CDさん太郎 VOL.9 2019/3/14、15、17 購入盤

こんばんは。本記事は、<次のレアグルーヴはCDから来る>を標語とする(?)、CD特化のディグ日記シリーズ「CDさん太郎」の第9回目になります。今回は2019年3月14日、15日、17日に、それぞれ東京・秋葉原、新宿、吉祥寺〜高田馬場荻窪で購入したCDを計8枚紹介します。

このところなんだかちょっと忙しかったので、購入にまつわることで「CDを買ったなあ」ということ以外の精神的トピックが無いので特に前置きはありません。そういうときこそ「CDを買ったなあ」ということ自体の感触がそれ自らとしてだけで鮮やかに蘇ってきたりして、へんに快くもありますね。だからCDを買います。

本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。

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1.

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アーティスト:ファンキーフォックス
タイトル:フューチャーフォックス
発売年:1993年
レーベル:ファンハウス
入手場所:ブックオフ 秋葉原
購入価格:280
寸評:加曽根康之と川野憲一による、中学生が考えたような素晴らしい名称のキーボードユニットが93年にリリースしたセカンド作。「キーボード」といいましたが、この時代に頻出したヤマハプロデュースによるエレクトーンデモンストレーション的作品となっています。この二人個々人についてはネットにあたっても全然情報が出てこず…もしかすると半プロのインストラクターの方々とかだったのでしょうか。音楽内容はというと、デモンストレーションものの常套たるテクニカルな鍵盤さばきをプレゼンするようなスポーツフュージョンが主たる感じなのですが、CDジャーナルの作品ページでも言及されているように、かなりTMNに影響を受けた感じがありますね。エレクトーンものの大傑作、三原善隆『ナイトライダー』的なライトメロウmeetsニューエイジな世界を求めると若干肩透かしを食いますが、ちょっとアシッドジャズ的なM2、スーパーマーケットファンクなM5など、面白い。たぶん一番の聴きものはM6ビートルズ「アンド・アイ・ラブ・ハー」、M7ストーンズ「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」のカヴァーでしょうか。これらは散開前のYMOぽさもあるシンセポップでかなり良いです。しかしこの時代にこの音楽性というのは逆にすごいというか、反動的と言うか…。2019年ぽさにいい感じで接触する結果となっています。トレンディなジャケも◎。

 

2.

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アーティスト:中村幸代
タイトル:目の前のにんじん
発売年:1990年
レーベル:PONY CANYON
入手場所:ブックオフ 秋葉原
購入価格:280円
寸評:上記ファンキーフォックスと同じくヤマハによるプロデュース作品。この中村幸代の作品、一つ前のファーストアルバムがそれこそライトメロウmeetsニューエイジなテイストで素晴らしく、他作品も是非買わねばと思っていたところでした。へんなタイトル(こういうセンス、当時の少女漫画カルチャーぽさを感じて好き)に少しだけ躊躇してしまいましたが、ジャケのノーマン・シーフ調ファジーネスに惹かれて購入。ファーストはニューエイジ調の奥行きがあったので、それに準じる作風なのかなと予想していたのですが、いきなりM1からハイエナジーなエレクトロサウンドが展開されて喫驚です。このあたり、編曲を担当している羽田一郎のカラーが濃厚に反映されている感じがします。とはいえども、もはや最近の鍛錬によって、こういうアレンジ傾向もわたしのリスニング感覚の中で全然アリになっているので、かなり楽しく聴いてしまうのでした。ハイエナジー調にプラスして、ちょっとニュージャックぽさ、あるいはファインヤングカニバルズ的な俗UKソウル感もあります。ブックレット内に完全に楽屋落ちの意味不明なフォト漫画みたいなのが掲載されていて、実に時代を感じます。

 

3.

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アーティスト:宮下富実夫
タイトル:天河/五十鈴編
発売年:1986年
レーベル:ポリドール
入手場所:ブックオフ 秋葉原
購入価格:500円
寸評:またしても宮下富実夫によるニューエイジ作です。以前にも紹介したとおり、本当に把握しきれないほどのリリース数を誇る氏ですが、80年代半ばのCDが落ちていることは意外にも稀なので、勇んで購入しました。やはりというべきか、この時期はデジタルシンセサイザー発展期なだけあって、音色上の特性がより今の聴取感覚に近しい気がします。内容としては相変わらずのメディテーショナルなニューエイジ俗流アンビエントなのですが、エレクトロニクスおよびそこから導かれる音がネイキッドなこともあって、より原理的なニューエイジ美学を感じます。珍しく使用楽器が詳細にクレジットされているので、未来のために書き出しておきます。CASIO CZ-5000、CZ-1000、CZ-101、JUNO-60、SH-2、PROPHET-600PRO、JX-3P、PG-200、PC-8801mk2、MPU-401、SIX-TRAK PRO、EX-800、SYSTEM-100M、MC-4、DRUM TRACKS PRO、CHOROMA Pokarlsとのことです。圧巻。

 

4.

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アーティスト:ジェノビア・ジーター
タイトル:ジェノビア
発売年:2001年(オリジナル 1986年)
レーベル:BMGファンハウス(オリジナル RCA Victor)
入手場所:ブックオフ 秋葉原
購入価格:280円
寸評:いわゆる「ブラコン」とされている音楽、これだけシティポップ〜ライトメロウ的なものが復権している中にあって、いまいち総体的な再評価からこぼれ落ちているような気がしているのは僕だけでしょうか。このジェノビア・ジーターの盤は数年前に(鬼のようにブギー〜ブラコンものをリイシューしていた)Funnkytown groovesからも出ていましたが、日本のBGMからも出ていたとは知らなかったです。この作品のクオリティの高さは『U.S.ブラック・ディスク・ガイド』での褒め方などを通して想像していたのですが、今回安価でめぐりあいようやっと購入。果たして、最高ですね…これは。あまりここで僕がどうのこうのいってもしょうがないような気がしますが、あえて言うことを探すなら、もしシティ・ポップへの再評価などを通じてスムースグルーヴミュージックに対して興味を持つ方々がいらっしゃるようなら、こっちの方面も是非聴いてみてほしいです、ということでしょうか。逆さまな表現なのですが、このように素晴らしいライトメロウ的盤がたくさんあります。

 

5.

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アーティスト:津島利章
タイトル:仁義なき戦い サウンドトラックコレクション
発売年:1995年(オリジナル劇伴 1973〜1979年)
レーベル:VAP(原盤 東映)
入手場所:ユニオンレコード新宿
購入価格:580円
寸評:『仁義なき戦い』シリーズは、その映画自体の絶えない高人気も反映して、各規格とも中古盤市場で堅調値付けを保ってきたのですが、昨年、現存する全てのシリーズ劇伴を収録した3Wの決定盤CDセットがリリースされたこともあって、今回購入したような旧規格盤が安価で市場に出回るようになってきました。映画シリーズ自体を愛していることは無論なのですが、あのスコアを単体で味わいたいという欲求は映画を観たものなら誰しも持つはずで、いつか手に入れたいと思っていたのでした。そこへさして今回旧規格盤が安価で店頭にあったもので、購入。津島利章は古くから深作欣二映画の音楽を担当しながらも、様々な東映映画の劇伴を務めてきた人。ラロ・シフリン的スリラーBGMと日本土着のスペクタクル性が融合した唯一無二の作風だと思います。同時期の<東映ファンク>みたいに言われるものがある種のプロイテーションムービー的軽薄性を感じさせるところへ、津島氏の音楽はなんともいいがたい独特の湿性溢れる重厚さを醸しているのでした。時にちょっとドリリュー風ですらあって、エスプリもあります。その一方この『ジンタタ』のテーマに象徴的なように、ほとんどデュアン・エディかよ、というガレージーなギターサウンドを混ぜてきたりと、実にスポンテニアス。カッコいいですね。

 

6.

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アーティスト:ピロレーター/シャーロック/サンバ
タイトル:エヴリー・セカンド
発売年:1989年
レーベル:WAVE(原盤 Ata tak)
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
購入価格:680円
寸評:Ata Takのファウンダーにしてノイエ・ドイチュ・ヴェレの立役者、元デア・プランのピロレーターことクルト・ダールケが、89年にヤー・ヤー・ヤーのフランク・サンバと米ジャズシンガー、リンダ・シャーロック(ソニー・シャーロックの妻)と組んでリリースした疑似ディスコ作。この作品を買った日、仕事でピロレーターのことをあるアーティストから話を聴くということがあり、しかも執筆中の某作ライナーにおいてリンダ・シャーロックのことを調べている中で入手した作品で、妙なシンクロニシティを感じたりしました。内容はといえば、かなり上質のエレクトロファンク〜フェイクディスコなのですが、稀代の諧謔師ピロレーターがこれをやっているというのが面白いですねえ。ライナーによると1988年にドイツの文化機関がソウルオリンピック開催に際して「クンストディスコ=アートディスコ」というコンセプトでピロレーターに制作委託したものらしく?、そのとおり理知と諧謔の入り混じったダンスミュージックとなっております。聴き心地的には<普通の音楽>に聴こえないこともないのですが、濃密な空虚感が漂っており、そのあたりが何より面白い。これはDJでかけたいやつですね。

 

7.

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アーティスト:本條秀太郎
タイトル:散華
発売年:1990年
レーベル:日本クラウン
入手場所:ディスクユニオン高田馬場
購入価格:100円
寸評:これぞ今回の目玉盤。ジャケに映る本條秀太郎氏、一見反社会勢力に見えますが、 60年代前半から活動する日本の民謡・端唄・俚奏楽三味線の著名演奏者です。この時代に頻出した日本伝統楽器とニューエイジの融合となる一作で、多分にもれずシンセサイザーなどを大胆導入した内容なのですが、そのバランス感覚が実に秀逸で、細野晴臣&中沢新一のコラボ期のサントラともいうべき汎ジパング的なスピリチュアルミュージックとなっています。氏の三味演奏の闊達ぶりはもちろんのこと、尺八、笛、太鼓、そしてコンシャスなコーラス(というか詠唱、ときに般若心経)やシンセサイザーが交わり乱れ、もはやこのレベルになると海外からのリバイバルも難しいだろうなと思わせる抹香系和ニューエイジとなっていますね。シンセサイザー演奏は「kazuba masao」とクレジットがありますが、どなたでしょうか。出色はM3「阿修羅」。ドラマチックなニューエイジ曲で、ピーター・バウマン主宰の「プライベート・ミュージック」などに親しいニューエイジ感を感得しました。細野さんもライナーにスピリチュアルな文章を寄せており、面白いです。

 

8.

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アーティスト:モーガン・フィッシャー
タイトル:re・lax
発売年:1992
レーベル:プレムプロモーション
入手場所:ブックオフ荻窪
購入価格:280円
寸評:exモット・ザ・フープルの鍵盤奏者モーガン・フィッシャーは、それまでのグラムロック〜アヴァン路線を経て、1985年に日本へ移住、以降はヒーリング音楽〜環境音楽系のフィールドで活躍しています。わたしは「俗流アンビエント」みたいなものにハマる以前から氏の音楽を好んでおり、幾作かCDを持っているのですが、この度久々にヒーリング期のCDを買ってみました。こうやって改めてきくと、相当に日本的な俗流アンビエントになっており、妙に感心してしまった次第です。なによりそのメロディー感覚。おそらく俗流アンビエントの名門たるプレムプロモーションからのディレクションもあってそうなっているのかもしれないのですが、もはや完全に日式ヒーリング音楽。暖かな手弾きシンセサイザーの音色、ペンタトニック調メロディー、歌謡的緩急を孕んだタッチ…。いや、かなりいいです。むしろ俗流アンビエントの美点が純粋に息づいている感すらします。ちなみにモーガン・フィッシャー氏、吉祥寺の中華料理屋「中華街」で食事をしているところに遭遇したことがあります。

 

次回へ続く…

CDさん太郎 VOL.8 2019/3/6、8、10 購入盤

こんにちは。本記事は、<次のレアグルーヴはCDから来る>を標語とする(?)、CD特化のディグ日記シリーズ「CDさん太郎」の第8回目になります。今回は2019年3月6日、8日、10日に、それぞれ東京・吉祥寺、渋谷、三鷹で購入したCDを計11枚紹介します。

三鷹の「パレード」というお店、(行きつけている散髪店が近隣にあるので)定期的に訪れているのですが、実に名店です。このところどんどんとその姿を消しつつある、いわゆる「町のレコード屋さん」で、オールジャンルを幅広く扱い、セレクトされた廃盤やレア盤などよりベーシックな有名盤や帯付き日本盤を多く置く店なのですが、とにかくその商品管理の質が高く、盤質表記も非常に厳密。また、行く度に「こんなアイテムがこんなお手頃価格で!」という発見もあり、常連客が多数いるのも納得のお店です。店主の方は、数年前に惜しくも閉店した高田馬場の名店「タイム」で修行を積み1986年に独立、パレードを開店されたらしいです。思えばタイムもとても素晴らしいお店でした。ご夫婦でやられているようなのですが、お二人ともとても優しく、ヒーリングポイントも高いです。永く地域の音楽文化へ貢献してきたお店だけが醸し出せる雰囲気がありますね。是非お近くへ寄った際は訪ねてみてください。もちろんCDも充実しています。


本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。

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1.

