CDさん太郎 VOL.18 2019/11/14、25 購入盤

 こんばんは。前回までの半年ブランクをものともしない元気でお送りする、復活後第二弾の「CDさん太郎」です。

 まず告知です。
 今年5月、普段からよくしていただいているpanparth(パンス)さんから誘っていただいてDJをさせてもらった世田谷宮坂バレアリック飲食店(店名です)での「Laid Back Ground Music」。そのパンスさんをはじめ、磯部涼さん、cherryboyさんというめちゃ素敵なメンツに混ぜてもらい主にアンビエントをプレイしたのですが、すごく楽しかったんですね。
 で、年の瀬12/14に再び同じ陣容で同所にてDJをさせていただくことになりました。嬉しい…!通常営業でのBGM係を担当する形になりますので、お椅子もありますし、本当に素敵な空間とご飯(う・ま・い)ですので、是非お越しください。もちろん予約も不要。今回もアンビエントを中心に持ち寄る予定です(本CDさん太郎登場作も持参することでしょう)。

日程:2019/12/14(土)

場所:世田谷宮坂バレアリック飲食店 https://balearic-inshokuten.business.site/

DJタイム:19:00-23:00予定


 さて、今回は2019年11/24と25に東京・吉祥寺、中野、で購入したCDを計枚紹介します。
本シリーズ「CDさん太郎」要旨、並びに凡例は下記第1回目のエントリをご参照ください。

shibasakiyuji.hatenablog.com

 
1.

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アーティスト:宝達奈巳
タイトル:たからたち
発売年:1993年
レーベル:グリーン・エナジー
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
購入価格:380円
寸評:宝達奈巳は、93年にこのCDでデビューしたシンセサイザー奏者/シンガー・ソングライター。早くからクラシックの英才教育を受けるもその世界にうまく馴染めずいるところに出会ったYMOに大きな衝撃を受け、シンセサイザーを手にしたといいます。その後国立音楽大学に進学し楽理学科を卒業するという輝かしい経歴をお持ち方なのですが、この作品も、明らかに音楽的な下地と素養を感じさせる非常に上質のニュー・エイジ・ポップとなっています。作曲の巧みさやシンセサイザー・プログラミングやサンプラー使いの巧みさは、同時代の国内テクノ・シーンなどと比べても相当なレベルと言っていいと思います。非常にメディテーショナルでノンビートの楽曲も良いのですが、ミニマル・ミュージックや前衛音楽の影響を感じさせるトラックや、同時代のテクノやハウスからの影響を直接的に感じさせる曲も優れています。そして、その歌声も極めて麗しい…。細野晴臣氏が彼女の声を絶賛したこともあるとの由。あまり一般的な知名度がないのが不思議ですね。ちなみに次作も所有しているのですが、そちらも同傾向の秀作。現在は同じく音楽家たる夫君と活動をともにし、日本古代音楽の研究や歌唱活動も行われているようです。以下URLから本人インタビューを読むことができます。
https://www.kunitachi.ac.jp/introduction/kunion_cafe/interview/50on/ha/hotatsunami.html


2.

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アーティスト:栗林誠一郎
タイトル:La Jolla
発売年:1989年
レーベル:BMGビクター
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
購入価格:650円
寸評:大名盤が登場してしました。栗林誠一郎ビーイング系の諸作で名高いソングライター/ベーシスト。これは彼の1st作です。ビーイング系にまったく明るくない私、彼の名はlightmellowbuのタイさんが紹介していた他作品を通して知ったのでした。で、ちょこちょこネットで試聴をしてみて、そのドエラいクオリティのシティ・ポップに心底驚きまして。このファーストはそれ以来のウォント盤でありました。もう全編これ本当に最高のシティ・ポップのラッシュでして、オーセンティックなシティ・ポップ史からこのひとの名がスポイルされがちなことに不可解さを感じますね〜。まず、曲が良い。ポップではあるのだけど、どこか切なさを孕んだ湿ったメロウネスが横溢しています(ロッキッシュな曲も全然いい)。そして、声。か細い声でメロウな旋律を歌うという、いわゆるソングライター・ボイスなんですが、ちょっとベン・シドランを感じたりも。そして、本人によるアイデアフルなアレンジ、巧みな演奏も素晴らしい。マルチプレイヤー的にギターやキーボードもこなしています。バックも豪華。青山純(ds)、青木智仁(b)、葉山たけし(g)、斉藤ノブ(per)、数原 晋(tp)、土岐 英史(sax)等々…。ずばり、完璧なアルバム。次回レコードの日とかでLPリイシューすればよろしいんじゃないでしょうか。

