CDさん太郎 VOL.25 2020/1/17〜27購入盤

 こんにちは。今回は、2020年1月17日から27にかけて東京・新宿と吉祥寺で購入したCD計15枚を紹介します。紹介ペースが買うペースに全然追いつかない…がんばります。
 本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

 

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 アーティスト:篠崎正嗣
タイトル:プロフィール
配布年:1990年
レーベル:キング
購入価格:50円
購入場所:ピュアサウンド新宿店
寸評:80〜90年代を代表するライトクラシック/ニューエイジ系ヴァイオリニスト篠崎正嗣の非売品ベストCDで、おそらく5thアルバム『G線上のアジア』リリース時に業界向けプロモーション盤として配布されたものだと思います。このことからも、当時のキングレコードの力の入れようがわかるというものですね。収録曲はそれぞれ、映画劇伴作品『螢川』、『グラス・ヴァイオリン』、イサオ・ササキとの共作『ストーン』、『ウォーター・ヴァイオリン』、そして新作『G線上のアジア』からピックアップされており、事実上のベスト盤とも言える内容。なのですが、ここが落とし穴というべきか、あくまで当時の感覚で「ベスト」とされているもののみが選ばれている印象。ですので、名盤とされる『グラス・ヴァイオリン』収録曲にしても、今の感覚で好ましく聴けるニューエイジ的なものではなく、あくまでライトクラシック的なベタさがあるものがチョイスされてしまっており、なんともモヤモヤしたものが残ります(このCDの目的を考えれば致し方ないのですが)。その中でも聴き所を探すならば、プログレ・ルーツが素直に表れ出た④「サイクロンB.C.」あたりでしょうか。やはり個人的には、氏が大島ミチルと組んでいたニューエイジ・ユニット「式部」に通じるような方向性の楽曲が聴きたかったところ。

 

 

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アーティスト:バザール
タイトル:バザール
発売年:1989年
レーベル:ソニー
購入価格:150円
購入場所:ピュアサウンド新宿店
寸評:現在はPC環境コンサルタント(?)としても活動するサクラマコトを中心に結成されたPRESENTSを前身とするロックバンドBAZAARの唯一作。プロデュースは笹路正徳。いかにもこの時代らしい「イカ天」以降的なネアカ・ロックサウンドを聴かせてくれるのですが、リズム隊はじめ演奏もかなりファンキーで、ところどころエスノ風というか、いわゆる当時の「ワールド・ミュージック」風アレンジが施されています(KUSU KUSUなどを更にポップにしたような印象も)。ボーカルはかなりハリと粘り系(バービーボーイズKONTAにも少し似ている)。若干E-ZEE BAND的なメロウネスを顔を覗かせる瞬間もあり。という感じで、なかなか聴き応えがある作品かと思うのですが、個人的な好みとはすれ違うかなと…。申し訳ございません。アートワークは後のメロコア風で先見的。

 

 

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アーティスト:森脇健児
タイトル:LANDING DREAM
発売年:1990年
レーベル:キング
購入価格:100円
購入場所:ピュアサウンド新宿店
寸評:おそらくライトメロウ的曲が潜んでいる確立は2%くらいだろうな…と思いつつもついつい買ってしまう癖…これはその極北みたいなCDですね。内容はというと、ひたすら森脇の下手糞かつ無意識過剰な歌唱を、相当にキツい産業ハードロック的オケとともに聴かせられまくるという内容で、いいようのない嫌悪感がこみ上げてきます。唯一面白いのは、①が何故かインストだということ。森脇不在。意味不明。

 

 