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アーティスト:ジョン・C・リリィ/リミックス:PBC
タイトル:◀エコ▶[地球暗号制御局]
発売年:1993年
レーベル:八幡書店
入手場所:吉祥寺 よみたや
購入価格:300円
寸評:吉祥寺駅南口を出て井の頭通りを東に少し行ったところに店を構える硬派な古書店「よみたや」。その店頭ガレージセール箱にて発見。ジョン・C・リリィ氏は50年代から活動する米国の脳科学者で、ライフワークだったイルカとのコミュニケーション研究が映画『イルカの日の』のモデルになったことでも有名。著書も多数ある方ですが、このような音楽作品があるとは知りませんでした。これは、日本のオカルト系出版社「八幡書店」がリリースした、氏のモノローグに放送作家などとしても活動する谷崎テトラ氏による日本のテクノ・ユニット「PBC」がトラックを付けた作品。タイトルにある「エコ=E.C.C.O.」とは「地球暗号制御局」のことで、我々には通常偶然だと思われるものも実はこの高次的存在たる「エコ」によって司られているとする独特の思想が展開されます。言ってしまうなら相当にオカルト臭の強い内容なのですが、肝心の音楽がかなり良く。PBCは近年活動再開して国内フェスなどにも出演していますが、ここでの音楽は彼らならではのインダストリアル&アンビエントな絶妙のエレクトロニック・ミュージック。ピエール・アンリをミニマル化したようなミュージック・コンクレート的楽曲もあり、それらの先鋭性もよい。もちろんイルカの声も収録。本作は94年に米のアンビエントレーベル<silent>からも発売されているようです。

 

2.

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アーティスト:AMAHORO
タイトル:Flowering of the Spirit いのちの花
発売年:1995年
レーベル:アマホロミュージック
入手場所:吉祥寺 よみたや
購入価格:300円
寸評:コラ/シンセサイザー奏者の川岸宏吉氏とインドの弓奏弦楽器エスラージ奏者の向後隆氏によるニューエイジ系ユニットAROHOROによるファーストアルバム。こうした民族楽器系ニューエイジにありがちな、有名曲をなんとなく演奏してお茶を濁す的なものではなく、全編オリジナル曲。しかも数曲では川岸氏がボーカルもとるという意欲作です。シンセサイザー使いといってもエレクトロニックな質感はほぼなく、色付け程度で、あくまでコラとエスラージのアンサンブルを楽しむロハシーもの。CDを再生する前、ボーカル入りの旨をみて一瞬嫌な予感がしたのですが、聴いてみると清廉でフォーキーな魅力があり、ニューエイジ系のボーカル物によくある抹香臭さや芝居臭さはありません。ラーガ調のM6「ハレルヤソラ」がとくに良い。

 

3.

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アーティスト:Chris Thompson
タイトル:Chris Thompson
発売年:2001年(オリジナル 1973年)
レーベル:Scenescof Records (オリジナル The Village Thing)
入手場所:ディスクユニオン 渋谷中古センター
購入価格:240円
寸評:クリス・トンプソンニュージーランド出身のミュージシャン。渡英後73年にヴィレッジ・シングからリリースした1stアルバムが本作。ヴィレッジ・シングのオリジナル盤は目玉が飛び出るほど高いのですが、CD再発されているのを今まで知らず今回偶然発見し勇んで購入。UKフォークにハマっていたころ、マジック・カーペットというユニットの作品がとくに好きでよく聴いていたのですが、本作にはそのマジック・カーペットのメンバーが参加しているというのもポイントが高いです。ラーガ調アシッド・フォークの名盤と言っていいと思います。キース・クリスマス、ロビン・スコットなどとも比肩すべき存在かなと…。ギターも相当に巧いですね。ボーカルはややニック・ドレイク調。

 

4.

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アーティスト:Mark Thompson
タイトル:Open Windows Empty Rooms
発売年:2012年(オリジナル 1982年)
レーベル:BIG PINK (オリジナル Never Summer Productions)
入手場所:ディスクユニオン 渋谷中古センター
購入価格:340円
寸評:似たような名前の人が続きますね。このマーク・トンプソンは米コロラド州出身のシンガー・ソングライターで、本作の前年リリースとなる1stアルバムがアシッド・フォーク名盤としてファンには有名な方です。その1stはマイケル・アンジェロなども思わせるサイケデリックで奇妙な浮遊感ある名盤でわたしも愛聴しているのですが、この2nd、いきなり冒頭からスリージーなギターとタイトなドラムが主導するストリートロックで、この人にそういうものを求めてなかったので面食らいました(ストリートロック、大好きなんですけど)。基本そういった路線の曲が多いので聴きながらメゲそうになりますが、1stに通じる弾き語り曲はやはり素晴らしいですね。儚げなボーカルが◎。

 

5.

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アーティスト:Mike Williamson
タイトル:Mike
発売年:2010年(オリジナル 1978年)
レーベル:BANDIERA MUSIC (オリジナル SELECT MUSIC PRODUCTIONS)
入手場所:ディスクユニオン 渋谷中古センター
購入価格:340円
寸評:米ポピュラー系シンガー、マイク・ウィリアムソンの2ndアルバムです。次作3rdがライトメロウ〜AORの隠れ名盤として評価されている人で、僕もその3rdを愛聴しております(例のミュージック・マガジン誌、AOR〜ヨットロック特集の個人ランキングでも30位以内にいれるかどうかかなり迷った)。この2nd、AORというより、全編バリー・マニロウ的なポピュラーボーカル風で、ライトメロウ的視点からは若干の物足りなさがありますね…。ですが、M2「Starry Night」は準キラーな感じで可。しかしこの人の声、相当ジョン・セバスチャンに似てますね。あとこのCD、なぜかマスタリングレベルが異様に小さくて減点。

 

6.

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アーティスト:吉田弘
タイトル:キャットコール
発売年:1991年
レーベル:キングレコード
入手場所:ディスクユニオン 渋谷中古センター
購入価格:140円
寸評:ライトクラシック系のバイオリニスト、吉田弘子の3rdアルバム。毳々しいジャケからは想像の難しいスマートなフュージョン路線のアルバムです。ラテンテイストの曲がいくつか入っているので、そのあたりがこのジャケたらしめているのでしょうか。こうしたライトクラシックmeetsフュージョンなものは相変わらずいろいろ買っているますが、これはニューエイジ色が希薄な分、2019年基準だとギリギリな感があります。直居隆雄、天野正道といったアニメ〜劇伴界の作家が作編曲を担当、松本峰明(pf.)、渡辺直樹(ba.)、市原康(Dr.)、塚山エリコ(syn.)といったフュージョン系のミュージシャンがバックを努めているのですが、なぜか数曲でルーファスのベーシスト、ボビー・ワトソンが加わっていて喫驚しました。何故。なお吉田弘子さんは現在も活躍中で、よりクラシック寄りの演奏活動を行っているようです。数年前にはピアソラ集もリリースされた模様。

 

7.

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アーティスト:結城比呂
タイトル:Prism
発売年:1998年
レーベル:日本コロムビア
入手場所:GEO三鷹
購入価格:180円
寸評:90年代初頭から活動する男性声優による、98年リリースのオリジナル歌唱アルバム。作編曲陣は見良津武雄、鶴由雄、甲斐完治、安西史孝などで、結城氏自身のペンになる曲も3曲収録されています。基本的には当時のミドルオブロードなJ-POP路線(ZAINとかビーイング系の香り)なのですが、M5の「ねむれない夜」はなぜかパーシー・スレッジ「男が女を愛するとき」やプロコル・ハルム「青い影」的な、メンフィスソウル調バラードで面白いです。他、M6「Night Song」はさすがの安西史孝ワークと思わせるライトメロウバラード。出色はM8、同じく安西作編曲&シンセプログラミングのシティポップチューン「LADY」。結城氏のスムースなハイトーンボイスとこうしたアップナンバーの相性はとても良いですね。この一曲だけでlight mellow部案件かと思われます。

 

8.

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アーティスト:SECRET CRUISE
タイトル:TELL YOU WANT
発売年:1996年
レーベル:エピックソニー
入手場所:三鷹 パレード
購入価格:500円
寸評:これぞ今回の一押し盤。元シャムロックの高橋一路によるソロプロジェクト「シークレット・クルーズ」によるセカンドアルバムです。シャムロックといえばネオモッズをルーツとする和製スタイル・カウンシル的なポップスを量産した名ユニットですが、その頃からあったUKソウル〜メロウ志向により特化したのがこのシークレット・クルーズだと言えると思います。帯には「Japanese AOR会心作」とありますが、その惹句通りUKソウル〜アシッド・ジャズなテイストに加えてもっとオーセンティックなAOR感覚が多く注入されているように思います。強いて言えば、オリジナル・ラヴをよりAOR寄りにした感じでしょうか。そういった連想するワードを並べてみるだけでも、この作品の魅力が伝わるのではないかと思いますが、何よりも楽曲自体の出来が良いということが最大のポイントかと感じます。全編に渡って決してスキを見せることのないメロウチューンのオンパレードです。プロデュースは高橋氏自身、バック演奏には大竹徹夫(key.)、植田博之(Ba.)、成田昭彦(dr.)など凄腕スタジオミュージシャンたちを迎え、誠に盤石。ほんと素晴らしい盤だなあとおもい、さらなる情報を求めネットを回遊していたら過去既にハタさんの「シティ・ポップ記録簿」に登場しており褒められていました。得心。

 

9.

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アーティスト:安西史孝、小椋佳薬師丸ひろ子
タイトル:レディ!レディ オリジナル・サウンドトラック
発売年:2013年(オリジナル1989年)
レーベル:ユニバーサルミュージック(オリジナル イーストワールド)
入手場所:三鷹 パレード
購入価格:500円
寸評:太田圭監督、薬師丸ひろ子桃井かおりダブル主演による89年公開のトレンディラブコメディ『READY! LADY』のサントラ盤です。2013年頃ユニバーサルから、どういう基準で選抜されたのかよくわからない過去映画サントラの廉価再発ラッシュがあったのですが、その中の一枚です。当時は詳細タイトルまでよくチェックしていなかったので、まさかこんなものまでが紛れていたとは知らず。この映画は未見なのですが、サントラが安西史孝ワークスの隠れ名盤という情報を目にしていたので、いつか欲しいなと思っていたのでした。のっけから安西氏らしいシンセ使いのエレクトロブギーが飛び込んできて、実にカッコいい。かと思えばオールドタイミーなディキシーランドジャズのようなものや教会音楽風のもの、スリラー的演出をもり立てるのであろうアヴァンかつプログレッシブなもの、スーパーで流れていそうなシンセボッサ、ピアノバラード、タブラを導入したミニマルファンクなど、相当に多彩。小椋佳との共作「Dear Painter」のニューエイジ歌謡感も◎。テーマ曲の高見沢俊彦作・薬師丸ひろ子歌「Wind Boy」の歌謡ニューエイジ感も悪くないですね。

 

10.

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アーティスト:玉木宏樹とMIND MESSENGERS
タイトル:音楽浴 高原…はるか空よ
発売年:1992年
レーベル:日本コロムビア
入手場所:三鷹 パレード
購入価格:400円
寸評:玉木宏樹&S・M・T名義での名盤『タイム・パラドックス』(75年作)がプログレッシヴロックファンの間で評価が高い、東京芸大出身の作曲家/バイオリニスト玉木宏樹。ムーグシンセサイザーとバイオリンが融合するその『タイム・パラドックス』のインパクトが大きいため、クラシック界での活躍が忘れられがちですが、純正律を用いた作曲などでその世界でも大きな足跡を残している方です。これは、もしかするとシンセサイザー使いのアヴァンエレクトロニック音楽が入っているのか?と思って買ったヒーリング音楽集なのですが、残念ながらそういったものは入っておりませんでした…。ハープ、二胡、タブラ、ギター、ケーナチャランゴ、フルート、オカリナ、チェロ、そして自身のヴァイオリンからなる室内楽風音楽で、これはこれで上質です。ちなみに、2012年の逝去後も氏のTwitterアカウントは更新され続けており、ひたすら楽理についてつぶやいていて凄みがあります。スタッフさんが遺志を継ぎ運営されているようです。

 

11.

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アーティスト:ロマ・イラマ
タイトル:ブガダーン グレイテスト・ヒッツ 1975〜1980
発売年:1995年 (オリジナル 1975年〜1980年)
レーベル:オルターポップ(オリジナル SONETA CORPORATION)
入手場所:三鷹 パレード
購入価格:600円
寸評:オルターポップが90年代に展開していた「ロード・トゥ・ダンドゥット」シリーズの第一弾となった、大スターのロマ・イラマの初期音源を集めたCD。ダンドゥットはインドネシアの大衆音楽で、ここ日本でも90年前後のワールドミュージックブームの折、<女王>エルフィ・スカエシやヘティ・クース・エンダンの作品が沢山紹介されたことで、お馴染みでしょう。私はオルターポップによるこのシリーズのCDを数枚所持しておりますが、その丁寧なコンパイル仕事やライナーの充実ぶりに非常なリスペクトを捧げております。男性シンガーでは最大のスターといえるロマ・イラマのこのCDも、監修の田中勝則氏がロマ本人とやり取りの上丁寧に制作したもので、そのアーカイバーぶりに畏敬の念を覚えます。内容はもちろん素晴らしく、ダンドゥットの精髄を心ゆくまで味わえるものになっています。

 

次回へ続く…

CDさん太郎 VOL.7 2019/3/1、3 購入盤

こんばんは。本記事は、<次のレアグルーヴはCDから来る>を標語とする(?)、CD特化のディグ日記シリーズ「CDさん太郎」の第7回目になります。今回は2019年3月1日と3日に、それぞれ東京・新宿、中野〜高円寺で購入したCDを計12枚紹介します。

3/3に訪れたRARE高円寺店ですが、4月末をもって40年以上の歴史に幕を閉じるということで、今月から閉店セールを実施しています。昔話で恐縮ですが、20数年前、当時高円寺に下宿していた兄を訪ねて上京した際、駅で落ち合ってすぐに連れて行ってくれたのがRARE高円寺店だったと記憶しています。それがおそらく人生で初めてのレコード屋さん体験だったように思います。雑多で埃っぽい店内、隣接の仲屋むげん堂と曖昧に侵食し合う区画(と漂ってくるお香の匂い)、それらすべてが当時思い描いていた「ザ・高円寺」そのもので、私はいたく感動したのでした。今は去りし90'sサブカルチャー

今回久々に訪れた店内、その時からほとんど時間が止まったままのような空間でした。独特のダルい空気…懐かしいな〜とLP/CDを掘っていたら、どこからかずーっと強烈なモスキート音が鳴っていることに気づき、場所によってはガンガン頭痛がするほどに。音の出元を探したら、ジャズLPコーナー脇のエアコンの裏に超高周波用スピーカーが付けられていました。これは一体何のためなんだろう。若者DJが漁りすぎるのを防ぐためなのか…?閉店セール期間なのだからむしろなるべく客を長居させた方がいいんじゃないか…?万引き防止なのかな…性悪説〜。

こういってはなんですが、以前吉祥寺店でもお客さんと罵り合っている(新春早々)光景を目にしたりと、RAREというのはそういう独特の殺伐があるんですね。老舗レコード屋特有のそういう感じ、今はどんどん失われつつあり、好ましくもあります。他店舗はこれからも元気に営業を続けていくとのことです。頑張ってください!