 

3.

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アーティスト:井出泰彰
タイトル:COOL BLUE
発売年:1995年
レーベル:キューン・ソニー
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
購入価格:380円
寸評:男性和AORが続きます。井出泰彰は1970年生まれのシンガー・ソングライターで、94年にシングル「情熱」でデビューした方。今作はセカンド・アルバムです。参加メンツがとにかく豪華で、NY、ロンドン、東京で行われたセッションではスティーヴ・ガッドマイケル・ブレッカー、ロベン・フォード、ウィル・リー、ポール・キャラック、ラルフ・マクドナルド等、とてつもない。CDって売れてたんだなあ、という感慨…。ということで、完全海外プロダクション仕様の本作、そのサウンドも実に骨太で、純日本産ライトメロウにくらべるとかなりずっしりした質感となっています。井出の歌声がしゃがれた野性的なもの(ブライアン・アダムス風?)なので、非常にしっくりとバックに調和しているような格好です。彼の書く曲もソウルやR&Bからの影響を強く感じさせるしっかりしたものなので、早すぎたJ-R&Bの傑作としても聴くことが出来るように思います。何故か中川五郎がライナーに寄稿。そして、以前台車さんがTwitterで指摘されていましたが、このジャケは確かにインスタストーリーっぽい。

 

4.

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アーティスト:豆田将
タイトル:臘雪 ROUSETU
発売年:1990年
レーベル:パフSOUND
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
購入価格:280円
寸評:豆田将(まめだすすむ)は、アニメ/ゲーム音楽系の作詞家/作曲家/編曲家/キーボーディスト。これは彼のファースト・アルバムで、(おそらく)自主制作盤Suaraや元田恵美といった大阪のフィックスレコード系アーティストの作品を手掛けているほか、國府田マリ子中山愛梨沙などにも曲提供するなど、かの業界ではそれなりの存在感のある人らしいです。2色刷りのいかにもインディーなアートワークや「臘雪」というものものしいタイトルからその中身を想像するのが難しく、完全な当てずっぽうで購入したのですが、結果、なかなかの拾い物でした。冒頭の①で感傷的なピアノがそろそろとバラ―ディーに流れ出るのを聴いて嫌な予感が走るのですが、②以降はなかなかに聴きごたえのあるMORポップスが展開されます。とくに②⑦⑨あたりはギリギリでシティ・ポップに分類することもできなくない楽曲で、同時期のメジャーなJ-AORシンガーのアルバムに入っていてもおかしくなさそう。メロディのセンスには安部恭弘などに近いものも感知できます。おそらく周囲のセミアマ・ミュージシャンを集めたと思われるバッキング陣も手堅いプレイを披露しており、好印象です。謄写版っぽい手作り感満点の歌詞カードのスペシャル・サンクス欄へ、「大阪写真専門学校音響芸術家の卒業生・在校」とあることから、当時豆田氏は同校の関係者だったのだと思われます。なので、本作ももしかするとある種の「身内音楽」なのかもしれません。

 

5.

