細はこちらから:
さて、今回は2019年12/30と31に千葉県西部にて購入したCDを紹介しようと思うのですが…。妻の実家に帰省する工程にくっつけてブックオフ/ハードオフ各店を周遊したのですが、師走ハイも入り混じり、近年まれに見る購入数となってしまいました…。というか、単純に各店在庫の充実ぶりがすごく、興奮のうちに破茶滅茶に買ってしまったのでした(合計39枚)。ですので、2回に分けて更新させていただきます…。今回はその前半回で、30日に全てブックオフSUPER BAZAAER東千葉祐光店で購入した19枚を紹介します。
本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。
アーティスト:石川よしひろ
タイトル:CHAPTER 002
発売年:1995年
レーベル:パイオニアLDC
購入価格:290円
寸評:渡辺美里や藤井フミヤへの楽曲提供経験もあるシンガー・ソングライター石川よしひろによる(タイトルが紛らわしいが)7thアルバム。90年デビューということを考えるとすごいペースですね。熱心なラジオ・リスナーの方であれば「オールナイトニッポン」のパーソナリティを務めていたことや伊集院光と交流が深いことでもご存知かもしれません。この人のCDは今までもブックオフで見かけることがあったのですが、ロック寄りなルックスや帯の惹句に気圧されて購入を躊躇していたのでした。が、(時折そういう店舗がありますが)ブックオフSUPER BAZAAER東千葉祐光店はセールコーナーのCDにOP袋を被せず陳列しているためにブックレットの中身も確認可能。このCDについてもクレジット部を参照してみると、Dr.ストレンジラブなどのロック人脈のミュージシャンに混じって編曲に井上鑑の名が。ジャケットもそれ風だし、これはライトメロウ的可能性がなくはないのでは?ということで購入。はたして…恐れていたとおりの(歌謡的)ストリート・ロック盤でした。つらい気持ちで聴き進めていくと、ただ一曲だけ、井上鑑編曲の⑦だけはかなり良い!やや「ナイト・イン・ニューヨーク」を思わせるイントロから軽やかなAORサウンドに流れ込んでいきます。これぞまさにアレンジの妙ですね。
アーティスト:上田知華
タイトル:I WILL
発売年:1991年
レーベル:ビクター
購入価格:290円
寸評:84年リリースの『Classiest』以来久々となる上田知華による歌ものオリジナル・ソロ・アルバム。KARYOBIN時代のワークス含め常に高クオリティな作品を連発してきた彼女ですが、この作品は全編海外プロダクションとなっており、その参加面子の豪華なことがなにより注目すべきトピックでしょう。全編をデヴィッド・キャンベルがアレンジを担当し、ウィルトン・フェルダー、マイケル・ポーカロ、カルロス・ヴェガ、マイケル・ランドウ、ディーン・パークス、デヴィッド・T・ウォーカー、ジェイ・ワインディング、レニー・カストロ、アーニー・フィールズ等…という超豪華メンバー。ザ・バブル。上田自身による作詞作曲のある意味中庸な魅力とハイクオリティなアレンジ/演奏が入り混じり、さすが本場ミュージシャン参加というべき「派手すぎず地味すぎない」盤石のプロダクション。生演奏の魅力を前景に据えることで、ポップスにおける「中道を行く」ことの力強さがよりいっそう表出しているように思います。これといってどの曲が良いとかないんですが…それが好ましさに転換することが幸せ。次作『朝昼夜晴れ』も同様のプロダクションによる佳作となっています。
アーティスト:小久保隆
タイトル:DHC SOUND COLLECTION 小久保隆の癒やしの音楽 水
発売年:2008年
レーベル:DHC
購入価格:290円
寸評:以前に本『CDさん太郎』のVol.5でも「森」編をとりあげた小久保隆によるDHCオリジナル非売品俗流アンビエントCDの、「水」編。相変わらずの素晴らしい内容で、やはりこの人はちょっと別格だなあという気持ち。個人的な好みでいうと90年代までのイオン・シリーズにおけるクリスタルかつアブストラクトな作風に入れ込んでいるので、2000年代後期作の一連シリーズは「あの時代のデジタル・シンセサイザーのマジック」が薄まってしまっている気がしてしまうのですが、そもそもの楽曲の良さとアレンジにおける奥ゆかしさ/趣味の良さは健在。水滴る音をバックグラウンドに繰り広げられるメロディックな俗流アンビエント世界は、ある種フォーキーとすらいえる魅力を湛えています。一般的な作家がお手軽にピアニックな主情的表現に 流れがちなところ、アコースティック・ギターの清涼感あふれるたゆたいに楽曲自体のムード支配を委ねているのも素晴らしいセンスです。
