CDさん太郎 VOL.12 2019/4/8〜4/14購入盤

こんにちは。本記事はCD特化のディグ日記シリーズ「CDさん太郎」の第12回目になります。今回は2019年4月8日に立川で、日に下北沢、9日に御茶ノ水、11日に早稲田、14日に吉祥寺で購入したCDを計12枚紹介します。

唐突に告知です。先日収録があったのですが、4/22(月)の22:00〜23:00に無料ラジオステーション「Backstage Cafe」にて配信されるwebラジオ番組『ラジナタ』にゲストとして出演させていただきます。パーソナリティはカクバリズムの代表で敬愛する先輩、角張渉さんです。かれこれ10年近くのお付き合いになる角張さんですが、こういう形でお話するのはとても新鮮でした。本ブログの内容に通じる話をしつつ、フェイバリット楽曲を紹介させていただきました。

詳細、ご視聴は以下リンクよりどうぞ。

https://live.natalie.mu/radinata/

 

本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

1.

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アーティスト:Pauline Wilson

タイトル:Intuition

発売年:1992年

レーベル:PONY CANYON(オリジナル:Noteworthy Records )

入手場所:BOOKOFF SUPER BAZAAR 立川駅北口店

購入価格:280円

寸評:ポーリン・ウィルソンはハワイ生まれのシンガーで、フュージョンバンド、シーウィンドのボーカリストとして70年代半ばから活躍するベテランです。シーウィンドにはそこまで興味を持てない私なのですが(いや、かつてそうだっただけで今は違うもしれないので、今度100円でLPを見つけたら買おうと思っています)、何故本作を購入したかというと、米在住の日本人アーティスト横倉裕(このブログに良く出てきますね〜)がプロデュースを担当しているからです。この時期の彼は、本「CDさん太郎」第二回目にも取り上げたGRP盤リリースや他プロデュースワークで乗りに乗っていた時期。バックにはシーウィンドの元メンバーや横倉氏界隈のブラジル系ミュージシャンが大挙参加しており、全編非常にハイクオリティなオケ。ポーリンの歌唱も20年前とまったく変わらない、スムースかつ伸びやかなもの。ジャジー以上、ソウルフルの手前といった塩梅で、実に心地よい。取り上げられる曲も、シーウィンド時代の楽曲から横倉曲まで非常に充実しています。90年代AORの名作と断言していいかと思います。ネットにあたってみたら、2017年にハタさんが「light mellow記録簿」で取り上げており、流石すぎると思いました。こういうのもいつか再発される日がくるんでしょうか。マケプレでも微弱にプレミアが付いているようですね。

 

2.

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アーティスト:佐久間正英

タイトル:SANE DREAM 正気の夢

発売年:1991年

レーベル:東芝EMI

入手場所:珍屋 立川2号店

購入価格:400円

寸評:佐久間正英氏といえば四人囃子からプラスティックスへと渡り歩き、遠藤賢司からBOOWYGLAYまで幅広く手がける敏腕プロデューサーとしても活躍した天才ですが、80年代以降数々の劇伴音楽を制作し(特に、dip in the poolを迎えての崔洋一監督映画『黒いドレスの女』のサントラは極上です…)、環境音楽的な作品も多く残してきた人です(2014年逝去されました。安らかに…)。この91年作は、そういった志向に加え元来のブリティッシュ・ロック〜プログレな要素を足したもので、何ともこの人らしい作風の良作です。以前本「CDさん太郎」でも日本移住後の作品を取り上げたexモット・ザ・フープルモーガン・フィッシャーも鍵盤で参加し、アンビエント的要素も多分に含んでいます。全体を通して、そうしたアンビエント調からニューウェイブ風、モダンポップ風など様々なタイプの楽曲が収められていますが、そのどれもに繊細なアレンジメントと音響処理が施されており、同時期のデヴィッド・バーン作品も彷彿したりもします。キングクリムゾンの名曲「I Talk to the Wind」のしとしととしたカバーも素晴らしい。ポップアートとアングラを無理やり接合したような分裂的なアートワークも実に良く、一筋縄ではいかない音楽内容をよく現していると感じます。

 

3.

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アーティスト:MARIAH

タイトル:MARGINAL LOVE

発売年:1991年(オリジナル:1981年)

レーベル:日本コロムビア (オリジナル B&M)

入手場所:珍屋 立川2号店

購入価格:200円

寸評:2016年に米レーベルPalto Flatsから83年のラスト作『うたかたの日々』がリイシュー、それがピッチフォークのBEST NEW RIISUEに選出されたことで世界的に再評価が盛り上がっているジャパニーズ・プログレッシブフュージョンバンド、マライア。メンバーラインナップは、清水靖晃(Sax)、笹路正徳(Key)、土方隆行(Gtr)、山木秀夫(Drs)、渡辺モリオ(Bass)、村川ジミー聡(Vo)というそうそうたる面々。初期は超絶フュージョン集団というイメージでしたが(ゆえに中古市場でもあまり人気はない)、この3rdくらいになってくると、プログレッシブというか、もはやそこを超えてポストパンクな持ち味が炸裂しており、同時代の世界的基準で見てもかなり先鋭的な音楽だと思います。これまでこのバンドはフュージョン文化圏のみで論じられてきたように思いますが、むしろポストパンク的な文脈から評価されるべき怪作だと思います(だから、ゲスト参加のスティーブ・ルカサーはかえって浮いてしまっています)。同時期の東京ロッカーズの一群、関西ポストパンク勢、あるいはPILやマーク・スチュワート、DNAやコントーションズなどとも共通するテイストを感じるシリアスなものです。しかしそうした路線に行き詰まりを感じたのか、次作の『うたかたの日々』ではよりポップでエレクトロニックな路線へ変遷していくのでした。ちなみにこの時期、マライアの面々は初期ビーイング制作の諸作によく駆り出されており、秋本奈緒美初期作を始めとして強烈な怪作(快作)が作られることになったのでした。

 

4.

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アーティスト:Paris blue

タイトル:a groovy kind of Love 恋はごきげん

発売年:1993年

レーベル:BMGビクター

入手場所:珍屋 立川1号店

購入価格:380円

寸評:今はその殆どが歴史に埋もれてしまい、人々の記憶からも消し去られてしまった感のある「疑似渋谷系」のアーティスト達。フレンチテイストを織り交ぜたシャレたアートワークに惹かれて買ってみると、「これって渋谷系?」ということが結構あるのです。元々J-AORシティ・ポップ的なものが席巻していた芸能音楽界へのカウンターが渋谷系であったわけで、ポストパンク由来の本来の意味におけるネオアコ精神が漂白されてしまった後発組(疑似渋谷系)を聴くと、なんだかボヤボヤしたポップスだナア…となってしまいがちなのでした。このParis Blueは、最初から意識的に「渋谷系」として「打ち出され」れたユニットで、今から振り返ると逆説的にそうした渋谷系シーンの空洞化を象徴しているような存在かなと思います。全てオリジナル曲なのですが、そもそもその曲にいわゆる渋谷系感がほとんど無いのでした。アレンジ面で微弱にそういう雰囲気も感じますが(それがまた、アシッドジャズ的ビートを安易に取り入れたり、ヴィブラフォンを慣用句的にを入れてみたりと、実に類型的な感じ)、旧世代的なボーカルスタイル含め、明らかに「名ばかり渋谷系」です。が、本レビューは、「真の渋谷系」を称揚することが目的ではありません。むしろその逆を言いたいのです。今作、むしろ旧来のニューミュージックの系譜に置いて聴いてみると、割と好ましいシティポップ・アルバムなのではないかと思います(実際に参加ミュージシャンも旧世代の人達が参加しています)。特にM5あたりはかなり良い(この曲は比較的渋谷系濃度も高くオールドウェーブと渋谷系の奇形的なマリアージュという感じです)。嗚呼、彼らはさして話題になることなく失速し解散してしまいます。打ち出し方の悲劇ですね…。疑似渋谷系の隠れ良作はけっこう存在しているはずなので鋭意掘っていきたいところです。

 

5.

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アーティスト:佐藤博

タイトル:ALL OF ME

発売年:1995年

レーベル:東芝EMI

入手場所:ディスクユニオン 立川店

購入価格:522円

寸評:元ハックルバックティン・パン・アレーのライトメロウ神・佐藤博による95年作。この人のすごいところは、いつの時代でも必ずカッコいいというところで、その天才っぷりに今再び注目が集まるのにも強く納得する次第です。かつては敬遠していた90年代以降作も、今や見かける度に買ってしまうのでした。80年代以降のソロ作では打ち込みサウンドと自身のジェントルなボーカルを巧く融合させてきた彼の技が、この時代になると円熟の粋に達し、テクノロジー有機的活用と血肉化という点で他の追随を許さないレベルに至っている感があります。M1、いきなりミニマルテクノ風の楽曲で度肝を抜かれますが、これも「やってみました」風じゃなく、ちゃんとかっこよく形になっているのがスゴイ。M2以降は怒涛のAOR〜ライトメロウチューンのオンパレードで、いつもながらミディアムテンポの楽曲が光っています。特に、吉田美奈子が参加したM4、ゴンザレス三上の参加した快適音楽M5、盟友・細野晴臣イッシュなトロピカルグルーヴチューンM6、洒脱極まるシティポップサンバM10など、全編にわたり超一流です。

 

6.

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アーティスト:角松敏生

タイトル: SEA IS A LADY

発売年:1987年

レーベル:          Air Records

入手場所:ディスクユニオン 立川店

購入価格:380円

寸評:超一流の方が続きます。角松敏生による87年制作のインストアルバムです。2017年には完全再現版『SEA IS A LADY 2017』がリリースされ当時のファンの間でも話題になっていましたね。この87年のオリジナルは、当時オリコン4位を記録するというインストアルバムとしては規格外のヒットを飛ばした作品です。実際聴いてみると、流石角松氏、いつもながら少しのスキもないアレンジを伴った大一級の作品となっています。そして、当たり前ですがなによりギターがめちゃくちゃウンまい。実に胸のすく弾きっぷりで、ギターソロ不遇の2019年の空気感がアホらしくなってきますね。当たり前ですが、ギターは「弾くもの」なのでした。一方でフュージョンプロパーの人やバンドにありがちなスポーティー過ぎる雰囲気はほとんどなく、あくまでポップスを作ろうという意思に貫かれているのが益々いいです。夏、ドライブしながら聴いたらさぞ最高だろうし、聴きましょう。

 

7.

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アーティスト:オノ・セイゲン

タイトル:COMME Des Garcons vol.1

発売年:1989年(オリジナル:1988年)

レーベル:徳間ジャパン(オリジナル:Venture)

入手場所:ディスクユニオン 立川店

購入価格:280円

寸評:コム・デ・ギャルソンのデザイナー川久保玲嘱託による、たオノ・セイゲン制作のファッションショー用音楽第一集です。実は本CDかつて所持していたのですが一度売り払ってしまっており、今回、このところの自分の中での背景音楽への関心の高まりから再度購入しました。実際にCDとして発売されたのは89年ですが、録音は87年に行われています。注目すべきがその豪華な演奏メンバーです。アート・リンゼイジョン・ゾーンジョン・ルーリービル・フリゼールなどが中心となり、先鋭的な演奏を聴かせます。そこにオノ氏の音響処理がほどこされ、実に理知的なバックグラウンドミュージックが完成されました。そのまま一本の映画のスコアに転用できそうなほどのバラエティで、アンビエント調、ミニマル調、各種民族音楽調、アヴァンプログレ調など、どれも自立的な音楽としても素晴らしい。今ならDJ使いもバリバリできそうです。

 

8.

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アーティスト:Finis Africae

タイトル:amazonia

発売年:2016年(オリジナル:1990)

レーベル:EM Records(オリジナル:Música Sin-Fin)

入手場所:ディスクユニオン 立川店

購入価格:1,152円

寸評:以前本ブログにも同じEM Recordsからもベスト盤が登場した、スペインのニューウェイブ〜バレアリックユニット、フィニス・アフリカエによる90年作です。タイトル通りアマゾン紀行を題材にしたコンセプトアルバムで、南米湿地帯のディープトロピカルな風景を思わせる(アンリ・ルソーのジャングル画のような)有機的なエレクトロニック音楽です。エレクトロニックといっても生楽器も縦横に使用され、テクノほどマシーン的でなく、より有機的なグルーヴで貫かれている感じです。このあたりがまさしく「バレアリック」。SEの使用も非常に洗練れており、生きものたちの鳴き声を交えたジャングル喧騒音も実に品よく取り入れられています。トラック別ではメディテーショナルなシンセとヴィブラフォントーキングドラムを模した電子音が素晴らしいM2、ドープ極まりない熱帯ドローンアンビエントM5、カリンバの反復フレーズと緊張感あるシンセフレーズが絡みつくミニマルハウス調のM6、ツィター舞うニューエイジの色強いM7が素晴らしい…というか…もう…全部が最高です。上述のベスト盤を取り上げたときにも言いましたが、今個人的に一番カッコいいと思える音楽です。

 

9.

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アーティスト:上野耕路

タイトル:『GADGET Trips』オリジナル・サウンドトラック レゾナンス オブ ガジェット 〜疑似交響曲的断章及びノイズ・モンタージュカラ

発売年:1995年

レーベル:SYNERGY, Inc.

入手場所:ディスクユニオン 御茶ノ水

購入価格:480円

寸評:ex.ゲルニカ上野耕路が、マルチメディアクリエイター(というのが既に懐かしい言い方ですが)の庄野晴彦によるLD/VHS作品『GADGET Trips』のために書き下ろしたスコアを収めた作品です。GADGETシリーズはそれまでCD-ROMなどでもリリースされていたということで、90年代CGオタクの間では今でも伝説的な作品とされているという由。が、今のネット社会においてもそれらを動画配信サイトで閲覧することは難しい、という、まるでこの「CDさん太郎」でサルベージしているコンテンツと同じような状況が起こっているのでした。音楽内容的には、上野氏の名盤『Music for Silent Movies』へ通じるような疑似現代音楽という感じで、タイトルがうまくその内容を現しています。ブックレットに寄せられたテキスト含め猛烈なニューアカデミズム臭を発散しており(95年というリリース年を考えるとちょっと遅い)、個人的趣向で言うとこのあたりのチージースノビズムには鼻白んでしまう感じもあるのですが、時代の徒花ならではの美しさがあるのも確かなことであるように思われます。「難しそうなこと」がカッコ良かった時代に思いを馳せて…。

 

11.