本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第一回目のエントリをご参照ください。

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1.

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アーティスト:フィニス・アフリカエ
タイトル:ア・ラスト・ディスカバリー:ジ・エッセンシャル・コレクション 1984-2001
発売年:2013年
レーベル:EM RECORDS (オリジナルMúsica Sin Fin)
購入日:2019/3/1
入手場所:ディスクユニオン新宿中古センター
購入価格:1,152円
寸評:これぞ現在に続くバレアリック・ブームを内外に印象づけた、エム・レコードによる傑作コンピレーション。スペイン人ミュージシャン、ホワン・アルベルト・アルテシェ・グエルが1980年代初頭に発足したユニットであるフィニス・アフリカエ。本作は彼らが84年から2001年に残した作品をコンパイルしたものです。私はこれまでこの音源をデジタルで愛聴しており、のちに出たEPもCDとして所持していたのですが(彼らのオリジナル作のLPは高くて買えない…)、バレアリック、アンビエント、アフロ、エスノ、ファンク、ポスト・パンク、シンセ・ウェイブ、アンビエント、ニュー・エイジ(系の思想は本人には無いとのことですが、サウンド的連関を感じざるを得ない)、そういった今色々な場面で喧伝されるタームの全てが、このフィニス・アフリカエにはあると思います。これは言い過ぎではないのですが、今2019年3月の時点で、自分にとって一番カッコいい音楽です。この感覚に匹敵するのはアーサー・ラッセルしか思い浮かばないです。最高です。ダンス・ミュージック・コミュニティ内での知名度が先行している感がありますが、私のように<夜遊びしてない人>にも是非聴いてもらいたい。

 

2.

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アーティスト:酒井俊
タイトル:マイ・イマジネイション
発売年:1999年(オリジナル1979年)
レーベル:VIVID SOUND (オリジナル トリオ)
購入日:2019/3/1
入手場所:ディスクユニオン新宿中古センター
購入価格:612円
寸評:今もバリバリ現役で活動されているジャズ・シンガー酒井俊による3rdアルバム。「女性ジャズ・シンガー」と聞く時に連想される小粋でクルーナー的スタイルというより、もっと野趣溢れるダイナミックな歌唱法で、さらにいえば非常にソウルフル。以前ネット上で試聴音源を聴いて以来LPを探していたのですが、旧規格盤CDが安価で売られていたのでこの度購入しました。なんといっても全編にわたって聴かれる坂本龍一によるアレンジが秀逸!M1.のジョニー・ブリストル作のソウル名曲筆頭に、いわゆる洋楽スタンダードを取り上げたものなのですが、そのアレンジの妙のおかげで、単にクオリティの高いライトメロウ名盤という印象を超え出て実に刺激的です。参加メンバーはというと、坂本龍一に加えて松原正樹鈴木茂小原礼高橋幸宏浜口茂外也etc.という豪華メンツ。これは要するに、同時期の坂本龍一&カクトウギセッションの面々を中心とした布陣で、当時の日本フュージョンの最高峰的メンバーとも言えます。演奏の闊達さはさることながら、YMO初期に通じるシンセサイザー使いの編曲が素晴らしい。前述のM1におけるテクノ・ブギーっぷり、そして特筆すべきがアルバムタイトル曲M5におけるKORG ポリシンセ使いのバレアリック・フローター感。浜口茂外也のper.と大徳俊幸のエレピのみを従えたシンプルな編成で、コズミックなメロウネスが際立つ秀曲。このところの探求テーマである<ニューエイジ・ポップ>としても素晴らしい。

 

3.

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アーティスト:笠井紀美子
タイトル:TOKYO SPECIAL
発売年:1990年(オリジナル1977年)
レーベル:CBSソニー
購入日:2019/3/1
入手場所:ディスクユニオン新宿中古センター
購入価格:522円
寸評:上記作に引き続き、和ジャズ女性ボーカル名盤を。わたし、お恥ずかしながらこの大名盤、これまで未所持でした。音楽ライターを自称しライトメロウ周辺にもかすらせていただいているのにもかかわらず…こういうことが赤裸々になってしまうのも、本シリーズの(自分だけにとっての…)スリルです。日本を代表する女性ジャズ・シンガー笠井紀美子が77年にリリースした本作、全て安井かずみによる日本語詞で、筒美京平、横槍裕、鈴木勲、森士郎、矢野顕子山下達郎による曲を歌ったポップス寄りのアルバムです。この場合のポップスというのは、AORシティ・ポップになるのですが、全編本当に素晴らしい楽曲のオン・ザ・パレードで、溜め息…。笠井さんのしなやかで繊細な歌唱の魅力、鈴木宏昌を中心とした<プレイヤーズ>へと後に発展する<コルゲンバンド>によるフレッシュ極まりない演奏(激ウマ!)。特にキラーなのが、山下達郎が後に『GO AHEAD!』の中で「LOVE SELEBRATION」としてセルフカヴァーすることになるミディアム・ファンク、M1「ヴァイブレーション」ですね。このウィスパー・ボイスを交えた歌唱とクール&ホットな(ファンクの妙を押さえた)演奏の合体、たまりませんね〜。今回入手したのはCD選書シリーズ の旧規格盤ですが、LP当時と同じ惹句が帯に書かれています。曰く「キミコは、TOKYOに何を求めたのか?何をコミュニケイトしたいのか?」。よくわからないけど最高!

 

4.

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アーティスト:宇都美慶子
タイトル:シンパシィ
発売年:1990年
レーベル:ポリドール
購入日:2019/3/1
入手場所:ディスクユニオン新宿中古センター
購入価格:224円
寸評:1990年デビュー、歌手/作曲活動とともに現在では料理研究家やエッセイストとしても活動する宇都美慶子によるファースト・アルバムです。宇都美さん、埼玉のFMラジオ局NACK5で月〜木朝帯にミニ番組をお持ちで、以前わたしがラジオ宣伝仕事で同局に頻繁に通っていた際、そのお姿をお見かけしたような記憶があります。なので、個人的に<才色兼備のラジオパーソナリティ>というイメージが強く、音楽作品を聴くのは今回が初めて。本デビュー盤は全編プロデュースを松任谷正隆が担当、編曲を同氏と新川博が分け合っており、この時点でライトメロウ視点的には大期待なわけですが。しかもそこへさして土方隆行鈴木茂、今剛、伊藤広規青山純、ジェイク・H・コンセプションなどが参加しているのだから、大期待以上になってしまうわけで。果たしてその内容は、上述の豪華メンツから想像されるよりかなりロック〜MOR(ミドル・オブ・ロード)的で、今の感覚からすると若干の物足りなさが…。というかまあ、このソツなさこそ、ガールポップ全盛期において<大人の女性ポップス>を演出するには正道であったのでしょう。当たり前のことなのですが、<シティ・ポップ調>というのは、当時にしても取りうる音楽的戦略/志向の一つでしかなかったんですよね。そんな中、以前本ブログにも登場した障子久美(そちらもマンタがプロデュース)に通じるファットなエレクトロ・ファンクM7「会いに来ないで」は、ボーカルとトラックの乖離感など含めて少しだけ面白い。

  

5.

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アーティスト:S. JOB ORGANIZATION
タイトル:FREEDOM ANTHEM
発売年:2016年(オリジナル 1978年)
レーベル:Presch Media GmbH (オリジナル Shanu Olu Records)
購入日:2019/3/1
入手場所:ディスクユニオン新宿中古センター
購入価格:702円
寸評:ナイジェリアのアフロサイケバンドS.JOB MOVEMENTから派生したS. JOB ORGANIZATIONによる1978年作。S.JOB MOVEMENTはかなりアタッキーで戦闘的なロックテイストが特徴で、一時期そういう音も好きでよく聴いました。が、最近はもうちょっとダンス・オリエンテッドなものが好きで、78年というディスコ全盛のリリース年代に惹かれて購入。これを再発しているPresch Media GmbHは一時期狂ったようにアフロものを再発しており、途中まで追っかけていたのですが、リリース量が関心を上回ってしまい最近はご無沙汰状態になっていたので、今回は久々の購入です。内容はといえば、硬派なアフロ・ファンクとレゲエとの融合が実に面白いです!M2、M3あたりのコロコロした弦楽器と電子楽器使いの大胆な感覚はアフリカ産レゲエにしかない味わいかなと思います。その他ディスコ時代対応のトラックも辛口の良さがあり。最近離れていたアフロものですが、また色々買ってみようかな、と思ったります。

 

6.

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アーティスト:COUNTRY LIVING
タイトル:COUNTRY LIVING
発売年:2014年(オリジナル 1980年)
レーベル:BIG PINK MUSIC (オリジナル FRONT ROW MUSIC)
購入日:2019/3/3
入手場所:ディスクユニオン中野店
購入価格:686円
寸評:スチールギター音楽、スラックキーギター音楽、コンテンポラリー・ハワイアンからAORまで、ハワイ産音楽に惹かれ続けております。その独特のロコテイストにハマって以来、「これ以上至福の音楽があるだろうか…」と呆けながら聴くわけですが、個人的趣味としては、カントリー・コンフォートやルイなどといったコンテンポラリー・ハワイアンmeetsメロウなものがわけても好きです。そんな中、それらの中でも名盤とされるCONTRY LIVINGの唯一作のBIG PINKからのリイシュー盤を今回購入(BIG PINK、正直ハーフブートなのであまり積極的には買いたくないのですが…)。全編にハワイアン・コンテンポラリーらしいルーラルでアコースティックな演奏が聴けますが、出色は当時の米AORやウェストコースト・ロックとも共振するM3、M5。M6、あたり。特にバンド名をタイトルに冠したM6は、あのブレッド&バターの名曲「ピンク・シャドウ」に酷似したコード、メロ、譜割りが堪らないキラーなメジャー7thチューン。ちなみにハワイ、人生でまだ未踏なのですが、いざ行ったらめちゃくちゃハマりそう。

 

7.

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アーティスト:HOLD UP
タイトル:島まで10マイル
発売年:2013年(オリジナル 1978年)
レーベル:キングレコード
購入日:2019/3/3
入手場所:ディスクユニオン中野店
購入価格:686円
寸評:パラシュート〜AB'sの安藤芳彦がそれらの前に組んでいた幻のバンドによる唯一作が、タワーレコード流通限定の「Tower to the People」シリーズでリイシューされたもの。監修は金澤寿和氏です。これまで数度店頭で目にしつつもなんとなくその地味〜なジャケで素通りしていた盤なのですが、これはもっと早く聴いておきたかった!という内容でした。驚かされるのがそのメンバー構成。安藤氏の他、のちにチャクラ〜パスカルズへと渡り歩くドラムの横澤龍太郎、佐藤奈々子SPYを結成するベースの戸田吉則などが在籍しています。このレコード制作の直前までは清水信之紀伊国屋バンドとかけもち在籍していたらしく。そう、これは和光大学紀伊国屋バンド周辺のシーンで活躍した人達によるバンドなのでした。その内容はというと、これまさに全編細野晴臣のトロピカル3部作に通じるチャンキー路線で、「赤いアルバム」のムーンライダーズ、あるいは同時期のサディスティックス夕焼け楽団などにも通じる味わい。それらを青年らしく素直に表現した感じも良い。楽曲、演奏ともにクオリティは非常に高く、プロジェクト性が強くパーマネントな稼働が難しかったからなのかもしれませんが、なぜ後年にきちんと語り継がれなかったのか不思議。おそらく清水信之界隈を介した参加だと思いますが、細野晴臣大滝詠一もゲスト演奏に名を連ねています。

 

8.