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アーティスト:ESCALATORS
タイトル:Sprite
発売年:1995年
レーベル:日本コロムビア
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
購入価格:280円
寸評:アシッド・ジャズフリー・ソウル的な要素を早い時期から自覚的に取り入れつつメジャー・フィールドで活動したバンド、ESCALATORS。これは3rdアルバムです。90年代後半にボーカルZOOCOの脱退により活動休止となりましたが、もう少し長く活動していたら、本格的に興りつつあったR&Bブームともリンクする形でもっと人気のあるバンドになっていたように思います。3作目ということもあり初期にもまして非常に堂に入った演奏となっており、一層安心して聴くことができます。プロデュ―スは笹路正徳が担当。楽曲、演奏、そして歌唱ともに一級品と言っていいですね。こうしたアシッド・ジャズ派生のアクトたちは、(当時風)の「クラビー」な洒脱感ゆえなのか昨今のシティ・ポップリバイバルから微妙にこぼれ落ちてしまっている気もしますが、捨て置くにはもったいないように思います。ブラン・ニュー・ヘヴィーズインコグニートとかの再評価が今後あったりするならば(Suchmosのブレイクをもってしてもそこまでへは至らなかったという…)、このESCALATORSも再発掘されることでしょう。

 

6.

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アーティスト:pas de chat
タイトル:Player
発売年:1996年
レーベル:テイチク
入手場所:ディスクユニオン吉祥寺店
購入価格:280円
寸評:平井堅「楽園」などの作曲で著名な中野雅仁と、同じく平井堅福原美穂今井美樹鈴木雅之などのコーラスを務めた藤原美穂によるデュオ、pas de chat(パディシャ)のサードにしてラスト・アルバムです。アルファからリリースされた前2作ではR&B風味のポップス、という印象ですが、こにサードではグッとR&B色を増しています。見事なソバージュヘアでーワインレッドのコンシャスな衣装に身を包み女豹がごとく平伏(?)するインパクト強大なジャケットもそれ風(ボーカルは時にCHARAを思わせます。ので、そこまで「ソウルフル!!」という感じでもない)。基本的にプログラミング・サウンドが主導する格好なのですが、沼澤尚ASA-CHANG(!)らが参加しグルーヴに深い彫り込みを与えています。どれもR&Bポップスとして好ましく聴けますが、やはり⑤や⑥、⑩、⑪などのミディアム〜アップが良いですね。

 

7.

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アーティスト:John Martyn
タイトル:Sweet Certain Surprise
発売年:不明
レーベル:Boyds Music
入手場所:ディスクユニオン中野店
購入価格:110円
寸評:私はかねてより、UKのフォーク系シンガー・ソングライター、ジョン・マーティンの大ファンです。ニック・ドレイクなどにも通じる繊細で深遠な楽曲、キャリアを進むごとにジャズやフュージョンへも接近し、ほぼ「ジョン・マーティン節」としか言いようのない数々の名作を世に送りだしています(日本での知名度はいまいち高くありませんが、本国では国民的な大歌手とされています)。その全てがとても素晴らしい出来栄えで、どれもこれも、ジョン・マーティンの作品とみると否応なしに手に取りたくなってしまうのでした。これはぶっちゃけブートレッグCDです(どういうわけなのかこの人は大量の発掘ライブCDがあり、その全貌を把握することが困難なくらいなのですが)。これだけ一流の人になると、こうした粗雑なCDにすら感動させられる演奏がぎゅうぎゅうに詰まっているのでした。本CDには、録音日時など詳細なクレジットがないのですが、①〜⑦に関しては「70年代、アメリカのどっか」と(おそらく出元を掴まれないために)曖昧に記載されています。選曲からみるに、おそらく70年代半ばと思われ、ほぼ途切れることなく、まるまる公演の模様が収められいます。ギター弾き語りでこれだけ多彩なニュアンスを表現できた人は地球上にまたといないのではないでしょうか。本当に素晴らしい(当然音質は良くないですが)。⑧、⑨は81年ロンドンでのライブ録音とあります。名盤『グレイシャス・フール』リリース前後の公演かと思われます。こちらはエレキの弾き語り。相変わらず素晴らしい(もしこの記事でジョン・マーティンに興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、くれぐれもこういうブートじゃなくて、オリジナル・アルバム群から先にお聴きください)。

 

次回へ続く…。