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アーティスト:Adi

タイトル:Adi

発売年:1992年

レーベル:ビクター

入手場所:ブックオフ 早稲田駅前店

購入価格:280円

寸評:「上田知華とKARYOBIN」でバイオリンを担当し、その後飛鳥スリリングスを率いていた金子飛鳥と、ex.美狂乱のドラマー佐藤正治を中心として結成されたプログレポップバンド、Adi。このセカンドでは佐藤が脱退し、金子、ex.Shi-SHONENの渡辺等、オルケスタ・デ・ラ・ルス塩谷哲、ex.プラチナのTECHIEというメンバー構成になっています。更にゲストとして仙波清彦(!)を迎えて制作された本作、忘れられた日本プログレポップの名作として面白く聞ける内容なのではないかなと思います。ファジーなアートワークからしていかにもこの時代らしい美学を感じるのですが、聴き心地も決して硬質なプログレ感を全面に押し出してているわけではなく、むしろ柔和な印象を抱かせます。が、やはりよく聞くと超絶的なアレンジセンスとテクニックに支えられていることが感得されます。実に今評価に迷う内容かなと思うのですが、少なくとも、かつて日本の「プログレッシブ」というものがポップスに接近して芳しい結果をものにした時代がある、というドキュメントとして評価されるべきものに感じます。チャクラ〜小川美潮ソロ作のファンへもアッピールするような内容だと思います。

 

12.

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アーティスト:高橋悠治

タイトル:J.S.バッハ高橋悠治・編:フーガの[電子]技法

発売年:2006年(オリジナル:1975年)

レーベル:日本コロムビア

入手場所:ディスクユニオン 吉祥寺店

購入価格:580円

寸評:日本を代表するピアニスト/現代音楽作曲家の高橋悠治は、シンセサイザーも能くする音楽家で色々な作品を残しているのですが、こういったものを制作しているのは寡聞にして知りませんでした。これはバッハの「フーガの技法」(BWV1080)からの7曲をMoog-Type55、MS-Synthi 2を用いて弾いた作品です。シンセサイザーinクラシック、しかもバッハというと何より先にウォルター・カルロスの名作『スウィッチド・オン・バッハ』(69年作)が思い浮かぶわけですが、それが娯楽音楽寄りだったとすると、この作品はよりストリクトな意識に下支えされたアカデミック寄りの作品集という感があります。しかしながら、このアナログシンセサイザーによる電子音像は『スウィッチド〜』に通じるトッポい印象を聴くものに与えずにはおらず、どうしてもキッチュな味わいが滲み出るのでした。この時代特有のエフェクトボード無経由のノンリバーブな音像は、今の感覚でいうと「ゲーム音楽っぽい」ということになるのかと思います。しかしながら、録音当時はもちろんそういった「初期ゲーム音楽っぽさ」というのは未知のものであり、これを虚心に(クラシック音楽として)評価するにはそうした部分を捨象せねばならないでしょう。しかしながら、現代のリスナーからするとその「ゲーム音楽っぽさ」こそがチャームとして聴こえてしまうというのは避けられないことでもあり、むしろそこを美点として味わうのが却って正しい聴取感覚なのではないかなとすら考えます。電子音楽というのはそも、かように時代の音像=テクスチャーにそのリスニング意識が左右されるものなのでしょう。そのことを含み込むならば、そういった聴取意識の変容すらも「聞く楽しみ」の中に包摂することが、こうした初期シンセサイザー音楽を味わう要諦なのかもしれないと思うのでした。

 

次回へ続く…。

CDさん太郎 VOL.11 2019/3/30〜4/6購入盤

こんばんは。本記事はCD特化のディグ日記シリーズ「CDさん太郎」の第11回目になります。今回は2019年3月30日に御茶ノ水、31日に下北沢、4/2に吉祥寺、4/6日に神保町で購入したCD10枚、そして知人から借りたCD2枚を紹介します。相変わらず未リスCDが積み上がりつつあるので、ペースを上げていきたいところです。

唐突に告知です。
4/17(木)の20:00〜22:00まで、コメカさんパンスさんによるテキストユニットTVODと、音楽ライターの高岡洋詞さんがホストを務めるweb番組「TVODの焼け跡テレビ #3」にゲスト出演します。
テーマはずばり「CD」。本ブログ内容とも関連する話をさせていただくことになるかと思いますので、ご興味ある方は是非ご覧ください。

ご視聴は以下リンクより。

http://ttps://www.lotuslotus.tv/video/843


本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

1.

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アーティスト:ヘンリー川原
タイトル:臨死体験 / NEAR DEATH
発売年:1992年
レーベル:グリーンエナジー
入手場所:ディスクユニオン 御茶ノ水駅前店
購入価格:480円
寸評:一口に俗流アンビエントと言っても、その中には様々な傍系ジャンルがあるのですが、オカルティズム的色彩の濃いものも一時期大量に発売されていました。一連のオウム事件がピークを迎える95年の以前は、こうした商品が巷に溢れていたのでした。私個人としても、小学生時分スーパーでそういう怪しげなCDが売られていた様子をおぼろげながらに覚えています。このグリーンエナジーレーベルのヘンリー川原氏による「サイコジェネシスシリーズ」はその中でも最も代表的な存在と言えるかもしれません。そもそもヘンリー川原氏って何者なのか?という話なのですが、ネットを調べてみても確定的な情報に乏しく、推測の枠をこえませんが、オカルト実践家・研究家、スピリチュアリスト、ライターなどとして当時活動していた方のようです。どうやら氏はその後ベトナムに移住、レストラン経営などを行い成功を収められたようですが、現在は亡くなられているようです。トリックスター感。本作は、臨死体験中の人間の脳波をもとに制作したCDということで、集中して聴くとある種の解脱効果がある(らしい)というもの。音楽的にはかなり地味なシンセサイザードローンで、低音フレーズがウオンウオンずっと鳴っているのがやや特徴的か。オカルティックな雰囲気はそこまで強くなく、むしろ全般的にリラクゼーション向けの穏やかな音楽です。ですが、M1の1:20過ぎ、マスタリング〜プレス工程上の事故なのではないかと思うくらいの大音量の「キー!!!」というけたたましいノイズが一瞬入っており、かなり心臓に悪いです。ジャケットが強烈にタンジェリンドリームの『フェードラ』っぽいのですが、音楽的にもおそらく影響を受けている感があります。色々な意味で時代の徒花的俗流アンビエント

 

2.

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アーティスト:鈴木雄大
タイトル:STREET OF ECHOS
発売年:1987年
レーベル:ファンハウス
入手場所:ディスクユニオン 御茶ノ水駅前店
購入価格:100円
寸評:かつて東芝EMI在籍時代、井上鑑稲垣潤一安部恭弘と並んで「ニューウェーブ四人衆」の1人として売り出されていたという鈴木雄大井上鑑にはちょっとその傾向がある気もするけど、「ニューウェーブ」は違うだろ、と今となっては思いますが。むしろ錚々たる「シティポップ四人衆」です。本作はその鈴木氏が87年にリリースした4枚目のアルバム。ここでの聴きものは、本人による卓越したソングライティングはもちろん、なんといっても4曲のアレンジを久石譲が手がけているということでしょう。この時期の久石譲といえば、映画音楽作曲家としてのブレイク前、本人名義作品でもJ-AOR的作品を作っていた頃なので、鈴木雄大の持ち味ともバッチリハマっています。特にM2のいかにも久石譲的風情漂う湿性のメロウネス。たまりませんね。シンセサイザーワークも冴えています。他M5、6も良い。その他の曲は椎名和夫、くりはらまさきが手堅くアレンジを担当しています。バックバンドも豪華。上原裕、長谷部徹、岡沢茂、伊藤広規芳野藤丸土方隆行浜口茂外也、ペッカー、ジェイク・H・コンセプション、土岐英史等、相当に豪勢な顔ぶれ。

 

3.

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アーティスト:藤田朋子
タイトル:THE WOMAN IN ME
発売年:1989年
レーベル:PONY CANYON
入手場所:ディスクユニオン 御茶ノ水駅前店
購入価格:380円
寸評:「THE MAN IN ME」はボブ・ディラン、「THE WOMAN IN ME」は藤田朋子です。私の世代ですと、『渡る世間に鬼ばかり』における聞き分けのない末娘役が大きな印象を締めており、歌手として活動していたことはほとんど顧みられることのないと思われる彼女ですが、このデビュー作含め、ライトメロウ的には傑作揃いなのでした。この1st作で何より特筆すべきが、全編を横倉裕がプロデュース/アレンジを務めているということでしょう。YUATKA名義のGRP盤を以前本「CDさん太郎」でも紹介した横倉氏、ここでも抜群の音楽センスを爆発させています。ブラジリアン風味は抑え気味で、落ち着きのある大人のAORサウンドを聴かせてくれます。また、藤田朋子の英語歌唱も実に巧く、しかも味わい深い。女優さんの余技の粋を軽く越えていますね。Oscar Castro Neves他、横倉氏ゆかりの外国人ミュージシャンが多数参加し、派手すぎず地味すぎず、実に素晴らしい演奏を聴かせてくれます。ずばり名盤。

 

4.

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アーティスト:PETER MERGENER/MICHAEL WEISSER
タイトル:PHANCYFUL-FIRE
発売年:1988年(オリジナル 1985年)
レーベル:キングレコード(オリジナル Inovative Communication)
入手場所:ジャニス 2号店
購入価格:580円
寸評:あまり広く知られてないようなのですが、惜しくも閉店してしまったレンタルCDショップのジャニス、実は中古販売専門店舗は変わらず継続営業しています。これはそこで見つけたニューエイジ名盤。SOFTWARE名義(なんて今っぽいネーミングなんだ!)による活動でも知られるPETER MERGENER & MICHAEL WEISSERのシンセサイザー奏者二人による85年作で、他一連作と同じくKlaus Schulze主宰 のレーベル、Innovative Communicationからリリースされたものを、日本のキングレコードが国内盤化したものです。このInnovative Communication、ニューエイジ全盛期を代表するレーベルで、かなりのリリース数を誇る名門。一時期はLP含めめちゃめちゃ安価で売っていたのですが、このところのニューエイジブームもあり、徐々に店頭で見かけことが少なくなってきました。本作も全編非常に素晴らしく、今の空気にドンピシャと思います。ジャーマンプログレ〜ノイエ・ドイチュ・ヴェレ的なストイシズムと、柔和なニューエイジ〜ヒーリング感が理想的に融合しており、プリミティブなテクノとしても素晴らしい。SOFTWAREの各作、並びにInnovative Communicationのカタログ、出来うる限り集めていこうと思っています。

 

5.

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アーティスト:E-ZEE BAND
タイトル:HOT JAM
発売年:1992年
レーベル:ロックイットレコード
入手場所:ディスクユニオン 下北沢店
購入価格:280円
寸評:前回の「CDさん太郎」にも登場した、ジャパニーズファンクポップバンド、E-ZEE BANDの3rdアルバム。翌年にメジャーからリリースした大名曲「My Girl」で本格ブレイクを果たす前夜ですが、前回挙げたファーストに比べるとかなりこなれてポップ路線に寄せてきている印象を持ちます。1stにあった粗野で猥雑なエレクトロファンクと次作以降の振り切れたポップ路線の架け橋という感じで、今聴くと若干の物足りなさを覚えます。スクラッチの入れ方とか、いかにもニュージャックスウィング以降の感覚なんですが、どこかトッポい(さかしまな表現ですが、デビュー当初のSMAPっぽくもありますね)。それが魅力だとは思うのですが。その中でもシティポップ調のミディアムM4「Shady Dance」、マーヴィンゲイ風スローM8「それでも僕は、一層僕は」辺りはかなり良く、その後のブレイクを期待させてくれます。このバンドの魅力はやはりこういうヒリヒリした青さ漲るメロウチューンだよな、と思わせてくれます。岡村靖幸調の高速ファンクM6「Boys meet Girl」も面白い。思いっきりレニー・クラヴィッツなM7「STAND UP!!」の時代感に微笑。

 

6.

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アーティスト:麗美
タイトル:パンジー
発売年:1985年
レーベル:日本コロムビア
入手場所:ディスクユニオン 下北沢店
購入価格:200円
寸評:松任谷夫妻が全面バックアップした麗美の初期三部作、これで全て揃いました。ユーミン提供曲に特に顕著ですが、ビブラートを極力排した歌唱法にやはりユーミンライクな味わいを感じます。本当に心地よい歌声ですね。正隆氏のアレンジも過不足なく曲を盛り上げます。三部作中ではもっとも地味な印象を受けますが、全てA級クオリティ。現在的ライトメロウ基準ですと、ユーミン曲よりむしろ実姉堀川まゆみ提供曲の方に面白味があるかもしれません。シティポップリバイバルの中でも見過ごされている好作品といえると思います。そのため初期三部作はLP、CDともに相場的にも非常な安価で手に入りますヨ。

 

7.

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アーティスト:THE WIND
タイトル:DANDY STEERING
発売年:1989年
レーベル:日本コロムビア
入手場所:ディスクユニオン 神保町店
購入価格:780円
寸評:国外からのJ-FUSIONへの熱い注目も伴い、現在空前の鳥山雄司リバイバル真っ盛りですが、ソロアルバム以外はまだまだ掘られていない感があります。このTHE WINDは、鳥山雄司を中心に、森村献、石黒彰、本田雅人美久月千晴というメンツが参加したプロジェクト作。作曲も数人で分け合っており、同時期の鳥山雄司のデジタルフュージョン的質感よりもだいぶイージーリスニングよりの作風となっています。そこに若干の物足りなさも感じますが、このCDのBGM的効能を考えると、物足りないくらいがちょうどよいのだろうとも思います。ブックレットにはクルマや大人の恋についてのポエムが掲載されており、強烈な時代感を発散しています。個別の楽曲としてはミディアムファンクのM6、打ち込み主体のファットなファンクM7、山川恵津子作曲のトロピカルテクノサンバM8あたりが出色です。

 

8.