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アーティスト:ジュン上久保
タイトル:サンフランシスコの奇跡
発売年:2004年(オリジナル 1972年)
レーベル:富士 (オリジナル 東芝EMI)
購入日:2019/3/3
入手場所:ディスクユニオン中野店
購入価格:1,024円
寸評:昨年読んだ音楽関連書の中でも飛び抜けてウィアードな書、田沼正史著『日本ロック史』。80年代当時に書かれほとんど世に出ずお蔵入り、たまたま昨年デッドストックが見つかった(とされている?)本著、いわゆる<はっぴいえんどYMO史観>に反駁するため書かれているのは明白。一般的には周縁的(あるいはそれまで振り返られることが稀だった、メインストリーム寄り)とされるアーティストらに多くの頁が割かれ、ほとんどもう一つの<あり得た歴史>を読み聞かされているような不思議な内容なのですが、その話法の巧みさやパラノイアックな視点は、同じく昨年に出た名著『The KLF: ハウス・ミュージック伝説のユニットはなぜ100万ポンドを燃やすにいたったのか』へ通じるモノを感じます。歴史を<編む>ということの恣意性と創造性を見せつけられた稀代の奇書といえるでしょう。未読の方は是非探して読んでみてください。さて、この上久保ジュンは同著の中でも重要ミュージシャンの一人として紹介されていた人。これは1972年当時20歳にも満たない氏が一人多重録音した唯一作にして、世界に誇るストーナーハード・ロック盤です。今はシティ・ポップアンビエントが流行っているせいであまり語る人がいなくなっていますが、スピード,グルー&シンキやフード・ブレイン、水谷公生などの日本のニューロック盤というのは、海外マーケットでコアな人気を維持しているもので、この作品は一際カルトなものとして人気が高かったようです。僕がこの盤を知ったのもそういう文脈からで、いつか買おうと思っていたのですが、時は過ぎ…しかし上述の『日本ロック史』を読み、これは是非手に入れなければと思っていたところ入手。内容は、全編非常なボルテージにまみれたダウナー系ストーナー・ロック〜ブルース・ロックで、なぜこれを多重録音にしようとおもったのかという謎も含めて、嗚呼素晴らしい。ライナー執筆者の円盤・田口氏も触れていますが、ほとんど初期DMBQですね。カッコいい。

 

9.

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アーティスト:桃山晴衣
タイトル:弾き詠み草
発売年:2005年(オリジナル 1979年)
レーベル:ビクター
購入日:2019/3/3
入手場所:ディスクユニオン中野店
購入価格:1,344円
寸評:これも上述の『日本ロック史』、あるいは田中雄二氏による大著『電子音楽 in JAPAN』を読み、手に入れたいと思っていた盤。厳格性を重んじる純邦楽界にあって、自作曲を歌い、演奏も闊達自在、斯界でも特異な存在としてその名を広めつつあった三味線奏者・桃山晴衣を、あの中村とうようが今様にプロデュースして産まれた名盤(問題作)。入間市民会館にて行われた録音に加え(これらがまず本当に素晴らしい…。シークを交えたM6など、アコースティック版の裸のラリーズとでもいいたくなる夢幻世界)、なんとモノローグも交えた12分超えの大作M7「虚空の舟歌」に坂本龍一シンセサイザーで参加しています。中村とうようの仕切りで発注したようですが、いったいどういうつもりだったんでしょうか。マッチしているとかしていないとかいう常識的な判断基準を超えて、非常に特異な世界が現出しています。基本的には桃山の詠唱と三味線に、ドローン的にシンセサイザーが絡んでくるという形なのですが、なにかそうやって文字に書く以上のドープさが充満しています。後年頻出する純邦楽ニューエイジの安易な融合とは似て非なる、非常な緊張感に満ちた音楽で、むしろ武満徹湯浅譲二一柳慧など、初期電子音楽時代における現代音楽作家の作品に近いような気がします。

 

10.

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アーティスト:YAS-KAZ
タイトル:風の卵
発売年:1985年
レーベル:PONY CANYON
購入日:2019/3/3
入手場所:RARE 高円寺店
購入価格:400円
寸評:60年代後半から、小杉武久阿部薫坂田明など様々なミュージシャンと演奏活動を繰り広げてきたYAS-KAZこと佐藤康和氏による85年のソロ・アルバム。この時期と前後して姫神との共演作をリリースし、それが大ヒットしたことなどもあり、今では和ニューエイジ的文脈からの評価が主だったものになっている気がしますが、実際は上記のように前衛音楽界隈にも属していた人で、「山海塾」の為の舞踏用音楽を作曲したりもしている硬派な音楽家。若年世代からの再発見が遅れているような気がしますが、この時期のソロアルバムは全て今こそ聴きたいかっこよさにあふれたものだと思っており、見かける度に買ってしまうのでした。全編エスノ〜ファンク、シンセ・ウェイブ、ニューエイジ色濃厚で、特にこの作品はM1「マドモアゼル スタインベルグ」が素晴らしい。ほとんど上述のフィニス・アフリカエにまんま通じる世界だと思いますが、どんなもんでしょうか。パーカッショニストとしても本当に巧くセンスフルで、トータルなサウンドクリエイターとしての側面と奏者としての側面がここまで上手くバランスしているというのはスゴイことだなあと思うのでした。

 

11.

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アーティスト:YAS-KAZ吉川洋一郎
タイトル:OMOTE THE GRAZED SURFACE そっと触れられた表面
発売年:1992年
レーベル:WSP
購入日:2019/3/3
入手場所:RARE 高円寺店
購入価格:500円
寸評:上のYAS-KAZ氏が、作編曲家・吉川洋一郎と組んで制作した暗黒舞踏山海塾のための舞台音楽集です。この時期、このタッグにくわえピアニストの加古隆氏も山海塾のために音楽を制作しており、WAVE傘下のレーベルWSPから数枚のリリースがありました。ジャケが似たり寄ったりなので、いつも「あれ、これ持ってたっけ…?」と店頭で煩悶することになります。吉川洋一郎氏は一時期ヤプーズの鍵盤も担当していた才人で、NHKドキュメンタリーのサントラなどに秀作の多い人なのですが、ここでは舞踏音楽ということで普段の作風よりシリアスな色合いが濃く、かなり聴き応えのあるスコアを制作しています。ボーカルで秋吉みちる(マンデイ満ちる)が参加していますが、どういう繋がりなのだろうか…。こういう舞台向けサントラCDには、数多くアンビエントニューエイジ的傑作が隠れていると思われるので、今後とも掘っていきたい心つもりです。

 

12.

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アーティスト:柴野さつき
タイトル:rendez-vous
発売年:1991年
レーベル:NEWSIC
購入日:2019/3/3
入手場所:RARE 高円寺店
購入価格:500円
寸評:この『CDさん太郎』で度々その名が出てくるのが、現在のニューエイジリバイバルを推進してきた中心的存在のVisble Cloaks。既にアナウンスされている通り、来月にリリースされる彼らの新作は、日本の作家尾島由郎と柴野さつきをフィーチャーしたものになるということで、大変期待が膨らみます。これはその女性ピアニスト、柴野さつきによるパスカル・コムラード・カバー集です(プロデュースは尾島由郎氏で、リリース元は氏の作品も発売している青山スパイラル傘下のNEWSIC)。これ以前にリリースしているエリック・サティ集がマケプレ等でかなりの値段に跳ね上がっていることもあって、CDオンリーでのリリースとはいえ、このコムラード集もまあ簡単には手に入らないだろうなあと思っていたところ、モスキート音が駆け巡るRARE高円寺店のイージーリスニング・コーナーでゲットしました。これは嬉しい。パスカル・コムラードといえば、フランスを代表するアヴァン・トイ・ポップの大家ですが、ここでは元のトイ・ミュージック感を活かしながらも、よりエレクトロニック〜アンビエント的な色彩が強く、実に2019年的ムードです。そしてなにより柴野氏のピアノ演奏が素晴らしく、コムラード曲のキッチュな表皮の奥に潜むノーブルな要素を美しく引き出しています。また、自身によるフランス語のモノローグなども交え、90年代初頭のあの時代、フランス文化に対して日本文化が抱いていた爽やかな憧憬が描き出されているように思います。

 

次回へ続く…

CDさん太郎 VOL.6 2019/2/23、25 購入盤

こんばんは。本記事は、<次のレアグルーヴはCDから来る>を標語とする(?)、CD特化のディグ日記シリーズ「CDさん太郎」の第六回目になります。今回は2019年2月23日と25日に東京・吉祥寺、高円寺で購入したCDを計10枚紹介します。
2/25の分は、同夜に円盤で開催された「LDを見る会」というイベントを見るために少し早めに高円寺へ行った際に買ったものなのですが、その「LDを見る会」がもう最高に面白かった。ハードオフのジャンクコーナーで100円で投げ売られている、環境映像に俗流アンビエント的音楽が付いたLDだとか、オーディオ/ヴィデオ・チェック用の試験LDだったりとか、初期コンピューター・グラフィックス作品のオムニバス盤など、そういったものを集中的に鑑賞する会。すごく刺激を受けました。この会のことはまたどこかに書きたいなと思っています。
またこの間、本「CDさん太郎」と相互補完的な概観を論じるコラム「ポスト・ミュージック考」というものがele-king web上で始まりました。よろしければ是非そちらも御覧ください。

www.ele-king.net

本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第一回目のエントリをご参照ください。 

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

1.

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アーティスト:武部行正
タイトル:ゆふすげびとのうた
発売年:1998年(オリジナル1972年)
レーベル:P-VINE (オリジナル ビクター SFシリーズ)
購入日:2019/2/23
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
購入価格:880円
寸評:Pヴァイン社在籍中、仕事の為もあって、これがラインナップされていた「ニューロックの夜明け」という再発シリーズの作品を集中的に聴いたことがあったのですが、その中でも特に思い入れある作品。自分の手元には持っていなかったので、数年後越しにこの度購入。その「ニューロックの夜明け」での初再発以降、初期日本語ロックの決定的名盤として語られているので、僕が今ここで付け足すことも無いようにも思いますが、久々に耳にして、改めて素晴らしい内容だなと感じ入った次第です。この武部行正、まったくもって謎めいたシンガー・ソングライターで、元々は有山じゅんじと「ぼく」というナイーブな名前のフォーク・デュオを組んでいた人(音源は残っていない)。五つの赤い風船の西岡たかしの推薦によって、ビクター内で先進的なロック〜フォーク路線の作品を扱っていた「SFシリーズ」からアルバムデビューをすることになりました。昨今いわゆる「はっぴんえんど史観」がその勢力を増しすぎているせいで、『風街ろまん』が若者文化全体に即大きな影響を与えたような言説が見受けられますが、実際はまったくそんなことはなく、ごく小規模なシーン内での話でした。そんな中これはそうした同時代において極めて珍しい、はっぴんえんどからの直接的影響をきくことのできる稀有な盤なのであります。もちろん、音楽的にどこがどう似ている、という次元よりも、その英米ロックやポップスの消化方法に近似性がある、ということなのですが。歌唱についていえば早川義夫や高橋照之などの系譜を感じさせるもので、今の感覚からするとぜんぜんはっぴんえんどじゃないじゃないか、と言われるかもしれないのですが。しかしそれこそがこの作品の大きなチャームでもあります。そして、柳田ヒロが中心となったバッキング演奏の過不足なさ、しおらしさ。ニール・ヤングにおけるストレイ・ゲイダーズのような、イアン・マシューズにおけるサザン・コンフォートのような、もっとマニアックにいえば、ロビン・スコットのフォーク期作品におけるマイティ・ベイビーのような、というべきか。最高です。それと、付属のライナー(by田口史人)の面白さ。謎の人物を追う田口さんの足跡とその筆致は、ほとんどアラン・ローマックス。オリジナルLPは10万円ほどします。幻のセカンドがあるらしいが、まだ世に出ていず。

 

2.

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アーティスト:Hideki Masago+Masami Endo+Takuya Mori
タイトル:Chaco Journey
発売年:1995年
レーベル:AWA Records
購入日:2019/2/23
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
購入価格:280円
寸評:AWAレコードは、各種ネイティブ・フルート奏者・真砂秀朗のソロアルバムやプロデュース作を中心にリリースしていたインディー系のワールド・ミュージック〜ニューエイジ系レーベル。近年の和モノニューエイジ再評価シーンを下支えするリスナー文化の中でも特にコアな独自路線を突き進むブログ「FOND/SOUND」でもそのAWAの作品が何点か取り上げれれていますが、なるほど確かに、これは今聴くべき内容かもしれません。この作品は、その真砂秀朗氏を中心として、ギタリストの遠藤昌美氏、サウンド・エンジニアの森卓也氏、ボーカルの藤本容子氏(鼓童のメンバーでもある)が集結して作られたアルバム。ライナーノーツのスピリチュアル抽象度が高くてよく読み取れないのですが、おそらくニューメキシコ州にあるチャコ・ユニオンというネイティブ・アメリカンの聖地でのフィールド・レコーディングに加えて、ネイティブ・フルート、カリンバ、各種民族パーカッション、ギター、シンセサイザーを交え制作された音楽、ということのようです。内容はと言うと、相当に良質で、民族音楽ニューエイジの接合というよくある例の中でも上位にくる盤ではないかと思います。カリンバやパーカッションのシーケンシャルな配置、そして奥ゆかしいシンセサイザーなど、ややクラビーな聴き心地もあり、ダウンテンポものの良作としても評価可能かと思います。

 

3.