アーティスト:SATOKO
タイトル:BECAUSE I LOVE YOU
発売年:1991年
レーベル:キング
入手場所:ブックオフSUPER BAZAAER東千葉祐光店(※以下全て同店につき略)
購入価格:510円
寸評:テレビアニメ『天空戦記シュラト』主題歌「SHINING SOUL」の歌唱で主に知られる歌手・清水咲斗子(SATOKO)によるサード・アルバム。表題曲が前年にリリースされたスティービー・Bによるヒット曲のカヴァーであることにみられるように、折に触れて洋楽風キャラクターで売り出されていたフシが見受けられる人。(アニソン・ファン的にそれってどう映っただろうか)。それ故にか本盤でもSATOKOという英表記のアーティスト名になっています。他、レニー & ザ・リー・キングスのヒットで知られるビート曲「STOP THE MUSIC」(渋い!)をチープなマハラジャ・ディスコ・アレンジで取り上げるという謎いセンスも面白いですね。全編にわたってジャケットの通りムーディーかつアダルトなブラコン歌謡といった雰囲気で、シティポップ的躍動感はそこまで観察できないものの、捨て置くにはいかない妙なる魅惑が漂っているように思います。特に、全編に編曲を施す勝又隆一が作曲も担当した④あたりはかなり好ましいと感じます。一曲だけでもメジャー・キーのアップ曲があればもっと好印象なのですが。
アーティスト:清水綾子
タイトル:JUNE BRIDE
発売年:1990年
レーベル:ビクター
購入価格:290円
寸評:88年に荒木とよひさ作詞、堀内孝雄作曲の「旅愁人~たびびと」でデビューしたシンガー清水綾子のセカンド・アルバム。1stは湯川れい子プロデュースでしたが、ここでは前述の荒木や服部克久がプロダクションに加わっています。編曲に新川博や佐藤凖などライトメロウ者が関わっているので好内容を期待をしたのですが、全編これぞ(前時代型の)ニューミュージックというべき中庸な歌謡曲感が漂っており、なかなかに厳しい内容…。それもそのはずというか、ほとんどの曲を鹿文太郎ことやしきたかじんんが作曲を務めているのでした。そう言われてみると、そのままたかじんの歌唱に脳内で置き換えてしっくりくる湿性の主情的バラードばかり。さようなら…。
アーティスト:Jupiter Project
タイトル:VINTAGE WORKS
発売年:1993年
レーベル:東芝EMI
購入価格:290円
寸評:ラジオDJ/評論家の鈴木しょう治が監修、モンチ田中こと田中正彦がサウンド・プロデュースを務めた日本国内制作ソウル〜R&Bカヴァー集。若きマーク・パンサーがドナルド・フェイゲン『ナイトフライ』のジャケットに扮しているアートワークだけで合格!という感じですが、中身もなかなかに充実しています。後述の難波正司作品にも登場しているメロディー・セクストンやケイレブ・ジョーンズがここにも参加し、日本国内制作の本場出身シンガー歌唱R&Bというニッチなジャンルの人的寡占状況に思いを馳せさせてくれます。サウンド的ににも同時代のR&Bやハウスをうまく取り入れており、ようやく一回転して聴けるようになった音楽、という感じでしょうか(まだギリギリNG?)。そこはかとなき「当時のFM」っぽさ。いつかの夜、どこかのステーションのなにかの番組をぼんやりときいている、そんな気分になります。音像も妙にくぐもっており、余計にそんな気分を駆り立てます。
アーティスト:杉本竜一
タイトル:NHKスペシャル・オリジナル・サウンド・トラック集 北極圏Ⅱ
発売年:1989年
レーベル:ポリドール
購入価格:510円