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アーティスト:DOOPIES
タイトル:DOOPIE TIME
発売年:1995年
レーベル:フォーライフ
入手場所:ディスクユニオン 吉祥寺店
購入価格:280円
寸評:「そんな名盤を持っていなかったのかよ案件」です。ヤン富田氏による架空のバンド「DOOPIES」による唯一のアルバム(他にEPあり)。スペースエイジバチェラーパッドミュージックやラウンジ、モンドミュージックブーム華やかりしあの頃を象徴するような盤で、当時兄か姉の友人がこの盤の話をしていたのを覚えています。今聴くと、このいわゆる「90年代的編集感覚」はかなり古色蒼然とたものだなあ…という印象ですね(主にこの“CDさん太郎”で取り扱っているのは、このDOOPIESなどの「オルタナティブな編集感覚」の勃興で却って歴史から抹殺されてしまった知られざる<主流音楽>なのですが、そういったものが復権している現在の空気感からすると、どうしても当時の<オルタナティブ>はより古めかしく感じてしまうというのがあります)。しかしながら、ヤン富田氏仕事ということで当然ながらこのDOOPIESは当時乱発された雰囲気ラウンジモノとは一線を画しており、且つそもそもの音楽的骨格が強靭なので、今でも充分楽しく聴くことができます。当時、この声は誰なの?と話題になったボーカルですが、後にバッファロードーターの大野由美子さんの声をテープ変調したものだということが明らかにされました。

 

9.

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アーティスト:COLORED MUSIC
タイトル:COLORED MUSIC
発売年:2018年(オリジナル1981年)
レーベル:BETTER DAYS(日本コロムビア)
入手場所:ディスクユニオン 吉祥寺店
購入価格:1,280円
寸評:またしても名盤登場です。橋本一子と藤本敦夫によるユニットCOLORED MUSICは、ここに収録されている「Heartbeat」という曲をきっかけに現在世界的再評価が巻きおこり中です。僕は先に何故か、幻の2nd収録予定曲と未発表曲集を編んだ編集盤『INDIVIDUAL BEAUTY』をLPで入手し愛聴しているのですが、この1stをフィジカルとして所持しておりませんでした。今回お手頃価格で高音質CDを発見し、購入した次第。内容については既に色々な方が色々に言及されているので、今僕が付け足すことも特にありませんが、最高の一言ですね。バレアリック、ニューエイジ、シンセウェイブ、アンビエント、様々な角度から面白く聴くことの出来る名盤です。このような音楽が昨今まで熱心なファン以外に殆ど知られずにいたということに、不可思議と奇妙なロマンを感じます。

 

10.

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アーティスト:V.A.
タイトル:冬・の・贈・り・物 ジェントル・スノー
発売年:1992年
レーベル:アポロン
入手場所:ササキレコード社
購入価格:500円
寸評:この日、めちゃくちゃ久々に神保町界隈の老舗レコード店を回ってみたのでした。色んな意味で時が止まっており、感銘を受けました。案の定ほとんど収穫はありませんでしたが、唯一ササキレコード社2Fでこれを発見。季節物イージーリスニングというと基本的に夏を題材にしたものばかりなのですが、これは珍しく冬がテーマ。アポロンお得意の俗流アンビエントかと思いきや、それぞれポップスとして独立した個性を持つ楽曲が収められており、いい意味で期待を裏切られました。作曲家陣が実に豪華で、鈴木茂伊勢正三らが曲を寄せています。他、ボーカルに彩恵津子、ベースに小原礼、ドラムに長谷部徹、キーボードに国吉良一など、ライトメロウ的レジェンドが名を連ねています。各曲「冬」というコンセプトのもと無理やり寄せ集められたような感じで、統一感の欠如という面で制作意図を計りかねますが、鈴木茂作彩恵津子歌のバラードM2、鶴来正基作のジェントルなエレクトロファンク(冬…ですかねこれ?)M3、鈴木茂歌のロッキンAORM5などが聴きどころか。

 

【番外編】
以下、友人のhikaru yamada氏から借りたCD2Wをレビューします。

 

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アーティスト:ロルフ・クライン
タイトル:Restmill
発売年:1998年
レーベル:森企画

 

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アーティスト:ロルフ・クライン
タイトル:崩壊
発売年:1999年
レーベル:森企画

寸評:yamadaさん曰く、神保町古書店の店頭投げ売りコーナーで入手したというこちらのCD、色々調べてみてもその概要は霧に包まれています。ロルフ・クラインというドイツ出身ミュージシャンが日本移住後神奈川県湘南の自宅(?)スタジオにてコンピューターで制作したテクノ作ということのようです。ロルフ氏はかつて『音楽家のためのコンピューター入門』という本を上梓したと帯にあるのですが、その本の情報を突き止めることは叶いませんでした。ドイツの国民的商業ロックバンド「バースコントロール」のメンバーに同名のギタリストがいますが、音楽的にも世代的にも離れているので別人物かと思われます。この2作はほぼ同時期に制作されたもののようで、基本的に音楽傾向的にも近しい内容なのですが、ズバリ定義するならラウンジ風ハードコアテクノ、となるでしょうか。その時代がかった音は正直今聴くには結構キツイ感じもあるんですが、アートワークやブックレットのテキストの不可思議さに通じる無自覚の狂気のようなものがにじみ出ている瞬間がいくつもあり、なかなかおもしろいです。グリッド感の不整合、チージーな音色、レイヤーごとにバース意識がちぐはぐな感じ、いきなりフォーキーな詩情がもたげてくる妙に奥ゆかしいアンビエント感覚など、かなり興味深いです。yamadaさんは端的に「怖い」と表現していましたが、確かに頷けます。

CDさん太郎 VOL.10 2019/3/23〜28購入盤

こんにちは。本記事はCD特化のディグ日記シリーズ「CDさん太郎」の第10回目になります。今回は2019年3月23日に上石神井で、25日吉祥寺、27日渋谷、28日に通販で購入したCDを計12作を紹介します。リスニングがなかなか追いつかず前回から若干時間が空いてしまいました。今も積リスCDが徐々に溜まってきているので、一生懸命聴いていきたいと思います。

本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

1.

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アーティスト:ニック・デカロ
タイトル:ラブ・ストーム
発売年:1991年
レーベル:ビクター
入手場所:ブックオフ石神井
購入価格:280円
寸評:自宅から最も近いブックオフであるにもかかわらず、そもそも西武新宿線を使うことが稀なので(使ったとしても帰路夜遅くになるため)あまり行く機会のないブックオフ石神井店。この日は一日家で作業していたので、散歩がてら気分転換に訪店。はたして、かなり良い成果を得ました。このニック・デカロによる91年作は、予てより色んなCD屋で見かけていたのですが、なんとなく今まで買わずにスルーしていたもの。が、冷静になって考えてみると、91年という、昨今ハマっているライトメロウ文脈からは黄金と言える時代、しかも山下達郎カバー集、その上サブスク未アップという購入への好条件揃い踏みななのでした。この時期国内レーベルから、日本のニューミュージック作家のオリジナル曲を海外アーティストにカバーさせるという企画が乱発されたのですが、基本的に適当なカバーでお茶を濁すことも多く聴くべきものは少ない印象です(ユーミンとサザンがそのジャンルの二大王者です)。しかし本作は、山下達郎自身も選曲に参加し敬愛するニック・デカロのために様々な面で丁寧なセッティングがなされているのが感じられる、非常に高クオリティなアルバムなのです。AORニック・デカロとえば、アレンジャーを専業とする人なので、名盤『イタリアン・グラフィティ』(74年)にも聴かれる通りボーカリストとしては音域も狭く決して技巧的とは言えない人なのですが、さすが山下氏、そういったニック・デカロの声域やクセ、ならびにメロディーの好みを熟知した上で選曲を行っているようです。どんな曲が取り上げられているかというと、アルバムタイトル曲をはじめ、「タッチ・ミー・ライトリー」「クリスマス・イブ」、「エブリーナイト」「ビッグ・ウェイブ」「オンリー・ウィズ・ユー」「ザ・ガール・イン・ホワイト」「ラブ・マジック」と、硬軟取り混ぜた素晴らしいもの。聴きものがこの企画のために書き下ろされたM5「グレート・コミュニケーター」。最高。「クリスマス・イブ」のアレンジも溜め息もの。バックを務めるのは、ディヴィッド・T・ウォーカー、ディーン・パークス、ニール・ラーセン、ハーヴィー・メイソンといった神々レベルのミュージシャンたちです。相当な安価で売っているのをよく見かけますので、発見したら絶対に買いです。大名盤と言っていいと思います。個人的に『イタリアン・グラフィティ』レベルに好きかもしれません。

 

2.

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アーティスト:ボーイ・ミーツ・ガール
タイトル:ボーイ・ミーツ・ガール
発売年:1988年
レーベル:MIDI
入手場所:ブックオフ石神井
購入価格:100円
寸評:以前light mellow部(の紙版?)にも登場していた記憶があるのですが、詩人・尾上文とギタリスト今井忍によるユニットの1st EPです。尾上氏は87年に坂本龍一がホストを務めたラジオ番組『サウンドストリート』にてデモテープ大賞を受賞したこともあるという経歴の持ち主。どういう経緯でこのグループが発足したのか謎めいておりますが、個人的に幼少期の記憶として、この頃青春ポエトリーという感じのブーム(銀色夏生さんや、もっと広範的にいうなら山田かまちなども)があったことを姉の本棚などから感じ取っていた身からすると、「あ〜、あの時代だなあ」という感慨が…。冒頭M1「裸足で散歩」の山下達郎スパークル」的カッティングに象徴されるように、このアルバムのテーマは「都会の男女による青春群像」という感じでしょうか。ユニット名はおそらくレオス・カラックスの同名映画からでしょうが、もちろんあそこまで抽象的な世界ではなく、もっとポップな、原田宗典の小説にような青々しさを感じます。そこが日本的でいい。ポエトリーリーディングといってももちろんシアトリカルなものではなく、かなりフロウ的で、もしかしたらラップも視野に入っているのかな?という感じです。佐野元春のラップや初期かせきさいだぁに近い感じかしら。声質は友部正人加川良風のフォーキーボイスで、そのイノセンスも素敵。しかし、こういうのをフルアルバム尺で聴くのはたしかにきついなあというところで、EPってのがちょうどよいですね。

 

3.

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アーティスト:バート&ジョー・ウルフ
タイトル:トランシジョンズ2 胎内宇宙
発売年:1995年(オリジナル:1990年)
レーベル:プレム・プロモーション(オリジナル:Transitions Music, Inc.)
入手場所:ブックオフ石神井
購入価格:100円
寸評:米アトランタの麻酔学専門医フレッド・J・シュワルツ監修の胎教音楽シリーズの2作目で、1990年に本国リリースされていたものを俗流アンビエント界の大手レーベル「プレム・プロモーション」が国内盤としてリリースしたものです。音楽を手がけるのはバート&ジョー・ウルフというニューエイジ系作家なのですが、これが実にスペーシーな内容で良い。vol.1はもっとクラシック寄りのものらしいのですが、これは相当にメディテーショナルなドローンアンビエントで、胎内音を模したサウンドとともに時折うっすらと女性コーラスが泳いで来たりも。リスニング音楽としてもなかなかに優れているという印象を持ちました。全1曲60分。

 

4.

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アーティスト:PROJECT INSPIRE
タイトル:SIBERAIN ヘルス・コントロール 〜ベスト・ウェイトを〜
発売年:1991年
レーベル:BMGビクター
入手場所:ブックオフ石神井
購入価格:280円
寸評:外資系メジャーレーベルは、当時あまり俗流アンビエント的なアイテムを制作していなかったのですが、BMGビクターもその例にもれず、おそらくこの「ウェルネス・ミュージック・シリーズ」がほぼ唯一のラインなのではないかと思われます。本作はタイトル通りダイエット効果を謳った作品。同シリーズ、数枚所持しているのですが、案の定というか、期待される効能と音楽内容の棲み分けがよくわかりません。アーティスト名の「PROJECT INSPIRE」もおそらく実態のある名前でなく、あくまで匿名的なプロジェクトということになるかと思います。実際に誰の手によるものなのか気になるところですが、ブックレットにもそういった記載は皆無。キングレコードの「サウンド・オブ・トランキリティ」シリーズなどでも多く作品のある元ヘヴィメタルアーミーの中嶋優貴(YUHKI)氏の作風とかなり似ており、契約関係上別名義で取り組んだ作品なのではないかなと推察したくなりますが、どんなもんでしょうか。ジャパニーズプログレ由来のシアトリカル感のある俗流アンビエントニューエイジです(あまり私の好みではありません…)。

 

5.

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アーティスト:フィフス・アヴェニュー・バンド
タイトル:リアリー
発売年:1990年
レーベル:VILLAGE GREEN(PONY CANYON)
入手場所:ブックオフ石神井
購入価格:100円
寸評:アメリカンロック界で最も早い時期に都市的洗練をまとった音楽を作り上げた伝説のバンド、フィフス・アヴェニュー・バンド。その泣く子も黙る69年作は、のちのAORの素の素になったものとしてスーパーマスターピースとされますが、一般にこの再結成版への評価は高くないのでした。それでも2010年にはSHM-CDとして再発されるなど、ファンにとってはおなじみの作品です。これも上記ニック・デカロとおなじく今までなんとなく敬遠してきた1枚です。しかしながら、今2019年に聴くと実にいい塩梅ですね。ファースト時にはピーター・ゴールウェイが主導権を握っていた感のある彼らですが、その後ゴールウェイがソロ作を重ねていく中である種ストリートロック的な世界に接近していったこともあり、2019年的感覚に照らしての本作での聴きものはジョン・リンドやケニー・アルトマンによる純AORチューンの方でしょう。ジョン・リンドはヴァレリー・カーターとのハウディームーンを経てアース・ウィンド&ファイアーなどへも曲提供を行ってきた人ですが、そういうキャリアの旨味がよく出ていると思います。音色は思いっきり1990年風のデジタルサウンドなため、オリジナル時代が好きな人からすると敬遠したくなるのも無理はないかなと思ってしまいます。が、今はこれがいいんですね。プリセット感バリバリのシンセ音がたまらないですね。ちなみにこの作品、ポニーキャニオン原盤の日本独自制作で、この時期アメリカンロックレジェンドたちの新作や編集版を盛んに出していた社内レーベル「ヴィレッジグリーン」からリリースされました。プロデュースにはピーター・ゴールウェイの盟友、長門芳郎さんもかかわられています。

 

6.

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アーティスト:村瀬由衣
タイトル:水曜の朝、窓を開ける
発売年:1992年
レーベル:ファンハウス
入手場所:ブックオフ石神井
購入価格:280円
寸評:ハタさんの「シティ・ポップ記録簿」にも登場し、特に1993年の3rdアルバム『眠る記憶』が名作と称賛されているので、界隈の方にはおなじみであろう村瀬由衣(なので、ここで僕が語るべきことはすでに少ないのですが)。私もその『眠る記憶』を昨年手に入れ愛聴しているのですが、なかなか見かけづらいとされるこの1stが上石神井店にポツンと売っていたので一も二もなく買いました。ハタさんも書いている通り、前半からM5タイトル曲にかけての流れが素晴らしいですね。しかしながら、どこか腰が入っていないというべきか、ややアレンジが上滑りしている感があるのは、楽曲と編曲のコンビネーションのすれ違いにあるような気もします…。しかしその中でもM5は繰り返し聴くうちにかなり気に入りました。「水曜の朝、窓を開ける」というタイトルがいいですねえ…。そんなことはないかと思いますが、水曜の朝にDJをする機会があればこれを是非とも掛けたいですね。

 

7.

