CDさん太郎 VOL.26 2020/1/29購入盤 前半

 こんにちは。今回は、2020年1月29日に東京・吉祥寺、荻窪、中野で購入したCD計13枚を紹介します。
 前日にTBSラジオ『アフター6ジャンクション』出演のために来京したlightmellowbuハタ部長とともに、都内各中古店舗を回れるだけ回ろう!ということになったのですが、結果私のほうが大量に買いまくることになってしまいました。
実際は今回紹介するのはこの日買ったものの半数以下でして、別途レコファンBEAM渋谷店で大量購入した分もあり、それらはまた後半版として後日レビューできればと思っております。
 本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。

 

 

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アーティスト:河内淳一
タイトル:Juice
配布年:1992年
レーベル:ファンハウス
購入価格:145円
購入場所:ブックオフ吉祥寺店
寸評:lightmellowbu『オブスキュア・シティポップ・ディスクガイド』にも91年作『Private Heaven』が取り上げあれている作曲家/ギタリスト/シンガーの河内淳一。70年代から活動するベテランで、『よろしくメカドック』のテーマ曲「よろしくチューニング」を手掛けたバンドSTR!Xや、KUWATA BANDのメンバーとしてのキャリアもある才人。これはそんな彼の4作目で、憧れのビル・チャンプリンをプロユーサーに迎えた豪華アメリカ録音盤。その上ジェフ・ポーカロ、マイケル・ポーカロも参加しており、完全に黄金期TOTOサウンドを踏襲したようなハードAOR集となっています。この人の作品は基本的にそういったウェストコーストロック路線のものが多く(ギターを弾きまくることも度々)、あまりライトメロウ的観点から光が当てられることがないように思うのですが、なかなかどうして、佳曲は沢山ある印象。本作でも、タイトなファンク②、③、心地よいミディアムスロー⑥など、結構良いのではないでしょうか。ボーカルもクリアなハイトーンボイスで素敵。本作リリース後は徐々に表舞台から退いていき、現在では千葉県松戸市のライブハウスの店長兼エンジニアを務めているようです。

 

 

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アーティスト:中村幸代
タイトル:THE ARCH OF THE HEAVENS
発売年:1994年
レーベル:ポニーキャニオン
購入価格:145円
購入場所:ブックオフ吉祥寺店
寸評:神奈川県鎌倉市生まれの作曲家/エレクトーン奏者・中村幸代の4thアルバム。1stを『『オブスキュア・シティポップ・ディスクガイド』』で、2ndも以前本「CDさん太郎」で取り上げている通り、私はすっかり彼女のファンです。この4作目では編曲を自らが手掛けているのですが、これが実に良い。優れた鍵盤奏者であるとともにプロデューサー的な気質も兼ね備えていたのでしょう、全ての曲に関してツボを押さえたアレンジぶりをきかせてくれます。基本的にはライト・クラシック、フュージョン、ポップ・インストゥルメンタルを基軸としているのですが、ときおり聴かれるアンビエント的パートがとても良いです。ヤマハ文化圏にありがちな、エレクトーンやシンセサイザーの音色コントロール面での不器用さ(センスの悪さ)を露呈してしまうようなことは一切なく、かなり繊細な音響意識の元に作られていることがわかります。まあ、その上でなお、いわゆるエレクトーンっぽい音色やいかにもプリセットなシンセサウンドを味わうのも一興なことは確かなのですが。本作で自信をつけたのか、この後は主にテレビや映画の劇伴音楽を盛んに制作するようになり、かなりの売れっ子になっていくのでした。現在はFMたちかわのパーソナリティとしても活動中。

 

 

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アーティスト:FLAGS
タイトル:BREATHLESS
発売年:1996年
レーベル:iMME
購入価格:145円
購入場所:ブックオフ吉祥寺店
寸評:COSA NOSTRA桜井鉄太郎がプロデュースした5人組ポップユニットによるミニ・アルバム。フジテレビ乙女塾元メンバー吉田亜紀も在籍。①はいきなり中期ビートルズ風で面食らいますが、②「MIRACLE」が素晴らしい!これぞ渋谷系、というべき箱庭フリーソウルの佳曲で、DJ現場で盛り上がりそうなちょうどよいアンセム性を秘めているように思います。初期モータウン調の③もなかなかよい。あまりに90年代後半なクラブジャズ経由のデジタルビートが今だとちょっと厳しい④、⑤は飛ばすとして、⑥もなかなか好ましいですね。本作、当時の最先端技術であるエンハンスドCD仕様となっており、どうやらMV的なものが収録されているようなのですが、今となってはどうやって再生するのかもよくわからず、視聴できず。