寸評:後に同じくNHKの『生きもの地球紀行』の音楽を担当し、その中の楽曲「BELIEVE」が学校教育現場における卒業式時の合唱曲としても定着することになった作曲家・杉本竜一。このNHKスペシャル『北極圏』のサントラでは、よりシンセサイザー音楽寄りの内容となっており、おそらく現在の視点ではこちらの方が好ましく聴けるかと思います。ペレストロイカ期のソ連北部の北極圏を探索する全12回シリーズとあって、壮大な大自然を描かんとする剛健な楽想にまぎれて、偶然にもバレアリックな瞬間がいくつも散りばめられているのでした。番組の舞台が北方ということもあり、いわゆるエスノ〜トロピカル的色彩はまったくなく、厳しい寒さを演出するようなクールなシンセサイザー・サウンドが実に素晴らしいです。マイナー・キー楽曲が目立つところは、ドイツのシンセサイザー音楽、あるいはソ連のレーベル<メロディア>の80年代作品との連関も感じさせるといったら言い過ぎでしょうか。特にフュージョン的とすらいえる⑤では途中バラライカ的フレーズが現れるなど、地域性への目配せもされています。⑥はかなり明確にミュンヘン・ディスコを狙っている節があり、杉本竜一の作家イメージがいい意味で覆されます。これは名盤と言っていいのではないでしょうか。なかなか見かけない作品ゆえ、今回は続編のⅡから購入することになってしまいましたが、いつかⅠも手に入れたいと思います。
アーティスト:SM-ART
タイトル:夢想美術館
発売年:1993年
レーベル:東芝EMI
購入価格:290円
寸評:作曲、アレンジ、キーボード担当のsuzukiと、ヴォーカル担当のsachiからなる女性二人組ユニット「スマート」のデビュー・ミニ・アルバム。suzuki(鈴木貴子)は元々ソロ活動をしており、89年に行われたヤマハ・EOSシリーズを使用しての楽曲コンテスト「YAMAHA BIG EOS DAY '89」でグランプリを受賞するなど、シンセサイザープ・ログラミングにも長けた人です。92年のソロ・デビュー・アルバムでは小室哲哉も関わっているようです。このスマートも実質suzukiのプロジェクトユニットといって良さそうで、ほぼ全ての音が鈴木による打ち込みサウンドとなっています。音楽性としてはTMNからの強い影響を感じる硬質なテクノ・ファンクといった様相。sachiのヴォーカルも聴きものですが、アイデアフルなトラックの魅力を味わうにはやはりインスト曲が面白いように感じます。出色は④の「深海魚」。イントロが流れ出した瞬間、2020年のiPhoneユーザーならだれしも入電を疑うであろう、iPhoneの着信音に酷似したミニマルなマリンバが主導するドラマティック・テクノ。
アーティスト:難波正司 and PACINI SOUND FACTORY Vol.2
タイトル:Pavlov's Dream
発売年:1991年
レーベル:ソニー
購入価格:290円
寸評:桑名正博&ティアードロップスのキーボードでもあり、アラゴンやTスクエアにも参加した難波正司によるソロ名義作品…なのだが、これが妙なコンセプトを掲げた珍作なのでした。男性の亀頭や女性のクリトリスに密集しているパニチ小体という性感帯にもっとも刺激を与えるという帯域(=200Hz)を強調したオリジナル楽曲集と謳われています。要は媚薬的効果が期待できるアルバムということなのですが、その音楽内容は極めてまっとうな和フュージョン〜ポップ・ソウル。たしかに低音域にブーミーな処理が施されているようにも思いますが、あくまで音楽優先でアレンジされているのがいいですね。難波正司のオリジナル曲も聴きものですが、カヴァー曲も「恋のバカンス」「マシュ・ケ・ナダ」「ユー・アー・オンリー・ロンリー」など粒揃いです。演奏陣も松原正樹、今剛、美久月千晴、ジェイク・H・コンセプションなど、非常に豪華。ボーカル陣もメロディー・セクストン、新倉よしみ、スージー・キム、ケイレブ・ジェームス、織田純一郎といった実力派が揃っています。ライナーノーツには女性にモテるためのデート・テクニックや話題について書かれたエッセイも掲載。ジャケットもカッコいい。カーステレオでの再生も推奨されているようですが、一見オシャレなジャケットをまとわせデート相手に本当の効能を悟らせない、という魂胆なのでしょうか。これもVol.2の方を先に見つけてしまったので、ゆくゆくは1や他作も手に入れたいところです(全4集に渡るシリーズらしい)。
アーティスト:松田昌
タイトル:オーロラに乗って
発売年:1995年
レーベル:ポニーキャニオン
購入価格:290円