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アーティスト:喨及
タイトル:ピュアランド
発売年:1993年
レーベル:グリーン・エナジー
購入日:2019/2/23
入手場所:ブックオフ吉祥寺店
購入価格:500円
寸評:浄土宗和田寺の僧侶遠藤喨及氏は、指圧師、著述家という多面的な才能の持ち主(氏の書きおろした指圧術についての新書を書店で見かけた記憶があります)。音楽家としてもなかなかのキャリアの持ち主で、90年代後半〜ゼロ年代初頭にかけてMIDIから数枚アルバムをリリースするなど、確かな実績をお持ちの方なのですが、1993年、俗流アンビエントのESPともいうべき<グリーン・エナジー>から作品を発表しているとはこれを買うまで知りませんでした。<グリーン・エナジー>といえば、著名(?)オカルティスト、ヘンリー川原氏監修によるミュージックドラッグ系作品や媚薬効果をねらった俗流アンビエントボイジャー1号&2号から発信される宇宙の電波信号を音声化した「スペース・サウンド・シリーズ」(知的財産権処理などの問題で一枚8,000円という超高額盤もあった。誰が買ったんだろう?)など、わりとキワキワな路線なのですが、こういう正統派なニューエイジ作品もあるとは。内容はというと、かなり安心して聴けるギター・ニューエイジで、クオリティも高い。もちろんシンセサイザーも登場、時折琴なども交えながら、奥ゆかしい東方ニューエイジ世界が描かれます。かといってあまり仏教仏教しているわけではなく、その美麗さはむしろウィンダム・ヒル系作品を想起させます。

 

4.

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アーティスト:dip in the pool
タイトル:Wonder8
発売年:1997年
レーベル:Geandisc
購入日:2019/2/25
入手場所:ドラマ高円寺店
購入価格:680円
寸評:2016年にオランダのMusic from Memoryから「On Retinae」が12inchリイシューされたことをきっかけとして、今や世界中に名が知れ渡ったdip in the pool。同曲が収録された『Retinae』(89年)や、昨年LPリイシューされた『Aurorae』(91年)、メンバーたる甲田益也子のソロ・アルバム『Jupiter』(98年)に注目が集まる中、ユニットとしてのキャリア後期作にはあまり光が当たることは少ない気がします。この8作目のアルバムは、メンバーの木村達司が今はなきジャズレーベル、<イーストワークス>内に立ち上げた<Grandisc>からリリースされたもの。このあと彼らは約14年の沈黙に入ることになるわけですが、一聴する限りそのような気配は感じさせない内容になっていると思います。が、現在の視点からいうと、やはり前述の作品群に注目が集中するのもむべなるかな、というか、ちょっと過プロダクションかなあという印象。シンセウェイブ〜アンビエント的感覚は乏しく、むしろかなりダンス・オリエンテッド(しかもあの時代の…)。かつ、本来時系列的な順序は逆ですが、渋谷系の諸々から触発されたようなところも見え隠れしているように思います。このあたりに若干の煮え切らなさが…。もう少し寝かせる時間が必用なのかもしれません。90年代後半というのは、今まさにディグの鬼門です。

 

5.

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アーティスト:Coen Bais
タイトル:Sweet Dreams
発売年:1989年
レーベル:Geandisc
購入日:2019/2/25
入手場所:ドラマ高円寺店
購入価格:108円
寸評:Coen Baisはオランダのニューエイジ系ピアニスト/シンセシスト。ジャケット情報のみでチャレンジ購入してみたのですが、全編これリチャード・クレイダーマン風のエセ主情的ピアノ曲で、どこからも聴きどころを探しようのない駄盤(2019年基準)でした…。ジャケからして和趣味が交錯するウィアードなものを期待したのですが、まったくそんな気配もない。文化搾取的ジャケット乙、といったところでしょうか。108円が勿体無い音楽でした。

 

6〜10.

アーティスト:ENDOMAX PROJECT
シリーズ・タイトル:BRAIN MEDICAL MUSIC
発売年:1989年
レーベル:ヴァーンメディア
購入日:2019/2/25
入手場所:ドラマ高円寺店
購入価格:各108円
寸評:シリーズもの俗流アンビエント。Vol.1〜5まで一気売りされていたので大人買いしてしまいました(計540円)。今まで色々な店舗を回ってこうした盤を見てきていますが、これは初めて見たシリーズです。アメリカ製家庭薬のパッケージを思わせるジャケット・デザインがかなり可愛く、このCDの魅力の半分以上はそこだという気すらします。アートワーク通り、音楽療法での使用が推奨されているCDのようで、リラックスマンという療法?催眠法?と合わせて服用?するのが効果的?な<ミュージック・メディシン>?ということらしいです。リラックスマンというのは、シンクロ・エナイジャー?というゴーグル(VR体験機のようなヴィジュアル)?の家庭洋普及機のことらしく、世界中に40箇所に開設されたブレイン・マインド・ジムという施設?で推奨?されている療法?らしいです。これは、米のデニス・ゴルケス博士が提唱?するものらしく、脳を鍛えることで人間性?の成長を促進する効果?が期待できるらしいです。という右記情報はライナーノーツ記載からなんとか編んだものなのですが、正直言って全くどういったものなのか正体がつかめません…(案の定ネット上にも情報皆無です)。これらのシリーズCDに収録された音楽は、聴取シーン/効果ごとに区分けされ制作されたもので、日本の川井久徳氏という音楽家の手によるもののようです。他、マミュピレーションやエンジニアリングに数名のスタッフが関わっており、それを総称して<ENDOMAX PROJECT>というチーム名になっているようです。1枚づつ簡単に聴いていきます。

Vol.1『BRAIN DIVING』

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「effect:ENTERTAINMENT 2」と記載のある通り(なぜシリーズ第一作目なのに「2」なのかは不明)、アップリフティングな気分になりたい時に聴くCDとのこと。こういう俗流アンビエントのあるあるで、効果としてそういうアッパーな状態を企図したものは大体音楽内容が良くないというのがあるんですが、これもまさしくその類。フュージョンにもなりきれていない、水温30度くらいの、冷たくもなくヌルくもない、本当に無意味な背景版MOR音楽という類。先日レビューした歯医者さん待合室のための音楽に、ビートを加えたような印象。ただ、シンセサイザーの音色は良く、Vol.2以降に期待が持てる。

Vol.2『SWEET VITALIZER』

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こちらは「effect:RELAX and REVITALIZE 1」ということで。やはりリラックス系ということで、アンビエント色つよく、先のVol.1より格段に良いですね。このシリーズ全体、おそらく上述のエンドマックスとかいう機械?との関連だと思うのですが、BPM20くらいのゆーくりしたキックずーっと入っており、それが偶然音楽的効果をもたらして、単なるペンタトニック・シンセサイザー音楽になりそうになるのをボトムから引き締めています。

Vol.3『SCATTER BRAIN(RECOVERY)』

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こちらの効果は曲ごとに記載されており「Sleep 1」、「PAIN REDu(ママ)CTION 2」、「FUN MEDITATION」。前者2テーマのものは基本上述Vol.2の音楽印象とほぼ変わらず。問題(?)は「FUN MEDITATION」を謳ったM6「2024 SPACE FLIGHT」。曲名からして期待感高まりますが、果たして相当に良いトラックでした。スペーシーな音像、これまで控えめだったシンセサイザーが縦横に活躍。クラウス・シュルツェ的世界をやや和風にした印象。喜多郎にも近いか。21:50もある壮大なトラックです。

Vol.4『PESSIMISTIC BRAIN(RECOVERY)』

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こちらの効果は「PAIN REDu(ママ)CTION 1」、「MEDITATION」。これだけで既に期待できるわけですが、案の定なかなか上質です。M1、M3はほとんどタンジェリン・ドリームへのオマージュのような。M5はシリーズ中もっとも透明度の高いクリスタルなシンセ音がゆらめくナイスアンビエント。ちょっと小久保隆的でもありますね。M6は謎にジャジーハモンドオルガンとポストパンク的な硬質打ち込みサウンドの融合がなかなかカッコいい。坂本龍一『B2ユニット』を背景音楽向けにめちゃくちゃ希釈したような世界ですが、なんと42分超えの超大作。おそらくこの川井さんという方、自由に音楽を作ったらかなりアイデアとセンスに溢れる人なのではないかな、と予想します。(氏の名前をネットで検索しても同名の江戸時代の和算家の情報しか出てきませんでした)

Vol.5『BRAIN FLIGHT』

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 こちらの効果は「SLEEP 2」と「RELAX and REVITALIZE 2」との由。相変わらずBPM20ほどの非常にゆったりしたキックが全編に鳴っているわけですが、M1はその上にインダストリアルなメタル・パーカッション音や、程よくトーンコントロールされた手弾きデジタル・シンセサイザーのプレイが乗る楽曲で、おそらく本シリーズ中もっとも充実したトラックかもしれません。M2、M3は若干感傷に浸り気味のフレーズがゆっくりと綾を描いていく、正統俗流アンビエント。可もなく不可もなくですね。まさかの8ビートが主導する終曲M4は、『ソリッド・ステート・サヴァイヴァー』期のYMOを極限まで希釈したような世界。なんでこう、ちょっと前の音楽を真似する感じになるんでしょうか。それが好ましさでもあるのですが。

 

次回へ続く…。

CDさん太郎 VOL.5 2019/2/18、20、22 購入盤

こんばんは。本記事は、<次のレアグルーヴはCDから来る>を標語とする(?)、CD特化のディグ日記シリーズ「CDさん太郎」のVOL.5になります。今回は2019年2月18日から22日にかけて、仕事で訪れた都内各所で散発的に購入したCDを計10枚紹介します。

出先から自宅へ戻る際、少しの迂回で寄ることのできるブックオフ店舗があると必ず訪れてしまう体質になってしまいました。こういうとき、基本23時まで営業しているブックオフの有り難みが身に染みます。急にCDが欲しくなっても安心ですね。

(本シリーズ要旨、並びに凡例は第一回目のエントリをご参照ください)

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

 今回はどうしてもはじめに取り上げる盤のジャケ写を頭に持ってきたかったので、購入時系列としては逆になってしまうのですが、昨日2/22に入手したものから紹介していきます。(1〜4が2/22、5が2/20、6〜10が2/18購入盤)

 

1.

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アーティスト:翠光
タイトル:黎明
発売年:1998年
レーベル:MUSIC OFFICE TIKA
入手場所:ブックオフ分倍河原
購入価格:280円
寸評:勇み足でTwitterでも予告をしてしまいましたが、ここ最近手に入れたCDの中でも最もよくわからない盤です…。おそらくジャケット表1のポートレイトを見ただけでは買わなかったと思うのですが、裏返してみると抹香臭MAXの仏教絵画がドーンと。ヤンキーと仏教という、まったく想定していなかった組み合わせに、只事ではなさを強く感じ、購入。ヤンキー系ニューエイジ?そんなものが存在しうるのか?

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いったいどんな音楽が収録されているのか期待に胸踊らせながら、まずはブックレットを開いてみる。すると飛び込んでくるのは、法衣を着て霊峰を臨む翠光(すいこう、と読みます)くんの姿。素晴らしい。期待感が高まる。先日紹介したIZANAGIのようなシンセサイザー音楽を想像。もう1ページめくってみると…なんとアコギを抱えており、しかも自作歌詞が掲載されている…。一瞬嫌な予感が…。

その前に、そもそもこの翠光くんが何者なのかって話ですが、本当に怖くなるほどネット上に情報皆無なので、ブックレットに書いていることから察するに、どうやら香川県真言宗善通寺周辺で生活していた(?)、録音当時20代半ばの若者のようです。なぜこのようなスピリチュアルな音楽活動を行うようになったかと言うと、この録音から先立つ93年、ネパールへ自分探しの旅をした際、雄大なヒマラヤを眼前にしアウェアネスを得たということがきっかけのようです。たまたま日本から持参していたアコギを片手に、そこで得た霊感を歌に託した…という物語。それがまたどうして数年後にアルバムにまとめられたのかは謎に包まれていますが、剃髪していないところを見ると、どうやら善通寺の在家信者/檀家かなにかで、どこからか宗教筋からの出資があってこうして制作・作品化したというところでしょうか…?(ブックレット中に高価なアコギが沢山クレジットされているのですが、これを全て自分で買ったんだとしたらスゴイことです)

肝心の内容に触れるまで前置きが長くなりました。なんと言ったら良いのやら…結論から言うと、かなり良質なCDなんじゃないでしょうか。ともかく他に似ている音楽が見当たらないのですが、強いて言うならば、ニューミュージック調フォークとケヴィン・エアーズ風ドンファン流アシッド・フォークが合体した世界というか…。歌詞はもう完全にそっちの世界だし、メロディはといえばほとんどビリー・バンバンで、時に海援隊みたいな瞬間さえ現出するのですが、大きく構えるリズム感覚、くぐもり気味ながら不思議な色気を孕んだ歌声など、ちょっとフレッド・ニールやディノ・ヴァレンテ、スキップ・スペンスなどに近い気もします(オタクの関心を惹こうとして嘘を言っているのではなく、本当にそうなんです…本人はおそらく無自覚かと思いますが)。そして、特筆すべきはそのアレンジと音像。基本的なセットは本人のアコギとイシイユウジ(誰…?)という人の弾くフラット・マンドリンを伴ったシンプルなものなのですが、そこへピアノ、シンセサイザー(キター!)、タブラなど各種パーカッション、時に分厚いコーラスが垂れ込めるという、アシッド・フォーク傾向のサウンド構成です。そして、誰がどうやって録ってどうミックスをしたのか全く不明ですが、ほぼ全ての音要素にヒジョーに深いリヴァーブが…。これは………素晴らしい。この全く新鮮な音楽に無理矢理名前を付けるとすれば、「レリジャス・ヤンキー・アシッド・フォーク」ですかね。特に良いのが、意外にもメジャー7th系コードのストロークを交える夢幻ナンバーM3「moon light」、そして「ナマステ」のリフレインと般若心経の朗唱がドープすぎる9分超えの一大叙事詩M6「ティカ」(ほとんどデヴィッド・クロスビー)あたり。素晴らしいです。世界は広い…!!