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アーティスト:Night Noise
タイトル:Something of Time
発売年:1995年(オリジナル 1987年)
レーベル:BMGビクター(オリジナル:Windhamm Hill)
購入価格:50円
購入場所:ピュアサウンド新宿店
寸評:Night Noiseというグループ名、“Something of Time”というタイトル、最高すぎるジャケット、ウィンダム・ヒル発であること、様々な要素からして最高な予感しかせずよく調べずに購入したのですが、思っていたのと違うなあ…という感じ。Night NoiseはNY出身のヴァイオリン奏者ビリー・オスケイと、アイルランドのトラッドロック・バンド、ボシー・バンド(彼らのアルバムはどれも最高です)の元メンバーでありマルチ奏者のミホール・オ・ドナールの2人を中心としたバンドで、メンバーの経歴取り、ライト・クラシックとアイリッシュ・トラッド、そしてアコースティックなニュー・エイジを混ぜ合わせたような音楽性。確かに良質ではあるのですが…あまり今の私の趣味とは合致せず…。この作品で一番好ましいのはジャケットですね。どうでもいいことですが、本盤、見本盤シールが貼ってあったので、もしかすると上述の篠崎正嗣氏のCDを売った人と同一人物のものだったのかもしれません。音楽性も近しいところがありますし。

 

 

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アーティスト:尾崎亜美
タイトル:アロウズ・イン・マイ・アイズ
発売年:1998年
レーベル:東芝EMI
購入価格:167円
購入場所:ディスクユニオン吉祥寺店
寸評:ベテラン尾崎亜美の(おそらく)27枚目(!)のアルバム。尾崎自身と小原礼による共同プロデュース。LAでのセッションを中心とした構成となっており、参加メンバーの豪華さにまず目を惹かれます。バジー・フェイトン、ニール・ラーセン、ティム・プライス、マイケル・トンプソン、レニー・カストロその他…。日本からは上述の小原礼に加え、松武秀樹シンセサイザープログラマーとして参加しています。これだけの好条件が揃っていれば間違いのないライトメロウ名盤になりそうなものなのですが、さすが90年代後半というべきか、なかなかそうも行かないのが歯がゆいところ。メロウな曲もたしかにあるのですが、全体的にロック色が強く、尾崎が本来持つ歌謡的なテイストと相まって、今の感覚で聴くにはちょっとしんどいかなと……。当たり前なのですが、歌が上手いという生来のアドヴァンテージが却って高タンパク/高カロリーな世界の創出に加担してしまっている印象。その中にあって、⑥「Let's Imagine」。この参加メンツから想像される通りの高クオリティなAORサウンドで、良いですね。せっかくなので、この路線で一枚通して聴きたいなあと思ってしまうのでした。

 

 

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アーティスト:高橋鮎生
タイトル:MEMORY THEATRE
発売年:1985年
レーベル:ミディ
購入価格:650円
購入場所:ディスクユニオン吉祥寺店
寸評:ピアニスト高橋悠治の息子で、70年代後半からアヴァンギャルドシーンを中心に活動する高橋鮎生による名作セカンド・アルバム。坂本龍一をはじめ、鈴木さえ子大貫妙子EPOといった当時のミディ看板アーティスト勢揃いといった様相で、非常に聴き応えのある内容になっています。メンツから想像されるテクノ・ポップ〜シティ・ポップ感はほとんどなく、同時期のネオ・アコースティックやゴシック・ロック、60年代サイケ・ポップやゲンズブールフレンチ・ポップスなどを、現代音楽〜前衛音楽的な手付きでオリジナルに昇華したような内容に思います。いやもう、全編素晴らしいの一言です。ときおり挿入されるピアノを中心としたアンビエントも実に美しい…。特に⑦。80年代の彼のアルバムはどれもこれも良いものばかり。昨今、国外からの注目度もじわじわ上がってきている感じもありますね。

 

 

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アーティスト:日本サウンドエフェクト協会
タイトル:デジタル最新録音&マスタリングによる 効果音大全集⑱ 宇宙・ハイテク
発売年:1992年
レーベル:キング
購入価格:650円
購入場所:ディスクユニオン吉祥寺店
寸評:普段、効果音系CDには手を伸ばさないのですが。これは「宇宙・ハイテク編」と副題があり、おそらく電子音を主体としたトラックが収録されているのでは、と予想。トラックリストを見てみると「宇宙船の飛行中の船内」「ブラックホール」「旧式電子頭脳」「ロボットの変な言葉」「電子回路」など、シンセサイザー好きとしてはぜひとも聴いてみたい効果音がズラリとならんでおり、勇んで(650円も払って!)購入。果たして、ハイテクと謳っておきながら、非常にチープかつ類型的なシンセ・サウンドの応酬とでもいうべきもので、非常に素晴らしい!このアナクロな宇宙観/コンピュータ観は、本作発売よりずっと前、かつて小松崎茂が描いたレトロフューチャリスティックな近未来予想図のサウンドトラックのよう。適当な方程式をおっさんが読み上げる声を電子変調した「ロボットの変な言葉」がインパクト大。アンビエント系のDJをするとき、是非ミックスしたい音が沢山入っています。