寸評:大野雄二と組んだ79年作『Silent Dialogue』などが予てより中古レコード市場でも人気のエレクトーン/シンセサイザー/ピアノ奏者・松田昌。これは90年代に入りよりニューエイジ的な作風に接近した時期のCDで、オーロラ写真家・門脇久芳のミニ写真集(という体のブックレット)が付属した企画盤です。ソフト・タッチなピアノ・インストは置くとして、やはりここでの聴きものはエレクトーンやシンセをフィーチャーした曲たち。元々ポップスの素養がある人(ビージーズのカヴァー集などというのもあった)だけに、アンビエントというにはやや快活な作風。ときにプログレッシブな構成を聴かせる曲などもあり、若干フォーカスがボケている感も。とくにストリングスが大幅導入されている大仰な曲は遠慮したい…その中にあって、⑥のミディアム・フュージョンは出色です。エアリーなシンセのサウンドをさらまろやかに包み込む多重シンセ・アンサンブル。あの三原善隆による極上作『ナイト・ライダー』へも一脈通じる曲ですね。「サイバー・ワルツ」とでもいいたい⑧もかなり良いです。ちなみに、本作へシンセサイザー・プログラミングで参加している著名エンジニア北城浩志は、私が音楽業界に入って一等最初にお仕事をともにさせていただいたエンジニアさんでもあります。その素晴らしいお仕事ぶりは本作でも十分に味わうことが出来ます。
アーティスト:Midori Takahashi
タイトル:プラス思考 〜マインド・コントロール・サウンド〜
発売年:1997年
レーベル:Della
購入価格:290円
寸評:おなじみDellaによる、サブリミナル効果を謳った「マインド・コントロール・サウンド」シリーズの中においてもひときわ有名(というか目撃頻度の高い)作品であろう本作。このいかにもA E S T H E T I Cなジャケットもあいまって、俗流アンビエント諸作の中でも人気の高い一作でもあるようなのですが、却ってその目撃頻度ゆえ「いつでも買えるしな」などとたかをくくってきた私、実はこの日まで未所持だったのでした。音楽的には相当に俗的なピアノ・イージーリスニング〜ポップ・インストゥルメンタルという感じで、個人的な好みからいうと結構ツライものが…。が、④はかなり良いと思いました。ミニマルなピアノ・フレーズの上に品のいいシンセ音がゆらいでいくトラック。途中からソプラノ・サックス(のプリセット音)が挿入されてくる構成も素晴らしい。ちょっとポール・ウィンターの作品にも近いかなと。しかしこの音楽を手掛けたMidori Takahasiという人物がどんな方なのか、ネットにあたってもほぼ情報がなくよくわかりません。かなりニューエイジに傾倒している風の同名のTwitterアカウントの存在を確認しましたが、同一人物なのでしょうか。
アーティスト:米田健一
タイトル:空が好きだった君に
発売年:1995年
レーベル:GENTLE HRARTS
購入価格:290円
寸評:東京芸術大学音楽学部作曲科出身のシンガソングライター/ピアニストによるファースト・アルバム。90年には名プログレ・バンドKENSOに加入する人ですが、一般的にはスターダスト・レビューのサポート・メンバー(後に正式メンバー)やラグフェアーのプロデューサーとして知られているかと思います。すごく多作な人なので、店頭で見かけてもどれがなんだかよくわからず(キャリア情報から漂うとらえどころのなさもあって)これまで購入を躊躇していたのですが、あまり見かけないファースト・アルバムを発見し、購入。一曲くらいスタレビに通じるようなシティポップが入っていたらいいなあくらいの期待感だったのですが、そのバタ臭いジャケット通りのハードコアなMORが連発する内容。まあそうですよね、と…。しかし、⑤はシティポップといえなくもないような曲で好ましいですね。ニュー・ジャック・スウィングのイディオムを取り入れつつ、それを最大限薄めたようなリズム構成が面白いです。元来きれいなハイトーン・ボイスを持つ人なので、こういうメロウな作風はかなりハマっていると思います。それだけに、他に同傾向の曲がないのが残念。⑥もリズムアレンジにもう少しこだわってくれればJ.D.サウザー的なAORチューンになりえたような、惜しい出来栄え。珍しくシンセを駆使したマイナー・キー曲⑦が、井上陽水をバレアリック視点で再評価線とする昨今の風潮にすこしだけリンクするかもしれないですね。
アーティスト:THE RHYTHM KINGS
タイトル:DRAGON COCKTAIL
発売年:1996年
レーベル:パイオニアLDC
購入価格:290円