  

2.

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アーティスト:V.A.
タイトル:高橋美由紀オリジナルアルバム 天を見つめて地の底で
発売年:1993年
レーベル:PONY CANYON
入手場所:ブックオフ分倍河原
購入価格:280円
寸評:秋田書店の漫画雑誌月間「パンドラ」で1990年〜2000年まで連載された高橋美由紀の代表作『天を見つめて地の底で』のイメージ・アルバムです、と書きましたが、すみません、高橋美由紀先生についてもこの漫画についても今回始めて知りました…。なぜこのCDを買ったかというと、ネットで調べたらあのライトメロウ寸前系伊達男、野見山正貴が歌唱参加しているらしいから。それ以外にも高橋先生自らが歌唱する曲などもあり興味深い。曲ごとでまったく違った音楽傾向にあり、ユーロプログレ風インスト、ライトクラシック風インストなど、全体にばらつきのある盤なのですが、やはり野見山参加曲がその中でも比較的よく、ミディアム・メロウな魅力あり。演奏陣も淡海悟郎ほか、手堅い。原作を知らないので何とも言えないけれど、ファンタジックで瞑想的な雰囲気がよく出ている。

 

3.

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アーティスト:川村万梨阿
タイトル:春の夢
発売年:1991年
レーベル:日本コロムビア
入手場所:ブックオフ調布南店
購入価格:280円
寸評:声優の川村万梨阿がリリースしたおそらく5作目(?)のソロアルバム。私はお恥ずかしながらアニメ文化に全く明るくないので、この方がその世界では非常に高名な声優さんであることも知りませんでした。なぜ今回本作を購入したかというと、light mellow部で小川直人さんがこの後にリリースした作品をレビューしていて気になっていたからなのです。小川さんも書いている通り、音楽クオリティに比してあまりに語られなさ過ぎではないか?と、僕も今作を聴いて強く思いました。川村さん、歌声や節の付け方など、どことなくZABADAK上野洋子さんを彷彿とさせるところもあり、非常に清廉かつコケットな魅力をお持ち。歌唱力もすごい。それを支えるのは、全編非常にクオリティの高いオケ。本人も作曲していますが(それもスゴイ)、外部コンポーザー陣が非常に豪華で、ラジ、吉川洋一郎、副島邦明、果ては細野晴臣…!曲調はライトメロウというより、ニューウェーブ調というか、はっきりいえばニューエイジ調。ニューエイジ・ポップの名作、福島祐子『時の記憶』などに通じる世界。和やラーガの香りも濃密にあり、相当にアヴァンです。出色はラジ作・編曲のM1「PLANET BLUE」、細野晴臣作曲のM4「月夜の子猫」あたりか。オタクに聴かせるには出来が良すぎる。

 

4.

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アーティスト:小久保隆
タイトル:DHC SOUND COLLECTION 小久保隆の癒やしの音楽 森
発売年:2008年
レーベル:DHC
入手場所:ブックオフ調布南店
購入価格:280円
寸評:俗流アンビエントもので、2000年代リリースのの商品を買うことは珍しいのですが、この小久保隆だけは別。古くはジャパニーズプログレバンド<新月>のドラマーとして活動、のちバッハ・レボリューションなどにも関わりソロ独立、現在は日本の背景音楽界の最重鎮と言うべき存在。近年海外リスナーから発見され、87年作の『Get At the Wave』が国外リイシューされるなど、その注目度は急上昇中(例のLight in the Atticからの環境音楽コンピにももちろん氏の楽曲は収録されています)。わたしは<イオンシリーズ>という90年代初頭のテイチクでの名作群でその存在を知ったのですが、もう本当にどれを買ってみても全部素晴らしいんですよね。氏のトレードマークともいうべきディレイ処理されたアコギとクリスタル極まりないシンセサイザーの融合、それだけで夢見心地です…。これは2008年にDHCからの委嘱で制作された非売品アルバムのようです。(エステサロンでの配布用とかだったのでしょうか)。森をテーマに環境音と楽音を静かに溶け合わせていきます。自身の<ION>レーベルからの近年諸作はサブスク上にもありますが、これはネットでは聴けない。

 

5.

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アーティスト:조용필(チョー・ヨンピル)
タイトル:5
発売年:1990年 (オリジナル 1983年)
レーベル:JIGU RECORDS
入手場所:レコファン渋谷店
購入価格:108円
寸評:チョー・ヨンピルといえば日本でも非常に有名なトロット歌手ですが、僕が彼の音楽を意識するようになったきっかけは昨年日本公開されたソン・ガンホ主演映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』の冒頭、カーステレオから流れてくる、超最高のシンセ・ディスコ曲「おかっぱ娘」(79年)でした。その後同曲の入った第一集(という名のセカンド・アルバム。ややこしい…)の再発CDを入手し愛聴しているのですが、「ということは他のアルバムにもそういうナイスメロウチューンが入っているのかな?」という期待のもと、オリジナルアルバムを探し求めていたら、こんな値段で転がっており購入(したあとにAppleMusicでも聴けることに気付いた)。果たして…残念ながら全編これド演歌の世界でそういったものは入っていなかった…がっかり…という物語。といいつつ、もちろんトロットも嫌いじゃないので、普通に聴いている分には好ましいのですが。

 

6.

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アーティスト:蘭広昭
タイトル:ナチュラル・サウンド・シリーズ 海のシンフォニー THE WAVE
発売年:1989年
レーベル:PONY CANYON
入手場所:ブックオフ飯田橋
購入価格:500円
寸評:今回の大失敗盤です。クリスタルなシンセサイザー使いの俗流アンビエントを期待したのですが、背景というレベルじゃないめちゃ大きい音でザッブーン!ジャバジャバ〜!、みたいな波のサウンド主体、そこへ気が向いた時に絡んでくる楽音。この音楽がまあ良くない…。よく調べて買えばよかったんですが、作曲・演奏の蘭氏は、ニューエイジ畑の方じゃなくて、演歌〜歌謡畑の方らしい。R80のペンタトニック・ピアノ・ミュージックでした。蘭さんに罪はない。

 

7.

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アーティスト:折野順三、浅倉大介
タイトル:F.DISC 〜今あなたがあなたを超える〜
発売年:不明(1990年代初頭?)
レーベル:スポーツ体力研究所
入手場所:ブックオフ飯田橋
購入価格:280円
寸評:aestheticなジャケに惹かれ購入した俗流アンビエント。ジャケ裏にナレーション入りとあるので、覚悟していたのですが、覚悟していた以上に全編ナレーション入りで、ウザったいこと極まりない(と思う人は本来このCDを聴いてはいけない)。要は自分に自信を持ってハツラツと生きることができるようになるためのインディー系セルフコントロールCDですね。スポーツ体力研究所というのは、静岡県にあるSANRIというその世界では大手の会社が運営していた団体のようです。基本的にはヒジョーに適当に作られた感じのシンセサイザー・ペンタトニック・アンビエントなのですが、展開というものに極めて乏しく、残念ながら途中停止。折野順三さんという方は存じ上げませんでしたが、Twitter上にビートルズアイコンのフォロワー3の同名アカウントを発見。同一人物なのでしょうか。そして…浅倉大介って、あのaccessのか…!?ホントに!?

 

8.

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アーティスト:谷川賢作
タイトル:東宝映画 「つるー鶴ー」オリジナル・サウンドトラック
発売年:1988年
レーベル:PONY CANYON
入手場所:ブックオフ飯田橋
購入価格:500円
寸評:市川崑監督、吉永小百合主演の1988年公開映画『つる ー鶴ー』のサントラ盤です。吉永小百合の映画出演100本記念作でもあるらしいのですが、私は未見、というか今回初めてこの映画の存在を知りました。相手役が野田秀樹なのか〜、菅原文太も出てるのか〜、とかとか興味が湧きますが、なにより音楽を谷川賢作が手がけているというのが素敵。谷川賢作といえば父は詩人の谷川俊太郎で、あの佐藤允彦に師事していたこともあるという作曲家/ピアニストですが、この時期、市川崑監督作品の音楽を連続して担当しています。この「つる ー鶴ー」は、民話「鶴の恩返し」を映像化したものなのですが、名作『怪談』(武満徹が音楽を担当)しかり、そういう作品は往々にしてスコアが大変素晴らしいという経験則があるので買ってみました。果たして…これは本当に素晴らしいですね〜。なぜか「アメイジング・グレイス」がテーマ曲だったらしく、それが時おり変奏される以外は全て谷川氏の描き下ろし。特に硬派なシンセサイザー使いのトラックが良い。これ、おそらく武満徹の前述『怪談』の劇伴を相当意識しているような気がしますが、どんなもんでしょうか。ちなみに、映画自体は、レビューサイトなどをみると結構ヒドい言われようです。

 

9.

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アーティスト:矢吹紫帆
タイトル:α波 1/fゆらぎ ブリリアント・エナジー
発売年:1990年
レーベル:アポロン
入手場所:ブックオフ飯田橋
購入価格:500円
寸評:俗流アンビエントのプレステッジ、アポロン。この矢吹紫帆は一時期アポロンの専属だったのか、同レーベルにアルバムを吹き込みまくっている女性シンセシストなのですが、僕はこの人の音楽がとても好きで、CDを見かける度に買ってしまいます。87年のファーストアルバム『からだは宇宙のメッセージ』が昨年スウェーデンのSubliminal Soundsからリイシューされたことからもわかるように(そして当然先述のLight in the Atticのコンピにも収録)、ここへ来て海外からも熱い注目を浴びている方です。鍵盤奏者としても、たおやかなメロディー感覚や精細なダイナミズムにあふれたタッチが素晴らしく、そのあたりの華と綾はこの人ならでは。本作も相変わらずの高クオリティで、心地よい眠りに誘ってくれます…(これを書きながら一度寝落ちしました)。

 

10.

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アーティスト:宮本文昭
タイトル:ニペンシィ
発売年:1989年
レーベル:CBS/SONY
入手場所:ブックオフ飯田橋
購入価格:200円
寸評:指揮者としても著名なオーボエ奏者、宮本文昭による5作目のソロ作。ライト・クラシックとフュージョンニューエイジの合体というのは、このところのDIGのテーマでもあって、掘れば掘るほど良い作品がどんどん出てくるのですが(中西俊博溝口肇村松健西村由紀江城之内ミサ山形由美etc..)、その中でも本作はかなりの高クオリティなのじゃないでしょうか。クラッシク名曲をフュージョン調にアレンジするという、その世界からしたらこれ以上のセルアウトってあるの!?と未来の私が心配になるやり方ですが、今聞くとそれが実にいい塩梅。本作はクラッシク曲だけではなく、ポピュラー曲も入っているのですが、それらがイヴァン・リンス「ラヴ・ダンス」とジョビンの「波」というブラジル志向。案の定これらの曲が特筆して良い。編曲は佐橋俊彦などが中心となって行っているのだけど、尼崎勝士というどこかで見た名前が…。あの台車レコメンでお馴染み、『バンボレオ』の「与野」氏でした。こんなところでつながるとは。急に麻布〜ギロッポンの匂いがしてきましたネ。

 

CDさん太郎 VOL.4 2019/2/17購入盤

編集

こんばんは。本記事は、<次のレアグルーヴはCDから来る>を標語とする(?)、CD特化のディグ日記シリーズ「CDさん太郎」のVOL.4になります。今回は2019年2月17日、東京練馬〜板橋界隈で購入したCDを13枚紹介します。多い…。

休日だったということもあり、久々にガッチリと各地店舗を周遊したのですが、什器の下の方にあるCDを見るときなど頻繁に屈み起きを繰り返した結果、翌日膝と腰にガタが来てしまうという、寄る年波に思いを馳せざるをえない形となりました。35歳になってもゴミのような値段のCDを買っている将来、あの頃は想像できませんでしたね。

(本シリーズ要旨、並びに凡例は第一回目のエントリをご参照ください)

shibasakiyuji.hatenablog.com

 

1.

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アーティスト:不明
タイトル:NEW α SOUND  / H Developing your Charm Series.[Instrumental]
発売年:不明(1990年代初頭?)
レーベル:J.F. ラピスクラブ事業部
入手場所:ブックオフ中板橋店
購入価格:108円
寸評:1986年から東京を拠点にヘルスケア商材やパワーストーンなどの販売を扱うラピスクラブが、おそらく90年代初頭に制作していたオリジナルヒーリング音楽シリーズ中の一作です。ど直球の俗流アンビエントですね。どうやら個別販売用のCDではなく、ネットに散らばる情報から察するに当時販売されていたヘルス〜ビューティーケア商品に付属するような形で頒布されていたもののようです。それがバラバラになってCDの墓場たるブックオフ投げ売りコーナーにたどり着いたという物語。これまでも見かけるたび何作か購入しているのですが、本作、その中でもずば抜けて良い!M1は、冒頭教会旋法風の電子オルガンの響きにギョッとするのですが、その後シンセサイザーのミニマルでガムラン的な反復が始まりつつ主張を抑えた奥ゆかしいビートを伴う、相当良質なアンビエントが展開。The Orb的。M2は生ピアノ(のプリセット音)が主導し、一瞬嫌な予感がするのですが、シンセサイザーの高音ドローンが全体をひんやりしたトーンに包む。久石譲を簡単にしたような音楽。もっとも聴きものなのがM3で、シンセサイザーのクリスタルなトーンに極めて膨よかな低音がからみそうでからまなく、突然に打楽器が打ち鳴らされたりする。それぞれの音が丁寧に独立してデザインされ、ちょっとフルクサス的というか、前衛音楽の香り。先日本ブログにも登場した尾島由郎氏などの作風に近い?いや〜、これ、相当良いです!偶然に偶然が重なって作者の方がこちらのブログご覧になることがあれば、是非ご連絡ください。

 

2.