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アーティスト:E-ZEE BAND
タイトル:Paisley Lover
発売年:1990年
レーベル:ロックイットレコード
入手場所:ブックオフ 吉祥寺店
購入価格:280円
寸評:ちょうどこの2日前の上石神井周遊のとき、有線からこのE-ZEE BANDによるヒット曲「My Girl」が流れてきたのでした。その曲を全然知らなかったのですが、あまりにいい曲だったものでその場に立ち止まって最後までじっくり聴いてしまったのでした(なんなら少し落涙した)。ブックオフ280円棚でもよくそのCDを見かけていたので、E-ZEE BANDの存在は知っていたものの、こんな素晴らしい人達だったんだ!と衝撃を受け、早速翌々日に発見したのがこの1stアルバムです。このバンドはひとことで言ってしまえば「ファンクポップ」ということになるかと思いますが、上述の「My Girl」はその中でもかなりポップよりのもので、ある種のスウィートさもあるのですが、この時期はまだまだゴリッとしたエレクトロファンク丸出しで、それはそれで実にかっこいい。大沢誉志幸岡村靖幸林田健司などといったファンククリエイターが数多く活動したこの時代ですが、そうした強烈な個性達に比べるとこのE-ZEE BAND及びリーダー兼ソングライター兼ボーカルのイクマあきら氏にはどこか人懐こさを感じます。声質的にはもしかしたら上記の人々の中でも最もプリンスに近いかもしれないのですが、プリンス的なキレ味というよりもどこか親しみやすいトッポさがあり、それがたまらなく良いですね。この作品、全編にわたって相当な好内容ですが(演奏も巧い)、特に素晴らしいと思ったのが95%打ち込みで作られている(時期的、サウンド的にDX-100あたりのヤハマ製シンセか?)M5「GIRL FRIEND」ですね。これちゃんとミックスしました?っていう、めちゃくちゃライン感のある硬質な打ち込みなのですが、楽曲自体がまあポップなファンク歌謡調で、そのミスマッチ感が不可思議な説得力を湛えた仕上がりになっています。ヒップホップ的というか、この生々しさはちょっとサウスとかG-FUNKに通じるような美学も感じますね。

 

8.

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アーティスト:MIKI
タイトル:FEEL DANDY
発売年:1990年
レーベル:ビクター
入手場所:ブックオフ 吉祥寺店
購入価格:500円
寸評:anoutaさんによる「トレンディ歌謡」に取り上げられているのを読んで以来すごく聴いてみたくてずっと探していたんですが、吉祥寺のブックオフコーナーに転がってました。その「トレンディ歌謡」の記事に詳しく情報がまとめられているので、ここで僕が付け加えるべきことは殆どないんですが、期待していたとおり相当に好内容です。このMIKI氏、あまりに匿名的なアーティスト名なので情報収集がかなり難しいのですが、これ以前に橘美喜の名でペッカー編曲のレガエ歌謡名曲「秋冬」を残している方のようです。村上秀一、岡沢章、佐藤允彦らも参加した高品質のフュージョンファンク風オケはかなり端正なのですが、MIKIのハスい歌声が炸裂し、ドテラい酒場感が。この声、誰かに似ているなあ…と思って聴いていたのですが、大西ユカリさんですね。相当に似ていると思う。M5のレガエも良い。

 

9.

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アーティスト:坂本龍一
タイトル:The Fantasy of Light & Life
発売年:1990年(非売品)
レーベル:KAB INC.
入手場所:ブックオフ 吉祥寺店
購入価格:500円
寸評:1990年に開催された大阪花博(わたしも当時親戚のおじさんに連れて行ってもらいました)内、「ひかりファンタジー 電力館」のエキシビション音楽として坂本龍一が制作したものを、当時会場内限定のお土産用としてCD化した商品です。これはおそらく氏のキャリアでもっともニューエイジ的なものに接近した音楽として、今となっては非常に貴重なものです。全体にアンビエント色が強く、電子音楽と生ピアノが絶妙に融合した相当なクオリティの作品集です(坂本氏なので当たり前だけど)。注目すべきは共同プロデュースとして日本環境音楽のエース小久保隆氏が関わっているという点でしょう。下で紹介しているlight in th Atiicの『Kankyo Ongaku』に入っていても一向におかしくない内容です。妙に俗的なライトクラシック風の曲も散見され、オリジナルアルバムにはあまりないそういうところが好き。特に良いのはM7のジャーマンシンセ音楽オマージュ「ひかりのワンダーワールド」でしょうか。あと、ブックレットがサンタナの『ロータスの伝説』みたいな特殊仕様で、気が利いております。一般非売品と言えどもそこまでレアではなく、稀にCDショップでも見かけます。

 

10.

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アーティスト:MITSUHIRO
タイトル:α波 1/fゆらめぎ 神経疲労解消のための音楽 波の音を聴きながら
発売年:1997年
レーベル:BANDAI MUSIC ENTERTAINMENT
入手場所:レコファン 渋谷店
購入価格:108円
寸評:各レーベルに大量のヒーリング音楽を吹き込んでいるシンセシスト、MITSUHIROこと光氷櫓。アポロンBANDAIと業務提携を結び社名を変えたBANDAI MUSIC ENTERTAINMENTからの本シリーズは、97年という俗流アンビエント全盛期後の時代もあってそこまで中古市場で玉数を見ないのですが、渋谷で発見。この時期になると本ジャンルでも音楽傾向の整理が進み、非常に洗練された、悪くいえば中庸なものになっていります。全5曲収録となっていますが、基本は2つの楽曲を微妙にバージョンを変えて反復するもの。ひとつはクラシカルなフレーズが反復する保守的なもので、もうひとつは非常にゆったりしたBPMでごくシンプルなシンセフレーズが2和音でループされるものです。どちらかというと後者の方がアンビエントとしては優れています。また、こういうCDをたくさん買っているうちに気づくのですが、波の音にもいろいろな傾向があって、中には「ザッブーン!バシャバシャ〜!」といった派手ではしたないものもあるのですが、これは実に奥ゆかしい波打ち際のさざめき音を使用しており、そのへんに好感が持てます。

 

11.

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アーティスト:최연제(Choi Yeon-Je)
タイトル:1집 소중한기억
発売年:1992年or1993年
レーベル:SKC
入手場所:レコファン 渋谷店
購入価格:650円
寸評:韓国ライトメロウに入門したいこのごろ。2016年に韓国に行った際はあまり時間がなくそういうディグをできなかったこともあり、今年改めて行きたいな〜と思っております。その予習も兼ねて、日本でそれらしきものを見つける度に買うようにしているのですが、これもその一環です。なにせハングル語にまったく通じていないため、この최연제がどんな方で本作がどんなアルバムかということもほとんどわからないのですが、稲垣吾郎主演映画「Private Lessons」の主題歌のカバーをヒットさせたことで韓国では著名なシンガーのようです。内容的には残念ながらライトメロウというよりもっとMOR的な女性シンガーというべき感じです。辛うじて、ファンキーなM6、K-AORなM7はライトメロウ的視点からも評価できそうです。他、ハイエナジー調、ニュージャックスウィング調など、この時代の雰囲気が濃密に閉じ込められている感じです。

 

12.

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アーティスト:V/A
タイトル:Kankyō Ongaku: Japanese Ambient, Environmental & New Age Music 1980-1990
発売年:2019年
レーベル:Light in the Attic
購入サイト:amazon
購入価格:3,083円
寸評:本“CDさん太郎”初の新譜CDの登場です。これまで何度も本ブログでもその名が挙がり、あるいは、このところ色々な方々から言及されている本作、実をいうとこれまでパッケージ購入をずっとためらっていたのでした。というのも、本当はLPでほしかったのですが、初期アクションに失敗し安価なものは売り切れ。その後各サイトの並行輸入状況を注視していたのですが、ウナギのぼりに値段が上がっていく有様。サブスクでももちろん聴いているし(上がっているのは抜粋版ですが)、個別には持っている楽曲も多かったのですが、ブックレットが充実しているらしいこともあり、やはりこれを手元に置かない手はないよなあ…とグチグチ考えていたらあっという間に時は経ち。先日HMVの店頭でLPを見かけもしたのですが、めちゃくちゃに高くて。もうCDで買おう!と決心したのでした。で、アマゾンで注文してから約一週間で届いたのがこれです。内容については素晴らしいの一言。監修者のスペンサー・ドーラン並びにLight in the Atticのスタッフの熱意に頭が下がります。一応私も業界にいるので察しますが、こういう各メジャー音源を一曲づつ集めるコンピレーション盤が一番制作的に大変というのもあり、その苦労は並大抵でなかったはずです。ブックレットの充実、デザイン、仕様、総て120点です!しかしこの作品、こんなに話題になっているのに何故これほどまでに日本への流通が渋いのでしょうか。推察ですが、例の細野さんのLP諸作と同じく、ライセンサーである各国内メジャーが、日本への逆輸入防止のテリトリー制限事項を契約書に盛り込んでいるのではと思います。そのあたり、是非とも今後の是正を検討いただきたい。著作権処理が未整備という理由で国アーティストのYouTube動画へテリトリー制限をかけたり、海外向けサブスク販売を制限したり、そういった流れもだいぶ緩和されつつあるなか、権利運用を更に推進していくことの重要性が喧伝されていながら、杓子定規にその出口(マーケット)への蛇口を閉めてしまっては本末転倒なのではないでしょうか。法整備面の不備もあるかとは思うのですが、こういうの、どんどん変わっていくべきだと考えます。

 

次回へ続く…。

CDさん太郎 VOL.9 2019/3/14、15、17 購入盤

こんばんは。本記事は、<次のレアグルーヴはCDから来る>を標語とする(?)、CD特化のディグ日記シリーズ「CDさん太郎」の第9回目になります。今回は2019年3月14日、15日、17日に、それぞれ東京・秋葉原、新宿、吉祥寺〜高田馬場荻窪で購入したCDを計8枚紹介します。

このところなんだかちょっと忙しかったので、購入にまつわることで「CDを買ったなあ」ということ以外の精神的トピックが無いので特に前置きはありません。そういうときこそ「CDを買ったなあ」ということ自体の感触がそれ自らとしてだけで鮮やかに蘇ってきたりして、へんに快くもありますね。だからCDを買います。

本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

1.

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アーティスト:ファンキーフォックス
タイトル:フューチャーフォックス
発売年:1993年
レーベル:ファンハウス
入手場所:ブックオフ 秋葉原
購入価格:280
寸評:加曽根康之と川野憲一による、中学生が考えたような素晴らしい名称のキーボードユニットが93年にリリースしたセカンド作。「キーボード」といいましたが、この時代に頻出したヤマハプロデュースによるエレクトーンデモンストレーション的作品となっています。この二人個々人についてはネットにあたっても全然情報が出てこず…もしかすると半プロのインストラクターの方々とかだったのでしょうか。音楽内容はというと、デモンストレーションものの常套たるテクニカルな鍵盤さばきをプレゼンするようなスポーツフュージョンが主たる感じなのですが、CDジャーナルの作品ページでも言及されているように、かなりTMNに影響を受けた感じがありますね。エレクトーンものの大傑作、三原善隆『ナイトライダー』的なライトメロウmeetsニューエイジな世界を求めると若干肩透かしを食いますが、ちょっとアシッドジャズ的なM2、スーパーマーケットファンクなM5など、面白い。たぶん一番の聴きものはM6ビートルズ「アンド・アイ・ラブ・ハー」、M7ストーンズ「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」のカヴァーでしょうか。これらは散開前のYMOぽさもあるシンセポップでかなり良いです。しかしこの時代にこの音楽性というのは逆にすごいというか、反動的と言うか…。2019年ぽさにいい感じで接触する結果となっています。トレンディなジャケも◎。

 

2.

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アーティスト:中村幸代
タイトル:目の前のにんじん
発売年:1990年
レーベル:PONY CANYON
入手場所:ブックオフ 秋葉原
購入価格:280円
寸評:上記ファンキーフォックスと同じくヤマハによるプロデュース作品。この中村幸代の作品、一つ前のファーストアルバムがそれこそライトメロウmeetsニューエイジなテイストで素晴らしく、他作品も是非買わねばと思っていたところでした。へんなタイトル(こういうセンス、当時の少女漫画カルチャーぽさを感じて好き)に少しだけ躊躇してしまいましたが、ジャケのノーマン・シーフ調ファジーネスに惹かれて購入。ファーストはニューエイジ調の奥行きがあったので、それに準じる作風なのかなと予想していたのですが、いきなりM1からハイエナジーなエレクトロサウンドが展開されて喫驚です。このあたり、編曲を担当している羽田一郎のカラーが濃厚に反映されている感じがします。とはいえども、もはや最近の鍛錬によって、こういうアレンジ傾向もわたしのリスニング感覚の中で全然アリになっているので、かなり楽しく聴いてしまうのでした。ハイエナジー調にプラスして、ちょっとニュージャックぽさ、あるいはファインヤングカニバルズ的な俗UKソウル感もあります。ブックレット内に完全に楽屋落ちの意味不明なフォト漫画みたいなのが掲載されていて、実に時代を感じます。

 

3.

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アーティスト:宮下富実夫
タイトル:天河/五十鈴編
発売年:1986年
レーベル:ポリドール
入手場所:ブックオフ 秋葉原
購入価格:500円
寸評:またしても宮下富実夫によるニューエイジ作です。以前にも紹介したとおり、本当に把握しきれないほどのリリース数を誇る氏ですが、80年代半ばのCDが落ちていることは意外にも稀なので、勇んで購入しました。やはりというべきか、この時期はデジタルシンセサイザー発展期なだけあって、音色上の特性がより今の聴取感覚に近しい気がします。内容としては相変わらずのメディテーショナルなニューエイジ俗流アンビエントなのですが、エレクトロニクスおよびそこから導かれる音がネイキッドなこともあって、より原理的なニューエイジ美学を感じます。珍しく使用楽器が詳細にクレジットされているので、未来のために書き出しておきます。CASIO CZ-5000、CZ-1000、CZ-101、JUNO-60、SH-2、PROPHET-600PRO、JX-3P、PG-200、PC-8801mk2、MPU-401、SIX-TRAK PRO、EX-800、SYSTEM-100M、MC-4、DRUM TRACKS PRO、CHOROMA Pokarlsとのことです。圧巻。

 

4.

