CDさん太郎 VOL.24 2020/1/7〜14購入盤

 こんばんは。今回は、2020年1月7日から14にかけて東京・新宿と吉祥寺で購入したCD計13枚を紹介します。
 本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

 

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アーティスト:荒木和作&やまだあきら
タイトル:和作
発売年:2000年(オリジナル:1974年)
レーベル:スカイステーション(オリジナル:トリオ)
購入価格:650円
購入場所:ディスクユニオン新宿中古センター
寸評:ミッキー・カーチスがプロデュースを担当したフォーク系デュオの唯一作(トリオ)を、後年スカイステーションが紙ジャケCD化したもの。喫茶ロック・ブームなどを経て元々数のなかったアナログ盤が高騰して久しいこともあり、長いことCDを購入したかった作品なのですが、この度帯なし安価で購入しました。ミッキー・カーチス制作のフォーク系というとガロなどを思い起こさせるわけですが、まさしくそういった風情を感じさせます。しかしながら彼らの素晴らしいところは、なによりもその洗練されたメロディーにあるかと思います。エミット・ローズやトッド・ラングレンアメリカ、パイロットなどを彷彿とさせるビートルズ(というかポール・マッカトニー)直系の作風で、そのあたりの音楽が無条件的に好きな私にとってはたまらないものがあります。ガロよりもおしゃれ、チューリップよりも控えめ、みたいな感じでしょうか。この作品、例の『レコード・コレクターズ』のシティポップ特集号でもルーツ・オブ・シティポップ的な感じで紹介されていましたが、一部曲でのメジャー7thコードの効果的使用など、たしかにそういう風に捉えることも可能かと思います(もちろん、後年のシティポップにくらべるとアレンジからなにから大分地味ですが……)。

 

 

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アーティスト:浅井ひとみ
タイトル:Dear Friends
発売年:1993年
レーベル:アポロン
購入価格:200円
購入場所:ブックオフ新宿西口店
寸評:CHAGE率いるMULTI MAXにも参加していた女性ボーカリスト浅井ひとみによる、1stアルバムに続くミニ・アルバム。ファーストではラテン・フュージョン的なテイストのナイス・ヴォーカル作(私は未聴)らしいということを見知っていたので、この作品もそういった路線なのかなと思わせますが、さにあらず、実直なウェスト・コースト・ロック風。実際にイーグルスの「デスペラード」のカヴァー入り。バラード系が多くてちょっと私の趣味からは外れる感じなのですが、難波正司、瀬尾一三山川恵津子といった編曲家が堅実な仕事をしており、なかなか聴かせる内容ではあるかと思います。なんだろう…カーラ・ボノフとかのアルバムを聴いているときに近い感覚というか…。歌も非常に上手い。クローザーはベット・ミドラー「ザ・ローズ」の、これま実に実直なカヴァー。一曲くらいキラーなアップ曲が入っていてほしかったなという感想。

 

 

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アーティスト:伊藤公朗&美郷
タイトル:ヤトリ
発売年:2000年
レーベル:ANJALI
購入価格:200円
購入場所:ブックオフ新宿西口店
寸評:1977年にガンジス河源流のヒンズー教聖地バドリーナートにて聖者ナーダヨギに弟子入りし、そこからシタールによる北インド伝統音楽の徒として現地で修行、85年の帰国後からは長野県松本市を拠点に演奏活動を広げる音楽家、伊藤公朗。これはそんな彼がパートナーの歌手・美郷氏(この方も70年代なかばから世界を巡遊する生活をしていたという)と共に制作したファースト作です。シタール音楽は巨大なジャンルであるゆえ、おいそれといっちょ噛みできない深大さがあるわけですが、このCDはあの著名ジャズ・トランペッター近藤等則氏の名前がクレジットされており、これは!と思い購入。果たして、相当に良質な内容でした。タブラや二胡チベタン・ベル、ウードなどによるアコースティックな編成の曲もとても良いのですが、やはり特筆すべきが①や④といった、近藤等則のエレクトリック・トランペットとシンベが絡んでくる曲。よくあるニューエイジの陶酔的/耽美的な様相を超えて、ドープ極まりない世界が作り出されています。ヴォーカリストとしての美郷氏も素晴らしく、過度な抹香臭さを避け、透徹した印象の歌声を聴かせてくれます。ジャケットもちょうどいいスピリチュアルさですね。

 

 