 

 

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アーティスト:PTON!
タイトル:OPEN SESAME!!
発売年:1992年
レーベル:バップ
購入価格:167円
購入場所:ディスクユニオン吉祥寺店
寸評:後にFM NACK5のパーソナリティなども努めるシンガー森岡純が所属したバンドによる92年作。当時レベッカプリンセス・プリンセスの系譜で語られていたという通り、元気いっぱいガールポップのバンド版といった趣き。プロデュースに笹路正徳の名を発見したので期待をしたのですが、ちょっとプロデュースしあぐえているような感じで、全体は中庸なのに発される音は妙に派手派手しいというなんとも不思議な出来栄えになってしまっている印象です。曲の強度がそこまであるわけではないし、結果として音楽的着地点がぼやけてしじまった感じが……。上述のBAZAARにしても後述のLANPAにしても、この時期のメジャー発バンド系作品はよほど購入に慎重にならねば…と思った次第です。

 

 

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アーティスト:古内東子
タイトル:SLOW DOWN
発売年:1993年
レーベル:ソニー
購入価格:167円
購入場所:ディスクユニオン吉祥寺店
寸評:「それ持ってなかったの?」案件です。いつでも買えるCDをついに買うタイミングってありますよね。この日のディスクユニオン吉祥寺店は、600円以下のCD/レコードを3枚買うとあわせて500円になるというバーゲンをやっていたもので、数合わせ的に購入。いや、もちろん古内東子が素晴らしいアーティストであることは重々承知だったのですが、特にこれと言った理由もなくこれまでこの名作1stを買わずに来てしまったのでした…。日々ジャンクフード的に消費しているオブスキュアなブックオフCDに比べると、その一流ぶりが眩しすぎて……。しかし内容はやっぱり上質ですね。同時期のシンガーソングライターの中でも傑出した人であることがわかります。シティポップ的にも聴ける②、⑥、⑨あたりが特に素晴らしく思います。

 

 

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アーティスト:MAMA
タイトル:Wie Pie
発売年:1994年
レーベル:EDOYA
購入価格:167円
購入場所:ディスクユニオン吉祥寺店
寸評:「下北沢のジャニス・ジョプリン」こと金子マリが、ロケット・マツやケニー井上、藤井裕、松本照夫といったすごいメンバーと組んだバンド「MAMA」の唯一作。この時期の金子マリさん、実は私、生ライブを観ているんですよね。95年、父に連れられて、塩次伸二や山岸潤史とともに埼玉の皆野ホンキートンクにて行われたギグに行ったのでした。当時はブルースなどに興味を持ち始めている時期だったので、大変刺激を受けたと記憶しています。それ以来、バックス・バニーはもちろん、金子マリさんの名前は僕の中でちょっと特別なものがありまして。そういった感じで、思い出補正がどうしてもはいってしまうので冷静に聴くのが難しいわけですが、このMAMAもかなり良質のファンキー・ロックを聴かせてくれますね。歌の巧さはもちろん、やはり演奏がすごい。④や⑥、⑪は若干AOR的な視点からも聴くようなことができそうな曲。

 

 

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アーティスト:真璃子
タイトル:元気をだしてね
発売年:1989年
レーベル:ポニーキャニオン
購入価格:167円
購入場所:ディスクユニオン吉祥寺店
寸評:84年に文化放送『決定!全日本歌謡選抜』内のオーディション企画でグランプリを受賞したことをきっかけにデビューをした真璃子による4thアルバム。フォーライフ時代の初期アルバムが比較的よく知られている(かもしれない)彼女ですが、ポニーキャニオン時代になると若干大人びた風情を打ち出していくようになったという情報を読み、もしかするとシティポップ的な曲が収録されているのでは?と期待し購入。果たして…全然そんなことありませんでした……。一部アップテンポの「おっ」という曲もあるんですが、いかんせん曲が歌謡曲感満点で、なかなか厳しいものが…。プロデュースは水谷公生と福田泰丸(誰?)が努めています。水谷公生のプロデュースワークって、ハマるときはすごくハマるんですけどね…。タイトルに反して元気を削がれるアルバム。