 

 

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アーティスト:本上まなみ
タイトル:ラヴレター・トラックス
発売年:1998年
レーベル:ヒートウェーブ
購入価格:255円
購入場所:ブックオフ吉祥寺店
寸評:女優・本上まなみのイメージビデオ『ラヴレター』のために制作された音楽を収録したサウンドトラック盤。そんなものまでリリース出来てしまったCDバブル時代に驚きを覚えますね。なんかしらニューエイジテイストのあるトラックがはいっていたら良いなあくらいの淡い期待で買ったのですが、まあやっぱりというべきか、クラシカルなオリジナルピアノ曲やギター、ストリングスなどが中心となったアコースティックな純BGM音楽でした。ところどころ電子音やリズムを交えた瞬間が出現し、おっと思わせるのですが、中庸なライト・クラシックに寄りすぎていたり、98年ぽい軽薄なクラブジャズ感が配合されているので、今聴くのは結構キツい…。作曲/演奏陣は、見良津健雄、宮原恵太、重松明宏等。本上まなみ本人による無内容な語りも収録されています。

 

 

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アーティスト:マッキン・アンド・ザ・ニューミュージック・スタッフ
タイトル:マッキン・アンド・ザ・ニューミュージック・スタッフ
発売年:2006年
レーベル:Primal Revue
購入価格:255円
購入場所:ブックオフ吉祥寺店
寸評:ハタさん推薦盤。流線形のベース奏者としても活動するマッキンこと松木俊郎氏のデビュー盤。本人は作曲とアレンジ、ベースに徹し、残響カフェなど沢山の周辺アーティストが演奏と歌唱に加わるというアランパーソンズプロジェクト的スタイル。いかにもこの時代の70年代シティポップ・リヴァイバルのサウンドといった感じで、たしかにこれがデビュー盤というのはすごいセンスと技術ですね。生演奏志向、いい(アナログな)音、自然体な歌というゼロ年代感が今聴くとこそばゆい感じがしますが、当時の「グッドミュージック観」のようなもののもっとも素直な表出として、今後更に歴史的な価値を帯びていくことと感じます。金澤寿和氏編著『Light Mellow和モノSpecial』にも掲載されていますね。

 

 

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アーティスト:横山智佐
タイトル:f【éf】
発売年:1996年
レーベル:ファンハウス
購入価格:145円
購入場所:ブックオフ吉祥寺店
寸評:『オブスキュア・シティポップ・ディスクガイド』掲載盤です。これは素晴らしいですね。『サクラ大戦』のヒロイン・真宮寺さくら役等で著名な声優・横山智佐による4thアルバム。全体に60年代初期モータウンやガールズポップの意匠をまといながら、シティポップ的洗練を加えた歌謡アイドルポップという風情。楽曲自体やアレンジもかなり凝っていて、作り手の本気を感じます。一時期の竹内まりや川島なお美などのキャンパスポップ的な世界が好きな方にはたまらないのではないでしょうか?人気声優だけあって歌の表現力(演技力)も流石で、タレントさんがテキトーに歌った場合にありがちな空疎感がないというのもポイントかと思います。渡嘉敷祐一渡辺直樹、中西康晴、ジェイク・H・コンセプションという手練による演奏も力の入ったもの。また、特筆すべきがホーンセクションの躍動で、数原晋グループによるものです。

 

 

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アーティスト:なし
タイトル:地球星 PULSATION 〜クリスタル・ミュージック〜
発売年:1991年
レーベル:ビクター
購入価格:255円
購入場所:ブックオフ吉祥寺店
寸評:普段は環境音のみ収録のいわゆるノンミュージック作品は避けるようにしてるのですが、このCDは表題に「クリスタル・ミュージック」とあり、まんまと騙されて購入してしまいました…。このCDは、写真家・浅井慎平がプロデュース?している旨も表1に記載されているのですが、氏はかつて環境音レコードの大ヒット作『サーフ・ブレイク・フロム・ジャマイカ』の制作にも絡んでいるので、この時点で気づけばよかったな、と反省。本作も41分感、雫が水面に落ちる音を記録したCDであります。小熊達弥による録音で、この時期のフィールドレコーディング系ニューエイジ作品で大活躍したダミーヘッド型マイク「アーヘナコブHMS-1R」を使用し、長時間に及ぶ編集とミックスの末リリースされた由。たしかに音場感はかなり精緻に作られている印象。ライナーには桝田武宗によるエッセイも掲載されています。

 

 