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アーティスト:ジェノビア・ジーター
タイトル:ジェノビア
発売年:2001年(オリジナル 1986年)
レーベル:BMGファンハウス(オリジナル RCA Victor)
入手場所:ブックオフ 秋葉原
購入価格:280円
寸評:いわゆる「ブラコン」とされている音楽、これだけシティポップ〜ライトメロウ的なものが復権している中にあって、いまいち総体的な再評価からこぼれ落ちているような気がしているのは僕だけでしょうか。このジェノビア・ジーターの盤は数年前に(鬼のようにブギー〜ブラコンものをリイシューしていた)Funnkytown groovesからも出ていましたが、日本のBGMからも出ていたとは知らなかったです。この作品のクオリティの高さは『U.S.ブラック・ディスク・ガイド』での褒め方などを通して想像していたのですが、今回安価でめぐりあいようやっと購入。果たして、最高ですね…これは。あまりここで僕がどうのこうのいってもしょうがないような気がしますが、あえて言うことを探すなら、もしシティ・ポップへの再評価などを通じてスムースグルーヴミュージックに対して興味を持つ方々がいらっしゃるようなら、こっちの方面も是非聴いてみてほしいです、ということでしょうか。逆さまな表現なのですが、このように素晴らしいライトメロウ的盤がたくさんあります。

 

5.

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アーティスト:津島利章
タイトル:仁義なき戦い サウンドトラックコレクション
発売年:1995年(オリジナル劇伴 1973〜1979年)
レーベル:VAP(原盤 東映)
入手場所:ユニオンレコード新宿
購入価格:580円
寸評:『仁義なき戦い』シリーズは、その映画自体の絶えない高人気も反映して、各規格とも中古盤市場で堅調値付けを保ってきたのですが、昨年、現存する全てのシリーズ劇伴を収録した3Wの決定盤CDセットがリリースされたこともあって、今回購入したような旧規格盤が安価で市場に出回るようになってきました。映画シリーズ自体を愛していることは無論なのですが、あのスコアを単体で味わいたいという欲求は映画を観たものなら誰しも持つはずで、いつか手に入れたいと思っていたのでした。そこへさして今回旧規格盤が安価で店頭にあったもので、購入。津島利章は古くから深作欣二映画の音楽を担当しながらも、様々な東映映画の劇伴を務めてきた人。ラロ・シフリン的スリラーBGMと日本土着のスペクタクル性が融合した唯一無二の作風だと思います。同時期の<東映ファンク>みたいに言われるものがある種のプロイテーションムービー的軽薄性を感じさせるところへ、津島氏の音楽はなんともいいがたい独特の湿性溢れる重厚さを醸しているのでした。時にちょっとドリリュー風ですらあって、エスプリもあります。その一方この『ジンタタ』のテーマに象徴的なように、ほとんどデュアン・エディかよ、というガレージーなギターサウンドを混ぜてきたりと、実にスポンテニアス。カッコいいですね。

 

6.

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アーティスト:ピロレーター/シャーロック/サンバ
タイトル:エヴリー・セカンド
発売年:1989年
レーベル:WAVE(原盤 Ata tak)
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
購入価格:680円
寸評:Ata Takのファウンダーにしてノイエ・ドイチュ・ヴェレの立役者、元デア・プランのピロレーターことクルト・ダールケが、89年にヤー・ヤー・ヤーのフランク・サンバと米ジャズシンガー、リンダ・シャーロック(ソニー・シャーロックの妻)と組んでリリースした疑似ディスコ作。この作品を買った日、仕事でピロレーターのことをあるアーティストから話を聴くということがあり、しかも執筆中の某作ライナーにおいてリンダ・シャーロックのことを調べている中で入手した作品で、妙なシンクロニシティを感じたりしました。内容はといえば、かなり上質のエレクトロファンク〜フェイクディスコなのですが、稀代の諧謔師ピロレーターがこれをやっているというのが面白いですねえ。ライナーによると1988年にドイツの文化機関がソウルオリンピック開催に際して「クンストディスコ=アートディスコ」というコンセプトでピロレーターに制作委託したものらしく?、そのとおり理知と諧謔の入り混じったダンスミュージックとなっております。聴き心地的には<普通の音楽>に聴こえないこともないのですが、濃密な空虚感が漂っており、そのあたりが何より面白い。これはDJでかけたいやつですね。

 

7.

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アーティスト:本條秀太郎
タイトル:散華
発売年:1990年
レーベル:日本クラウン
入手場所:ディスクユニオン高田馬場
購入価格:100円
寸評:これぞ今回の目玉盤。ジャケに映る本條秀太郎氏、一見反社会勢力に見えますが、 60年代前半から活動する日本の民謡・端唄・俚奏楽三味線の著名演奏者です。この時代に頻出した日本伝統楽器とニューエイジの融合となる一作で、多分にもれずシンセサイザーなどを大胆導入した内容なのですが、そのバランス感覚が実に秀逸で、細野晴臣&中沢新一のコラボ期のサントラともいうべき汎ジパング的なスピリチュアルミュージックとなっています。氏の三味演奏の闊達ぶりはもちろんのこと、尺八、笛、太鼓、そしてコンシャスなコーラス(というか詠唱、ときに般若心経)やシンセサイザーが交わり乱れ、もはやこのレベルになると海外からのリバイバルも難しいだろうなと思わせる抹香系和ニューエイジとなっていますね。シンセサイザー演奏は「kazuba masao」とクレジットがありますが、どなたでしょうか。出色はM3「阿修羅」。ドラマチックなニューエイジ曲で、ピーター・バウマン主宰の「プライベート・ミュージック」などに親しいニューエイジ感を感得しました。細野さんもライナーにスピリチュアルな文章を寄せており、面白いです。

 

8.

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アーティスト:モーガン・フィッシャー
タイトル:re・lax
発売年:1992
レーベル:プレムプロモーション
入手場所:ブックオフ荻窪
購入価格:280円
寸評:exモット・ザ・フープルの鍵盤奏者モーガン・フィッシャーは、それまでのグラムロック〜アヴァン路線を経て、1985年に日本へ移住、以降はヒーリング音楽〜環境音楽系のフィールドで活躍しています。わたしは「俗流アンビエント」みたいなものにハマる以前から氏の音楽を好んでおり、幾作かCDを持っているのですが、この度久々にヒーリング期のCDを買ってみました。こうやって改めてきくと、相当に日本的な俗流アンビエントになっており、妙に感心してしまった次第です。なによりそのメロディー感覚。おそらく俗流アンビエントの名門たるプレムプロモーションからのディレクションもあってそうなっているのかもしれないのですが、もはや完全に日式ヒーリング音楽。暖かな手弾きシンセサイザーの音色、ペンタトニック調メロディー、歌謡的緩急を孕んだタッチ…。いや、かなりいいです。むしろ俗流アンビエントの美点が純粋に息づいている感すらします。ちなみにモーガン・フィッシャー氏、吉祥寺の中華料理屋「中華街」で食事をしているところに遭遇したことがあります。

 

次回へ続く…

CDさん太郎 VOL.8 2019/3/6、8、10 購入盤

こんにちは。本記事は、<次のレアグルーヴはCDから来る>を標語とする(?)、CD特化のディグ日記シリーズ「CDさん太郎」の第8回目になります。今回は2019年3月6日、8日、10日に、それぞれ東京・吉祥寺、渋谷、三鷹で購入したCDを計11枚紹介します。

三鷹の「パレード」というお店、(行きつけている散髪店が近隣にあるので)定期的に訪れているのですが、実に名店です。このところどんどんとその姿を消しつつある、いわゆる「町のレコード屋さん」で、オールジャンルを幅広く扱い、セレクトされた廃盤やレア盤などよりベーシックな有名盤や帯付き日本盤を多く置く店なのですが、とにかくその商品管理の質が高く、盤質表記も非常に厳密。また、行く度に「こんなアイテムがこんなお手頃価格で!」という発見もあり、常連客が多数いるのも納得のお店です。店主の方は、数年前に惜しくも閉店した高田馬場の名店「タイム」で修行を積み1986年に独立、パレードを開店されたらしいです。思えばタイムもとても素晴らしいお店でした。ご夫婦でやられているようなのですが、お二人ともとても優しく、ヒーリングポイントも高いです。永く地域の音楽文化へ貢献してきたお店だけが醸し出せる雰囲気がありますね。是非お近くへ寄った際は訪ねてみてください。もちろんCDも充実しています。


本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

1.

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アーティスト:ジョン・C・リリィ/リミックス:PBC
タイトル:◀エコ▶[地球暗号制御局]
発売年:1993年
レーベル:八幡書店
入手場所:吉祥寺 よみたや
購入価格:300円
寸評:吉祥寺駅南口を出て井の頭通りを東に少し行ったところに店を構える硬派な古書店「よみたや」。その店頭ガレージセール箱にて発見。ジョン・C・リリィ氏は50年代から活動する米国の脳科学者で、ライフワークだったイルカとのコミュニケーション研究が映画『イルカの日の』のモデルになったことでも有名。著書も多数ある方ですが、このような音楽作品があるとは知りませんでした。これは、日本のオカルト系出版社「八幡書店」がリリースした、氏のモノローグに放送作家などとしても活動する谷崎テトラ氏による日本のテクノ・ユニット「PBC」がトラックを付けた作品。タイトルにある「エコ=E.C.C.O.」とは「地球暗号制御局」のことで、我々には通常偶然だと思われるものも実はこの高次的存在たる「エコ」によって司られているとする独特の思想が展開されます。言ってしまうなら相当にオカルト臭の強い内容なのですが、肝心の音楽がかなり良く。PBCは近年活動再開して国内フェスなどにも出演していますが、ここでの音楽は彼らならではのインダストリアル&アンビエントな絶妙のエレクトロニック・ミュージック。ピエール・アンリをミニマル化したようなミュージック・コンクレート的楽曲もあり、それらの先鋭性もよい。もちろんイルカの声も収録。本作は94年に米のアンビエントレーベル<silent>からも発売されているようです。

 

2.

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アーティスト:AMAHORO
タイトル:Flowering of the Spirit いのちの花
発売年:1995年
レーベル:アマホロミュージック
入手場所:吉祥寺 よみたや
購入価格:300円
寸評:コラ/シンセサイザー奏者の川岸宏吉氏とインドの弓奏弦楽器エスラージ奏者の向後隆氏によるニューエイジ系ユニットAROHOROによるファーストアルバム。こうした民族楽器系ニューエイジにありがちな、有名曲をなんとなく演奏してお茶を濁す的なものではなく、全編オリジナル曲。しかも数曲では川岸氏がボーカルもとるという意欲作です。シンセサイザー使いといってもエレクトロニックな質感はほぼなく、色付け程度で、あくまでコラとエスラージのアンサンブルを楽しむロハシーもの。CDを再生する前、ボーカル入りの旨をみて一瞬嫌な予感がしたのですが、聴いてみると清廉でフォーキーな魅力があり、ニューエイジ系のボーカル物によくある抹香臭さや芝居臭さはありません。ラーガ調のM6「ハレルヤソラ」がとくに良い。

 

3.

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アーティスト:Chris Thompson
タイトル:Chris Thompson
発売年:2001年(オリジナル 1973年)
レーベル:Scenescof Records (オリジナル The Village Thing)
入手場所:ディスクユニオン 渋谷中古センター
購入価格:240円
寸評:クリス・トンプソンニュージーランド出身のミュージシャン。渡英後73年にヴィレッジ・シングからリリースした1stアルバムが本作。ヴィレッジ・シングのオリジナル盤は目玉が飛び出るほど高いのですが、CD再発されているのを今まで知らず今回偶然発見し勇んで購入。UKフォークにハマっていたころ、マジック・カーペットというユニットの作品がとくに好きでよく聴いていたのですが、本作にはそのマジック・カーペットのメンバーが参加しているというのもポイントが高いです。ラーガ調アシッド・フォークの名盤と言っていいと思います。キース・クリスマス、ロビン・スコットなどとも比肩すべき存在かなと…。ギターも相当に巧いですね。ボーカルはややニック・ドレイク調。

 

4.

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アーティスト:Mark Thompson
タイトル:Open Windows Empty Rooms
発売年:2012年(オリジナル 1982年)
レーベル:BIG PINK (オリジナル Never Summer Productions)
入手場所:ディスクユニオン 渋谷中古センター
購入価格:340円
寸評:似たような名前の人が続きますね。このマーク・トンプソンは米コロラド州出身のシンガー・ソングライターで、本作の前年リリースとなる1stアルバムがアシッド・フォーク名盤としてファンには有名な方です。その1stはマイケル・アンジェロなども思わせるサイケデリックで奇妙な浮遊感ある名盤でわたしも愛聴しているのですが、この2nd、いきなり冒頭からスリージーなギターとタイトなドラムが主導するストリートロックで、この人にそういうものを求めてなかったので面食らいました(ストリートロック、大好きなんですけど)。基本そういった路線の曲が多いので聴きながらメゲそうになりますが、1stに通じる弾き語り曲はやはり素晴らしいですね。儚げなボーカルが◎。

 

5.

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アーティスト:Mike Williamson
タイトル:Mike
発売年:2010年(オリジナル 1978年)
レーベル:BANDIERA MUSIC (オリジナル SELECT MUSIC PRODUCTIONS)
入手場所:ディスクユニオン 渋谷中古センター
購入価格:340円
寸評:米ポピュラー系シンガー、マイク・ウィリアムソンの2ndアルバムです。次作3rdがライトメロウ〜AORの隠れ名盤として評価されている人で、僕もその3rdを愛聴しております(例のミュージック・マガジン誌、AOR〜ヨットロック特集の個人ランキングでも30位以内にいれるかどうかかなり迷った)。この2nd、AORというより、全編バリー・マニロウ的なポピュラーボーカル風で、ライトメロウ的視点からは若干の物足りなさがありますね…。ですが、M2「Starry Night」は準キラーな感じで可。しかしこの人の声、相当ジョン・セバスチャンに似てますね。あとこのCD、なぜかマスタリングレベルが異様に小さくて減点。

 

6.