 

 

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アーティスト:MARDIGRAS
タイトル:Gaia
発売年:1990円
レーベル:ナイトギャラリー
購入価格:350円
購入場所:ディスクユニオン吉祥寺店
寸評:元Dead Endのドラマー田野勝啓を擁するゴシックロックバンドによる唯一作。プレビジュアル系の系譜に位置づけられる存在だと思いますが、X等が圧倒的覇権を握る以前、このシーンは本バンドのようになかなか一筋縄でいかない音楽性のアクト(UKのゴス〜ポジティブパンクから連綿と続く系譜を真摯に受け継いだアクト)が少なくなく、今一度見分してみる必要のある領域かなと思います(私は完全に門外漢ですが…)。この作品も、ジョイ・ディヴィジョンからの影響がかなり色濃く、メタリックなクリシェを安易に奉じない姿勢に好感が持てますね。

 

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アーティスト:宮田まゆみ
タイトル:星の輪 〜宮田まゆみ笙の世界〜
発売年:1986年
レーベル:ソニー
購入価格:167円
購入場所:ディスクユニオン吉祥寺店
寸評:国立音楽大学客員教授でもある東京都出身の笙奏者、宮田まゆみ。これはおそらく彼女の1stアルバムで、伝統雅楽曲に加え、一柳慧やコート・リッペの現代曲を取り上げています。伝統曲での格式ある演奏も素晴らしいですが、聴きものはやはり現代曲。笙がほとんどモジュラー・シンセサイザーの音に聴こえてくる不思議な体験をすることでしょう。また、高田みどりが鳴り物で参加しているのも重要で、やはり彼女が入るとグッと演奏の緊張感が増すように思います。高田は宮田の次作へも参加し、よりコンテンポラリー色強い演奏を聴かせてくれます(それゆえ、個人的好みとしては次作のほうが良いかなあ、というところ)。

 

 

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アーティスト:LANPA
タイトル:水の上のPEDESTRAIN
発売年:1991年
レーベル:テイチク
購入価格:167円
購入場所:ディスクユニオン吉祥寺店
寸評:『イカ天』出演バンドとしては珍しい都会的な音楽性を伴ったアコースティック系バンドによるメジャー・デビュー作。プロデュースは国吉良一が行っており、かなり端正にまとまった多国籍風味フォークロックといった印象。後の佐藤凖プロデュースの3rdアルバムがオブスキュア・シティポップの名盤であるため、どうしてもそういった世界を期待してしまいますが、ここでの音楽性はまったく異なっています。強いて言うなら、10,000マニアックスやナタリー・マーチャントなどの音楽に日本的湿性を加えまくった、みたいな感じです。ボーカルのyachiyoの声も麗しく、そういう耳で聞けば悪くはないように感じますが……。抽象的(だけどオーガニック)なジャケットもいかにもこの時代のオルタナティブなフォークロック風。

 

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アーティスト:LANPA
タイトル:世界の秘密
発売年:1992年
レーベル:テイチク
購入価格:167円
購入場所:ディスクユニオン吉祥寺店
寸評:上述の1stに続く2nd作。こちらのプロデュースはムーンライダーズ岡田徹が担当。ということで、前作の端正すぎる作りから一歩前進し、ややひねりを交えたオルタナティブ(風)フォークロックとなっています。ですが、メロディーに内蔵された歌謡性はあいかわらず拭い難く、モダンポップ〜ニューウェイブ職人たる岡田をもってしても、仕上がりからモサモサした印象を取り除くことが難しかったように思います。アレンジや音像面ではya-to-iにも通じるところがあり、おっと思う瞬間もないことはないのですが…。なにはなくとも、このバンドについては次作にしてラストアルバムの『画家の恋人』を最優先に購入されることをおすすめします。


次回へ続く…。