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アーティスト:矢野顕子
タイトル:クイーン・ソングス
発売年:1993年(オリジナル 1979年)
レーベル:MIDI(オリジナル 日本コロムビア)
入手場所:ブックオフ中板橋駅
購入価格:108円
寸評:こんな作品があったなんて…今の今まで全然知らなかったです。矢野誠がプロデュースとアレンジを担当、矢野顕子のピアノを中心に、大村憲司小原礼本多俊之仙波清彦、マーティン・ブレイシーが参加した、クイーン楽曲のカバー・アルバム。元はオーディオチェック用のみに販売されたものらしく、45回転LPという特殊なフォーマットのもの(だから総収録尺はかなり短い)。しかしこの時期の矢野顕子といえば、ソロでも既に数作のキャリアがありYMOとも活動を共にしていた時期。こんな「お仕事」もやっていたとは…という。内容はと言うと、ものすごく中庸なカヴァー集(=完全にイージーリスニング)なんだけど、今となってはその味わいが良いですよね。けれどやっぱりみなさんの演奏クオリティは素晴らしいですね。みんなクイーンの曲に対して全然思い入れなさそうなのが良い。いくら位のギャラだったのか知りたいですね。しかし矢野顕子の所属レーベルだったとは云え、MIDIもよく再発したな〜、これを。

 

3.

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アーティスト:HALO
タイトル:TIDE
発売年:1990
レーベル:アルファ
入手場所:ブックオフ西台高島通り店
購入価格:280円
寸評:PINKのボーカリスト福岡ユタカがバンド解散後にドラマーの矢壁アツノブと結成したデジタルファンク・ポップユニットHALOによる二作目。PINKというバンドはなんというか、おそらく今2019年に一番語り方に迷うバンドじゃないかなと思っているのですが、どうでしょうか。ニューウェーブ、ファンク、エスノ、様々な要素が入り混じりながらも最終的には<和>としか形容しようのない独特の土着感。モッチャリ以上オシャレ未満というか…。いや、とても好きなんですけど。ホッピー神山氏の突きつけたセンスがにじみ出る瞬間とか、とても素敵で。このHALOは福岡氏の朴訥としつつも突き放したボーカルが、PINK以上にポップなデジタル・エスノファンクにのっており、好感。シンセはBANANA。さすが。ギターは窪田晴男。他小川美潮吉田美奈子も参加し、クールで抑制的な狂乱を添える。しかし、なんとも今評価しづらい音という印象は拭えず…。ジャズで言うと所謂中間派みたいな…。Shi-Shonenやリアルフィッシュとかにも同じことが言えるような…。もう少し寝かせる時間が必要かもしれませんね。

 

4. 

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アーティスト:冨田勲
タイトル:蒼き狼の伝説 〜NHKスペシャル「大モンゴル」
発売年:1992
レーベル:BMGヴィクター
入手場所:ブックオフ西台高島通り店
購入価格:280円
寸評:世界的にヒット/評価された70年代諸作の偉大さはもちろん、日本シンセサイザー音楽の泰斗として晩年にも大規模な再評価(OPNまでもが崇敬を捧げた)のあった冨田勲ですが、このあたりの作品は微妙に再発から漏れているんですね。タイトルどおり、92年に放映されたNHKスペシャル『大モンゴル』のサウンドトラック盤で、この時点で8年ぶりの新作でした。劇伴ということもあり若かりし頃の諸作よりやや抑制的で、そのことでかえって効果音楽としての風格充分です。相変わらず随所にクラシック趣味が炸裂しており、冒頭のメインテーマはちょっと、すぎやまこういち風。俗流アンビエントばかり聴いている耳からすると、当たり前なのですが「良く出来てるなー」という感想。逆に言うとソツがなさ過ぎてチャームに欠けると思ってしまうことも…。モンゴルを題材にしているだけあって民族楽器音も収録。あくまで味付けとして。

 

5. 

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アーティスト:リディア・カヴィナ

タイトル:ミュージック・フロム・エーテル オリジナル・ワークス・フォー・テルミン
発売年:2001年
レーベル:Rambling RECORDS
入手場所:ブックオフ西台高島通り店
購入価格:500円
寸評:僕と同世代かそれより上の方なら、2000年代初頭にたまさかテルミン・ブームが興ったことを覚えていらっしゃるでしょう。この珍妙な楽器の開発者レフ・テルミン博士の生涯を描いた映画『テルミン』が2001年に公開され、それ以前からのモンドミュージック・ブームなどもあいまり、テルミンがオシャレなものとしてクローズアップされたあの頃。懐かしい。ヴィレッジヴァンガードとラヴァライト、ショートボブ、スケルトンのアイマック、そしてテルミンのおもちゃ…。それからはや20年弱数、先日読んだマーク・ブレンド著/オノサトル訳『未来の〈サウンド〉が聞こえる 電子楽器に夢を託したパイオニアたち』(アルテスパブリッシング)に触発されて、テルミン音楽をしっかり聴きたいなと思っていたところに転がっていた名編集盤。リディア・カヴィナ(67年生まれ)はテルミン博士の親戚筋にあたる由緒正しい奏者で、おそらく当代随一の腕前の持ち主。ロックやポップスで使用されるテルミンの大仰な効果狙いのサウンドからすると、なんたる繊細さ…。本当にクラシック歌手がごとき精緻なダイナミズムを聞かせるとおもえば、不敵な電子音のざらつきを投げつけてきたり。取り上げられる楽曲はソ連時代のオブスキュアなクラシック作曲家によるものが中心で、濃密な共産的ロマンを感じる(録音は近年)。

 

6.

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アーティスト:障子久美
タイトル:RHYTHM OF SILENCE
発売年:1990年
レーベル:ビクター音産株式会社
入手場所:ハードオフ板橋赤塚店
購入価格:108円
寸評:障子久美のファースト・アルバム。松任谷正隆主宰の音楽学院卒業生として氏が大プッシュ、プロデュースも手がけています。作を重ねるごと徐々にブラックミュージック・テイストをましていく彼女ですが、今聞くと特にこのファーストはまだマイルドで、シティ・ポップとの折衷のようなアレンジが多い気がします。ですが、ボーカルの貫禄はいきなりすごいですねえ。矢鱈にパワフル、とかじゃなくて、ニュアンス豊かでとにかく巧い。作詞作曲は自身が行い、編曲は正隆にくわえ新川博武部聡志、バッキングは松原正樹高水健司、ジェイク・H・コンセプションなど、盤石。時代的にニュージャックスウィング的というかエレクトロ・ファンクのノリを出そうとしているようなんだけど、なんかちょっと違う(地味…?)感じも好ましい。シティ・ポップ的にはM5.「WANDER」、M7「GIVE ME YOUR LOVE 」、M8「PARADISE」あたり良いですネ。バラードにはユーミンの影も。

 

7.

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アーティスト:メレル&ヨリコ
タイトル:トロピカル・ビート
発売年:2002年
レーベル:キャプテン・トリップ
入手場所:ハードオフ板橋赤塚店
購入価格:108円
寸評:ハードオフ板橋赤塚店、都内ハードオフ店舗の中でも小規模店舗で、なぜここに店を出したんだろう?という謎のロケーションなんだけど、いつ行ってものんびりしていて好きなんですよね。まあ、そのかわり回転も悪いような気もしますが…。この日行ってびっくりしたんですが、なぜかジャンクコーナーに日本が誇るサイケデリック・レーベル、キャプテントリップのニッチなカタログが未開封で沢山葬られていたのでした。しかも1タイトルにつき4枚づつくらい同じものが…。こういうのに遭遇するとレーベルマンとしては結構ツラい気持ちになるのですが…在庫整理か…?まあこのCDも正直言って相当コアなメレル・ファンクハウザーのファン(メレル・ファンクハウザー自体が既にコアなのに)しかさすがに買わなかったであろう作品かなと…。僕はこのメレル・ファンクハウザーという人が大好きなのですが、これはさすがに持っていなかった。古くはインパクツ、ファパドクリィ、HMSバウンティ、MUといった伝説的サイケロックバンドを率いた才人で、70年代にはハワイに移り住み、独特のロコ・モードとサイケデリックを融合させた最高のサーフ・ロックを奏でた偉人なのですが、ずーっとコンスタントに活動し、2002年には日本人のホンゴウ・ヨリコとパートナーシップを結び、こんなアルバムをリリース。メレル流フォーク・ロックとフラ音楽が融合と書くといかにも好ましそうですが、この無自覚なジャケットから察せられるように、まあ音像がチープ…(笑)。「ベテランアーティスト作品におけるノンディレクション案件」でよくある状態に…。とはいえども曲自体はとってもよく、流石。なによりもこれをちゃんと日本盤でリリースしたキャプテントリップが偉大過ぎる。おそらく売上芳しく無く、こうして流れ流れて未開封盤が本ブログに登場という物語。

 

8.

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アーティスト:林和行
タイトル:カラー・メッセージ グリーン
発売年:1993年
レーベル:アポロン
入手場所:ブックオフ光が丘店
購入価格:280円
寸評:アポロンというのは元々渡辺音楽出版が原盤権を持つ作品のリリースをするために発足したレーベルだったのだけど、80年代末期から大量の俗流アンビエント盤を制作しています。俗流アンビエントブルーノートが「Della」だとすると、アポロン俗流アンビエントのプレステッジというところでしょうか。いや、リヴァーサイドかな。知らんけど。これはカネボウが監修する「サウンドエステティック・シリーズ」の一環としてリリースされたもので、カラー・セラピーと絡めた商品。実際にエステティック・サロンで使用されていたとか?このシリーズ、昨今海外でも再評価著しい矢吹紫帆女史が吹き込みを行っていることもあり、割にクオリティの高いサウンドを聞かせてくれる。本作を担当した林和行氏は、現在も活動するピアニスト兼シンセシストで、静謐で高尚なものというより、親しみやすい温かなアンビエントを聞かせてくれる。ややピアニックすぎるのが個人的な趣味と合わないですが、当時のマーケティングを考えればこれが正解なのかもしれない。なぜか緑のフィルムが同梱されているが、これで世界を覗け、癒やされろ、ということなのだろうか。

 

9.

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アーティスト:野呂一生
タイトル:ヴィーダ
発売年:1989年
レーベル:ポリドール
入手場所:ブックオフ光が丘店
購入価格:280円
寸評:カシオペア野呂一生が単身ブラジルはリオ・デ・ジャネイロに乗り込んで制作したソロ作。ここ数年J-FUSIONの周縁部からじわじわ聴いているんだけど、遂にカシオペア(本隊じゃないけど)にたどり着いてしまった。いやー、このアルバム、なんですか!最高ですね…。野呂一生の弾くギターと一部キーボード以外は全て現地ミュージシャンが占めているのですが、その演奏のツヤよ…。これは先日レビューした横倉裕にも通じることですが、なんなんでしょう、こういう環境に置かれると人は輝く…のかしら。いろんな手練が参加していますが、なんといっても語るべきは、あのウーゴ・ファットルーソとシヴーカがクレジットされているということでしょう。こういう連中がいるっていうだけでリスナーとしてはテンションが上がりますね。もちろんインスト曲中心なのだけど、たまらいのが野呂一生がボーカルをとる曲。特にM2「たそがれのESTRELA」の非専業歌手ならではのジェントルな歌声…。そういうものが好きな人には悶絶でしょう。今夏DJする際のセトリ入り確定で。

 

10.

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アーティスト:尾崎和行
タイトル:僕達の行方
発売年:1992年
レーベル:VAP
入手場所:ブックオフ光が丘店
購入価格:280円
寸評:「好きな音楽は?どんなジャンル聞くの?」と人に訊いて「うーん、バラードかな」と答えられたという奇譚はいつの世でもたまに伝え聞くけど、それくらい、バラードというのは需要がある(あった)。バラードの実態って、実際にはBPMの速い遅いじゃなくて、もっと総体的なニュアンスが絡んでくるような気がしており、それを言葉にするにはもっとバラーディーなものを聞いて勉強なくてはいけない(しなくていい)んだけど、この尾崎和行なんかは丁度いいんじゃないでしょうか。実際のテンポはミディアムだと思うんだけど、漂い来るイキフンはどうしたってトレンディーなバラード…。中西保志などがこの時代を代表するバラーディアーですが、ターゲッティング的にはそういうところでしょうね(尾崎氏の方がデビューが早く、第30回ポプコンで名を成し、86年にデビューしているが)。ジェントル&実直極まりない歌声が乗るバックトラックは非常に豪奢。久米大作が全アレンジを手がけ、フェビアン・レザ・パネ土方隆行青山純土岐英史などが脇を固める。これだけ揃えば極上のライトメロウ盤を想像するけど、実際に聴いてみるとそうもいかず痒いところに手が届かないのが安CD蒐集のよくあるパターンです。もう少し寝かせる時間が必要かも。

 

11.