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アーティスト:横澤和也
タイトル:音霊のむすび
発売年:1992年
レーベル:Infini,e
購入価格:200円
入手場所:ブックオフ新宿西口店
寸評:大阪芸術大学演奏学科フルート専攻出身の横澤和也による独奏CD。というのは購入してCDを再生してから気づいたことで、普段石笛なども能くする氏とのことなので、様々な笛の音色が入り交じる多重録音作かと早とちりしていました…。実際はこれフルート一直線のコアな内容。ブックレットに宮下富美夫氏のコメントが寄せられているのですが、その通りかなりヒーリング・ミュージック的な作りで、独奏といえどもクラシカルなテクニックを披露するわけでもなく、フレーズとしてはむしろ尺八や石笛の演奏のような和テイストに貫かれています。相当にストイックな内容ゆえ、あまり繰り返し聴く気持ちにはならないのですが…。ハード・ニューエイジですね。

 

 

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アーティスト:渡辺慎
タイトル:Voices to your heart
発売年:1990年
レーベル:バップ
購入価格:200円
入手場所:ブックオフ新宿西口店
寸評:『オブスキュア・シティポップ・ディスクガイド』掲載作です。80年代半ばから鈴木聖美森川美穂などに楽曲提供活動をしていたシンガー・ソングライター渡辺慎平によるデビューアルバム。シティポップ界には山下達郎角松敏生など、構築的なスタジオワークに没頭するタイプのクリエイターが少なくないわけですが、彼もそんな系譜に置くことのできる存在でしょう。作曲/アレンジはもちろん、すべての楽音を打ち込み制作するという念の入れようで、まさしく今2020年に聴きたい感じの楽曲がパンパンにつまった名作といえるかと思います。キラーは①と②でしょうか。アルバム後半に進む従い、思い切り山下達郎マナーのミディアム〜メロウがつづき、それらも素晴らしいです。メロディー・メイカーとしてもなかなかの才気で、このセンスの持ち主が(おそらく既にこういうシティポップ的意匠自体が時代遅れになりつつあったこともあいまって)数作で表舞台から消えてしまったのはかなり残念に思います。現在のDAW環境において彼がどんな曲をつくるのか想像するのも楽しいところ。

 

 

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アーティスト:Edison Band
タイトル:B・G・M〜効果音楽全集〜
発売年:1991年
レーベル:ビクター
購入価格:510円
入手場所:ブックオフ新宿西口店
寸評:本ブログで幾度か登場した『効果音』ならぬ『効果音楽』集。要はホーム・ビデオやアマチュア劇等の劇伴音楽としての使用を企図して販売されたもので、海外でいう音効プロ向けの「ライブラリー」系音源の一般普及版的な立ち位置の音楽です。ご想像の通り、はなから批評的視座をもって鑑賞するという想定から外れた音楽なわけですが、かつてレア・グルーヴのディガーたちが70年代のライブラリー音源から綺羅星の如きブレイクを発見したように、我々もこうした実用CDから素敵なライト・メロウ〜バレアリック〜ニューエイジ音源を発掘しつつあります。この実用音楽ジャンルは、概ねキングレコード制作によるものが大半を占めている印象だったのですが、同じく老舗ドメスティック・メジャーであるビクターからもCDがリリースされていたのですね。キングレコードの方は、おそらく外部音楽制作会社等の謹製で匿名性が高いものなのですが(一部で柳田ヒロなどが参加している作品もあります)、こちらのビクター盤は、秋川雅史の『千の風になって』の編曲や森昌子との仕事、はてはDJ KRUSHとのコラボレーションでも著名な音楽家Edison氏を起用しています。店頭で本作を発見した際、作者クレジットに「Edison Band」とあるので、まさかあのEdison氏のことかな…?と恐る恐る買ってみたのですが、実際に聴いてみると、これはほぼ間違いなく氏の仕事ではないか、と推察します。春夏秋冬の各シュチュエーションに沿って、相当に素晴らしいシンセサイザーによる各種BGM全70曲が矢継ぎ早に現れるさまは、なかなかに圧巻。フュージョンアンビエント、サンバ、ポップ・インストゥルメンタル、レゲエ、ネオ・クラシカルなど、良質音源の宝庫(スーパーのBGMの高級版)。いくつかの曲では、トリガーを駆使したサンプラー使いが絶妙なヒップホップ感を演出し(㉗はまるでマーリー・マール)、効果音楽というジャンルに新鮮な風を吹き込んでいます。名盤。