寸評:米米CLUBのパーカッショニストMATAROが中心となって結成されたラテン・ファンク・プロジェクトの唯一作。昨今、80年代を通じてシティ・ポップ文化の一部に強大な影響を与えていたことが考証され、にわかに再注目を浴びるエルボウ・ボーンズ&ザ・ラケッティアーズとその代表曲「ナイト・イン・ニューヨーク」。が、これほどまでにリスペクトと自覚的なオマージュをそれへ捧げたユニットは稀で、実際MATAROはオーガスト・ダーネルを崇拝し、メンバーにもそれ風の衣裳を着させたりしています。また、実際に「ナイト・イン・ニューヨーク」の気合の入ったカバーも収められており、崇拝ぶりが見て取れます(そのあたりを見誤るとこのギャングスタ風のジャケットの意味が理解できないかもしれない。今思うと、米米CLUB本隊も音楽性/ルックスふくめ相当キッド・クレオール&ココナッツぽいわけですが)。さて、その内容はこれ全編傾聴に値する素晴らしいクオリティのラテン・ファンク〜ソウルのオンパレードで。ずばり名作といえるんじゃないかと思います。数曲あるラガマフィン曲も「時代」ですね。主にヴォーカルを務めるのはCHIERI(伊藤智恵理)と、同じく米米CLUB人脈からシュークリームシュのMariが参加しています。また、注目すべきがONE STEP Communicateの三人がコーラス参加し、一部曲でリードを取ったりしているところでしょう。また、バッキングのメンツも松原正樹、有賀哲雄など、豪華です。
アーティスト:ワンダフルフィッシュ with デヤケン
タイトル:海辺のわが家
発売年:2001年
レーベル:ニューセンチュリーレコード
購入価格:290円
寸評:千葉県南房総各ビーチの観光振興キャンペーン「ワンダフル・ビーチ」のために結成された中学生から社会人まで幅広い年齢で構成されたご当地アイドルグループによるシングルで、タイトル曲はそのキャンペーンのテーマソングに抜擢されていた由。ベタなバラード調のタイトル曲、当時のアイドル・ポップスの流行りを安易に取り入れたようなc/wとも相当キツイ(歌唱も素人のカラオケ感満天)内容で再び聴くことはないでしょう…。両曲とも作詞に康珍化を迎えており、無駄に贅沢。ワンダフルフィッシュに寄り添う男性ボーカルはデヤケンこと出山謙一によるもの。あのX JAPANのToshlの実兄で、音楽業界で働いた後35歳の時に地元の館山に戻るも、06年からはベトナムのホーチミンでカラオケ店経営をしているらしいです。
アーティスト:V.A.
タイトル:アイドル防衛隊 ハミングバード'94夏 ☆トラ・トラ・トラ
発売年:1994年
レーベル:東芝EMI
購入価格:290円
寸評:アイドル+自衛隊という組み合わせをOVA界に提示し、『艦隊これくしょん -艦これ-』や『ガールズ&パンツァー』などに先鞭をつけたというべきアニメ『アイドル防衛隊ハミングバード』のサントラ第二弾。主演声優のヴォーカル曲やBGMにカラオケ版を加えたものですが、さすがにこの設定のアニメにライトメロウ的なものを求めるには無理があったか…全体にタイトル通りスポーティーかつ体育会系の内容でした(ハードロック系が多い)。ただ、工藤崇作、宮城純子編曲の③だけは割に良質なアイドル・テクノ・ポップでした。しかし、自衛隊をテーマにした作品のサブタイトルに「トラ・トラ・トラ」って、いいんでしょうか…。
アーティスト:V.A.
タイトル:アルファ波分析による 胎児と妊婦のバイオミュージック
発売年:1990年
レーベル:ソニー
購入価格:290円
寸評:88年からソニーが展開していた『アルファ波分析によるバイオミュージック』シリーズ中の一作。全作、筑波大学講師でバイオミュージック研究所所長の貫行子氏が監修を手掛けています。同一アーティストでなく、何人かの作家作品をコンパイルしているところが同シリーズの特徴なのですが、現代音楽〜アンビエント・ファンとして見逃せない人が参加していることがあるので油断がなりません。同作にも(他作品と同じく)名盤『カオス・ゾーン』で一部マニアに有名な森本浩正氏が2曲提供しており、注目に値します(逆に言うと、他のライトクラシック系の作家作品はなかなかツライので、スルー)。平素相当に先鋭的な作風の森本氏ですが、ここでは本CDのテーマとして謳われている効能に寄せてきたのか、かなり保守的な楽曲を提供しています。マタニティ・ブルーを解消するという曲②は、ちょっと聴き通すのがしんどかったです…。それでも、楽しいクッキングを謳う③は氏の尖ったセンスを少しだけ垣間見せてくれるミニマルなシンセ曲。しかし、こんな空疎な曲想で楽しいクッキングなどできるのだろうか…。ときおり和気藹々としたフレーズを混ぜ込もうとするプロ意識も感じますが、かえって寒々しい空気を招来しているような気がします。
アーティスト:V.A.