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アーティスト:JANICE
タイトル:JANICE
発売年:2011年(オリジナル 1975年)
レーベル:BGP(オリジナル Fantasy)
入手場所:ブックオフ下赤塚店
購入価格:280円
寸評:この「CDさん太郎」では珍しい?評価がきちんと定まった盤が登場してしまいました…。となると僕がここで語るべきことは少ない。英ACEのレア・グルーヴ系専門ラインBGPが一時期怒涛の勢いで再発していたFantasy系リイシューの一貫で世界初CD化された本作。リードシンガー、ジャニース・ベネットの名前からとった男女混声ボーカルグループのよるデビュー作で、グループとの共同プロデュースは元ムーングロウズのハーヴィー・フークワ。王道的70年代ソウル〜ノーザンの隠れ名作で、普通にLPを探していたのですが、激安価格でCDに遭遇し購入しました。内容は…いうまでもなく最高です。

 

13.

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アーティスト:MAXINE BROWN
タイトル:BEST OF THE wand YEARS
発売年:2009年
レーベル:ACE(オリジナル wand)
入手場所:ブックオフ下赤塚店
購入価格:280円タイトル:JANICE
寸評:これもソウルファンには言わずもがなの名吹込み。マキシン・ブラウンといえば、その後のエピック時代の作品が大好きで、ノーザン・ソウル聖典的名曲がいくつもあるのですが、これはその前、wandからの作品を英ACEがコンパイルしたスグレモノCD。これまでもKENTのLPなどで親しんできた音源でもあるのだけど、激安価格で見つけたので買ってしまった。後の時代よりやや硬質な質感は、アーリーソウルの華。予てよりノーザン的評価も行き届いているようで、詳細な解説はACEのマジを感じる。素晴らしい。特に新しく言うことはありません…。

 

13.

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アーティスト:ユージン・レコード
タイトル:ウェルカム・トゥ・マイ・ファンタジー
発売年:2010年(オリジナル 1979年)
レーベル:ワーナー
入手場所:ココナッツディスク池袋店
購入価格:648円
寸評:久々にココナッツ池袋店へ。これをレジに持っていったら、以前よりお世話になっている中川さんがいて、「ブログ、見てますよ」と。嬉しいやら恥ずかしいやら。ありがとうございます。本作も評価固まっている系ですが、ユージン・レコードディスコグラフィーでも若干軽んじられているキライがないでもない。ユージンといえば、シカゴ・ソウルの華、そしてシャイ・ライツのリーダーなわけだけど、僕は昔から彼の書く曲と歌声が大好きで…。ソロ作でいうと三作目にあたる本作、購入時に調べたんだけどサブスクにもまだない!ということで、LPでも同程度の値段で見つけられそうだけど、購入。内容はシカゴ・ソウル・テイストからよりディスコ寄りになったブギー名作で、プロデュースのパトリック・ヘンダーソンの手腕が光る。もちろん内容は間違いなく最高です。

 

次回へ続きます…。

CDさん太郎 VOL.3 2019/2/13購入盤

こんばんは。本記事は、<次のレアグルーヴはCDから来る>を標語とする(?)、CD特化のディグ日記シリーズ「CDさん太郎」のVOL.3になります。今回は2019年2月13日、東京下北沢〜吉祥寺界隈で購入したCDを6枚紹介します。

(本シリーズ要旨、並びに凡例は第一回目のエントリをご参照ください)

shibasakiyuji.hatenablog.com


 1.

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アーティスト:マジカル・パワー・マコ
タイトル:Hapmoniym 1972-1975 #3
発売年:1993年
レーベル:Mom 'N' Dad Productions
入手場所:ディスクユニオン下北沢店
購入価格:640円
寸評:今の若年世代にはあまりリアリティを感じられない話かもしれないのだけど、私の世代(ゼロ年代に20代を過ごした世代)にとって、マジカル・パワー・マコはもはやその名の響きだけで聖典の如き重みをもっていました。「いました」と過去形で語っているのは、その当時、マコや、あるいは70年代のジャパニーズ・アンダーグラウンド・ミュージックを異様な熱量で崇拝するという<音楽好き>の行き方が、その後の世代にあまり継承されていないような気がするからなのですが…。いまも覚えているけれど、大学生1回生だった私に、「灰野敬二聴いたことないのかよ?ブッ飛ぶぜ」というような言い方でもって、今風に言えば<マウンティング>してきた自称アングラ趣味の先輩たちに対して言いようのない不信感と胡散臭さを感じていたわけだけれども、ようやく今になって、そういうイヤったらしさを超えて、冷静にその音楽を聴ける機運が巡ってきた気がします(それらのセンパイたちは今何をしているんでしょうか?元気でいてほしい)。これが所謂<サブカル調>ファッションとして消費された時代があったという目を覆いたい事実は、日本の音楽受容史にとって改めて不幸だったなあと…思う…。そういう呪怨も綺麗サッパリ過ぎ去った今、この音楽はあらためて本当に本当に素晴らしいと思います。伝説のポリドール諸作の前後、10代後半のマコが自宅などで録りためていた実験の数々。今聞くなら眩しいほどにピュアで、ポップ。アナログ・シンセサイザーとのピュアネスあふれる格闘と遊戯、密室的熱量、そこから突き出ていく(良い意味で)自己目的的で健全な実験性…。それらに、ファウストやフローリアン・シュナイダー、コンラッド・シュニッツラーらとの共通点をほじくり探すのは易いけれど、それ以上に、現在のインディペンデントなDTM作家に通じる濃密な<独り>性と、それが必然として求める社会性への言いようのない渇望を感じ、とっても愛おしく切ない気持ちに…。宇川直宏が100万円で譲り受けたこれら音源は93年に全5集に渡ってリリースされたのですが、この3集はその中でも特にやりたいことをやっている感じで、今こそ実にチアフルな力に満ちていると思います。

 

2.

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アーティスト:ツトム・ヤマシタ
タイトル:太陽の儀礼 Vol.1
発売年:1993年
レーベル:佼成出版社
入手場所:ディスクユニオン下北沢店
購入価格:280円
寸評:上記マコにくらべて、ツトム・ヤマシタのその当時(ゼロ年代)における評価の低さと言ったら。というか、ほとんど語られること自体がなかったんじゃないでしょうか。かくいう私も、英アイランドからの諸作を、スティーヴ・ウィンウッド一派や英プログレッシブ・ロックの文脈でしか捉えておらず、匂い立つ抹香臭さでその音楽的真価については無関心だったような気がしています。ツトム・ヤマシタに関心を覚えたのは正直ここ最近。少し前から70年代の諸作をコツコツ聴いているのですが、90年代からのアルバムについては、さすがに昨今のニュー・エイジ再評価がなければ触れようとすら思わなかったかもしれません。これは立正佼成会の出版部である佼成出版社(ここはレーベルとしてもかなり面白いディスコグラフィーを抱えているので、要再考証)から出た93年作。1992年に延暦寺根本中堂において天海大僧正三百五十回忌記念として、比叡山焼き討ちの犠牲者と織田信長の慰霊・世界平和を祈念して初演されたものを、後日スタジオ録音し直したもの。この当時、寺院での大規模奉納上演がブームだったこともあるのか、演奏自体への気合の入り方がスゴイ。70年代の諸作より更にコンシャスで、流石に海外リスナーですら敬遠しそうな紫煙舞うニューエイジ、というかエクスペリメンタル。リスニングには体力を要しますね。今後もリイシューされない予感があります。

 

3.

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アーティスト:宮下富実夫
タイトル:音薬
発売年:1994年
レーベル:BIWA RECORDS
入手場所:ディスクユニオン下北沢店
購入価格:108円
寸評:元ファーアウト、ファー・イースト・ファミリー・バンド宮下富実夫は、不肖柴崎による俗流アンビエントミックスでも取り上げたし、私個人でもことあるごとに言及しているので「またかよ!」という方もあるかもしれないのですが、すみません、またです。この人、80年代以降、それこそ誇張でなくJandek並のリリース数を誇っている(ニューエイジ作家異常多作説の一例)ので、見つけるたびにダラダラと買ってしまうのですが、そのどれもが素晴らしいのですよね…。これは、<音の薬>、『音薬』と名付けられた94年作で、いつもながら自身の演奏によるシンセサイザーのステディかつゆったりしたビートとドローン、そしてユラユラと浮遊するフレーズが反復するお馴染みの世界なのですが、まあ良い。ジャケット通り7つのチャクラに連関した曲が収められています(知らんけど)。推薦の言葉として、ブックレットには聖路加国際病院日野原重明(R.I.P.)先生のお言葉入り。余談ですが、こないだ下北沢シェルターで観たnakayaan bandのライブ、ファー・イースト・ファミリー・バンドのようなジャム・チューンを演っていて凄く良かった。

 

4.

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アーティスト:BEERS
タイトル:MISTRESS
発売年:2016年、オリジナル 1983年
レーベル:徳間ジャパンコミュニケーションズ
入手場所:ディスクユニオン下北沢店
購入価格:640円
寸評:斉藤恵と橋本ヨーコによる男女デュオBERRSが1983年にBourbonレーベルからリリースした唯一作。和モノ・ライトメロウ〜シティ・ポップファンにはおなじみですが、一時期怒涛のごとくタワーレコードがメジャーレーベルと組んで自社限定流通でリイシューしたシリーズ「Tower to the people」中の一作として2016年に発売されたものです。MURO氏がミックスに収録したキラーチューン「壊れたワイパー」を聴きたくて購入したんだけど、このBeersのCD、最近やたらユニオンの店頭在庫に出現する気が…。私が今回買ったCDは開封済だったのでそういうことはないのかもだけど、タワーのダブつき在庫をユニオンへ転売して一斉放出しているのかな?と邪推するほどの遭遇率です。ということで、値段推移を見守っていたのだけど、1,000円切りつつしかもこの値段になっていたので購入。やっぱりなんといっても「壊れたワイパー」がダントツのズバ抜けで素晴らしいですね。盤石の新川博アレンジ。他曲もフォーキー・テイストとライトメロウの奥ゆかしい合体って感じです。大名盤とは言わずとも、素敵な佳作という程よい色香。書ききれないほどの編曲、演奏陣は以下。新川博(key, synth)、椎名和夫(g, vo)、岡沢茂(b)、山木秀夫(ds)、木村誠(perc)、Jake H. Concepcion(sax)、沢井原兒(as)、新井英治(tb)、数原晋(tp)、小林正弘(tp)、鈴木宏昌(key, synth)、松木恒秀(g)、長岡道夫(b)、富倉安生(b)、田中清司(ds)、ペッカー(perc)、渡嘉敷祐一(ds)、多グループ(strings)、巨匠グループ(strings)、斉藤ノブperc)、桐ヶ谷兄弟(vo)、伊藤広規(b)、岡本郭男(ds)。「ああ、レコードって売れていたんだなあ…」というめちゃ豪華な布陣。

 

5

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アーティスト:ボサノバカサノバ
タイトル:セカンド キス
発売年:1995年
レーベル:イースタンゲイル
入手場所:ブックオフ吉祥寺店
購入価格:500円
寸評:SHO1(田村庄一)と吉澤秀人による、現在は群馬県前橋市を中心に活動するユニットによるセカンドアルバム。発売元のイースタンゲイルというのは寡聞にして知らないレーベルだったのですが、ビクター傘下のメジャーということになるようです。元はチューリップやオフコースに影響を受けたフォーク調ニューミュージック・デュオということらしいのですが、音楽的にはそれらよりややライトメロウ寄りで、いうなれば…ブレッド&バターをややJ-POPオリエンテッドにした感じ。こういうものを掘るとき、私もすっかりlight mellow部マインドが発進する感じになっているのですが、そういう文脈からいってもなかなかの佳作じゃないでしょうか。その名前通りボッサ調の曲もありますが、実際の印象はもっとMOR的。アップリフティングなシティ・ポップを期待すると肩透かしかもしれませんが、南佳孝杉真理などを彷彿とさせる歌声の甘酸っぱさやアレンジのトレンディぶりに好感を抱かざるを得ないですね。(ちなみにジャケットに写っている女性は音楽に参加しているわけではないようです)。特にM1「Be Happy」、M5「涙のノーマジーン」あたり、良曲です。彼らは現在地元群馬県を中心に北関東地区で活発にライブ活動を行っているようです。ウィキペディアが異様に充実しており、ユニット、個人ともにアクティブなTwitterアカウントもあることも確認できました。

 

6.

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アーティスト:IZANAGI
タイトル:開雲来光
発売年:不明(1990年代後期?)
レーベル:NATURE SHOWER MUSIC
入手場所:ブックオフ吉祥寺店
購入価格:280円
寸評:これが今回最も注目すべき盤です。おそらく完全にインディーズな俗流アンビエントのため、例によってほとんどネットに盤自体の情報がないのですが、IZANAGIという愛知県を中心に活動するDIY楽家による一作のようです。このIZANAGI氏、今回初めて知ったインディーズ系シンセシストなのですが、無数の霊峰に登山を繰り返し、その山頂や山腹や峠で作曲を行いCD作品としてリリースし続けている固い固い信念をもったアーティストだということがわかりました。

www.geocities.jp

くどくどと私が言葉をつぐよりも、上記ホームページを観ていただくと氏の特異な活動について得心していただけるでしょう。誇張でもなく、これまでJandek並の(それ以上か?)のリリース数を重ねる超多作家なようで、コンサートについても様々な老人ホームやセミナー、フェスタで多数行ってきた由。この、HTML感あふれる初期インターネット的なホームページ・デザインに、とにかく私は感動しました。伝えたいことが、ある。これこそJPニューエイジの極北と言えるでしょう。本作は白樺峠、大台ケ原、乗鞍岳山頂などで作曲された自作曲を集めたCDで、歌謡性満点のペンタトニック・シンセサイザー音楽。完全に日本独自の文化ですね。最後に、最高すぎる氏の演奏風景を捉えた写真を貼っておきます。

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