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アーティスト:サンウェイ
タイトル:イグザクト
発売年:1995年
レーベル:ビクター
購入価格:290円
購入場所:ブックオフ荻窪
寸評:「ジャワイアン」(=ジャマイカ+ハワイアン)という謎のコンセプトでデビューしたハワイを拠点とするシンガーSUNWAYによる(おそらく)3rdアルバム。全編英語歌詞で謳われるのですが、サウンドプロデュースはEDISON(日本人です)が担当しており、さらに原盤レーベルもビクター傘下のROUXからなので、日本マーケット向け商品のようです。初期J-R&Bと打ち込みラヴァーズロックが融合したような音楽性なのですが、まだまだこのあたりの音は寝かしておくべきで、ディグり起こすのは早いのかな…と若干購入を後悔する結果に…。その中で(そもそも曲が良いということが大きいかと思いますが)シェリル・リン「Got be real」のカヴァーはなかなか好ましいですね。いきなり高カロリーのラガマフィンラップが闖入してくるのには苦笑してしまいますが…。

 

 

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アーティスト:ヘンリー川原
タイトル:サウンドLSD サブリミナルセックス
発売年:1991年
レーベル:グリーンエナジー
購入価格:510円
購入場所:ブックオフ荻窪
寸評:稀代の香具師・ヘンリー川原氏による一連のサウンドDRUG作の中でも一番キャッチーというか、一番悪ふざけ度が高い、俗流アンビエントの異色作と言えるでしょう。以前本ブログでも『臨死体験』というCDを取り上げましたが、基本的なサウンド傾向はそれとあまり変わらず、思いつきのような電子音がヒュンヒュンと飛び回りつつ、ミニマルなフレーズが消えては出、出ては消えする、オカルティックなニューエイジ作品です。ライナーノーツによると、収録音を構成しているのは、バイノーラル録音されたホワイトノイズ、サイン波(妙なピッチコントロールを伴いながら全編にほわほわ漂う。これこそまさにヘンリー川原節)パルス、地球の振動音、エクスタシーボイズ(男女計6名)、バリのガムラン、ベースとのこと。CD裏にも「多彩な周波の特殊パルスがあなたの脳を強制誘導 一度はまればアトは天国 あなたの意識を異次元へとご案内」という長い惹句の後に、例によって悪ノリした注意文が続いており、芸風の盤石さを感じさせます。発売当時の定価は3,800円也。高過ぎる…。これら一連のサウンドドラッグ作品に先立って、カセットテープ形態で「パラデータサウンド」というシリーズ全8作が試験的にリリースされているとのこと(byライナーノーツ)なのですが、そういうことを言われると欲しくなってしまいますね…。どなたかお持ちの方いらっしゃいますか(ネットに全く情報がない)。

 

 

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アーティスト:マスターマインド
タイトル:法隆寺 〜オリジナル・サウンドトラック
発売年:1994年
レーベル:ソニー
購入価格:510円
購入場所:ブックオフ荻窪
寸評:先走ってTwitterにも書いてしまいましたが、これは相当に良いです!NHK特集『法隆寺』のために書き下ろされたスコアを収録したサウンドトラック盤なのですが、よくあるオリエンタル風ニューエイジを飛び越え、アンビエントテクノとしてかなり上質な出来栄えだと思います。現在は空間サウンドプロデュースなどを手掛けるマスターマインド・プロダクションズの代表小川弘と黒沢永紀によるユニットによる作品で、インタビューなどを読むと、明確にKLFの『Chill Out』などから影響を受けているようです。コンポーズ、演奏、サウンドデザインの各面で旧世代よりモダンな感覚が溢れ出ており、かといってクラブユースな方向性に偏ることなく、品格ある劇伴としてバランスを保っているのが良いですね。お気に入りは④の「大講堂」。二胡の処理に明確な吉川洋一郎オマージュを感じるのは私だけでしょうか。また、ディープ極まりないアンビエント、⑥「百済観音」もいい。⑦「飛鳥建築」は豊田貴志オマージュか?アナログ・シンセ(多分ミニ・モーグ)の音色が胸くすぐるバレアリック曲⑩「夢殿」、一層テクノ色強い「法円寺主題〜変奏」も素晴らしい……。ラストにはなんと砂原良徳による同曲のリミックス版も収録されています。どうやら当時を知る人によると本作、発売元のソニーも単なるサントラという枠組みを超えてテクノ作品としてきちんと売り出そうとしていたらしく、さもありなんという感慨を抱くのでした。

 

 