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アーティスト:吉田弘
タイトル:キャットコール
発売年:1991年
レーベル:キングレコード
入手場所:ディスクユニオン 渋谷中古センター
購入価格:140円
寸評:ライトクラシック系のバイオリニスト、吉田弘子の3rdアルバム。毳々しいジャケからは想像の難しいスマートなフュージョン路線のアルバムです。ラテンテイストの曲がいくつか入っているので、そのあたりがこのジャケたらしめているのでしょうか。こうしたライトクラシックmeetsフュージョンなものは相変わらずいろいろ買っているますが、これはニューエイジ色が希薄な分、2019年基準だとギリギリな感があります。直居隆雄、天野正道といったアニメ〜劇伴界の作家が作編曲を担当、松本峰明(pf.)、渡辺直樹(ba.)、市原康(Dr.)、塚山エリコ(syn.)といったフュージョン系のミュージシャンがバックを努めているのですが、なぜか数曲でルーファスのベーシスト、ボビー・ワトソンが加わっていて喫驚しました。何故。なお吉田弘子さんは現在も活躍中で、よりクラシック寄りの演奏活動を行っているようです。数年前にはピアソラ集もリリースされた模様。

 

7.

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アーティスト:結城比呂
タイトル:Prism
発売年:1998年
レーベル:日本コロムビア
入手場所:GEO三鷹
購入価格:180円
寸評:90年代初頭から活動する男性声優による、98年リリースのオリジナル歌唱アルバム。作編曲陣は見良津武雄、鶴由雄、甲斐完治、安西史孝などで、結城氏自身のペンになる曲も3曲収録されています。基本的には当時のミドルオブロードなJ-POP路線(ZAINとかビーイング系の香り)なのですが、M5の「ねむれない夜」はなぜかパーシー・スレッジ「男が女を愛するとき」やプロコル・ハルム「青い影」的な、メンフィスソウル調バラードで面白いです。他、M6「Night Song」はさすがの安西史孝ワークと思わせるライトメロウバラード。出色はM8、同じく安西作編曲&シンセプログラミングのシティポップチューン「LADY」。結城氏のスムースなハイトーンボイスとこうしたアップナンバーの相性はとても良いですね。この一曲だけでlight mellow部案件かと思われます。

 

8.

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アーティスト:SECRET CRUISE
タイトル:TELL YOU WANT
発売年:1996年
レーベル:エピックソニー
入手場所:三鷹 パレード
購入価格:500円
寸評:これぞ今回の一押し盤。元シャムロックの高橋一路によるソロプロジェクト「シークレット・クルーズ」によるセカンドアルバムです。シャムロックといえばネオモッズをルーツとする和製スタイル・カウンシル的なポップスを量産した名ユニットですが、その頃からあったUKソウル〜メロウ志向により特化したのがこのシークレット・クルーズだと言えると思います。帯には「Japanese AOR会心作」とありますが、その惹句通りUKソウル〜アシッド・ジャズなテイストに加えてもっとオーセンティックなAOR感覚が多く注入されているように思います。強いて言えば、オリジナル・ラヴをよりAOR寄りにした感じでしょうか。そういった連想するワードを並べてみるだけでも、この作品の魅力が伝わるのではないかと思いますが、何よりも楽曲自体の出来が良いということが最大のポイントかと感じます。全編に渡って決してスキを見せることのないメロウチューンのオンパレードです。プロデュースは高橋氏自身、バック演奏には大竹徹夫(key.)、植田博之(Ba.)、成田昭彦(dr.)など凄腕スタジオミュージシャンたちを迎え、誠に盤石。ほんと素晴らしい盤だなあとおもい、さらなる情報を求めネットを回遊していたら過去既にハタさんの「シティ・ポップ記録簿」に登場しており褒められていました。得心。

 

9.

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アーティスト:安西史孝、小椋佳薬師丸ひろ子
タイトル:レディ!レディ オリジナル・サウンドトラック
発売年:2013年(オリジナル1989年)
レーベル:ユニバーサルミュージック(オリジナル イーストワールド)
入手場所:三鷹 パレード
購入価格:500円
寸評:太田圭監督、薬師丸ひろ子桃井かおりダブル主演による89年公開のトレンディラブコメディ『READY! LADY』のサントラ盤です。2013年頃ユニバーサルから、どういう基準で選抜されたのかよくわからない過去映画サントラの廉価再発ラッシュがあったのですが、その中の一枚です。当時は詳細タイトルまでよくチェックしていなかったので、まさかこんなものまでが紛れていたとは知らず。この映画は未見なのですが、サントラが安西史孝ワークスの隠れ名盤という情報を目にしていたので、いつか欲しいなと思っていたのでした。のっけから安西氏らしいシンセ使いのエレクトロブギーが飛び込んできて、実にカッコいい。かと思えばオールドタイミーなディキシーランドジャズのようなものや教会音楽風のもの、スリラー的演出をもり立てるのであろうアヴァンかつプログレッシブなもの、スーパーで流れていそうなシンセボッサ、ピアノバラード、タブラを導入したミニマルファンクなど、相当に多彩。小椋佳との共作「Dear Painter」のニューエイジ歌謡感も◎。テーマ曲の高見沢俊彦作・薬師丸ひろ子歌「Wind Boy」の歌謡ニューエイジ感も悪くないですね。

 

10.

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アーティスト:玉木宏樹とMIND MESSENGERS
タイトル:音楽浴 高原…はるか空よ
発売年:1992年
レーベル:日本コロムビア
入手場所:三鷹 パレード
購入価格:400円
寸評:玉木宏樹&S・M・T名義での名盤『タイム・パラドックス』(75年作)がプログレッシヴロックファンの間で評価が高い、東京芸大出身の作曲家/バイオリニスト玉木宏樹。ムーグシンセサイザーとバイオリンが融合するその『タイム・パラドックス』のインパクトが大きいため、クラシック界での活躍が忘れられがちですが、純正律を用いた作曲などでその世界でも大きな足跡を残している方です。これは、もしかするとシンセサイザー使いのアヴァンエレクトロニック音楽が入っているのか?と思って買ったヒーリング音楽集なのですが、残念ながらそういったものは入っておりませんでした…。ハープ、二胡、タブラ、ギター、ケーナチャランゴ、フルート、オカリナ、チェロ、そして自身のヴァイオリンからなる室内楽風音楽で、これはこれで上質です。ちなみに、2012年の逝去後も氏のTwitterアカウントは更新され続けており、ひたすら楽理についてつぶやいていて凄みがあります。スタッフさんが遺志を継ぎ運営されているようです。

 

11.

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アーティスト:ロマ・イラマ
タイトル:ブガダーン グレイテスト・ヒッツ 1975〜1980
発売年:1995年 (オリジナル 1975年〜1980年)
レーベル:オルターポップ(オリジナル SONETA CORPORATION)
入手場所:三鷹 パレード
購入価格:600円
寸評:オルターポップが90年代に展開していた「ロード・トゥ・ダンドゥット」シリーズの第一弾となった、大スターのロマ・イラマの初期音源を集めたCD。ダンドゥットはインドネシアの大衆音楽で、ここ日本でも90年前後のワールドミュージックブームの折、<女王>エルフィ・スカエシやヘティ・クース・エンダンの作品が沢山紹介されたことで、お馴染みでしょう。私はオルターポップによるこのシリーズのCDを数枚所持しておりますが、その丁寧なコンパイル仕事やライナーの充実ぶりに非常なリスペクトを捧げております。男性シンガーでは最大のスターといえるロマ・イラマのこのCDも、監修の田中勝則氏がロマ本人とやり取りの上丁寧に制作したもので、そのアーカイバーぶりに畏敬の念を覚えます。内容はもちろん素晴らしく、ダンドゥットの精髄を心ゆくまで味わえるものになっています。

 

次回へ続く…

CDさん太郎 VOL.7 2019/3/1、3 購入盤

こんばんは。本記事は、<次のレアグルーヴはCDから来る>を標語とする(?)、CD特化のディグ日記シリーズ「CDさん太郎」の第7回目になります。今回は2019年3月1日と3日に、それぞれ東京・新宿、中野〜高円寺で購入したCDを計12枚紹介します。

3/3に訪れたRARE高円寺店ですが、4月末をもって40年以上の歴史に幕を閉じるということで、今月から閉店セールを実施しています。昔話で恐縮ですが、20数年前、当時高円寺に下宿していた兄を訪ねて上京した際、駅で落ち合ってすぐに連れて行ってくれたのがRARE高円寺店だったと記憶しています。それがおそらく人生で初めてのレコード屋さん体験だったように思います。雑多で埃っぽい店内、隣接の仲屋むげん堂と曖昧に侵食し合う区画(と漂ってくるお香の匂い)、それらすべてが当時思い描いていた「ザ・高円寺」そのもので、私はいたく感動したのでした。今は去りし90'sサブカルチャー

今回久々に訪れた店内、その時からほとんど時間が止まったままのような空間でした。独特のダルい空気…懐かしいな〜とLP/CDを掘っていたら、どこからかずーっと強烈なモスキート音が鳴っていることに気づき、場所によってはガンガン頭痛がするほどに。音の出元を探したら、ジャズLPコーナー脇のエアコンの裏に超高周波用スピーカーが付けられていました。これは一体何のためなんだろう。若者DJが漁りすぎるのを防ぐためなのか…?閉店セール期間なのだからむしろなるべく客を長居させた方がいいんじゃないか…?万引き防止なのかな…性悪説〜。

こういってはなんですが、以前吉祥寺店でもお客さんと罵り合っている(新春早々)光景を目にしたりと、RAREというのはそういう独特の殺伐があるんですね。老舗レコード屋特有のそういう感じ、今はどんどん失われつつあり、好ましくもあります。他店舗はこれからも元気に営業を続けていくとのことです。頑張ってください!

本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第一回目のエントリをご参照ください。

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

1.

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アーティスト:フィニス・アフリカエ
タイトル:ア・ラスト・ディスカバリー:ジ・エッセンシャル・コレクション 1984-2001
発売年:2013年
レーベル:EM RECORDS (オリジナルMúsica Sin Fin)
購入日:2019/3/1
入手場所:ディスクユニオン新宿中古センター
購入価格:1,152円
寸評:これぞ現在に続くバレアリック・ブームを内外に印象づけた、エム・レコードによる傑作コンピレーション。スペイン人ミュージシャン、ホワン・アルベルト・アルテシェ・グエルが1980年代初頭に発足したユニットであるフィニス・アフリカエ。本作は彼らが84年から2001年に残した作品をコンパイルしたものです。私はこれまでこの音源をデジタルで愛聴しており、のちに出たEPもCDとして所持していたのですが(彼らのオリジナル作のLPは高くて買えない…)、バレアリック、アンビエント、アフロ、エスノ、ファンク、ポスト・パンク、シンセ・ウェイブ、アンビエント、ニュー・エイジ(系の思想は本人には無いとのことですが、サウンド的連関を感じざるを得ない)、そういった今色々な場面で喧伝されるタームの全てが、このフィニス・アフリカエにはあると思います。これは言い過ぎではないのですが、今2019年3月の時点で、自分にとって一番カッコいい音楽です。この感覚に匹敵するのはアーサー・ラッセルしか思い浮かばないです。最高です。ダンス・ミュージック・コミュニティ内での知名度が先行している感がありますが、私のように<夜遊びしてない人>にも是非聴いてもらいたい。

 

2.

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アーティスト:酒井俊
タイトル:マイ・イマジネイション
発売年:1999年(オリジナル1979年)
レーベル:VIVID SOUND (オリジナル トリオ)
購入日:2019/3/1
入手場所:ディスクユニオン新宿中古センター
購入価格:612円
寸評:今もバリバリ現役で活動されているジャズ・シンガー酒井俊による3rdアルバム。「女性ジャズ・シンガー」と聞く時に連想される小粋でクルーナー的スタイルというより、もっと野趣溢れるダイナミックな歌唱法で、さらにいえば非常にソウルフル。以前ネット上で試聴音源を聴いて以来LPを探していたのですが、旧規格盤CDが安価で売られていたのでこの度購入しました。なんといっても全編にわたって聴かれる坂本龍一によるアレンジが秀逸!M1.のジョニー・ブリストル作のソウル名曲筆頭に、いわゆる洋楽スタンダードを取り上げたものなのですが、そのアレンジの妙のおかげで、単にクオリティの高いライトメロウ名盤という印象を超え出て実に刺激的です。参加メンバーはというと、坂本龍一に加えて松原正樹鈴木茂小原礼高橋幸宏浜口茂外也etc.という豪華メンツ。これは要するに、同時期の坂本龍一&カクトウギセッションの面々を中心とした布陣で、当時の日本フュージョンの最高峰的メンバーとも言えます。演奏の闊達さはさることながら、YMO初期に通じるシンセサイザー使いの編曲が素晴らしい。前述のM1におけるテクノ・ブギーっぷり、そして特筆すべきがアルバムタイトル曲M5におけるKORG ポリシンセ使いのバレアリック・フローター感。浜口茂外也のper.と大徳俊幸のエレピのみを従えたシンプルな編成で、コズミックなメロウネスが際立つ秀曲。このところの探求テーマである<ニューエイジ・ポップ>としても素晴らしい。

 

3.

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アーティスト:笠井紀美子
タイトル:TOKYO SPECIAL
発売年:1990年(オリジナル1977年)
レーベル:CBSソニー
購入日:2019/3/1
入手場所:ディスクユニオン新宿中古センター
購入価格:522円
寸評:上記作に引き続き、和ジャズ女性ボーカル名盤を。わたし、お恥ずかしながらこの大名盤、これまで未所持でした。音楽ライターを自称しライトメロウ周辺にもかすらせていただいているのにもかかわらず…こういうことが赤裸々になってしまうのも、本シリーズの(自分だけにとっての…)スリルです。日本を代表する女性ジャズ・シンガー笠井紀美子が77年にリリースした本作、全て安井かずみによる日本語詞で、筒美京平、横槍裕、鈴木勲、森士郎、矢野顕子山下達郎による曲を歌ったポップス寄りのアルバムです。この場合のポップスというのは、AORシティ・ポップになるのですが、全編本当に素晴らしい楽曲のオン・ザ・パレードで、溜め息…。笠井さんのしなやかで繊細な歌唱の魅力、鈴木宏昌を中心とした<プレイヤーズ>へと後に発展する<コルゲンバンド>によるフレッシュ極まりない演奏(激ウマ!)。特にキラーなのが、山下達郎が後に『GO AHEAD!』の中で「LOVE SELEBRATION」としてセルフカヴァーすることになるミディアム・ファンク、M1「ヴァイブレーション」ですね。このウィスパー・ボイスを交えた歌唱とクール&ホットな(ファンクの妙を押さえた)演奏の合体、たまりませんね〜。今回入手したのはCD選書シリーズ の旧規格盤ですが、LP当時と同じ惹句が帯に書かれています。曰く「キミコは、TOKYOに何を求めたのか?何をコミュニケイトしたいのか?」。よくわからないけど最高!