 

 

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アーティスト:MILLIE
タイトル:MY BOY LOLLIPOP AND 31 OTHER SONGS
発売年:1994年
レーベル:Combo Records
購入価格:200円
入手場所:ブックオフ新宿西口店
寸評:以前売ってしまったものの買い直し盤です。UKをはじめ当時の世界へ(日本盤EPも出ていた)スカという音楽を知らしめたミリー・スモール、ならびに彼女の大ヒット曲「マイ・ボーイ・ロリポップ」。64年の本曲を皮切りに、当時のモッズ族を中心に絶大な支持を集めることになった彼女の音楽は、今あらためて聴くと本国のスカから離れてかなりポップ(R&B)に振り切ったものに聴こえますが、これこそが得難い味わいであって、私のような60年代イギリスにおけるユース・カルチャーがめちゃくちゃ好きな人間からすると、たまらない魅力なのでした。このCDは、そのミリーの数ある曲を32曲も収録した(今もかつても)決定的なベスト選集とされているものです。若干怪しげなドイツのレーベル発なのですが、マスタリングも特に問題なく、楽しく聴くことが出来ます。ひたすら明るい。ありがとうございます。

 

 

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アーティスト:珉珉
タイトル:MING MING
発売年:不明(1990年前後?)
レーベル:MING MING MUSIC
購入価格:167円
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
寸評:「#ネットに情報がないCD」です。検索しても餃子屋さんしか出てきません。こういうものを店頭で発見してしまうとどんなに正体不明だろうと(というかそれがイイわけですが)完全に当てずっぽうに買ってしまうのでした。ジャケットからもまったく音楽性が想像できませんし、もしかしたら未発見のオリエンタル・ニューエイジか?とのかすかな期待を抱いて……。で、家に帰って再生してズッコケるといういつもの流れ。もろハードロック(調の歌謡曲)でした。そうなると完全に私の趣味外……。いかにも「当時のハード・ロック好きの素人達がわいわいやっている」(コアなメタル風じゃないところがアレ)という、なかなか現在の聴取感覚からは評価すべき点を見出しづらい作品でした。バンド名に現れている通り、歌詞はなぜか中国〜台湾をテーマとしており(メンバー名を見るとそららの国出身者は居なそうですが……)、意味不明。ミックスも隙だらけで、各曲のマスタリング・バランスもバラバラなのですが、演奏はやけにうまくて興味深いところですね。一昔前の御茶ノ水楽器店街の試奏コーナーから聴こえてきそうなテクニカルなギターが全編にフィーチャーされています。

 

 

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アーティスト:Euphoria
タイトル:S.T.
発売年:1989年
レーベル:メルダック
購入価格:100円
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
寸評:同名のアクトが各国色々と存在しますが、これは包国充、ロミー木ノ下、樋口晶之とう竜童組のメンバーを中心としたフュージョン・バンドの1stアルバム。キーボードには羽毛田丈史も参加しており、これだけの手練が集まればその内容も保証されようというもの。全体に非常にそつのない演奏が繰り広げられ、アレンジも実に堅実なもの。個人的にはもうちょっと電子音楽(打ち込み)に寄っていたり、ポスト・プロダクションに凝っていたり、ダルでチルなものが好きだったりするですが、こういう安心感もまた良いのではないかなと思いました(それゆえ、BGMとしての練度は非常に高いと言えます)。

 

 

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アーティスト:Henry Jacobs Vortex
タイトル:Electronic Kabuki Mambo
発売年:2002年(オリジナル:1959年)
レーベル:Locust Music(オリジナル:Folkways)
購入価格:167円
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
寸評:1959年にフォークウェイズからリリースされた初期電子音楽名作『Highlights Of Vortex』を、アラン・ワッツ作品等のリイシューで知られるロカスト・ミュージックが2002年に再発したものです。実をいうと、フォークウェイズのカタログというのはサブスクリプション・サービスで全て聴くことができるのですが、「こんな再発盤が出てたんだ!」という驚きで(めちゃくちゃ安かったこともあって)つい買ってしまったもの。内容についてはここで私がどうこういうまでも無いアヴァンギャルド名作なのですが……。映像作家ジョーダン・ベルソンと共にサンフランシスコのモリソン・プラネタリウムで開催された音と映像のイベントでの上演記録盤ということで、スタジオ作にはない丁々発止の生々しさが魅力といえるでしょうか。個人的にはやはりリズム楽器が加わった曲が面白く、現在のIDMに脈々と続くようなメカニカルかつグラフィカルな電子音楽美学がこの時点で萌芽していることに驚きを覚えます。ジョン・アップルトンとかよりとっつきやすい、言うならば、「かわいいアヴァンギャルド」。