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アーティスト:難波弘之
タイトル:センス・オブ・ワンダー
発売年:1994年(オリジナル:1979年)
レーベル:キング
購入価格:650円
購入場所:まんだらけ中野店
寸評:中野まんだらけの、アニメ/ゲームサントラ〜イメージアルバムを扱う店舗内に、少しだけ実写作品サントラコーナー(?)があるのですが、このCD、なぜかそこで売っておりました。金子マリ&バックスバニー山下達郎のコンサートバンドのキーボーディスト、あるいは本作と同名のバンド「センス・オブ・ワンダー」を率いることで著名な難波弘之の記念すべきデビュー・アルバム(アニメ音楽作家としても良い仕事が多いので、そのあたりのことがこの盤がまんだらけで売られていた理由なのかな?と)。近頃ですと、83年に12inhcリリースされた『Who Done It?』がバレアリック名盤(最高です)として高騰している氏ですが、その作風は作品ごとにかなりバラバラで、良い意味でカメレオン的。極上のライトメロウからバリバリのプログレまで行き来するその姿は、おそらく世界的にみてもかなり特異なものなのではないでしょうか。しかも氏は実績あるSF作家でもあるのですから、その多才ぶりに驚きます。本デビュー盤も各曲氏のお気に入りのSF小説へのオマージュとなっています。作詞作曲に吉田美奈子山下達郎などの盟友や三枝成彰といった大御所を迎え、演奏陣も上原裕、村上秀一鳴瀬喜博など、かなり多彩&豪華。ライトメロウ調、ハードロック風、コズミックなフュージョン、E,L&P風、ディスコ風、と相当に幅広い音楽性を開陳していますが、本人の弾くアナログシンセサイザーの音色がこの時代ならではの魅力を湛えており、それがアルバム全体の推進力となっているように思います。名盤。ジャケット画は手塚治虫の描き下ろし。

 

 

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アーティスト:V.A.
タイトル:日渡早紀 アクマくん魔法☆SWEET
発売年:1986年
レーベル:ビクター
購入価格:350円
購入場所:まんだらけ中野店
寸評:SF作品『ぼくの地球を守って』で知られる漫画家日渡早紀が、それ以前に『花とゆめ』にて連載していたアクマくんシリーズのイメージアルバムで、同様に少女漫画の関連作をリリースしていたビクター発の「ファンタスティック・ワールド」シリーズ第9弾作です。大貫妙子や野見祐二らも参加した後の『ぼくの地球を守って』のイメージアルバム(名盤!)も含めて、このシリーズは単なるイメージアルバムの域を超えた音楽的野心に溢れたもので、本作の担当ミュージシャンも矢口博康鈴木さえ子門倉聡上野耕路溝口肇遊佐未森という80年代の良心的作家が顔を揃えている格好です(日渡自身もライナーノーツですごいメンバーが集まってしまったと歓喜している)。内容も、テクノポップ風、アンビエント風、バレアリック風など多彩かつ相当な高クオリティで、時にサラヴァの諸作に通じるようなモダンなヨーロピアンテイストを漂わせたりもしています。個人的には、矢口博康によるバレアリックな各トラックと鈴木さえ子によるプレ渋谷系的小品ボッサ「Misty50」が特に好ましいですね。他も全編素晴らしい。名盤。

 

 

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アーティスト:V.A.
タイトル:エルフを狩るモノたち サウンドトラックアルバム
発売年:1996年
レーベル:AYERS
購入価格:100円
購入場所:まんだらけ中野店
寸評:月刊『コミックガオ!』に連載されていた矢上裕原作漫画からラジオドラマ化された作品のサントラ盤。他にアニメ化作品のサントラなどもあり、かなりややこしいですね。サウンドプロデュースを手掛ける伊藤ヨシユキ氏は、ランティスの副社長を務めた人で、BGMコンポーズを担当したの伊藤真澄は彼のパートナーでアニメ音楽界では著名な方。他、中村康彦、川口義之(!)、入江直之、有泉一、加藤JOEなど、バッキング陣もかなり豪華。ゆえに全編、単発のラジオドラマと思えないほどのなかなかクオリティとなっています。ライトクラシック、バルカン音楽、エスノ、クラブジャズ、プログレ、ミュゼット…様々な音楽を貪欲に取り込んだいい仕事だといえるでしょう。しかしここでの聴き物はやはり2曲収録された歌入り楽曲だと思います。それぞれ、久川綾冬馬由美という声優がボーカルを取り、シティポップといえばいえなくもないような曲調となっています。アレンジが洒落ているので、歌謡臭から逃れているのが好ましいですね。特に冬馬由美の③「元気のかけら」はフィラデルフィア・ソウル風でかなり良いです。


次回へ続く…。