 

4.

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アーティスト:宇都美慶子
タイトル:シンパシィ
発売年:1990年
レーベル:ポリドール
購入日:2019/3/1
入手場所:ディスクユニオン新宿中古センター
購入価格:224円
寸評:1990年デビュー、歌手/作曲活動とともに現在では料理研究家やエッセイストとしても活動する宇都美慶子によるファースト・アルバムです。宇都美さん、埼玉のFMラジオ局NACK5で月〜木朝帯にミニ番組をお持ちで、以前わたしがラジオ宣伝仕事で同局に頻繁に通っていた際、そのお姿をお見かけしたような記憶があります。なので、個人的に<才色兼備のラジオパーソナリティ>というイメージが強く、音楽作品を聴くのは今回が初めて。本デビュー盤は全編プロデュースを松任谷正隆が担当、編曲を同氏と新川博が分け合っており、この時点でライトメロウ視点的には大期待なわけですが。しかもそこへさして土方隆行鈴木茂、今剛、伊藤広規青山純、ジェイク・H・コンセプションなどが参加しているのだから、大期待以上になってしまうわけで。果たしてその内容は、上述の豪華メンツから想像されるよりかなりロック〜MOR(ミドル・オブ・ロード)的で、今の感覚からすると若干の物足りなさが…。というかまあ、このソツなさこそ、ガールポップ全盛期において<大人の女性ポップス>を演出するには正道であったのでしょう。当たり前のことなのですが、<シティ・ポップ調>というのは、当時にしても取りうる音楽的戦略/志向の一つでしかなかったんですよね。そんな中、以前本ブログにも登場した障子久美(そちらもマンタがプロデュース)に通じるファットなエレクトロ・ファンクM7「会いに来ないで」は、ボーカルとトラックの乖離感など含めて少しだけ面白い。

  

5.

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アーティスト:S. JOB ORGANIZATION
タイトル:FREEDOM ANTHEM
発売年:2016年(オリジナル 1978年)
レーベル:Presch Media GmbH (オリジナル Shanu Olu Records)
購入日:2019/3/1
入手場所:ディスクユニオン新宿中古センター
購入価格:702円
寸評:ナイジェリアのアフロサイケバンドS.JOB MOVEMENTから派生したS. JOB ORGANIZATIONによる1978年作。S.JOB MOVEMENTはかなりアタッキーで戦闘的なロックテイストが特徴で、一時期そういう音も好きでよく聴いました。が、最近はもうちょっとダンス・オリエンテッドなものが好きで、78年というディスコ全盛のリリース年代に惹かれて購入。これを再発しているPresch Media GmbHは一時期狂ったようにアフロものを再発しており、途中まで追っかけていたのですが、リリース量が関心を上回ってしまい最近はご無沙汰状態になっていたので、今回は久々の購入です。内容はといえば、硬派なアフロ・ファンクとレゲエとの融合が実に面白いです!M2、M3あたりのコロコロした弦楽器と電子楽器使いの大胆な感覚はアフリカ産レゲエにしかない味わいかなと思います。その他ディスコ時代対応のトラックも辛口の良さがあり。最近離れていたアフロものですが、また色々買ってみようかな、と思ったります。

 

6.

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アーティスト:COUNTRY LIVING
タイトル:COUNTRY LIVING
発売年:2014年(オリジナル 1980年)
レーベル:BIG PINK MUSIC (オリジナル FRONT ROW MUSIC)
購入日:2019/3/3
入手場所:ディスクユニオン中野店
購入価格:686円
寸評:スチールギター音楽、スラックキーギター音楽、コンテンポラリー・ハワイアンからAORまで、ハワイ産音楽に惹かれ続けております。その独特のロコテイストにハマって以来、「これ以上至福の音楽があるだろうか…」と呆けながら聴くわけですが、個人的趣味としては、カントリー・コンフォートやルイなどといったコンテンポラリー・ハワイアンmeetsメロウなものがわけても好きです。そんな中、それらの中でも名盤とされるCONTRY LIVINGの唯一作のBIG PINKからのリイシュー盤を今回購入(BIG PINK、正直ハーフブートなのであまり積極的には買いたくないのですが…)。全編にハワイアン・コンテンポラリーらしいルーラルでアコースティックな演奏が聴けますが、出色は当時の米AORやウェストコースト・ロックとも共振するM3、M5。M6、あたり。特にバンド名をタイトルに冠したM6は、あのブレッド&バターの名曲「ピンク・シャドウ」に酷似したコード、メロ、譜割りが堪らないキラーなメジャー7thチューン。ちなみにハワイ、人生でまだ未踏なのですが、いざ行ったらめちゃくちゃハマりそう。

 

7.

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アーティスト:HOLD UP
タイトル:島まで10マイル
発売年:2013年(オリジナル 1978年)
レーベル:キングレコード
購入日:2019/3/3
入手場所:ディスクユニオン中野店
購入価格:686円
寸評:パラシュート〜AB'sの安藤芳彦がそれらの前に組んでいた幻のバンドによる唯一作が、タワーレコード流通限定の「Tower to the People」シリーズでリイシューされたもの。監修は金澤寿和氏です。これまで数度店頭で目にしつつもなんとなくその地味〜なジャケで素通りしていた盤なのですが、これはもっと早く聴いておきたかった!という内容でした。驚かされるのがそのメンバー構成。安藤氏の他、のちにチャクラ〜パスカルズへと渡り歩くドラムの横澤龍太郎、佐藤奈々子SPYを結成するベースの戸田吉則などが在籍しています。このレコード制作の直前までは清水信之紀伊国屋バンドとかけもち在籍していたらしく。そう、これは和光大学紀伊国屋バンド周辺のシーンで活躍した人達によるバンドなのでした。その内容はというと、これまさに全編細野晴臣のトロピカル3部作に通じるチャンキー路線で、「赤いアルバム」のムーンライダーズ、あるいは同時期のサディスティックス夕焼け楽団などにも通じる味わい。それらを青年らしく素直に表現した感じも良い。楽曲、演奏ともにクオリティは非常に高く、プロジェクト性が強くパーマネントな稼働が難しかったからなのかもしれませんが、なぜ後年にきちんと語り継がれなかったのか不思議。おそらく清水信之界隈を介した参加だと思いますが、細野晴臣大滝詠一もゲスト演奏に名を連ねています。

 

8.

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アーティスト:ジュン上久保
タイトル:サンフランシスコの奇跡
発売年:2004年(オリジナル 1972年)
レーベル:富士 (オリジナル 東芝EMI)
購入日:2019/3/3
入手場所:ディスクユニオン中野店
購入価格:1,024円
寸評:昨年読んだ音楽関連書の中でも飛び抜けてウィアードな書、田沼正史著『日本ロック史』。80年代当時に書かれほとんど世に出ずお蔵入り、たまたま昨年デッドストックが見つかった(とされている?)本著、いわゆる<はっぴいえんどYMO史観>に反駁するため書かれているのは明白。一般的には周縁的(あるいはそれまで振り返られることが稀だった、メインストリーム寄り)とされるアーティストらに多くの頁が割かれ、ほとんどもう一つの<あり得た歴史>を読み聞かされているような不思議な内容なのですが、その話法の巧みさやパラノイアックな視点は、同じく昨年に出た名著『The KLF: ハウス・ミュージック伝説のユニットはなぜ100万ポンドを燃やすにいたったのか』へ通じるモノを感じます。歴史を<編む>ということの恣意性と創造性を見せつけられた稀代の奇書といえるでしょう。未読の方は是非探して読んでみてください。さて、この上久保ジュンは同著の中でも重要ミュージシャンの一人として紹介されていた人。これは1972年当時20歳にも満たない氏が一人多重録音した唯一作にして、世界に誇るストーナーハード・ロック盤です。今はシティ・ポップアンビエントが流行っているせいであまり語る人がいなくなっていますが、スピード,グルー&シンキやフード・ブレイン、水谷公生などの日本のニューロック盤というのは、海外マーケットでコアな人気を維持しているもので、この作品は一際カルトなものとして人気が高かったようです。僕がこの盤を知ったのもそういう文脈からで、いつか買おうと思っていたのですが、時は過ぎ…しかし上述の『日本ロック史』を読み、これは是非手に入れなければと思っていたところ入手。内容は、全編非常なボルテージにまみれたダウナー系ストーナー・ロック〜ブルース・ロックで、なぜこれを多重録音にしようとおもったのかという謎も含めて、嗚呼素晴らしい。ライナー執筆者の円盤・田口氏も触れていますが、ほとんど初期DMBQですね。カッコいい。

 

9.

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アーティスト:桃山晴衣
タイトル:弾き詠み草
発売年:2005年(オリジナル 1979年)
レーベル:ビクター
購入日:2019/3/3
入手場所:ディスクユニオン中野店
購入価格:1,344円
寸評:これも上述の『日本ロック史』、あるいは田中雄二氏による大著『電子音楽 in JAPAN』を読み、手に入れたいと思っていた盤。厳格性を重んじる純邦楽界にあって、自作曲を歌い、演奏も闊達自在、斯界でも特異な存在としてその名を広めつつあった三味線奏者・桃山晴衣を、あの中村とうようが今様にプロデュースして産まれた名盤(問題作)。入間市民会館にて行われた録音に加え(これらがまず本当に素晴らしい…。シークを交えたM6など、アコースティック版の裸のラリーズとでもいいたくなる夢幻世界)、なんとモノローグも交えた12分超えの大作M7「虚空の舟歌」に坂本龍一シンセサイザーで参加しています。中村とうようの仕切りで発注したようですが、いったいどういうつもりだったんでしょうか。マッチしているとかしていないとかいう常識的な判断基準を超えて、非常に特異な世界が現出しています。基本的には桃山の詠唱と三味線に、ドローン的にシンセサイザーが絡んでくるという形なのですが、なにかそうやって文字に書く以上のドープさが充満しています。後年頻出する純邦楽ニューエイジの安易な融合とは似て非なる、非常な緊張感に満ちた音楽で、むしろ武満徹湯浅譲二一柳慧など、初期電子音楽時代における現代音楽作家の作品に近いような気がします。

 

10.

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アーティスト:YAS-KAZ
タイトル:風の卵
発売年:1985年
レーベル:PONY CANYON
購入日:2019/3/3
入手場所:RARE 高円寺店
購入価格:400円
寸評:60年代後半から、小杉武久阿部薫坂田明など様々なミュージシャンと演奏活動を繰り広げてきたYAS-KAZこと佐藤康和氏による85年のソロ・アルバム。この時期と前後して姫神との共演作をリリースし、それが大ヒットしたことなどもあり、今では和ニューエイジ的文脈からの評価が主だったものになっている気がしますが、実際は上記のように前衛音楽界隈にも属していた人で、「山海塾」の為の舞踏用音楽を作曲したりもしている硬派な音楽家。若年世代からの再発見が遅れているような気がしますが、この時期のソロアルバムは全て今こそ聴きたいかっこよさにあふれたものだと思っており、見かける度に買ってしまうのでした。全編エスノ〜ファンク、シンセ・ウェイブ、ニューエイジ色濃厚で、特にこの作品はM1「マドモアゼル スタインベルグ」が素晴らしい。ほとんど上述のフィニス・アフリカエにまんま通じる世界だと思いますが、どんなもんでしょうか。パーカッショニストとしても本当に巧くセンスフルで、トータルなサウンドクリエイターとしての側面と奏者としての側面がここまで上手くバランスしているというのはスゴイことだなあと思うのでした。

 

11.

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アーティスト:YAS-KAZ吉川洋一郎
タイトル:OMOTE THE GRAZED SURFACE そっと触れられた表面
発売年:1992年
レーベル:WSP
購入日:2019/3/3
入手場所:RARE 高円寺店
購入価格:500円
寸評:上のYAS-KAZ氏が、作編曲家・吉川洋一郎と組んで制作した暗黒舞踏山海塾のための舞台音楽集です。この時期、このタッグにくわえピアニストの加古隆氏も山海塾のために音楽を制作しており、WAVE傘下のレーベルWSPから数枚のリリースがありました。ジャケが似たり寄ったりなので、いつも「あれ、これ持ってたっけ…?」と店頭で煩悶することになります。吉川洋一郎氏は一時期ヤプーズの鍵盤も担当していた才人で、NHKドキュメンタリーのサントラなどに秀作の多い人なのですが、ここでは舞踏音楽ということで普段の作風よりシリアスな色合いが濃く、かなり聴き応えのあるスコアを制作しています。ボーカルで秋吉みちる(マンデイ満ちる)が参加していますが、どういう繋がりなのだろうか…。こういう舞台向けサントラCDには、数多くアンビエントニューエイジ的傑作が隠れていると思われるので、今後とも掘っていきたい心つもりです。

 

12.

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アーティスト:柴野さつき
タイトル:rendez-vous
発売年:1991年
レーベル:NEWSIC
購入日:2019/3/3
入手場所:RARE 高円寺店
購入価格:500円
寸評:この『CDさん太郎』で度々その名が出てくるのが、現在のニューエイジリバイバルを推進してきた中心的存在のVisble Cloaks。既にアナウンスされている通り、来月にリリースされる彼らの新作は、日本の作家尾島由郎と柴野さつきをフィーチャーしたものになるということで、大変期待が膨らみます。これはその女性ピアニスト、柴野さつきによるパスカル・コムラード・カバー集です(プロデュースは尾島由郎氏で、リリース元は氏の作品も発売している青山スパイラル傘下のNEWSIC)。これ以前にリリースしているエリック・サティ集がマケプレ等でかなりの値段に跳ね上がっていることもあって、CDオンリーでのリリースとはいえ、このコムラード集もまあ簡単には手に入らないだろうなあと思っていたところ、モスキート音が駆け巡るRARE高円寺店のイージーリスニング・コーナーでゲットしました。これは嬉しい。パスカル・コムラードといえば、フランスを代表するアヴァン・トイ・ポップの大家ですが、ここでは元のトイ・ミュージック感を活かしながらも、よりエレクトロニック〜アンビエント的な色彩が強く、実に2019年的ムードです。そしてなにより柴野氏のピアノ演奏が素晴らしく、コムラード曲のキッチュな表皮の奥に潜むノーブルな要素を美しく引き出しています。また、自身によるフランス語のモノローグなども交え、90年代初頭のあの時代、フランス文化に対して日本文化が抱いていた爽やかな憧憬が描き出されているように思います。

 

次回へ続く…

CDさん太郎 VOL.6 2019/2/23、25 購入盤

こんばんは。本記事は、<次のレアグルーヴはCDから来る>を標語とする(?)、CD特化のディグ日記シリーズ「CDさん太郎」の第六回目になります。今回は2019年2月23日と25日に東京・吉祥寺、高円寺で購入したCDを計10枚紹介します。
2/25の分は、同夜に円盤で開催された「LDを見る会」というイベントを見るために少し早めに高円寺へ行った際に買ったものなのですが、その「LDを見る会」がもう最高に面白かった。ハードオフのジャンクコーナーで100円で投げ売られている、環境映像に俗流アンビエント的音楽が付いたLDだとか、オーディオ/ヴィデオ・チェック用の試験LDだったりとか、初期コンピューター・グラフィックス作品のオムニバス盤など、そういったものを集中的に鑑賞する会。すごく刺激を受けました。この会のことはまたどこかに書きたいなと思っています。
またこの間、本「CDさん太郎」と相互補完的な概観を論じるコラム「ポスト・ミュージック考」というものがele-king web上で始まりました。よろしければ是非そちらも御覧ください。

www.ele-king.net

本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第一回目のエントリをご参照ください。 

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

1.