 

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アーティスト:Richard Burmer
タイトル:Across the View
発売年:1989年(オリジナル:1989年)
レーベル:東芝EMI(GAIA RECORDS)
購入価格:100円
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
寸評:リチャード・バーマーは米国のニューエイジ系音楽家で、これは彼の4枚目のアルバムにあたる作品。表題曲がJ-WAVE開局時の初オンエア曲に選ばれたことにあわせて、オリジナル・リリースの翌年に日本発売されたのがこのCDということになります。なぜJ-WAVEがこの曲をチョイスしたのかよくわかりませんが、なんとも当たり障りのないシンセサイザーによるニューエイジ曲。まあたしかに当時の感覚からすればまっとうなピックアップだったのだろうなと想像します。一時期は同名の番組も存在しており、J-WAVEにとってこの曲の重要性は非常に高いものだったようですが、移ろう時代につれて今は番組も終了、放送内で度々使用されていた同曲も今ではほとんど使われなくなっているようです(今でも日曜夜のインターバル・シグナルでまだ使われているらしい?)。本作の他曲についても、同じように非常にチージーニューエイジがほとんどなのですが、時折はっとするような美しい純アンビエントが収録されているので油断がなりません。特に④は素晴らしい。

 

 

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アーティスト:斉藤さおり
タイトル:FOLLOWING MY HEART
発売年:1988年
レーベル:ソニー
購入価格:290円
入手場所:ブックオフ吉祥寺店
寸評:近年はアニソン界隈での活動を行ってきた、後の麻倉あきらこと斉藤さおり。デビューは86年と古く、ガールポップ・ブームと女性ロッカー・ブームの双方を股にかけるような音楽送り出した方です。かつてソニーのユーザー投票性リイシュー企画「オーダーメイドファクトリー」で、エントリー後過去史上最短の約2日でベスト盤の商品化が決定するなど、今も変わらず一部に熱狂的なファンがいる方。私はロマンティックモードのメンバーとして(麻倉晶名義)として彼女のことを知っている程度だったのですが、偶然見つけたこのソロCDについてDiscogsのジャンル登録をみてみると「Disco, Boogie」とあるではありませんか。なので、これは是非買わねば、と思い購入。果たして……全然ディスコでもブギーでもないじゃん!という……。時々オッと思わせるアレンジもあるのですが、渡辺美里葛城ユキ寄りにした感じというべきか、いずれにせよロック色がギンギンで、今の感覚で聴き通すのはなかなかに辛いかなというところです……。それにしてもDiscogsの「Disco, Boogie」というジャンル表記、これまでにも何度か騙されたことがあるので、信頼しないほうがいいです…。

 

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アーティスト:西村直記
タイトル:UWFインターナショナルに捧げるー キング・オブ・ファイター
発売年:1993年
レーベル:ポリスター
購入価格:510円
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
寸評:以前に本『CDさん太郎』のVol.20にも登場したコンポーザー/シンセストの西村直記氏。極めて壮大で思い切りニューエイジな作風の方だけに、ポリスターからデビューしていたというのが意外に感じるわけですが、更にこんな作品を残していたことに一層の驚きを感じる次第です。高田延彦UWFから分裂し立ち上げたプロレス団体UWFインターナショナルのために書き下ろした楽曲集ということなのですが、一体全体どういう経緯で西村氏が本作を担当することになったのでしょうか。氏自身もそのあたりの戸惑いめいた気持ちをライナーで吐露しており面白いのですが、その音楽も普段の作風とは全くかけ離れており、ほとんどが「あの頃」の類型的なHR/HM調をなぞったような鋭角的な曲ばかり……ということでかなり聴き通すのが辛いのですが、おそらく当時のリングでも実際に使用されていたものだと思うので、これはこれで正解だったのでしょう。ボーカルには茂村泰彦、河野陽吾らが参加し、シャウトしています。ただ一曲、オープニングトラックの①はDAFのようなインダストリアルなシンセ・ウェイヴ調でなかなか面白いです。

 

次回へ続く…。