タイトル:アンジェリーク 永遠のヴァカンス Vol.1 〜La Mer〜
発売年:2000年
レーベル:コーエー
購入価格:290円
寸評:コーエー発の女性向け恋愛シミュレーションゲーム『アンジェリーク』に登場する男性キャラクターのソロ・ボーカル集。このシリーズはどれから手を付けていいか迷ってしまうほどに多数の関連作がリリースされているのですが、かつてlightmellowbu部長のハタさんが本作をライトメロウ的隠れ名作としてZINEにレビューを寄せているのを見て以来気になっていたものです。のっけからいきなりミディアム・ブギーな①が流れ出て、なるほど!という気持ち。これは確かに良いですね。ナレーション曲は飛ばすとして、ミディアムR&B④や⑮、エロチックなボッサ⑨もなかなか。出色は⑦。チープなシンセ・ホーンが気持ちのよいグルーヴィーなアップ・ナンバー。全体に歌唱力に難のある声優さんも降り混じっていますが、そこを稀なる味わいと取れるかどうかが今後のディグにおける分水嶺になってきそうだな、と。
アーティスト:V.A.
タイトル:折原みと ティーンズハート・コレクション
発売年:1990年
レーベル:日本コロムビア
購入価格:290円
寸評:講談社X文庫ティーンズハートから刊行された一連の折原みと作ラノベのイメージアルバム。これはその第一弾作品です。全編の演奏をNONSECTというバンドが務め、川村万梨阿や亀卦川真浩、そして折原みと自身が代わる代わる歌唱するという構成になっています。NONSECTは後にB'zのサポートキーボードを務める広本葉子や、ELLEGARDENへ楽曲を提供することになるギタリストのホリエアキラらが在籍したバンドで、そういった情報から察されるように、かなりロック志向の音楽性を持っています。ですので、ここでの演奏も基本的にロッキッシュ。おもしろいのは川村万梨阿が歌う②「君だけのブルー」と⑧「Memories」で、曲調さえ違えどそれぞれモロにブルーハーツ「青空」と松田聖子「SWEET MEMORIES」を大胆オマージュ(パクリ?)しています。ちなみに、②のいななくようなサックス・ソロはEiji Tokiとクレジットされていますが、これはおそらく誤字で、土岐英史(ときひでふみ)のことではないかなと思います。おもいきりクラレンス・クレモンズ風のソロで爽快。が、隠れたニューエイジやライトメロウを求めて本作を買った身からすると、やはり全編ロック色が強すぎてなかなかツライものがあります…。
アーティスト:V.A.
タイトル:ふしぎ遊戯 オリジナル・サウンドトラック
発売年:1995年
レーベル:アポロン
購入価格:290円
寸評:95年4月からテレビ東京で放映されていた人気アニメのサウンドトラック盤。佐藤朱美と今野友加里による主題歌もミレニアル世代の郷愁を誘うかもしれませんが、聴きものは本間勇輔によるスコアの方。早稲田大学の音楽サークル「ナレオ」出身の氏は、『ポンキッキーズ』や『古畑任三郎』のテーマなどで知られる職業作曲家で、スタジオぴえろ系のアニメ音楽を多数手がけたことでも知られています。時空と世界を旅する魔術系アニメという設定にふさわしく、時にオリエンタルに、時にプログレッシブに、時にシリアスにころころと表情を帰る劇伴は、まさしくプロの仕事…という感じ。非常に面白く聞けます。時代柄、ハウスやトランス的な要素が垣間見えるとことも興味深いですね。それにしても全体に異様に高音質なCDで、CDジャーナルからも「さらにBGMの不思議なな立体感には,TV東京系とは思えぬ「やる気」が光っていて感心しました。CDとしてのマスタリングのレベルも高いので,エンジニア志望者も聴くべし。」と賛辞を送られています。
後半へ続く…。