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アーティスト:武部行正
タイトル:ゆふすげびとのうた
発売年:1998年(オリジナル1972年)
レーベル:P-VINE (オリジナル ビクター SFシリーズ)
購入日:2019/2/23
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
購入価格:880円
寸評:Pヴァイン社在籍中、仕事の為もあって、これがラインナップされていた「ニューロックの夜明け」という再発シリーズの作品を集中的に聴いたことがあったのですが、その中でも特に思い入れある作品。自分の手元には持っていなかったので、数年後越しにこの度購入。その「ニューロックの夜明け」での初再発以降、初期日本語ロックの決定的名盤として語られているので、僕が今ここで付け足すことも無いようにも思いますが、久々に耳にして、改めて素晴らしい内容だなと感じ入った次第です。この武部行正、まったくもって謎めいたシンガー・ソングライターで、元々は有山じゅんじと「ぼく」というナイーブな名前のフォーク・デュオを組んでいた人(音源は残っていない)。五つの赤い風船の西岡たかしの推薦によって、ビクター内で先進的なロック〜フォーク路線の作品を扱っていた「SFシリーズ」からアルバムデビューをすることになりました。昨今いわゆる「はっぴんえんど史観」がその勢力を増しすぎているせいで、『風街ろまん』が若者文化全体に即大きな影響を与えたような言説が見受けられますが、実際はまったくそんなことはなく、ごく小規模なシーン内での話でした。そんな中これはそうした同時代において極めて珍しい、はっぴんえんどからの直接的影響をきくことのできる稀有な盤なのであります。もちろん、音楽的にどこがどう似ている、という次元よりも、その英米ロックやポップスの消化方法に近似性がある、ということなのですが。歌唱についていえば早川義夫や高橋照之などの系譜を感じさせるもので、今の感覚からするとぜんぜんはっぴんえんどじゃないじゃないか、と言われるかもしれないのですが。しかしそれこそがこの作品の大きなチャームでもあります。そして、柳田ヒロが中心となったバッキング演奏の過不足なさ、しおらしさ。ニール・ヤングにおけるストレイ・ゲイダーズのような、イアン・マシューズにおけるサザン・コンフォートのような、もっとマニアックにいえば、ロビン・スコットのフォーク期作品におけるマイティ・ベイビーのような、というべきか。最高です。それと、付属のライナー(by田口史人)の面白さ。謎の人物を追う田口さんの足跡とその筆致は、ほとんどアラン・ローマックス。オリジナルLPは10万円ほどします。幻のセカンドがあるらしいが、まだ世に出ていず。

 

2.

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アーティスト:Hideki Masago+Masami Endo+Takuya Mori
タイトル:Chaco Journey
発売年:1995年
レーベル:AWA Records
購入日:2019/2/23
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
購入価格:280円
寸評:AWAレコードは、各種ネイティブ・フルート奏者・真砂秀朗のソロアルバムやプロデュース作を中心にリリースしていたインディー系のワールド・ミュージック〜ニューエイジ系レーベル。近年の和モノニューエイジ再評価シーンを下支えするリスナー文化の中でも特にコアな独自路線を突き進むブログ「FOND/SOUND」でもそのAWAの作品が何点か取り上げれれていますが、なるほど確かに、これは今聴くべき内容かもしれません。この作品は、その真砂秀朗氏を中心として、ギタリストの遠藤昌美氏、サウンド・エンジニアの森卓也氏、ボーカルの藤本容子氏(鼓童のメンバーでもある)が集結して作られたアルバム。ライナーノーツのスピリチュアル抽象度が高くてよく読み取れないのですが、おそらくニューメキシコ州にあるチャコ・ユニオンというネイティブ・アメリカンの聖地でのフィールド・レコーディングに加えて、ネイティブ・フルート、カリンバ、各種民族パーカッション、ギター、シンセサイザーを交え制作された音楽、ということのようです。内容はと言うと、相当に良質で、民族音楽ニューエイジの接合というよくある例の中でも上位にくる盤ではないかと思います。カリンバやパーカッションのシーケンシャルな配置、そして奥ゆかしいシンセサイザーなど、ややクラビーな聴き心地もあり、ダウンテンポものの良作としても評価可能かと思います。

 

3.

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アーティスト:喨及
タイトル:ピュアランド
発売年:1993年
レーベル:グリーン・エナジー
購入日:2019/2/23
入手場所:ブックオフ吉祥寺店
購入価格:500円
寸評:浄土宗和田寺の僧侶遠藤喨及氏は、指圧師、著述家という多面的な才能の持ち主(氏の書きおろした指圧術についての新書を書店で見かけた記憶があります)。音楽家としてもなかなかのキャリアの持ち主で、90年代後半〜ゼロ年代初頭にかけてMIDIから数枚アルバムをリリースするなど、確かな実績をお持ちの方なのですが、1993年、俗流アンビエントのESPともいうべき<グリーン・エナジー>から作品を発表しているとはこれを買うまで知りませんでした。<グリーン・エナジー>といえば、著名(?)オカルティスト、ヘンリー川原氏監修によるミュージックドラッグ系作品や媚薬効果をねらった俗流アンビエントボイジャー1号&2号から発信される宇宙の電波信号を音声化した「スペース・サウンド・シリーズ」(知的財産権処理などの問題で一枚8,000円という超高額盤もあった。誰が買ったんだろう?)など、わりとキワキワな路線なのですが、こういう正統派なニューエイジ作品もあるとは。内容はというと、かなり安心して聴けるギター・ニューエイジで、クオリティも高い。もちろんシンセサイザーも登場、時折琴なども交えながら、奥ゆかしい東方ニューエイジ世界が描かれます。かといってあまり仏教仏教しているわけではなく、その美麗さはむしろウィンダム・ヒル系作品を想起させます。

 

4.

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アーティスト:dip in the pool
タイトル:Wonder8
発売年:1997年
レーベル:Geandisc
購入日:2019/2/25
入手場所:ドラマ高円寺店
購入価格:680円
寸評:2016年にオランダのMusic from Memoryから「On Retinae」が12inchリイシューされたことをきっかけとして、今や世界中に名が知れ渡ったdip in the pool。同曲が収録された『Retinae』(89年)や、昨年LPリイシューされた『Aurorae』(91年)、メンバーたる甲田益也子のソロ・アルバム『Jupiter』(98年)に注目が集まる中、ユニットとしてのキャリア後期作にはあまり光が当たることは少ない気がします。この8作目のアルバムは、メンバーの木村達司が今はなきジャズレーベル、<イーストワークス>内に立ち上げた<Grandisc>からリリースされたもの。このあと彼らは約14年の沈黙に入ることになるわけですが、一聴する限りそのような気配は感じさせない内容になっていると思います。が、現在の視点からいうと、やはり前述の作品群に注目が集中するのもむべなるかな、というか、ちょっと過プロダクションかなあという印象。シンセウェイブ〜アンビエント的感覚は乏しく、むしろかなりダンス・オリエンテッド(しかもあの時代の…)。かつ、本来時系列的な順序は逆ですが、渋谷系の諸々から触発されたようなところも見え隠れしているように思います。このあたりに若干の煮え切らなさが…。もう少し寝かせる時間が必用なのかもしれません。90年代後半というのは、今まさにディグの鬼門です。

 

5.

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アーティスト:Coen Bais
タイトル:Sweet Dreams
発売年:1989年
レーベル:Geandisc
購入日:2019/2/25
入手場所:ドラマ高円寺店
購入価格:108円
寸評:Coen Baisはオランダのニューエイジ系ピアニスト/シンセシスト。ジャケット情報のみでチャレンジ購入してみたのですが、全編これリチャード・クレイダーマン風のエセ主情的ピアノ曲で、どこからも聴きどころを探しようのない駄盤(2019年基準)でした…。ジャケからして和趣味が交錯するウィアードなものを期待したのですが、まったくそんな気配もない。文化搾取的ジャケット乙、といったところでしょうか。108円が勿体無い音楽でした。

 

6〜10.

アーティスト:ENDOMAX PROJECT
シリーズ・タイトル:BRAIN MEDICAL MUSIC
発売年:1989年
レーベル:ヴァーンメディア
購入日:2019/2/25
入手場所:ドラマ高円寺店
購入価格:各108円
寸評:シリーズもの俗流アンビエント。Vol.1〜5まで一気売りされていたので大人買いしてしまいました(計540円)。今まで色々な店舗を回ってこうした盤を見てきていますが、これは初めて見たシリーズです。アメリカ製家庭薬のパッケージを思わせるジャケット・デザインがかなり可愛く、このCDの魅力の半分以上はそこだという気すらします。アートワーク通り、音楽療法での使用が推奨されているCDのようで、リラックスマンという療法?催眠法?と合わせて服用?するのが効果的?な<ミュージック・メディシン>?ということらしいです。リラックスマンというのは、シンクロ・エナイジャー?というゴーグル(VR体験機のようなヴィジュアル)?の家庭洋普及機のことらしく、世界中に40箇所に開設されたブレイン・マインド・ジムという施設?で推奨?されている療法?らしいです。これは、米のデニス・ゴルケス博士が提唱?するものらしく、脳を鍛えることで人間性?の成長を促進する効果?が期待できるらしいです。という右記情報はライナーノーツ記載からなんとか編んだものなのですが、正直言って全くどういったものなのか正体がつかめません…(案の定ネット上にも情報皆無です)。これらのシリーズCDに収録された音楽は、聴取シーン/効果ごとに区分けされ制作されたもので、日本の川井久徳氏という音楽家の手によるもののようです。他、マミュピレーションやエンジニアリングに数名のスタッフが関わっており、それを総称して<ENDOMAX PROJECT>というチーム名になっているようです。1枚づつ簡単に聴いていきます。

Vol.1『BRAIN DIVING』

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「effect:ENTERTAINMENT 2」と記載のある通り(なぜシリーズ第一作目なのに「2」なのかは不明)、アップリフティングな気分になりたい時に聴くCDとのこと。こういう俗流アンビエントのあるあるで、効果としてそういうアッパーな状態を企図したものは大体音楽内容が良くないというのがあるんですが、これもまさしくその類。フュージョンにもなりきれていない、水温30度くらいの、冷たくもなくヌルくもない、本当に無意味な背景版MOR音楽という類。先日レビューした歯医者さん待合室のための音楽に、ビートを加えたような印象。ただ、シンセサイザーの音色は良く、Vol.2以降に期待が持てる。

Vol.2『SWEET VITALIZER』

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こちらは「effect:RELAX and REVITALIZE 1」ということで。やはりリラックス系ということで、アンビエント色つよく、先のVol.1より格段に良いですね。このシリーズ全体、おそらく上述のエンドマックスとかいう機械?との関連だと思うのですが、BPM20くらいのゆーくりしたキックずーっと入っており、それが偶然音楽的効果をもたらして、単なるペンタトニック・シンセサイザー音楽になりそうになるのをボトムから引き締めています。

Vol.3『SCATTER BRAIN(RECOVERY)』

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こちらの効果は曲ごとに記載されており「Sleep 1」、「PAIN REDu(ママ)CTION 2」、「FUN MEDITATION」。前者2テーマのものは基本上述Vol.2の音楽印象とほぼ変わらず。問題(?)は「FUN MEDITATION」を謳ったM6「2024 SPACE FLIGHT」。曲名からして期待感高まりますが、果たして相当に良いトラックでした。スペーシーな音像、これまで控えめだったシンセサイザーが縦横に活躍。クラウス・シュルツェ的世界をやや和風にした印象。喜多郎にも近いか。21:50もある壮大なトラックです。

Vol.4『PESSIMISTIC BRAIN(RECOVERY)』

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こちらの効果は「PAIN REDu(ママ)CTION 1」、「MEDITATION」。これだけで既に期待できるわけですが、案の定なかなか上質です。M1、M3はほとんどタンジェリン・ドリームへのオマージュのような。M5はシリーズ中もっとも透明度の高いクリスタルなシンセ音がゆらめくナイスアンビエント。ちょっと小久保隆的でもありますね。M6は謎にジャジーハモンドオルガンとポストパンク的な硬質打ち込みサウンドの融合がなかなかカッコいい。坂本龍一『B2ユニット』を背景音楽向けにめちゃくちゃ希釈したような世界ですが、なんと42分超えの超大作。おそらくこの川井さんという方、自由に音楽を作ったらかなりアイデアとセンスに溢れる人なのではないかな、と予想します。(氏の名前をネットで検索しても同名の江戸時代の和算家の情報しか出てきませんでした)

Vol.5『BRAIN FLIGHT』

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 こちらの効果は「SLEEP 2」と「RELAX and REVITALIZE 2」との由。相変わらずBPM20ほどの非常にゆったりしたキックが全編に鳴っているわけですが、M1はその上にインダストリアルなメタル・パーカッション音や、程よくトーンコントロールされた手弾きデジタル・シンセサイザーのプレイが乗る楽曲で、おそらく本シリーズ中もっとも充実したトラックかもしれません。M2、M3は若干感傷に浸り気味のフレーズがゆっくりと綾を描いていく、正統俗流アンビエント。可もなく不可もなくですね。まさかの8ビートが主導する終曲M4は、『ソリッド・ステート・サヴァイヴァー』期のYMOを極限まで希釈したような世界。なんでこう、ちょっと前の音楽を真似する感じになるんでしょうか。それが好ましさでもあるのですが。

 

次回へ続く…。